角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

飛ぶ話。

2009年05月28日 | 家族の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調の金粉和柄プリントをベースに、合わせは朱色の小花プリントです。
パっと明るい色調が、派手よりも可愛らしく見えますね。和柄プリントがなかなかイイ演出と思います。

公開実演を休止して六日が経ちました。拘束されないこの時期をどんなふうに過ごしているかと言いますと、実は一日の数時間を入院中の叔母の介護に充てています。
介護の中でも私の担当は、もっぱら話し相手と説得役なんですね。血縁の中で最も性格が似ている私と叔母は、元気な頃よくぶつかりました。でもこうして病弱の身になると、なんでか私の言うことはよく聞いてくれます。

じっちゃとばっちゃの四十九日法要が済んだ翌24日、日付が25日に変わって間もなくの深夜、叔母の入院先から電話です。どうやら認知症状が出たらしく、看護師の手薄な深夜帯は家族の協力が必要との要請でした。
すぐさま病室へ行くと、ズボンだけ履き替えてベッドに座り込む叔母。自身の置かれている環境が分らなくなり、とりあえず動こうと思ったようです。ここから私の「説得役」がはじまることとなりました。

担当医からは、事前にこの予測を知らされていました。前述のじっちゃとばっちゃも晩年は認知症が顕著で、福祉サービスを受けない日はカミさんも介護応援のために生家へ戻るのが日常でした。特にばっちゃは「夢物語」をよく喋る人で、その様子をカミさんから聞くに、よくそれだけの作り話が次から次へと生まれるもんだと感心したものです。
カミさんは大笑いしながら私や娘たちに話して教えるのですが、これはカミさんの隠れた逞しさであると私は思っています。

そして今、私が叔母の「夢物語」に感心しています。これを真っ向から対峙するとしたら、おそらく三日と持たないでしょうね。なにしろ叔母のウソ話は故意でありませんから、後ろめたさもないので顔色も変わりません。でも喋る内容は明らかにありえないワケです。
かつてカミさんから聞かされていたばっちゃとの様子を私なりに解釈し、私もこれを「楽しもう」と思っています。

フツーの会話が突然ひとりだけ別の話に移ることを、誰から言い出したのかわが家では「話が飛ぶ」と表現します。これを見極めるのがなかなか面白いんですよ。
ばっちゃは文字通りよく「飛んで」ました。昨日飛行機で外国へ行って来たなんて話はいくつもありましたね。

昨日は叔母も「飛んで」ました。飛行機でハワイへ行くそうです。そんな話に苦虫を噛み潰した顔をしていたんではなんにも面白くありません。これをどうユーモアに結びつけ、病室を明るくするかが私の手腕にかかるわけです。
さらに叔母の連れ合いもときどき話が飛びますし、介護応援の私のおふくろも一本別の道を歩いたりします。カミさんは近くで必死に笑いをこらえてますよ。

叔母の病状を考えると、この介護もそう長くは続きません。一日一日の話し相手を、私も叔母との思い出に刻みたいと思ってるんです。
月間致知六月号は、「ユーモア」がテーマです。叔母が眠るベッド脇でこの本を読んでいると、人生においていかに「笑い」が重要であるかが分ってきます。イイんじゃないですかっ、末期がん患者の病室に、出来る限りの笑いがあったにしてもねっ。

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2009年上期終了です。

2009年05月22日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
茶の唐草をベースに、合わせはエンジ基調の相撲プリントです。
茶の唐草を準レギュラーとし、無くなり次第追加で編むようにしています。見慣れてくると展示パネルにないのが不自然になってきました。

いささか急なんですが、本日をもって2009年上期の公開実演を終了することにしました。長くて一ヶ月ほどのインターバルを置き、6月下旬には下期をスタートさせる予定です。
今年は元旦からはじめましたから、今日までの上期通算で93日間勤めました。下期のほうが期間として長いですから、この一ヶ月でできるだけ在庫を作りたいと思っています。

今年もここまで数々の出逢いがありました。公開実演で起こる出来事は、ほとんどが嬉しいことや楽しいことばかりです。「旅」を愉しんでおられる方々との出逢いですから、お客様もなにか想い出に残ることを探しているんでしょうね。

