角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ニックネーム。

2008年01月31日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
ブルー基調のあじさいプリントをベースに、合わせは同系の青です。ベース生地は未使用の浴衣反物で、地元の草履ファンのお母さんからご提供いただきました。
巻かれてしまうと「紫陽花」そのものは分かりませんが、いかにもそんな雰囲気が出てますね。
これから数回このベース生地を使った色違いをご紹介しますが、どれも一品限りの限定草履です。

昨日用事で同期生の店を訪ねました。そのお宅もわが家に近い年齢の子どもがいて、どうしても受験や学校の話題になりがちです。さらに同期生ですから、お互いが同じ時間と空間で「子ども」を経験しています。話題の中には「昔話」も出てくるわけです。

話題のひとつが、中学時代先生に付けられた「ニックネーム」でした。面白いのがありましたねぇ、「かめじ」「つぁ」「あっちゃん先生」「すだティーチャー」「じゃっかん」「ロボさん」。第三者が聞いて分かるものもありますが、チンプンカンプンなものもありますね。
私たちの学年が呼び始めたものと、中には角館中学校で代々呼ばれてきたものもあります。いずれにしても、非常に特徴のある先生ばかりでした。

昨日の晩飯にこれを思い出して、娘たちへニックネームで呼ばれる先生がいるか尋ねてみると、ひとつかふたつ出てきました。でも明らかにニックネームらしいものはなかったですね。
ニックネームにはやはり「親しみ」を感じます。もちろん今の中学では先生に対する「親しみ」がないのかと言えば、決してそんなことはないでしょう。ただ単純に昔と現在を比較すると、若干「個々の特徴」が薄い気はします。これの良し悪しは分かりませんが、そういう時代なのかも知れませんね。

昔は先生ばかりでなく生徒にも特徴的な人物がいました。想い出されるひとつは、「校内放送暴言事件」です。
遅刻する生徒が多かったその時代、職員会議であることが決められました。それは三回以上遅刻した生徒に、昼休みの全校放送で反省文を読ませるというものです。一番にこれをさせられたのが同級生のMくんでした。
Mくんが全校の職員と生徒を聴衆に読み上げた「反省文」は、なんと自家用車で通う教職員を非難する内容だったんです。生徒の遅刻をとがめる前に、先生たちも歩いて通いなさいというわけですね。

聴いていたわれわれ同級生も、さすがにこれは『やっちゃったぁ…』と顔を見合わせたものです。確かに当時の先生は大らかと言いますか、一にも二にも「規範」ということはなかった気がします。それでもこの「事件」だけは笑って済まされることではなかったんでしょう、午後の教室にMくんの姿はありませんでした。

個性的・特徴的も度が過ぎれば叱責を買います。それでも当時はゲンコツが日常にありましたから、なんと言いますか、お互いがいつまでも根に持つことなく「区切り」がついた気がします。
そうしたときにゲンコツを落とす先生は、やはりニックネームを持った人でしたね。

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幸せな「難題」。

2008年01月30日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
深緑の星柄プリントをベースに、合わせをヒョウ柄にしてみました。昨日の「今日の草履」と組み合わせを入れ替えた感じですね。野性味溢れる配色と思います。
楽しかったヒョウ柄、この草履をもってすべて使い切りました。

今日のラジオ人生相談は「イジメ問題」でした。15歳の女の子が軽傷を負わされるイジメだそうです。それでもけなげに登校を続ける女の子を、アドバイザーさんは誉めてましたね。「根絶」は無理でも、できるだけなくなればイイと私も思います。
学校問題でもうひとつ大きいのが「不登校」でしょう。かつては「登校拒否」という言葉が使われていましたが、「学校へ行かない」登校拒否に対して、「行きたくても行けない」不登校、やはりこちらのほうが多いと思います。

