角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ふるさとへの恩返し。

2010年12月30日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き
紫基調の月見うさぎプリントをベースに、エンジを三箇所に配してみました。
淡い紫が優しさを醸し出しています。中高年の女性ほど赤い色を好まれますから、エンジを配したことでおばさま向けによろしいでしょう。「月見うさぎシリーズ」第三弾の平生地はこちらになります。




いよいよ年の瀬が押し詰まりました。2010年も残すところ明日一日、一般の事業所もだいたいは年内業務を終えたんじゃないでしょうか。角館草履の実演日記も、本日が年内最後の更新となります。

公開実演も早いもので、今秋から7年目に入っています。ホームページの公開からは5年、著作権認証からは4年が経ちました。0歳の赤ちゃんからを思えば、実演キャリアは小学校入学に近い年月なんですね。
少しずつリピーターさんが増え、布草履経験者を中心に口コミも加わり、日々の見学希望が多くなっています。ご来店複数回のお客様が、実演を観ながらワイワイガヤガヤ。七年前は思いも寄らなかった光景が、今の実演席では日常になってきました。

今年の公開実演で特筆すべきは、ひとつにマスコミではないでしょうか。新聞やテレビに角館草履と公開実演が紹介され、中でも9月20日・21日に関東地区で放送された「ちい散歩角館編」は、これまでと桁違いの反響がありました。
『テレビ見て来ました~』。秋田県内ならいざ知らず、そのほとんどが首都圏からのお訪ねです。
その当時もブログに触れましたが、インターネットでご注文をくださる方ももちろん有り難いですよ。でも実際に角館を訪ねてくださる方には、ちょっとした感動がありましたね。

「ふるさとへの恩返し」という言葉を、ときどき耳にします。選挙運動中に候補者のマイクからも聞こえましたし、首都圏でなんらかの事業を成功させている方が、故郷を想い口にすることもあるでしょう。
私も40代後半まで年齢を重ね、生意気にもそんなことを考えるようになってきました。具体的な手段や方法は、人によっていくつもあると思うんです。たとえば、ボランティアや社会活動に参加するのもいいでしょうし、事業主ならたくさん利益を上げて納税で貢献するのもいいでしょうね。

角館の草履職人ができる「ふるさとへの恩返し」、それが今年カタチに見えた気がするんです。それは新しい試みなどではありません。「草履を編む」という、日本にのみ根付いていた文化。これに現代でもこれほど関心を寄せる人たちがいるのなら、これを武器に一人でも多く角館に招く。一人でも多く角館のリピーターさんを作る。私にできる、いや私にこそ課せられた「ふるさとへの恩返し」は、これに尽きると思うんです。
すでにいろんな商いをされている方々は、日々そういう心構えをお持ちなんでしょう。私が少し遅いくらいですかね。

2011年の公開実演は、元日スタートです。本年のご愛顧に感謝いたしますと共に、来たる卯年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいm(_ _)m
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飽食の時代。

2010年12月28日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
エンジ基調の月見うさぎプリントをベースに、黄色を三箇所に配してみました。
月の黄色と組み合わせの黄色がよくマッチしていると思います。赤に黄色もなかなかイイもんですね。可愛い草履に仕上がりました。「月見うさぎ」第二弾の平生地はこちらです。




荒天の北日本がテレビでも報道されていますが、当地はむしろ暖気傾向にあります。10数cm積もった雪は気温の高さでずいぶん解け出し、それがむしろ車の通行や人の歩行を妨げています。ときおり降雪のあった昨日・今日も、水分たっぷりの湿った雪ですね。
観光で当地を訪れている方々は、不安定な路面に難渋しているかもしれません。こういう路面状態のときは、地元民でも長靴がベストですよ。

今年もあと三日を残すのみとなり、気忙しさもピークを迎えつつあります。商いとしての作業は今日をもってまず終えました。あとは年末年始用の買い物と家の中の掃除ですね。
『なにか食べたいものある?』。お盆や暮れによく訊かれる言葉ですが、私の答えは決まって『別になんでもイイよ~』。カミさんにしてみると、この答えが一番困るそうです。