上期で起こったプライベートでは、まず挙げられるのがじっちゃとばっちゃの急逝ですね。よもやのふたり同日逝去、今でも周囲からは『仲良し夫婦だったんだべなっ』の声が聞かれます。
そんなじっちゃとばっちゃも明日が四十九日法要、魂もあの世へと行く日です。現世での人生という「旅」を終えたふたりは、今どんな気分でいるんでしょうね。

この一年半の間不治の病と闘ってきた私の叔母は、もう残り僅かな人生を生き抜こうとしています。ゴールデンウィークが明けたあたりから病状が悪化し、予定より少し早く実演を閉めるのもこんな理由が一部にあります。
もう30年近くも前のことですが、私はオヤジの死に目に会えませんでした。叔母はオヤジの妹でオヤジ方最後の血族、出来る限りのことをしてあげたいと思ってるんです。

ときに実演で聞かれる言葉に、『一度の人生だもの、元気なうちに遊んでおかなくちゃっ!』があります。まったくもって同感ですね。やがて誰にでも訪れる冥土の旅ですから、現世ではしっかり働いてしっかり旅を愉しみたいものです。

下期実演でも、そんな元気な旅人とたくさんお逢い出来るでしょう。まずはここまで、誠にありがとうございましたっ。

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角館三昧。

2009年05月20日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤まだら、黄まだら、紫まだらの三色使い、なんか早口言葉みたいですが、「まだら三昧」とでも名付けましょうか。
こうした奇抜な配色は、長い期間展示されることはまずありません。『面白いっ!』というだけでお選びになる方が必ずいらっしゃるんですね。今日も気に入ってくださったお客様がいらしたのですが、残念ながらサイズが合いませんでしたぁ。

先日来の雨で、街の緑がみずみずしくなった気がします。まだ風は強めですが、日中は暑いくらいになりました。人影もまばらな今どきの角館、散策にはもってこいの季節と思います。

昨日北海道から修学旅行の中学生がお越しでした。男子2名に女子3名の小グループ、男子はさほどでもなさそうでしたが、女子3名は草履実演に飛びつきましたね。角館草履の素性を詳しく知ると、『なんかあたしたちスゴいもの観てるんじゃない!? やっぱり角館にして良かったっ!』。

聞いてみると三つのコースから選択なんだそうです。ひとつは盛岡市、ひとつは遠野市、そしてこちらのグループが選んだのが当地角館というわけでした。
ほかのふたつももちろん愉しい土地とは思いますが、角館を選んだ生徒たちに喜んでもらえたのが幸いです。やっぱり散策は角館でしょ。

大仙市大曲と岩手県北上市からお越しのおともだちふたり組、共にお若い女性です。ちょうど「今日の草履」を編みあがったところで出逢いました。私が『この草履、面白い配色でしょっ!?』とお見せしてから、しばしのおしゃべりです。

北上市も「桜の名所」と謳われて久しいです。北上、弘前、角館は北東北の桜名所として、観光ツアーも組まれてますね。北上にお住まいの女性へ、『やっぱりスゴい人出なんでしょ?』とお訊ねすると、『かなり多いですねぇ』。『今年の角館はどうでした?』のご質問から、角館の観光談義と相成りました。

かねてからお伝えの通り、角館には年間200万人を越える観光のお客様がお越しです。でもその7割とも8割とも云われる人数が、武家屋敷通りだけを小一時間ほど散策してお帰りなんです。せっかく角館へお越しになって、これではもったいないと言うのが私の考えなわけです。

こちらのお二方も私の話に同調してくださいました。『あたしも車って好きじゃないんです、やっぱり歩いてみなければ愉しくないですよっ』。
お若いのに見事なお考えと思いますよっ。西宮家のある外町から武家屋敷通りへ、角館三昧してくれたことでしょう。

山形県酒田市からお越しの母娘ツーペア4人旅、ずいぶん歩き回ったのか、実演席まで来るとすっかり座り込みましたね。それからしばらく草履の話題になり、それぞれ一足ずつとお土産用を一足、合わせて五足のまとめ買いとなりました。誠にありがとうございますっ。