双子の娘の学年でも数人がそんな症状を表しています。中で角館西小学校出身の生徒は、私もよく知る子どもたちです。
ひとりの不登校女子生徒が心を許している僅かな友人の中に、わが家の長女がいました。学校にさえ出てきてくれればいろんな励ましもできるのに、せいぜい保健室止まりで教室まで来られませんから、長女もどうしたもんかと悩んでいたんですね。
そんなとき長女がケータイを思いつきました。わが家は娘たちにケータイの所持を許していませんし、その女の子の家も同様です。そこでお互いの母親のケータイアドレスを交換し、学校の情報や体調をうかがうメール交換がはじまりました。
ケータイの着信音に長女専用を設け、そのメールはカミさんであっても覗かないことが暗黙のルールだったようです。

そんな生活が二年ほど続き、最後まで完全復帰にはいたらなくとも、長女の行動は確実にその子に活かされたようです。去年のお祭り、長女とその子を含めた4人ほどが西宮家を訪ねてきました。私も久しぶりに会いましたが、元気な笑顔を見せてくれましたね。
昨年の暮れにその子の母親と同席する機会がありました。わが家の長女に対して母親は、『ホントにありがたかったぁ』。帰宅してそれを長女に伝えると、その子の母親と同じくらいの笑顔でうなづいていました。

長女とその子は別の高校を志望しています。やがてめでたく合格したら、またそれぞれの道が待っているんですね。高校進学後もこれまでのように連絡をとって欲しいと思いながら、音信が途絶えたらそれはそれで新たなともだちに恵まれたことかも知れません。「出逢い」と「別れ」が春ですからねぇ。

小学生と中学生の差というものは、学生から社会人への差に匹敵するんじゃないかと思ってるんです。小学生時代およそ想像できないような子どもが、中学生になって間もなく不登校になったりするんですね。児童心理学の詳しいことは分かりませんが、家庭環境とともに学校のギャップが影響しているんじゃないですかね。

小学六年の三女も間もなく中学生になります。先日三女の同級生の母親から電話があり、『お姉ちゃんたちのセーラー服はどこで買いましたぁ?いろんな話を聞いたら迷っちゃってぇ…』。
知る限りの情報を伝え電話を切った後、失礼と思いながら苦笑いしたもんです。
これからの三年間、そんな程度の「難題」であれば幸せなんですがねぇ。

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タバコとガソリン。

2008年01月29日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
昨年初登場のヒョウ柄をベースに、緑を合わせた配色Ⅱパターンです。インパクトが強いせいで、実演席でも話題になった「ヒョウ柄」。いろんな方がお買い上げくださいましたが、ベースに使えるのはこれで最後になりました。

厳寒のピークを過ぎた感じです。最高気温がプラスになると、日差しが暖かく感じますね。一月が残り2日、三月を迎えれば気分は春ですから、今期の冬もあと一ヶ月というところでしょう。

今朝のラジオでは、いくつかの番組で「タバコ」の話題がありました。ある番組は「成人識別自動販売機」、ある番組では「タクシー禁煙」、またある番組では「タバコなんてなぜ売るんだ」という話です。最後の番組は嫌煙家のリスナーの投稿を紹介したものでした。

私は未だタバコを吸っています。それでも草履職人となってからは本数が減りました。さすがにタバコを吸いながら草履は編みませんから、一日の製作時間が長ければ長いほど本数は減ります。それが今でも元のままなのが、パソコンをイジっているときなんです。そう、まさに今がそのときですね。
私の周囲ではタバコをやめた人がずいぶんいます。案外すんなりやめられた人もいれば、もう何度も禁煙している人もいます。

「タバコをやめる条件」というものを考えたとき、まず「病気」ですね。自らの体にタパコが原因の病名を示されたら、それは真剣に考えざるを得ません。多分医師の処方に従うでしょうね。
もうひとつ考えるのが「値段」なんです。今私が吸っているタバコは20本入り300円、これがもし1000円とか2000円だったらとても買えません。確かヨーロッパのどこかにそういう施策があると聞きました。それでも吸い続ける人がいるようですから、そういう国ではもはやタバコが「セレブ」の証しですかね。

民主党がガソリンの値下げを訴えています。与党や地方自治体は「道路財源」を盾に一歩も譲りません。この理由に加え、『値段を下げて消費が拡大すれば、温暖化政策に逆行する』と総理大臣が答えてました。
「害があるものからはたくさん金を取る」という考えが一般的だとしたら、タバコを思い切って1000円にして80%くらい税金にしたらどうですかね。

