さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

未だ足りぬもの

2010-12-23 20:05:19 | 久高寛之
府立体育館から帰ってきました。

久高寛之、三度目にして初の大阪での世界戦は、ウーゴ・カサレスに3-0の判定負け。
またも王座奪取はならず、でした。


スカイAで生中継されたので、ご覧になった方も多いかと思います。
久高は一打のカウンターの切れ味に秀でたものを見せたものの、
その得意技が出せて、明白に山場を作れた以外のほとんどのラウンドを落としていました。

それは王者ウーゴ・カサレスが名城信男との二試合でも見せた強みによるものでした。
久高を押し込める体格の大きさ。時に単打のカウンターでぐらついても耐え抜く粘り。
毎回のように繰り返すスイッチによる幻惑、ペース掌握、或いは奪回。
劣勢のあとに、必ず見せる懸命な連打による攻勢。

これらの前に、久高は単発の好打を決めても、追撃するリズムがなく、そのバランスを持たないし、
そもそも自らリードパンチを繰り出して試合を作れませんでした。
カウンター狙い「だけ」で構成されたボクシングは、世界戦の12Rの過半数を支配するには、
あまりにも欠落した部分が多すぎました。

また、カウンターにつなげるために最善の策と考えているのであろうL字ガードによるディフェンスは、
中盤まではカサレスの連打をかなりの頻度で防いでいましたが、
疲れの見えた終盤はそうもいかず、明白に失点を重ねてしまいました。
さうぽん採点は久高に甘くて116-112。明白な敗北でした。


久高寛之は優れた素質を持つボクサーです。それは誰もが認めることだと思います。
しかし、上記したとおり、世界を獲るには、部品が足りない。試合を見ていて、率直に思ったことです。

久高寛之はデビューから連敗、その後メインイベンタークラスになってからも、
海外遠征を含む強豪との対戦を重ね、節目で痛い敗北を重ねつつも、
三度の世界挑戦機会を与えられるところまで闘い抜いてきました。

それでもなお、こうして明白に不足なところを露呈した今回の敗北は、
いったい彼から何を奪い、そして彼に何を与えるのでしょうか。

目の前の敗戦を見てなお、こんなことを考えるのはひいき目が過ぎる甘い感傷かもしれませんが、
試合後、正直に思ったことです。


三度目の世界戦を地元で実現するにあたり、彼の周囲や陣営が費やした労苦たるや、
きっと相当なものだったでしょう。とてもじゃないが盛況とは言えない入りの会場で、
懸命に彼に送られ続ける声援を聞きながら迎えた試合の終盤、この試合が終わったあとの
久高寛之の未来はいったいどんなものになるのだろうか、と、そんなことをぼんやり考えていました。

安易に四度目などと期待していいものなのだろうか。
そもそも彼は、その期待を受けるに値する逸材なのだろうか。
もしそうでないなら、そうなるためには、単に技術面云々ということではなく、
彼にはいったい何が求められ、何を証さねばならないのだろうか。

今のところ、何の答えも出しようがない問いではあります。
そして、もし今後、久高寛之がなお闘い続けるのなら、きっとこの問いを思いながら、
私を含めたファンが、彼の姿を見つめ続けることになるのでしょう。

久高寛之は、普通のボクサーには無い素質の輝きを持つが故に、
それ故に背負った重い宿命を背負いつつ、なお闘ってゆくのでしょうか。





コメント (4)
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