酒田市と聞いたので、カミさんの妹が近くに嫁いでいる話をしました。『○○病院に看護師として勤務してるんですよっ』とお教えすると、ひとりのおばさまが『えっ!?』と驚いたとたんメモ帳を開き、『妹さんってなんていう名前?』。
聞いてみるとおばさまの親族がその病院に入院中なんだそうです。おばさまの勢いからすると、ホントに訪ねるかも知れませんね。

お帰り際、『あ~、愉しかったっ!』。そのお言葉の一部に角館草履との出逢いがあったことを祈りながら、やっぱり角館散策がすべてと思うんです。
角館散策は、文字通り「角館三昧」というわけですね。

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田舎者の弱点。

2009年05月18日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ21cm土踏まず付き〔四千円〕
緑基調の小花プリントをベースに、合わせは緑です。
ちょうど今は緑の季節、こんな配色がピッタリではないでしょうか。赤い小花も可愛いですね、緑好きにお勧めの一品です。平生地はこちらになります。




「今日の草履」は久しぶりの21cm、土踏まずの付いたMグループ以上では、LLグループに次いでお買い上げの少ないサイズです。冬場に10足ほど作ってそのままでしたが、残り2足になったので今日編んでみました。

ここまで8人ほどがお買い上げですが、この21cm草履を見つけたお客様はことのほかお喜びになりますね。成人女性向けの21cmサイズというのは、一般の靴でも極端に少ないんだそうです。靴屋さんへ行っても選ぶ楽しさを得られない方々が、角館草履にそれを見つけたわけです。草履と言えども「履物」、ご自身の足にピッタリ合えば、そりゃあ嬉しいですよね。

先日のこと、都内からお越しのお若い男女が角館草履に関心をお寄せでした。中でも1cmきざみに編む点に評価が高かったんです。
男性はそのとき履いていたスニーカーを指し、『この靴はオーダーメイドで、左右の大きさがちょっとだけ違うんですよっ』。私が『なんでまたそこまで靴にこだわりを持ってるんです?』とお訊ねすると、『田舎から転勤で都会へ出たんですけど、とにかく歩く距離が半端じゃなくて、これは靴を粗末にしちゃダメだと思ったんです』。

これは私も同感ですね。草履職人となってからの履物はもっぱら雪駄ですが、かつてサラリーマン時代は靴へそれなりの投資をしていました。やっぱり歩くことが多かったため、靴を買うときはかなりシビアだったことを思い出します。
男性はそのオーダーメイドの靴を、『やっぱり全然違いますよっ』。

都会と田舎の違いによく出てくる話題が、「歩く距離」なんですね。私たちの普段の「足」と言えば、もっぱら車です。多少おおげさな話をすると、自宅玄関から目的地の玄関まで車という始末なんですよ。運動不足は間違いないですし、景色を眺めながら歩く愉しさなんて田舎者のほうがよほど乏しいかもしれません。

実演でときに訊かれる質問に、『お生まれも角館ですか?』があります。これは私が地元の人間であることを確認したい、旅人の心なんでしょう。私の答えはいつもいっしょ、『生まれも育ちもここですよ、家まで車で2、3分ですよっ』。訊ねられた方は地元民であることに、ひとつ安心してくれます。

思い出すのはひとりの男性、「車で2、3分」の答えに対して、『そんなに近いのに車なんですか!?』。
実演材料を毎日持参するためには、徒歩というわけにいきません。とは言いながら、都会に暮らす方々には2、3分を車で移動する生活が不自然なんでしょうね(苦笑)。

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経済効果。

2009年05月17日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四千円〕
青基調の金粉和柄プリントをベースに、合わせはクリーム色基調の金粉和柄プリントです。
一般に白っぽい布地は汚れが目立つと云われますが、これだけ綺麗な配色であればお選びの方もいらっしゃるでしょう。平生地はこちらです。




朝から雨の一日になりました。午後からは本降りで、明日の日中まで続くみたいです。気温はさほど低いとは感じませんが、この雨が上がるとまた20℃をゆっくり超えるそうです。どうにも衣類が定まりません。

天気が悪いとは言え、今日の西宮家もそれなりのお客様がお越しくださいました。ETC効果はゴールデンウィークが終了しても続いているようです。県外ナンバーの車は当然これを利用しているでしょう。
角館草履もその恩恵にあずかっているのでしょう、今日も編んだ数以上の草履がなくなりました。

