さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

専門誌を支えるもの

2009-05-15 12:23:07 | その他
ボクシング・ワールド誌ですが、今月、つまり今日発売の号を最後に廃刊なんだそうですね。

以前、休刊になった時にも少し書きましたが、とにかく田舎の本屋では滅多に置いてない状態でした。
すごく大きな書店じゃないと、店頭では買えない感じで、ほとんど宝探し状態。
ある方に、この窮状?を嘆くと「本屋に無い?そりゃ無いよ。そんなに数出てないもの」と
あっさり言われたこともありました。


私はここ20数年間、ボクシング・マガジンと共に、ワールドも欠かさず購入して来ました。
本屋になければ、時間はかかりますがアマゾンで買ったり。
しかし、買うだけは買っていましたが、ここ数年はあまりに内容が甘い誌面にすっかり呆れていて、
いくつかのコラムと試合日程などの情報以外は、真剣に読んでいなかったというのが、実際のところです。

先の辻選手のリング禍に関する記事など典型ですが、誰にも批判の矛先を向けない内容の記事を、
本誌記事、戦評、コラム、編集後記などで、複数の記者が揃って同じように書くことが、たびたびありました。
亀田興毅のランダエタ戦判定騒動でも同じです。
大勢とは言わんでも、何人かの記者がいれば、たまには違う見解を持つ者がいても
良さそうなものですけども、そういうことはほぼ皆無でした。
業界大手に対する不都合な批判など、最初からあり得ない体勢ががっちり出来上がっているという印象でした。

実際のところ、ちょっと人気、知名度があるというだけで実力不足のボクサーをスターに仕立て上げ、
そのために反則行為の見逃しやランキング操作までやってのける腐敗した業界に対して、
批判の声を上げられない「専門誌」など、もはや存在意義がありません。


これはボクシング・マガジンにも通底することですが、自分たちが作っているものの購買層が、
専門誌にいったい何を求めているのかを真剣に考えてこなかったツケが回ってきた、ということでしょう。
それはズバリ「専門」誌ならではの鋭い視点、見識、批評眼であり、ボクシングというスポーツの
発展、存続のためになされるべき提言、問題提起、そして、その為の批判なのです。

残念ながら、こうした面において、ボクシングファンが身銭を切って購読するに値するだけのものを
専門誌が提供してきたかというと「否」でしょう。
一連の亀田騒動以降、ただでさえ減少傾向にあった発行部数がさらに減ったそうですが、
それは時代の趨勢、情報ツールの多様化、不況などということとは別に、根本的な大問題だったと思います。
もしこうした面で、ファンの納得を得られる誌面作り...業界の体制に物申すような姿勢が貫かれていれば、
一定数のファンの確固たる支持が得られ、廃刊にはならないぎりぎりの線は守られたのではないでしょうか。


と、専門誌批判をしましたが、これはボクシング業界の側にも責任があります。
業界を牛耳る一部の業者は、批判記事(とも言えぬ「気に入らない」記事を含む)を書かれると
「取材拒否」をはじめとする、あらゆる圧力をかけてきます。
その結果、専門誌はジャーナリズムの意味を見失い、或いは諦めてしまいます。
そして、ジャーナリズムに監視されなくなった業界の権力者は、さらにファン無視の横暴を繰り返し、
ファンの支持を失い、やせ細る。こういうサイクルが完成しているのも、また事実です。

今回の廃刊は、ボクシング界がジャーナリズムの存在を支えられなかった末の、然るべき結果でもあります。
その結果は、いずれ業界の側にも、はね返ってくることでしょう。


それにしても、いずれこういう日が来るだろう、と漠然と思ってはいましたが、
実際にそうなるとやはり残念無念ですね。
KKベストセラーズでも存続出来ないとなると、紙媒体での復活はほぼ絶望でしょう。
模索していると言われるネット上での展開が可能なのか...これはこれで、茨の道なのでしょうが。

コメント (4)
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