角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

熱中症にご注意ください。

2015年07月31日 | 地域の話
日本全国の猛暑が伝えられています。当地角館も例に漏れず、連日30℃を超える真夏日です。関東や関西からお越しのお客様は当地の30℃超えを何ほど苦痛と感じないようですが、北東北に暮らす私たちにすれば感覚が少し異なります。確かに真夏ピークこそ35℃などという日があっても、それはほんの数日の話。入梅以前から夏日あるいは真夏日が連続したのでは、厳しい夏と言わざるを得ませんね。

一昨日の朝5時を少し過ぎた頃、寝ていても分かる激しいめまいに襲われました。ひとまずトイレに立ったものの、歩くだけで一苦労です。次第に吐き気を感じ、気持ちの悪い汗が首筋に滲みます。実演準備をなんとか終え、水分を補給し体を横にしていたところ、そのまますーっと眠りに入りました。結局その日は実演開始が午前11時過ぎになりました。

一連の症状を調べてみると、「夜間熱中症」でほぼ間違いないようです。熱中症全体の三割を占め、アルコール摂取に因果関係がありました。お酒を飲むと発汗作用が増すため、床に着く前にコップ一杯の水を飲むのが良いとされます。飲んだ酒が「水分」と思うのは素人考えなんですね。その日もいつもの晩酌と同じ量でしたから、よもやそんなことになるとは考えてもみませんでした。

それだけ今夏の猛暑は異常なのかもしれません。昼の疲れが気づかぬ間にたまっていたのかもしれません。それとなにより「加齢」ですよね。こればかりは理屈で分かっていても日常に考えることはありません。気象環境がこれまでの想定を超え、これに加齢が加われば「こんなことは今までなかった」となるのでしょう。

さて明晩は「かくのだて絵燈籠夏まつり」です。主催サイドの一人として参加しないわけにはいきません。あまり無理をせず帰宅しようと思っているのは、一昨日の症状のうえに明後日から夏の繁忙期に入ります。東北の夏祭りを愉しむお客様が多数お越しになるこれから、お迎えするこちらが体調不良ではどうしようもありませんからね。

秋田を角館をお訪ねくださるみなさま、くれぐれも熱中症ほか体調にはご留意ください。もちろん私も気をつけます(^^)
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パフォーマーとの繋がり。

2015年07月29日 | 地域の話









今日の草履は、秋田市の女性と湯沢市の男性のオーダー草履です。ウクレレ奏者として活動されているお二方には、スタイリッシュなイメージからベースに黒をお勧めしました。女性は組み合わせに黄色をご指定され、男性は「おまかせ」です。赤のドットプリントを手にされたとき、ちょっと驚くかもしれませんね。もうすでに到着している頃でしょう。早速履いてくださいね~(^^)/

こちらのお二方と初めてお会いしたのは、ちょうど一年前の西宮家でした。前夜角館町内のレストランで開かれたウクレレライブに出演され、翌日の散策で偶然の出会いです。facebookに知人がそのライブを投稿していたため、おしゃべりもその点に絞られた印象があります。その後お二方ともfacebookで繋がり、一年経って角館草履のご愛用者となってくださったわけです。

草履職人となって、画を描く人・楽器を奏でる人・お芝居を演じる人・民工芸作家など、いわゆる作品を創る人々との繋がりがとても多くなってきました。もっとも私は画も描けなければ、楽器もいじれず、芝居などはもってのほかです。ですからなおさらそうした人々との交流が新鮮なのかもしれません。今年のウクレレライブは先約がありうかがえませんでしたが、いつかお訪ねしたいと思っています。

さてこちらは、音楽とお芝居の競演です。




行ける家族を引き連れうかがいたいと思います。
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なくてはならない存在。

2015年07月28日 | 地域の話




今日の草履は、岩手県盛岡市のおばさまのオーダー草履です。かねてからご愛用者であるおばさまは、いつ壊れてもいいように「買い置き」とのことでお訪ねでした。ありがたいことに角館草履が、おばさまにとって「なくてはならないもの」になってくれたんですね。ご希望配色を「完全おまかせ」で2足のご注文です。その1足がこちら、華やかな草履にしてみました。本日の便で出発です。明日届きますよ~(^^)/