ETCは私と無縁ですが、景気対策の目玉と云われた定額給付金は、私の口座に無事届きました。とき同じくして高校二年生の双子が学校から持たされたのは、一年分の教材と試験費用の請求書、その額ひとり3万5千円弱。
定額給付金があってもなくても支払うべきお金ではありますが、なんとなくもらったお金がそのままスライドするように思うのは気のせいでしょうかね。

民主党の代表が替ったようです。以前のブログでも触れましたが、私は小沢一郎という人間を嫌いでありませんでした。北東北出身という「身内感」もあるのか、口下手だけれど信念を変えない侍像を感じていたんですね。
例の献金が適正なのかそうでないのか分りませんが、ここまでこじれたらしょうがないでしょ。

定額給付金をはじめとする経済対策に、野党はもちろん与党の一部にも「バラマキ」とする批判があります。要するに選挙対策、お金をまけば少しは票に結びつく…ということでしょうね。
この趣旨の発言をテレビや新聞で見聞きしていて、どうにも違和感を持っているんです。

今朝のテレビで宮崎県の東国原知事が言っていたのは、『確かにバラマキなんでしょうけど、それで票が集まるもんでしょうか。国民はそんなにバカじゃないでしょう』。
これが私の持っていた違和感ですね。その通り、もらえるものはもらっても、その人の言いなりなんてことはありえませんよ。

同じように感じるのが、全国学力検査の結果公表です。公表しないほうが良いとする意見の中に、「限られた教科だけで学校や子どもを判断すべきではない」があります。
こんなことは当たり前の話です。結果が公表されたとしても、それだけで学校や生徒個人がはかれるわけがありません。私は公表してもしなくてもどちらでもイイんですけど、もう少し私たちを信用して欲しいと言いますか、バカにしないほうがイイとは思うんですね。

さて経済効果のほうなんですが、先回のブログでも触れた通り、今年の桜まつりで大きく感じることはありませんでした。でも定額給付金が支給された分、わが家の今月の支払いには大きく貢献してくれそうです。
ただ総選挙までには、もらったことを忘れちゃいそうなんですよねぇ。

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みんないっしょ。

2009年05月13日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
クリーム色基調のうさちゃんプリントをベースに、合わせはエンジです。
ベース生地は先回の「今日の草履」と色違いです。淡い色調に金が含まれるプリント柄、そしてエンジとの組み合わせは角館草履の定番的配色でしょうか。文句ナシに綺麗な草履と思います。平生地はこちらです。




二日間のお休みをいただきまた明日から再開するわけですが、この二日間かくのだて温泉につかって疲れを取りました。今冬はじめてこのお湯の効能を実感し、手や腕が疲れてくると入りたくなります。体が覚えるっていう感じですかね。

実はゴールデンウィーク中の朝、お湯につかってから出勤しようと考えたのですが、浴衣姿のお客様が温泉玄関付近に多数いて、結局入湯を断念したものです。私が込んでるお湯を嫌ったと言うよりは、観光客のみなさまにお湯を愉しんでもらおうと思ったんです。旅は疲れるものですからね。

角館最大のイベント桜まつりが終わり、商いをしている人たちとの間で今年の“業況”が話題に上ります。サンプル数が多くないのでなにほど正確なデータではありませんが、まず人々の口に出るのは「不景気」ですね。『なにをいまさら…』といった感もありますが、桜まつりの売上が年間売上の何割かを占める人も多いですから、特にこの時期に不景気を感じるのでしょう。

かく言う私もみんなといっしょで、昨年比マイナスで終わりました。今年は冬季実演を実施したことや親族の不幸もあって、桜まつり直前の在庫数は過去最低でした。それがゴールデンウィーク終了の現在、男性用サイズはほぼ完売ですが、女性用サイズは思ってたより在庫があるんです。

おそらく満開時季の、連日の雨と寒さがひとつの原因でしょう。散策される方がいつもより確かに少なかったですし、雨の中に荷物を増やすのを避けた感もあります。自分に置き換えてみると私もいっしょ、そりゃあ購買意欲が落ちますよねぇ。

