
今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
ベージュ基調の竜馬プリントをベースに、合わせは黒基調の絣風プリントです。
いかにも男性的な配色で、力強さがありますね。ベースもさることながら、組み合わせの絣風がなんとも威厳を感じさせます。まだまだ続く竜馬プリント、今日の平生地はこちらになります。

ここ数日の角館は、寒い日と暖かい日が交互にくる感じです。今日は暖かい日、最高気温は二桁に乗ったでしょうか。今晩は雨の予報が出ていますから、日陰の雪もまただいぶ消えるでしょう。
西宮家では冬囲いの撤去作業が進んでいます。冬場はお休みしている「母屋」と「がっこ蔵」のオープンまであと半月。目前に迫った春に、角館人の心も嬉しく忙しないですね。
東京からお越しのお若いご夫婦、二歳になる女の子と三人旅です。実演席の丸太椅子に腰を下ろし、しばらくおしゃべりと相成りました。
『東京の開花予想って、いつくらいです?』とお訊ねすると、『あぁ、もう一週間も出たまんまなのでぇ…』。おしゃべり中も時間を気にする様子がなかったですから、ほんとに気ままなのんびり旅を愉しんでいるんですね。
旅の目的地をお訊ねすると、『ひとつは大潟村なんです』とご主人。秋田県大潟村は、米どころ秋田の中でも有数の作付面積を誇ります。先般「戸別所得補償制度」で赤松農水大臣がこの村を取り上げ、全国的に名前が知れましたね。
『じゃあ、農業とかそういう仕事の関係ですか?』とお訊ねすると、『いえいえ、ずーっと前から無農薬栽培のお米を取り寄せていて、一度その農家を訪ねたいと思っていたんです』。
この話には草履職人も感じ入りました。毎日食べるお米に「こだわり」を持っていて、その生産者にお礼が言いたくて訪ねたなんていう話は、ものづくりに携わる者としてこの上ない喜びでしょう。この旅で生産者と出会い、顔を知り人柄を知る。これからの食卓がまた違ったものになるんじゃないですかね。
角館草履にもその「こだわり」を認めてくださり、奥様がご自分用をお買い上げです。なかなか嬉しい出会いでした。
どうやら台湾人と思しきご一行様がお越しです。添乗員さんらしき人がいませんでしたから、ツアーとは違うのでしょう。想像するに、二つか三つのご家族が共に旅をしている、そんなふうに見えました。
10数名の外国人に私ひとりが囲まれる感じで、言葉はすべてあちら語、当然草履のご説明も簡単なおしゃべりも出来ません。それでもお母さんらしき女性が二歳くらいの女の子に、笑顔で実演を見させています。旅の想い出に少しでもお役に立てるなら、会話はなくてもいいかと思ったものです。
するとおふたりが草履をお買い上げになり、ほかのおふたりはミニ草履をお買い上げです。サイズを訊ねる仕草になんとかお応えしただけで、まったく会話というものはありませんでした。
手前勝手な解釈をすれば、言葉はなくとも「こだわり」は通じたのでしょう。お国に戻られてから、ときに生産者の顔を思い出してくれたら嬉しいですね。