子ども時代を思い起こせば、「鶏のから揚げ」「鶏のモモ」「豚の肉鍋」etc。いかにも子どもが夢中になりそうなメニューばかりです。他人様のご家庭は分かりませんが、幼少の時分のわが家では「牛肉」なんてものは異国の話。肉屋さんへ行っても目にさえ入らなかった気がしますよ。
今では日常に食べているメニューが「ご馳走」だった時代、ある意味幸せな世の中だった気もしますね。

最近この「飽食」を感じたのは、11日間病院食を食べたせいなんです。米沢藩の財政再建で著名な上杉鷹山などが、自身の食事を含めて奨励した「一汁一菜」。主食(ごはん)と漬物を除き、おかずとなるものは味噌汁と他一品というのが一汁一菜なんですが、病院食がまさにこれでした。初めはどうにも物足りなくて、家からなにかおかずを持って来てもらおうかとも考えました。しかしこれもなにかの縁と思い直し食べ続けてみると、米粒ひとつ残さないその量がとても理想的に思えてくるんですね。

退院してまたわが家の食事に戻ると、食べきったら間違いなくカロリーオーバーという量が並びます。今は若者である娘三人と一緒ですから仕方ないとして、やがて若い者たちと生活が別れたら、おそらく食卓は大きく変わるでしょう。

日本など先進国が、日々廃棄する食糧を飢餓に苦しむ国々に送ることが出来たら、世界の食糧不足の大部分が補える話もありました。このデータをもっと詳細に日本人へ教えたらどうでしょうね。食糧不足を補い、さらに日本人のカロリーオーバーが抑えられたら、こんなイイ話はないように思えます。

そんなことを考えながら、昨晩の「帰れま10」を見てました。

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日本人の大掃除。

2010年12月26日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
紺基調の月見うさぎプリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。
紺で統一された男性用草履、「和」の雰囲気も充分活かされ、なかなか粋な草履と思います。こちらであれば老若無関係にお勧めできるでしょう。

冬の新柄に、こちらの「月見うさぎ」が四色色違いで入荷しています。月見うさぎのような「おとぎ話系」は、なんとも情緒があってイイもんですね。神様的な要素も、日本人に広く受け入れ易いのかもしれません。
他の三色も落ち着いた純和風です。「月見うさぎシリーズ」として追々ご紹介して参りましょ。

本日2010年最後の公開実演を勤め上げてきました。今年の延べ日数は303日、初めて300日の大台クリアです。一年が終わったことと、年頭の目標だった300日実演を達成して、ちょっとホッとしたところがありますね。なにしろ師走に入って入院なんかもありましたし。
冷静に考えれば、なにほどの途切れもなく元日からまた始まります。でも一年一年のメリハリとでも言いますか、年が改まるというのは身が引き締まるなにかがある気がします。

これから大晦日までの数日で、2011年を迎えるためにいくつかの作業があります。そのひとつがあまり得手ではない「大掃除」なんですね。なにも寒い年の暮れにしなくても、欧米のように春を迎えてからでイイと私も思うんです。でもこの作業はどうしても「暮れ」が似合います。それは日本人特有の文化・慣習に基づくのかもしれません。

入院中に読んだ本の中で、二宮尊徳の功績に触れる対談が紹介されていました。薪を背負いながら勉学に勤しむ姿が、かつては銅像によく見られましたね。
勤勉や道徳の点で学ぶことの多い尊徳ですが、農学者としての実績がとても顕著なんです。生涯に数百もの農村復興を遂げている尊徳は、その農村に入ると農民たちを呼び集め、決まって最初にすることがありました。それは神社仏閣の修理だったんです。

農村を復興させるために赴くわけですから、当然その地は貧困に喘ぎ、場合によっては飢餓に苦しむ農民たちがいるわけです。皆の生活が苦しいのですから、すぐには飯のタネになりそうでない神仏は後回しになりそうなもんでしょう。しかし尊徳は違うんですね。

尊徳は農村荒廃の根本理由を、人心の荒廃にあると考えていました。神仏やご先祖様を祀る神社仏閣の荒廃はその表れであって、まずそれらを修理することで農民たちに報恩感謝の念を持たせたわけです。

角館には角館神明社があります。新年には新しい御札をいただき、家の神棚に供えます。そのときに神棚が埃まみれではいけません。やはり日本の大掃除は、年の暮れが似合うのでしょう。そして一番に綺麗にする場所は、神棚と仏壇が良いのかもしれませんね。
日本人にとって神仏というものは、目に見えずして偉大ななにかがあるのでしょう。
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喉もと過ぎれば…。