あとはやはり「不況感」でしょうか。悩みに悩んでお買い上げをあきらめた方を複数思い出せますし、『もう少し安ければなぁ…』と言葉にされる方もおりました。
旅というのはそれだけで一定の費用が要ります。話題のETCや定額給付金が追い風になったとはいえ、今どうしても必要とするもの以外にはみなさん冷静ですよ。

昨日少し久しぶりに、カミさんとふたりで買い物に出かけました。目指したひとつが私の衣類、三女の卓球ユニフォームは平気で一万円を超えるのに、私のTシャツは一枚千円に躊躇してしまいました。おそらくこんなことも、みんないっしょじゃないですかね。

ゴールデンウィークの旅でお金を使った方々が、今また一生懸命仕事をこなしているでしょう。私も明日からまた頑張ります、なんといったってみんないっしょなんですからねっ。

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年齢のギャップ。

2009年05月11日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調のうさちゃんプリントをベースに、合わせは緑基調のとかげプリントです。
哺乳類と爬虫類ですが、動物同士の組み合わせになりました。色調は鮮やかで綺麗ですね。平生地はこちらです。




以前にも触れましたが、「うさぎ」は草履職人の干支であります。人は自分の干支にちなんだものを身に着けるか、あるいは周囲に置くと「吉」という話を聞いたことがあります。草履材料の布地に「うさぎ」が多いのも、こんなことが由来するわけです。

昨今のインターネット普及で、旅先の情報をあらかじめチェックしてからお出での方が多いですね。
トップページには実演席に飾ってある「似顔絵」があるのですが、実際の年齢より若干年上に推測される場合があるようです。おそらくこれは「草履職人」というイメージが、「年長者」を連想させるためだと思うんですね。

今年のゴールデンウィーク、『ホームページを見て寄りましたぁ』とおっしゃるおばさまは、『いやぁ~、思ってたより若くてびっくりですぅ』。
また別のお客様は、ご夫婦で草履をお買い上げのあと米蔵へと進まれ、スタッフのひとりに訊ねたそうですよ、『あの草履屋さんって何歳?』。
やはり「草履を編む」という生業が、少なくとも四十歳代とは連想できないんでしょうね。

昨日の母の日、秋田市からお越しくださったご夫婦の奥様が草履を気に入ってくださいました。ご主人へ『買ってくれるぅ?』と訊くと、ご主人は笑顔で『いいよっ』。
私が奥様へ、『母の日に草履のプレゼントなんてイイじゃないですかっ』と言うと、『あらっ、あたしはこの人の母じゃないわ、妻よぉ』。

「ご主人から奥様へ母の日プレゼント」という意味をお伝えしご理解いただいたのですが、いくらなんでも母子じゃないのは一見して分りましたよ(苦笑)。

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優しさの弊害!?

2009年05月10日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
茶の唐草をベースに、合わせは薄茶基調の相撲プリントです。
男性用サイズの定番的配色に、こちらの茶の唐草を準レギュラー化しようと思ってます。東京の仕入れ部長から送っていただく中にも「茶系」があったのですが、これらが案外人気というのが分りました。たしかに「今日の草履」もお洒落ですよね、男性の「優しさ」が表れているように思います。

岩手県大船渡市からお越しのおばさま。まっすぐ実演席を目指して見えたおばさまは、『もう二、三年も前なんですけど、草履を編もうと思ってこちらから草履台を買ったんですよっ』。すぐにお顔を思い出すことは出来ませんでしたが、何人目かの草履職人さんだったんですね。

おばさまは、『親戚の畳屋からイ草をもらってやってみたんですけど、やっぱり難しかったですぅ』。見学に訪れたいと思っても、岩手からじゃ簡単じゃないですからね。おばさまは思い続けながらも、しばしの間草履作りを断念していたようです。

今日ようやく念願叶ったのは、息子さんの「優しさ」でした。昨日のこと息子さんがいきなり、『明日は母の日だべっ、どっか行きたいとこがあれば連れて行くぞ』と言ってくれたそうです。おばさまは、『じゃあ、角館へ行きたいよっ』とのことで本日のお越しというわけです。息子さんはお母上に気兼ねのないよう、ひとり自由散策で時間をつぶしてくれていました。