これでめでたく私も禁煙の仲間入りですな。

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油断大敵。

2008年01月28日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
白地に紺と黄色の小花プリントをベースに、合わせは黄色です。さわやかな春を想わせる配色ですね。外の景色は依然として「白」が支配的ですが、やがて角館にも春の花が咲き乱れることでしょう。

現在の高校入試は、「前期選抜」「一般選抜」「後期選抜」の三つに分かれています。前期選抜というのはかつての「推薦入学」に相当するのですが、難度としてはかつてより高いらしいです。
娘たちの学年でも前期選抜を目指した生徒が結構いて、すでに「春」を勝ち取った仲間が何人も出ているようです。本人とご両親へ、心から『おめでとう』を言いたいですね。

このところ家族を含め周囲の話題に「受験」が多いせいか、30年前の自分をどうしても想い出します。
私は将来の生業に「建築関係」を思い込んでいました。親戚にそうした人が何人もいたせいもあるでしょうが、今でも木材をイジってると楽しいです。元来がきっと好きなんでしょうね。
そんなことから普通高校は念頭にありません。大曲工業高校建築科を志望したのは、かなり自然な成り行きだったと思いますね。現在はどうか分かりませんが、当時の合格ラインは角館高校より大曲工業高校のほうが若干低くて、進路指導の先生も簡単に私の進路を認めてくれました。

娘たちもそうなんですが、私も数学が苦手でした。トータル点数ではとりあえず合格ラインにいたとしても、建築を目指す人間が数字に弱いのは致命的とも云われます。やがて将来のことを考えると、それなりの受験勉強はしましたねぇ。そんなこともあって、自分では合否の心配をほとんどしなかった気がします。
今でも憶えている建築科の募集定員は42名、そして倍率は「1.21」でした。確実に落ちる生徒がいるのに心配しなかったのですから、楽天家と言えばその通り、常識に欠けると言われればまたその通りのようにも思えます。

そうして迎えた発表の日、朝の早い時間に「合格」の一報をもらいました。これが誰からの電話だったのか憶えていないんです。でも確かに電話でそれを知らされました。心配というほどの心配をしていなかった私も、やっぱり合格と聞けば嬉しかったですねぇ。
やがて入学して何日か後、担任の先生から受験時の点数と合格順位が記された紙が一人ずつ配られました。それを見てビックリ、なんと42人中「36位」の合格だったんです。『危ねがったんだねがよぉ…』、ちょっと大げさですが血の気が引く思いをしたもんです。

気持ちを新たにして、その後の試験で36位はありませんでしたが、なにごとも「油断大敵」。これはその後の人生でも幾度となく味わっています。

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ラーメン屋さんと草履職人。

2008年01月27日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色基調の桜プリントをベースに、青と黄色の無地を合わせてみました。明るく可愛い配色になりましたね、お若い女性にもOKでしょう。

毎週日曜朝のラジオに、「お年寄り」をテーマした番組があります。それぞれの道で現役として活躍しているお年寄りや、なにかしらに今なお情熱を燃やすお年寄りを紹介するんですね。
今朝は秋田市のラーメン屋さん、76歳になるおじいさんは今も毎朝5時から仕込みをはじめるそうです。その道40年の超ベテランでした。

女性リポーターがおじいさんの作ったラーメンを食べるところからはじまります。
『美味しいですねぇ、特にこのダシは絶品! これの秘密ってなんですか?』の問いかけに、『はははっ、教えられねぇがら秘密だべっ』。飄々としたその語り口調に、おじいさんのお人柄がにじみ出ています。

続けて女性リポーターが、『76歳まで現役を続けられる秘訣ってなんですか?』。これには即座に答えました、『それは体力だっ、健康でねぇばなんもでぎね』。
『それじゃあなにか体力作りでもされてるんですか?』と尋ねると、『なーんもしてね、たまにパチンコさ行って鍛えでる。まぁ、口だけは達者だなぁ』。
おそらくリスナーすべてがそう思ったでしょう。