2010年12月25日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ブルー基調のアゲハ蝶プリントをベースに、ブルーを三箇所に配してみました。
年齢を問わずお勧めできるお洒落な配色に仕上がったのですが、なにしろ昨日から強力な寒波が押し寄せています。そんな中でのブルー基調は、少々寒さを感じるかもしれません。
季節が夏であればピッタリの平生地はこちらです。




とうとうやって来ました。大寒波です。昨日から居座っている寒波は夜になってますます元気になり、今日も一日氷点下の気温と吹雪をもたらしています。今朝は今冬初の除雪車が走りました。
年末に向かっておそらく根雪になるだろうと予想していましたが、どうやら当たってしまったようですね。明日からの予報も連日雪マークが続き、最高気温でプラス3℃から4℃程度です。あまり積もらないうちに暖気の雨でも降らない限り、まずこのまま根雪になると思います。

先日「今年の漢字」が発表されていましたが、「暑」でしたね。今夏の猛暑があまりにも印象に強かったのでしょう。角館もご他聞に漏れることなく猛暑を経験しました。つい最近まで、9月1日が収録日だった「ちい散歩角館編」を流していたせいもあって、今夏の暑さは私も忘れづらくなっているのかもしれません。
「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」が人の世の常ですが、「熱さ」ならぬ今夏の「暑さ」はそれだけ異常だったんでしょうね。

退院から一週間が過ぎました。このたびの症状はアルコールに因る割合が高いとの指摘で、退院後も一切のアルコールをシャットアウトしています。このまま一生酒と縁を切るとまでは考えていませんが、少なくとも数値が正常値に戻るまでは禁酒を続ける必要があります。昨日の検査結果で、年末年始は「酒ナシ」が決まりました。おそらく成人してから初めてのことでしょう。

せっかく体を元に戻す気になったのですから、主治医の言うことを聞いてこのまま治療を続けることにします。やがてある程度の飲酒が許されるくらいに回復しても、休みなく晩酌を続ける元の生活には戻さないほうがいいでしょう。
「喉もと過ぎれば…」は人の世の常です。このたびの発症を、今夏の猛暑の如く忘れないでいたいものです。

さて、明日は年内最後の実演日。天気が大荒れで商いはどうなるか分かりませんが、気持ちの上では有終の美を飾って参ります。

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町でお買い物。

2010年12月23日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
淡い紫基調の桜花プリントをベースに、合わせは黄色です。
愛らしく、若々しく、優しい、そんな草履に仕上がりました。「今日の草履」はどちらからお越しか聞きそびれてしまったのですが、『女房へお土産にしようかと思って…』と男性がお持ち帰りです。
ご主人がそういう気持ちになるのですから、きっと奥様は愛らしく、若々しく、優しいに違いありません。

ここ数日暖かめで推移してきましたが、いよいよ明日は今冬初の真冬日になろうかという予報が出ています。しかも天気が荒れ模様で、予報どおりとすれば明らかに積雪となる吹雪でしょう。ホワイトクリスマス程度であれば歓迎こそすれ、吹雪というのはちょっとねぇ。

レストラン北蔵では毎年イヴとクリスマスの両日、30食限定で「クリスマスランチ」が提供されます。ランチはランチでも、「ランチジャー」を毎日持って行く草履職人には縁がないと思っていましたら、この間の角館あきんど塾忘年会でこのクリスマスランチが話題になりました。話の流れで、明日の昼食はクリスマスランチをいただくことになった草履職人。ちょっと楽しみにしているんです。

今年も残すところ八日間まで押し詰まりましたね。出会う商人との話題は、今年の総括みたいになっています。だいたい聞かされる話としては、『年々ダメになっていぐなぁ』とか『新幹線が青森に取られでるものなぁ』といった、まず悲観的な話が主でしょうか。
確かにそうですね。今年の秋田県への観光客数はアイリス効果で若干回復しましたが、基本的な下降線は少々のイベントで持ち直す程度ではないでしょう。物販売上に至っては、アイリス効果さえ乏しいと聞きました。実際私もそれは感じています。