角館あきんど塾の仲間でもある「角館さんさん」が、今年九月でお店を閉めることになりました。九年の歴史です。消費意欲をそそる斬新で的確なデザイン商品を数多く発表していたお店は、お祭り用品を中心に根強いファンを獲得しました。角館にとって「なくてはならない存在」に成長したと思っています。おそらく自身もその点において違和感はないでしょう。

私が西宮家で草履を編むようになったのが十一年前。角館さんさんの歴史に近いことと、共にオリジナルで勝負してきたこと、年齢も一つ違いという共通性がありました。ですから仲間を超えて、「同志」のような感覚でいたのは間違いありません。角館で角館にしかないものを創り上げるという「志」も同じです。初めて閉店の話を聞かされたときは、正直残念で仕方ありませんでした。

角館さんさんは小売店としての形を消し、クリエーターとして商品開発の道に特化した活動に変わります。それが彼女の「原点に立ち返る」なのでしょう。たとえ「志」が同じくとも、高杉晋作と久坂玄瑞では道が違っていました。それはそれで善しと心得ています。
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かくのだて絵燈籠夏まつり。

2015年07月27日 | 地域の話



毎年八月第一土曜日開催の「かくのだて絵燈籠夏まつり」、今年は八月一日です。短い夏の一夜を、みなさんで賑やかに、楽しく、美味しく過ごしていただけましたら幸いと存じますm(__)m
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人の関係はギブアンドテイク。

2015年07月23日 | 実演日記





今日の草履は、仙北市内の女性のオーダー草履です。お仕事に励むあまり足指を骨折してしまった職場仲間へ、励ましの贈り物なんですね。ご希望配色は完全おまかせでしたので、「優しい春の花」をイメージしてみました。病気やケガで気持ちが落ち込んでいるときは、優しく寄り添うのが一番ですからね。一日も早く完治し、こちらの草履が履けるようになることを私も願っています。

先日知人女性がfacebookに投稿していたのは、同じ職場の一人が周囲の手を借りなければ仕事が進まないうえに、それに対してなんら感謝の意思がないのを憤慨したものでした。私の周囲でそういう人はすぐ思い浮かばないものの、世の中を探せばいるでしょうね。その知人も「見返りを期待しているのではない…」と記述している通り、ひとまずは「ありがとう、助かりました」の言葉が欲しいのでしょう。

児童心理学の世界で著名な精神科医が著書や講演で言うのは、「人と人の関係はギブアンドテイクで初めて成立する」というものです。商いであれば商品やサービスに相当する対価を支払うことで、売り手と買い手の関係が成立します。雇用主と労働者の関係もその通りですね。これは「キブアンドテイク」がはっきりしている例です。
直接金品のやりとりが発生しない患者さんと看護師さんの関係も同じで、一生懸命職務に励む看護師さんに対し患者さんから「ありがとう」の言葉があれば、それで「ギブアンドテイク」の関係が成り立つといいます。

これは子育て真っ最中の親子関係にも当てはまり、どんなに苦労でも子どもの寝顔を見ればそれだけで癒される。これも立派な「ギブアンドテイク」なんですね。つまり与えるものと与えられるものが双方向からあることが、人と人の関係を維持する絶対条件というわけです。どちらか一方が与え続ける関係は、「心」を持った人間にありえないのでしょう。

「今日の草履」を贈る女性も、相手からなんの見返りを求めるものではありません。草履を手渡されたとき、心からの「ありがとう」と「がんばります」の言葉があれば、それだけでお二人の関係はずーっと続くものと確信しています。
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角館草履、リオへ。

2015年07月22日 | 実演日記








今日の草履は、由利本荘市の女性のオーダー草履です。リピーターさんで「完全おまかせ」2足のご注文でしたから、正反対のような草履を編んでみました。可愛らしい花柄に赤、涼しげな桜うさぎブルーに水色。気分に応じて履き替えるのもよろしいかと思います。もうすでに到着している頃でしょう。早速新しい草履を履いてくださいね~(^^)/

今日の角館も格別の暑さです。あえて気温を見ずに一日過ごし、帰宅してテレビで知ること「35℃」。今夏すでに三度か四度ありましたか。明日からは少し落ちついて30℃未満になるそうです。扇風機で草履を編む人間の身にもなってほしいところですが、世の中には酷暑に苦しむ土地がまだまだあるんでしょうね。