『遠くはどちらからお客様が見えます?』と訊かれると、『んだなぁ、遠いって言えばアメリカだなっ』。女性リポーターが『えっ、外国ですかっ!?』と驚くと、『そりゃあアメリカは外国だべぇ。オイシイ、オイシイって食ってるど』。
どんな質問にもこんな調子ですから、ご家族やラジオ局のスタッフからも笑い声が聞こえてました。

最後の質問、『永くラーメン屋さんをしてて、良かったなぁと思う瞬間ってあります?』と尋ねると、『う~ん、特にはねぇども、まずこれが天職だど思ってるぅ』。
この「天職」という言葉に、おじいさんがひたむきに続けて来た「姿勢」というものを感じました。天職であれば、『良かったなぁ』と思う瞬間がないわけがありません。これもすべておじいさんのお人柄なんでしょうね。

30年後もし私のところへラジオの取材が来たら、今日のおじいさんと同じことを話したいですね。もっとも私はパチンコをしませんから、体力作りの部分はさしずめ「フク」の散歩でしょうかね。あっ、30年後に今の「フク」はいませんかっ!?
今年はじめてのフクの画像は、掲示板へ

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土地の銘品。

2008年01月26日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
ブルー基調の桜プリントをベースに、合わせはエンジ基調の和柄です。ベースの明るさと合わせの落ち着きが好対照になりました。やはり中高年のおばさまにいかがでしょう。

ここ数日の大寒波は見事でした。今冬のピークじゃないですかね。現在強風は落ち着いて、角館の積雪量は60cmほどです。1月下旬の60cmだと大雪ではないですが、春を待つ気持ちは日ごとに強まっていきます。

昨晩は丁内のおじさんたちとの新年会でした。昨年の暮れこの新年会を話し合ったとき、テーマを「ハタハタ三昧」にしました。会員のひとりがこのテーマを踏まえ会場を手配したのですが、今期はまさかの大不漁。それでも会場飲食店は出来る限りのおもてなしを用意してくれました。
ハタハタコースに必ず登場するのが「ハタハタずし」です。「すし」と言ってもネタを乗せてにぎる「寿司」とは違います。各家々が自家製を漬けるほど当地では馴染み深い料理なんですが、ハタハタ大好き人間の私が唯一苦手としているのが、実はこれなんです。

1月19日のブログで少し触れましたが、かつて勤務していた会社の社長との想い出に「土地の銘品」があります。
それは私がはじめて名古屋の展示会に出張したときですから、22歳か23歳の頃です。仕事が終わっての晩飯、軽く飲んだあと『うどんでも食うべぇ』と社長に言われ付いて行きました。うどんと言われれば、いわゆるフツーのうどんしか知りません。でもその店で出されたうどんは、いかにも「風体」が違っていました。名古屋名物「味噌煮込みうどん」との初対面の場です。

愛知県でこのブログをお読みの方がいらっしゃいましたら、まず謝っておきます。それまで「土地の料理」というものをおよそ口にしたことのない私には、これを美味しいとはとても思えませんでした。あの味噌の味はなんとも独特です。
私は社長へ素直に言いました、『とってもマズい(>_<)』。社長はおそらくこの反応を予測していたんでしょう、まず言った言葉は『周りどご見でみれ』。
味噌煮込みうどんの「老舗」と云われる店の中には多くのお客さんがいて、そのすべてがフツーにこのうどんを食べていました。OLと思しき若い女性グループは、ライスの上にこのうどんを乗っけて食べてるんですね。

社長は続けて、『世の中にはその土地その土地で愛されでる食べ物がある。そこの土地サ行ったら、まずはそれを食ってみるごどダ』。
この一件で社長が私に教えたかったのはいくつかあると思うんです。まず、『狭い了見を持つな』ということでしょう。自分の好きなものだけに縛られず、広い目を持てという意味ですね。
これは食べ物だけにとどまらず、「人」にも言えますね。特に相手が商売上の取引先の場合、ウマが合わない人だって必ずいます。それを理由に取引がしぼんでいったら、それは営業マンとして失格ですからね。

そして、『土地に同化しろ』があると思うんです。仕事の性格から、国内いたるところに行く可能性があります。その土地で商売しようと思ったら、土地の人間を知る必要があるという意味でしょう。
全国に店舗網を持つ小売チェーンが、全国一律の商品を並べたって売れるもんじゃありません。「土地を知る」ことは、商いに欠かせない要素なんですね。