私が『優しい息子さんですねっ』と言うと、『そうなんだけどねぇ、優しすぎるからまだ独身なんですよぉ。いまどきの男は優しいだけじゃダメなのよねぇ』。
たしかに的を射たご感想とも思う草履職人です。私の友人にもそんなのがいますしねぇ。
でもやっぱり人間は優しくなければダメでしょう。「過ぎたるは尚…」も分らなくはありませんが、優しさがなければ家族は持てないと思いますよ。

桜まつり期間中、例年通り米蔵玄関を賑やかせたアトリエフィエスタさん。こちらの画には、なんとも言えない優しさがあります。横手市の「秋田ふるさと村」に拠点を構えたフィエスタさんは、これからさらに秋田県南部との縁が深まるでしょう。

カミさんもこちらの画にハマっていて、マイカーの運転席シートと助手席シートにこの画のTシャツを着せたいと言い出しました。出店中の空いている時間で描いてもらった画がこちらです。


〔運転席シート〕


〔助手席シート〕

上の画は私とカミさん、下の画は三人の娘たちです。添えられた文言に、フィエスタさんのお人柄がよく表れていますね。
今日お越しくださったおばさまの息子さんにも、下のTシャツに添えられた言葉がやがて実現されることを願ってやみません。

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「数」だけでない魅力。

2009年05月08日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
紫基調の金粉和柄プリントをベースに、合わせは紺基調の金粉和柄プリントです。
色調のおしゃれ感と共に、やはり金の気品が感じられますね。賑やかで豪華な草履と思います。

今朝の新聞に、角館桜まつり期間の人出実績が載ってました。昨年比10万人増の126万人だそうです。博多どんたくや弘前公園でも20万人減…、この真偽を問うのはやめときましょ。
西宮家などがある外町(とまち)にいる人間がこの数字を聞いて、『うん、そのくらいは来てくれたなっ』と感じることはないと思います。角館の観光スポットはなんと言っても武家屋敷通り、外町を散策する割合はその20%とも云われています。単純に計算して25万人、やっぱりよく分かりません。

秋田市からお越しの母娘さんペア、こちらのおふたりは比較的最近から角館草履のご愛用者です。今日は角館にある菩提寺にご用でお越しでした。
『あれからずーっと履いてますぅ、やっぱりイイですねっ。お父さんにも履かせようかと思いまして…』。最後の一足となっていた25cm草履をお買い上げくださいました。

私が『母の日近くにお父さんへプレゼントですかっ』と笑うと、『ウチに母はいない感じですよ、みんな男みたいですからっ』と大笑いでした。男のような女でも女のような男でもなんでもイイですよっ、家族みんなが互いの健康を考える優しい人たちなんですからねっ。

ところでこちらの菩提寺というのは、私の同期生が住職を勤めるお寺さんだったんです。お花見真っ盛りの先日、同期生と静岡県に嫁いでいる妹さんがお越しでした。妹さんとはずいぶん久しぶりにお会いしましたね。
『せっかくだからあたしも注文して行こっ!』とオーダーくださった妹さん、すでに草履は届いていますから、足元に郷里を感じて欲しいものです。

杖をお持ちの80歳ほどと思しきおじいちゃんが、なにやら笑顔で近づいて来ます。後ろから着いて来るのは、奥様と孫娘さんにお見受けしました。孫娘さんはおじいちゃんに、『ゆっくり見てて、そこらへんを散歩してくるからっ』と言い残し、おばあちゃんを連れて出かけてしまいました。

おじいちゃんは食い入るように実演を眺め、そこから長いおしゃべりに入ります。
私が『どちらからです?』とお訊ねすると、『宮城の大崎市だっ』。続けて『旅行ですか?』とお訊ねすると、『う~ん、そういうワゲでもねぇんだけんど、孫が面白いもの見せるどって連れて来てもらったものぉ』。

詳しく聞いてみると、先月24日桜満開のとき、孫娘さんがおともだちと桜見物に見えたそうです。そのとき西宮家で私の実演と出逢い、『ゼッタイじっちゃんに見せたいっ』と思ったんですね。
大崎市のご自宅へ戻るなりじっちゃんへこれを伝え、本日めでたく念願が叶ったというわけでした。