一昨日お電話をくださったのは、さいたま市のおばさまです。ご友人が最近角館を訪れ私の草履をご注文だったとのこと。届いた草履を履いているご友人宅を訪れたおばさまが、「これだっ!」と思ったのだそうです。かねてから部屋履き草履を探していたおばさまは、履き心地とサイズに納得できるものと出会えずにいたんだそうです。そのサイズというのが28cm。

『ブラジル人と結婚した娘がリオデジャネイロで暮らしているんです。あたしもときどき行くんですけど、家に入ったら靴を脱ぎたいじゃないですか。それで娘夫婦とあたしの草履を探していたんですけど、娘の夫の足が大きくて…』。
30cmまでお作りする角館草履に28cmはなんの問題もございません。おばさまの大喜びは電話の向こうでもよく分かりましたね。

それにしてもブラジルはリオデジャネイロですかっ。リオのカーニバルとサッカー王国くらいの知識しかない私の作る草履が、地球の裏側へ旅立つんですね。お届けしてしばらく経ったら、「ブラジルのひとー、履いてますかーっ!」と地面に向かって叫んでみましょうかね(笑)。
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似顔絵と結婚。

2015年07月19日 | 地域の話




今日の草履は、仙北市内の男性のオーダー草履です。遠距離交際中の女性への贈り物で、女性のイメージを色でお訊ねすると、『白って感じですかねぇ』。真っ白の布地はありませんから、「淡く優しく」をテーマにお作りしました。連休明けに到着すると思います。男性の心が伝わることを願ってやみません。
平生地はこちらです。




今年の桜まつりで角館あきんど塾が主催した「似顔絵桜サミットin角館」。ここに一組のカップルがお越しでした。女性のほうをかねてから知っていた私が、「彼氏と一緒に描いてもらえばいい」とお誘いしたものです。そのときは笑顔で「そうですねっ」と応えていた女性でしたが、内心は「無理だろうなぁ」と思っていたんだそうです。その理由は彼が極度の「シャイ」だったから。二人が並んで似顔絵を描いてもらう姿が、女性には想像できなかったといいます。

それがどうしたわけか彼の返事はあっさり「OK」。その日は似顔絵師さんが四名いて、お客様が見本を眺めながら好きな絵師さんを選びます。そのひとりを選んだのも彼でした。後日その絵師さんに話を聞くと、自分の中でもかなり良く描けた一品とのこと。お二人も嬉しそうに絵師さんと記念写真を撮り、描きあがった似顔絵を持ち帰ったものです。

そのとき二人はまだ結婚について具体的な話し合いはありませんでした。それが似顔絵を描いてもらってから少しずつ話が動きだします。そして三か月後、いよいよ明日入籍することを私にも報告してくれました。いや~、私もほんとに嬉しいですよ。
人生において、ナニがきっかけで大きく動くか分かりません。ある程度の年齢に達した人であれば、思い当たる節がいくつかあるでしょう。お二人の結婚があの日の似顔絵によって動き出したのは間違いないと思っています。

「今日の草履」も、遠距離交際から一つ屋根の下に暮らす、大きな起点となってくれたら嬉しいですね。
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おじさんたちの白岩焼。

2015年07月17日 | 地域の話


かつての「白岩派出所」がしばらく前から、地元白岩焼の工房になっているのをご存じない方が多いと思います。営利を目的としない、いわば社交的施設でしょうか。




こちらの説明書きにある「肝煎伝右衛門」が、今私が暮らす白岩千葉家です。福島県相馬からこの地を訪れた松本運七が、千葉伝右衛門に窯の設置を願い入れました。伝右衛門は佐竹北家の殿様に掛け合い、その許しを得たというのが史実です。それから130年に渡る白岩焼の歴史が始まります。







地元住民十数名が白岩焼の創作に勤しんでいます。職人を目指すのではない、商品にするのでもない、純粋にこの土地を愛する「おじさんたち」が故郷に根付いた陶芸を愉しんでいるわけです。









職人を目指すものではないにしても、やり続けていれば上手にもなりますし、また誉められればその気にもなります。これが「ものづくり」の面白さでしょう。






いつかはこれくらいの作品が出来るかもしれませんね。
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農の達人。

2015年07月16日 | 地域の話
お休み二日目の今日、とある農家さんをカミさんと共に訪ねてきました。旧田沢湖町にある「アグリ アサノファーム」は十数年来の知人である女性のご実家で、「黒にんにく」を製造している当地では数少ない農家さんです。免疫力高上に優れた栄養素を持つ「黒にんにく」は、白岩のわが家も関心高く取り組み始めました。
しかしそこで私たちが得たものは、にんにく作りに限ったものではない「農」の在り方です。土も、草も、虫も、言わば自然をすべて味方につけた「農」は、作物がその品質で応えてくれていました。