そしてもうひとつ、『どんなものでも食べれなければダメ』ということがあったと思います。これは現代の飽食をも意味してると思うんですが、嫌いなものでも何度か食べていれば、次第に美味しくなるという教えでしょう。
社長が思わず口にしました、『オレも最初は美味いど思わねがったぁ。でも名古屋に来るたび食ってだら、今は最初に食うのがこのうどんになってしまった』。

その後会社を辞めるまで幾度となく名古屋を訪れ、毎回一度はこのうどんを食べるようになりました。
テレビ番組に「秘密のケンミンショー」なるものがありますが、私はこれを見ていてどれでも一度は食べたいと思いますよ。「ハタハタずし」や「味噌煮込みうどん」のように、『毎日食べたい!』とまでは思わないものがきっとあるでしょうけどね。

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親子の再会。

2008年01月25日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
昨日と同じベースに、合わせをブルー基調の麒麟プリントにしてみました。色合いが落ち着いていますから、中高年の女性にいかがでしょう。
麒麟プリントはこの草履で最後となりました。

二、三日前の晩知人の男性から、『○○の連絡先知らねがぁ?』と電話がありました。○○というのは共通の友人なんですが、もう十何年も会っていません。実家はすでに無くなっていて、今は首都圏で働いていることくらいしか情報を持っていませんでした。そのままを伝え、電話は終わりました。

その知人から今日また電話があり、『分がった、分がった!』と妙に声が弾んでいます。まぁ、探していた人物の所在が判明するのは嬉しいこととしても、なぜそれほどまでに喜ぶのか。今日の電話でその詳細が分かりました。

その知人の知り合いに23歳の男性がいます。この男性の両親は、彼がまだお母さんのお腹の中にいるときに離婚しました。父親は間もなく首都圏へ出てしまったため、父と息子は互いの顔も知らず23年が過ぎてしまいました。
私に電話をくれた知人は彼の父親が誰かを知っていて、その父親というのが所在を探していた人の兄さんだったんですね。23歳の彼が最近になって、『親父と会ってみたい』と漏らしたことから、知人がその橋渡しを買って出たというわけでした。

その共通の友人と連絡できたことで、23歳の男性の父親である兄さんの所在もすぐに分かりました。早速父と息子がはじめて電話で会話し、近く本当の「再会」を果たす約束がされたそうです。あっ、互いに未だ顔を知らないんですから、「再会」という言葉は当てはまらないかもしれませんね。

23年が経ってはじめて出逢う父と息子、どんな感じなんでしょう。想像するに「涙、涙…」というのは浮かばないですねぇ。最初は照れながら、酒を酌み交わすうちにだんだん「親子」になっていくんじゃないですかね。23年を埋めるのに、いったいどれくらいの時間が要るんでしょうか。

私の親父は、親父が小学生のときに両親が離婚しました。親父の母親、つまり私の祖母に当たる人なんですが、その後親戚を頼って北陸のとある町に移り住み、またそこで新たな家庭を築きました。
それから30年後、親父の母親が体を悪くしているとの一報があり、『元気なうちに…』という親戚の勧めもあって親父は北陸を訪ねたんですね。私が中学生でしたから、その当時の親父の年齢はちょうど今の私くらいでしょう。

30年ぶりの母と息子の再会劇を、親父の口から聞くことはとうとうありませんでした。立ち会った親戚の話を聞くと、ドラマにあるような「涙、涙…」ではなかったそうですね。母親の目にはうっすら涙があったものの、親父はいたって平静だったようです。
今同じ年齢の私がこれを想像するに、やはり「涙」はない気がします。理由は北陸での新たな家族の存在でしょう。もちろんそんな母親を恨んでいたら訪ねることはしなかったでしょうが、これは「母に会いたい」という子どもの気持ちとは少し違う、なんと言いますか、命あるうちに「産んでくれたお礼が言いたい」に近い気がするんです。