角館草履の常連さんで、生鮮食品を扱っている女性が言うのは、『もうみんな店じまいしようがって言ってるよぉ』。売上高は年々下降線で後継者もいない、であればとりあえず行けるところまで商いを続け、頃合いを見計らって閉店する、その後は誰かに店を貸して家賃収入を得たい。どうやらそんな筋書きを想定しているようです。
こうした町の○○屋さんという人にこの手の話をされると、一人の住民としてとても寂しく思うんですね。

私ひとりが出来ることなんてなんにもありませんが、どこで買っても価格に大差がないものや、町の小売店だからこその逸品を見つけたら、出来るだけ街中で買い物をしようとは心掛けています。
これからも月に一度くらいは、ランチジャーを休みましょうかね。
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若者たちとクニマス。

2010年12月20日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紫基調の和柄プリントをベースに、合わせは紫の格子柄プリントです。
「紫系お任せ」のオーダーにうってつけの配色ですね。上品な優しさが感じられると思います。

「就職氷河期」という言葉がずいぶん聞かれます。首都圏でもたいへん苦労しているようですが、秋田県のような地方は尚推して知るべしでしょう。地元に職場がなければ、否応なしに県外へ出るしかありません。秋田県の出生率も高齢化率も、若者の職場さえあれば改善するのは明らかです。

わが家の娘たちもそういう年代になり、地元に職場が少ないことをつくづく感じるようになりました。県外の大学や専門学校で知識を得ても、それを活かす職場がありません。ひとまず県外に就職して現場を学び、たとえば5年くらいの実績をもって地元に帰られるなら、いろんな意味で大きな収穫じゃないかと思いますね。

ここ数日マスコミを賑わしている話題に、「クニマス」があります。かつて秋田県の田沢湖のみに棲息すると云われていた淡水魚なんですが、玉川の強酸水を取り入れてのち絶滅したと云われていました。もう70年以上も前の話です。
そのクニマスが遠く山梨県の西湖で発見されたというのですから、これは大きなニュースでしょう。発見した京都大の先生も興奮を隠しきれないでいましたし、地元テレビでは田沢湖関係者も同様に興奮している様子が連日報道されています。

角館や田沢湖など三か町村が合併する以前、旧田沢湖町は「クニマス探し」に懸賞金までかけたことがあります。懸賞金をかけて生き物を探すなんて言うと「つちのこ」が頭に浮かびますが、まさにそうしたレベルで展開された「クニマス探し」でした。でもそのときは結局見つからなかったんですね。

このたびの吉報を受けて、市長をはじめとする関係者が早速山梨を訪ねるそうです。おそらくクニマスの捕獲を制限してもらい、種の保存に協力を願うのでしょう。元来は田沢湖にいたクニマスの卵ですから、70数年を経て再会する子孫に、関係者の喜びはいかばかりでしょうね。やがて先祖のふるさとである、田沢湖へ戻る日が来るでしょう。

しかしその田沢湖は、未だサケやマスが暮らせるほど水質が改善されていないとのこと。まずはふるさとの環境を整えなければ、帰って来ることはままなりませんか。
秋田県出身の「若者たち」と「クニマス」、よく似た境遇ですよ。

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当下一念。

2010年12月19日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調のうさぎ&麻の葉プリントをベースに、合わせはカラフルな桜花プリントです。
退院後の復帰第一弾は、愛らしく美しい配色にしてみました。来年の干支で草履職人の生まれ年である「うさぎ」と、角館の象徴である「桜」のコラボ。これこそ角館草履渾身の一作ではないでしょうか。
なんて大げさな話をしていますが、12日ぶりの実演ですから編み方を憶えているか心配しましたよ。本日最初の一作は、一瞬一瞬を確実に編み進んだ気がします。
可愛い平生地はこちらになります。



11日間の入院生活では、結構な時間を読書に費やしました。
入院二日目に熱が下がると、ほかに自覚症状はありません。かと言って行動に自由はありませんから、言うなれば“軟禁状態”なわけです。これは本を読むのに絶好の環境でしたね。

ある歴史本の中で、「一期一会」が井伊直弼の言葉であると知りました。彦根藩主で幕末期の大老を務め、桜田門外で水戸藩士に暗殺された史実は有名です。
「一期一会」は公開実演でもブログでもよく使う言葉なんですが、コテコテの侍の言葉だったとは意外でした。もっとも多趣味だった直弼が、茶道を究める中で使ったようですから、やはり言葉が持つイメージというのは案外的を外していないと思いますね。