まず一目で分かるのが雑草の多さです。草取りを一切やらないというのではなく、作物にとって必要なときにやってあげればそれでいい。草も意味があってこの世に生まれている。その特性を生かさなければ、自然のバランスが崩れるというのがアサノさんの考えです。雑草と呼ばれる草たちも取り込んで土作りをすれば、連作障害が極度に減る。一般に五年の間隔が必要とされる作物を、中一年で作っているアサノさんが証明しています。









アサノさんはこの道まだ十一年です。先輩農家がアサノさんの仕事を誰も評価せずとも、志高く信ずる道を歩いて来ました。ご主人曰く、『ずっと人から頭がおかしいって言われでらったもの。バカ、大バカでは足りねくて、頭がおかしいってなっ。糖度21.3のトウモロコシを市場に出して、ようやく認められだな。日本一のトウモロコシだと思ってるよ』。
今では近隣農家が相談に訪れ、県の農政担当者が視察に見えるそうです。

そんなアサノさんの作る「にんにく」がこちらです。





総収量は2トン余り。この中の一部を「黒にんにく」とし、また「醤油漬け」として製品化します。どちらも免疫力高上に優れ、厳しい病気と闘っている患者さんからのご注文にお応えしていると聞きました。
「アグリ アサノファーム」は、アサノさんご夫婦と私の知人の三人がスタッフです。その人数で賄える作付面積には限りがあり、これからも「収量より品質」の考え方に変わりはないといいます。

「アグリ アサノファーム」と「角館草履」、これまでの経緯も目指すところも非常に近いと感じました。今も昔も「変わり者」が大好きであります。
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諦めるもんじゃないですね!

2015年07月14日 | 実演日記




今日の草履は、千葉県松戸市のご夫婦のオーダー草履です。ご注文フォームから「完全おまかせ」でしたので、色違いのペア草履にしてみました。「おまかせ」の中でも特にお好みの色指定がない場合、これまでもペア草履は幾度となくお作りしています。角館草履をご夫婦で履かれるのですから仲良しは疑うべくもありませんが、万一「ペアなんてまっぴらよ!」という場合はあらかじめお知らせください(笑)。
本日の便で出発しました、明日到着ですよ~(^^)/

昨日は全国で高気温が話題となりましたが、秋田県も例外ではありません。角館で36℃に達し、横手市では38℃を記録しました。もはや体温超えですよ。
実演席は蔵の中といえ、33℃を超えています。あと少し上がっていれば家に帰ったかもしれません。それくらい仕事に対する根気が失われるものでした。
今日も予報では30℃に達するうえ、雨模様で湿度がだいぶ高いと言われていました。急きょ「今日から休もうかな…」が頭をよぎったのですが、そうしなくて良かったと心底思ったのは今日のお昼過ぎでしたか。

『あ~、お父さんここだわ~、間違いない~!』と言いながら入って見えたご夫婦は、お見受けしたところ七十歳ほどでしょうか。千葉県柏市にお住まいだそうです。詳しく聞いてみると、ご夫婦はおよそ十年前、西宮家で私の草履をお買い上げでした。私が西宮家で草履を編むようになって十二年足らずですから、草創期のお客様ということになります。履き潰してまた欲しくても注文の術が分からず、それがずっと頭の中にあったといいます。

ご主人は、『蕎麦を食べてそのまま駅へ行こうかとも思ったんだけど、ダメで元々草履のことを町で訊いたんですよ。そしたらここを教えられて、いや~、諦めるもんじゃないですね、はははっ』。
奥様は、『あの頃とちっとも変りませんね、むしろ若くなった感じ、はははっ』。
ご夫婦が私との再会を喜ぶ姿がとても嬉しくて、『また十年も会わなければ、高校生くらいに戻ってるかもしれませんよっ』とお応えしました。

こちらのご夫婦もオーダーは「完全おまかせ」です。十年前はなかった「土踏まず付き」と共に、今の角館草履をじっくり味わってほしいと願っています。あまりの暑さにいっときは今日の実演を諦めようと思いましたが、いや~、諦めるもんじゃないですね!
予定通り明日から三日間はお休みとさせていただきますm(__)m
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