その翌年、北陸から訃報が届きました。親父は葬儀に参列することをしなかったです。おそらくですが、前年に北陸を訪ねたことが、30年ぶりの「再会」と同時に今生の「別れ」だったんでしょう。
それから数年が経ち、親父も旅立ちました。あの世での「再会」は、本当の「母子の再会」であって欲しいと願います。

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もうひとつの「暖房」。

2008年01月24日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
深緑の絣風をベースに、合わせはエンジです。シンプルな配色ですが、私はこうした草履も好きですねぇ。「奇をてらわない」とでも言いますか、どんなモノや人にも「正統派」は魅力を感じるところです。

国会でも騒いでいますが、ほんとに燃料代が高いですねぇ。草履職人となってからは「営業回り」がありませんから、車のガソリン代は激減しました。その反面一日中自宅作業が続くので、灯油代がスゴいんです。二週間に一度タンクを満タンにするのですが、一回の料金が1万6千円ほどかかります。でもこればかりは我慢というわけにもいきませんしねぇ。

この間のテレビで、お笑いの「藤崎マーケット」がアイスクリーム専門店のメニューを食べ尽くすというのをやってました。室内は暖かいでしょうが、それにしてもこの真冬によくやるもんだなぁと眺めていました。
最後の大きなアイスケーキ、さすがに食べられなくなったひとりがダウン寸前です。すると食べ終わったひとりが「手紙」を読み出すんですね。それはファンから届けられた「激励メッセージ」、これに励まされもうひとりも完食するというシナリオでした。

まぁ、番組構成としてよくあるパターンと言えばそれまでですが、周囲からの応援に力が授けられるというのはよく分かります。サッカーや野球といったプロスポーツでも、サポーターの声援がとてつもないパワーを授ける話もよく聞きます。
観光シーズン中、草履実演でも激励メッセージをよくいただきます。真夏の暑さでバテ気味のときに、『暑いでしょうけど頑張ってくださいね』とお声をかけられると、ヤセ我慢でも元気な顔になりますよね。

先日東京都大田区にお住まいのお母さんから、メールで3足のご注文をいただきました。お支払い用の郵便振替用紙の通信欄には、優しい文字でメッセージが添えられています。

『3足受け取りました、ありがとうございます。84歳の母と、独立して健康が気になる二人の息子のバレンタインプレゼントにいたします』。

贈ったお母さんと贈られた三人、合わせて四人の「心の暖かさ」に役立てたかもしれません。そしてこの草履を編んだ私にとっても、何リットル分かの灯油に匹敵する「心の暖かさ」を頂戴しました。

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伝染るんです。

2008年01月23日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
昨日と同じ招き猫プリントをベースに、緑を合わせた配色Ⅱパターンです。こちらもメリハリの効いた配色ですね、比較的お若い女性に良さそうです。

秋田県北部の大館市を中心に、「はしか」が流行し出したそうです。大館市では子どもを対象にワクチン接種を呼びかけていて、ここ数日で接種しない子どもは出校停止の処置まで取るそうです。
「インフルエンザ」や「おたふく風邪」とは比較にならないほど重篤な病気だそうですから、これも致し方ない処置なんでしょう。なにしろ受験まであと一ヵ月半を切りましたしねぇ。

数日前から双子の娘たちに言われてました、『入学願書の親が書く欄、漢字間違ったらダメだからねっ。それから二度書きもダメ、あと字をやつしたり汚くてもダメだからっ』。
「たかが…」と言っては申し訳ないのですが、願書の親の記入欄になにもそこまでうるさく言わなくてもと思いました。そんな理由からなんでしょう、記入する親の緊張が書き間違いを誘い、毎年何枚も新しい用紙をもらいに来る生徒がいるんだそうです。

娘たちからその話を聞いて、おもわず高笑いをしてしまいました。親の「志望理由」かなんか書かされるのなら書き間違いもありそうですが、よくよく聞いてみると親が書くのは「住所」と「名前」だけなんだそうです。
商売上でも「住所」と「名前」を書くなんていうのは日常茶飯事です。これの漢字を間違うというのはちょっと考えづらいですし、第三者が読めないような字も書きません。正直そんな程度ならお安い御用です。