また別の本で、「当下一念」(とうかいちねん)という言葉を知りました。
なにやら難しそうな日本陽明学の始祖とされる、中江藤樹先生が遺された言葉とあります。先生の偉大さは今後学ぶとして、この言葉の意味には深く頷いてしまいました。

「一瞬、一瞬をよき形で終えることができれば、次の一瞬がよき始まりになる」。

与えられた目の前の仕事を、とにかく一所懸命に努める。一瞬、一瞬に全力を尽くしていれば、次の一瞬が新しい道となって開けてくる。常に有終の美を迎えられるよう、努力を重ねていかなければならない。

入院中は体を元に戻すことが、私に与えられた責務でした。このことに集中したからこそ、またいつもの仕事が始められる。
「当下一念」は「一期一会」と共に、これからの草履職人人生において座右の銘となるでしょう。
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イタい大人。

2010年12月18日 | 家族の話
師走も中旬から下旬へと進み、次第に冬らしい気候になってきました。空から降りてくるものは、はっきり白いです。いまのところ昼は解けますが、これから年末に向かって根雪になるでしょう。今年も厳しい冬が始まっています。

実はこの11日間、これまで47年と10ヶ月の人生において、初めての経験をしておりました。それは入院なんですね。
ご注文のお客様にはたいへんご迷惑をお掛けしました。本日早速に発送しています。
それにしても、これほど静養というものに時を費やしたことはありませんでしたよ。

6日夜からの発熱が、7日朝には39.3度に達しました。風邪らしい症状が他にないことがむしろ気になり、7日午前開業医を訪ねました。翌朝検査結果は「肝臓の炎症」、関連して血糖値も上がっています。当初医師の所見は、一週間の安静加療だったわけです。

治療計画は、基本的に毎日の点滴とひたすらの安静です。いずれ“身柄拘束”されるのであれば、気になっていた尿酸値や胃、腰痛までも診てもらうことにしました。さながら体の「年末大掃除」みたいなもんですね。

治療の甲斐あって肝臓の炎症が落ち着くと、血糖値も次第に下がりました。尿酸値は当初から問題なかったのですが、引っかかったのが胃です。内視鏡の画像は素人の私が見ても可哀想でしたよ。

さらに五日間ほど治療を続け、つい先ほど退院しました。しばらく注射と投薬が続きますが、飲酒こそ制約があれ、日常生活に支障がないところまで回復しています。
それでもしみじみ思うのは、もう体をいたわる年齢なんだということですね。

宇多田ヒカルさんが芸能活動を休止するに当たり、ラジオ番組でこんなことを言ってました。

『気がついたら、フツーの人が当たり前にできることができない。そういう“イタい大人”にはなりたくないと思ったんです』。

番組パーソナリティーから、活動を休止している間ナニをするのかを訊ねられた返答なんですが、ごくフツーの生活をこう表現したわけです。

まもなくやって来る2011年は、角館の草履職人の生まれ年、満48歳を迎えます。自らの体を熟知し、日常を「考えて」暮らす。すでにそういうことが、当たり前にできなければいけない年齢ということでしょう。
50歳近くにもなって、“イタい大人”とは呼ばれたくないですからねぇ。

2010年最後の公開実演を、明日19日から26日とします。師走も年の瀬が押し詰まると、お客様の姿はめっきり少なくなるものでした。それでも2010年が入院で終わるのは寂しすぎます。充分休養をとりました。角館の草履職人として、一年の最後を締めくくりたいと思います。
もちろん体調に注意を払いながら…ですね。
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お知らせ。

2010年12月08日 | 実演日記
本日より一週間ほど、公開実演と共に通信販売もストップします。お電話・FAX・インターネットを問わず、ご注文やお問い合わせに対しすぐにご返答ができません。

この間のご注文につきましては、体制が元に戻り次第ご返信いたします。ご理解を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
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暫時お休みします。

2010年12月07日 | 実演日記
6日の晩に急な発熱があり、今日から数日お休みすることにしました。
体調が戻り次第復帰しますので、今しばらくお待ちください。
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