昼食をはさみ、一時間ほどもいらしたでしょうか。『あ~あ、なんぼ見ても俺サは無理だな~』と、じっちゃんはたいそう喜んでお帰りになりました。孫娘のじっちゃん孝行に草履職人が一役買えたのなら、私の昼飯が一時間遅れたくらいなんでもないですよっ。また必ず寄ってくださいね~。

福井県からお越しの母娘ペアさん、娘さんが草履を気に入ってくださいました。欲しいのは娘さんでもお金を払うのはお母さんのほう、実演席ではよくある光景なんです。
娘さんは、『お金を払ってくれるのがお母さんなんだから、色もお母さんが選んでよっ』。お母さんは実に“天然系”で、『あんたに似合う色はどれかねぇ、だいたいあんたの重さで大丈夫なのかい!?』。あまりに真面目に言うので、私も思わず吹き出してしまいました。

ゴールデンウィークが終わり人影が少なくなった角館、126万人は夢のように感じます。それでも今日の実演席には、いつもと変わらぬ笑いがありました。旅の想い出と実演日記は、決して「数」だけでは語られませんね。

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時の流れと人の心。

2009年05月07日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
緑基調のカラフルとかげプリントをベースに、合わせは紫基調のまだらプリントです。
色調はとても鮮やかでお洒落ですね。西宮家中庭には、暑さに誘われて「カナヘビ」がうろちょろしています。この「カナヘビ」、一部の人たちがこう呼ぶのですが、実態は「とかげ」と思います。爬虫類が苦手な私には、その違いがまったく分りません。平生地はこちらです。




昨晩のテレビニュースで知ったのですが、昨日の角館の最高気温は28.2℃だったそうです。これがなんと「全国一」、とんだところで名前を売っちゃいましたねぇ。
ゴールデンウィーク直前の全国観光地人出予想では、角館が第10位に位置していました。桜満開が大型連休に当たってた頃は第5位くらいでしたから、やはり桜への依存度がここでもはっきりしますね。

ゴールデンウィークが明けて、角館はすっかり元の静けさを取り戻しています。時間がゆっくり流れて行く様子がよく分かるんですよ。それでも散策のお客様はそれなりにお越しです。この間までと明らかに違うのは、お客様が実演席に費やす時間の長さですね。

茨城県日立市からお越しのご夫婦旅。こちらのご夫婦も一時間ほど西宮家に滞在されました。角館草履の話もしっかり聞いてくださり、それぞれお気に入りの配色をオーダーです。
着の身着のままといった感じのご夫婦は、『ほんとはね、海外へ行くつもりだったの。でもインフルエンザの話があって、急きょ新潟へ車で行くことにしたの。それからあたしが角館へ行ってみたいって連れて来てもらって、次は主人が銀山温泉へ行こうって言うのよぉ。ここから銀山温泉って遠いでしょ!?』。

確かに角館から山形の銀山温泉まで近いってことはないですけど、そもそも新潟から角館がかなりの距離なんですけどねぇ。ご自分の行きたいところと相手の行きたいところは距離感が違うようです。
おふたりお帰りの際は、丁寧なご挨拶をくださいました。時間がゆっくり流れる空間では、人がより人らしくなるのかも知れません。そう言われれば、今日米蔵に入って見えるお客様に、『おじゃましますぅ』の言葉が複数から聞かれましたね。

桜まつりやゴールデンウィークといった超繁忙期には、そうしたご挨拶をくださる方は少ないと思います。人ごみの中を掻き分けるように歩き、地元民とゆっくりおしゃべりすることは叶わないでしょう。私たちの言葉も舌足らずになりがちです。
もちろんそのことをどうこう言うんじゃありません。あの雑踏で人間らしい挨拶などとても出来ないんですから。

昨晩一本の電話がありました。『東京の○○ですぅ、お願いした草履が確かに届きました。大事に履きますぅ、ありがとうございましたっ』。
西宮家でお逢いしたのは5月1日、その日も朝から忙しい一日でした。おそらく満足なご挨拶など私も出来なかったでしょう。

次は静かな角館で、もう一度お逢いしたいものです。

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