そして一昨日、娘たちに入学願書の用紙を渡されました。すべてに目を通しましたが、やはり私が書くのは「住所」と「名前」だけのようです。それでも丁寧だけは心がけ、まず普段にはない集中力で記入しました。
まずは長女の分を手渡し、次に次女の分を書こうとしていたとき、長女が大きな声を出しながら戻ってきました。『父さんっ、住所間違ってんじゃなーいっ』。『えっ、なんで???』と訳が分からずにいると、『住所は秋田県から書くのっ』。

やっちゃいましたぁ、日ごろの書き物は「全国区」じゃありませんから、ほとんどの場合が「仙北市」からで通用します。義務教育ではない高等学校の場合、そりゃあ「秋田県」から必要でしょう。
高笑いをした親父の面目は丸つぶれ、長女には深く謝罪して新しい用紙をもらってきてもらいました。

そして昨晩、用心に用心を重ね記入を済ませると、どっと疲れが出ました。「住所」と「名前」を書くのにこんなに疲れるとは思いませんでしたねぇ。
記入を済ませ長女に渡すと、今度は長女が「本人記入欄」を書くため自室へ行きました。しばらくして戻ってきた長女の顔が沈んでいます。『間違えたぁ…』。
合否通知の配達住所、親の名前で「○○方」と書くところを自分の名前にしちゃったんですね。

「緊張」も「病気」も、「伝染」にくれぐれも注意しましょ。

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同音異義語。

2008年01月22日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黒地の招き猫プリントをベースに、黄色を合わせた配色Ⅱパターンです。東京の仕入れ部長にお願いした「紺系」の一部に、過去一度利用した「招き猫」が入っていました。そのときもすぐに完売しましたから、こちらの草履もきっと「足が速い」でしょう。

昨年の西宮家実演、男性のお客様が奥様へのお土産に配色を選んでいました。二つに絞られたひとつが定番配色①だったんです。これをご説明するのに、『どちらかと言えば足が速いのはこっちですかねぇ』と言うと、男性は『んっ???』。
全国に通用するのか分かりませんが、私たちは「商売用語」のひとつにこの言葉を用います。商品の「足が速い」、つまり「早くに売れてしまう」という意味ですね。

これとは若干意味が異なるのですが、新聞に載っていたセンター試験の漢字問題を眺めていて、「同音異義語」に迷ってしまいました。分かった設問もあるにはありましたが、あらためて日本語って難しいですねぇ。

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とある田舎のお寺さん、住職が用事で一週間ほど留守をすることになりました。
ひとりの小坊主を呼び、『わたしは一週間ほど留守にする。この紙に行き先と帰る日を書いておいたから、どなたか客人があったらそれを見てお答えなさい』。
小坊主は大事な紙を無くしたらたいへんと、大切に懐にしまいました。

重要な仕事を仰せつかると、今度はその機会が待ち遠しくなるものです。一日経ち、二日経ち、三日が経っても誰もお客様は見えません。四日が経ち、五日が経ち、それでも誰も訪ねて来ませんでした。
小坊主は、『これはきっと和尚様がお帰りになるまで誰も来ないんだぁ』と決め付けてしまいます。そして大事な紙を、庭の落ち葉を焼いていた焚き火にくべてしまいました。

その翌日、『ごめんくださいまし、和尚様はおられますかなっ』と訪ねて見えたのは、村の長老。
小坊主は『やっと仕事が出来る!』と喜びますが、昨日紙を捨ててしまったことなどすっかり忘れていました。懐に手を入れて懸命に探すのですが、もちろん紙は出てきません。長老が『和尚様はどちらへ?』と尋ねても、小坊主は紙を探すのに夢中で耳に入りませんでした。とうとう小坊主は、紙をなくしてしまったと思い込みます。

返答のない小坊主にしびれを切らした長老に、『いったい和尚様はいかがされたのじゃ?』と大きな声で訊かれ、小坊主は正直に言うことにしました。『実は、無くなってしまいましたぁ』。
長老は驚き、『な、なんとっ、亡くなったのはいつのことじゃ?』。その瞬間小坊主が昨日のことを思い出します。『あっ、昨日焼いたんですぅ』。

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「同音異義語」にはくれぐれもご注意を…。

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