角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

暑く、熱く…。

2009年06月29日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
先回と色違いの鷹プリントをベースに、合わせは緑基調の和柄プリントです。
落ち着いた色合いに涼しさも感じますね。老若無関係によろしいのではないでしょうか。

あらためるまでもなく今はまだ六月、しかも梅雨入りが言われてしばらく経ちました。それがどうしたことでしょ、角館の天気です。
昨日の最高気温が今夏最高の34.5度、今朝の新聞では全国第二位と書いてました。一位が京都府舞鶴市で、三位以下に秋田県の観測地点が複数です。京都の一位は分かるとして、どうして次に秋田県が並ぶんでしょうかね。

今春にも同じようなことがありましたが、もうすでにこの日本では「北国=寒い」とばかりは言えないようです。確かに冬の寒さは関東以南と比べられませんが、真冬以外の季節は大きな差がなくなっているように思えます。

10年ほど前まで当地でエアコンを設置している一般家庭は、そう多くありませんでした。暑い暑いと言ってもせいぜい二週間程度、熱帯夜で寝苦しい日などはあればある、なければないというのが当地の夏だったわけです。

わが家の居間に設置されているクーラーは25年ほど前の製造、しかも先日他界した叔母宅からもらった中古品でした。古い家電品の発火事故が云われるようになって、かれこれ三年ほど電源を入れたこともありません。

私も「おじさん」と呼ばれる年齢になって、いささかこの暑さを厳しく感じるようになってきました。知人の電気屋さんに来てもらい、当地のエアコン事情を聞いてみると、『今はそんなに売れねぇよ、もうかなりの家で入ってるもの』。
そうですか、わが家は少し辛抱しすぎましたかっ。

いよいよ明後日から公開実演再開です。これからは11月のシーズン終了まで、長いお休みはとらないつもりです。7月も下旬となれば夏の観光シーズン突入、イベントや歴史ある夏祭りが目白押しです。今年も暑い夏を熱く働くことになるでしょう。

実演席のある米蔵は、天井が高いせいで熱がこもるということはありません。とは言いながら冷房設備もありませんから、夏の暑さはどうしてもこたえます。
暑い夏を熱く働くために、せめて自宅一室くらいはエアコンが必要経費かもしれませんなぁ。
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一途な生き方。

2009年06月25日 | 家族の話


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
グレー基調の鷹プリントをベースに、合わせは黒基調の矢羽根プリントです。
実にシブい色調になりました。ご年配の男性はもちろんですが、案外お若い男性にもいけるんじゃないでしょうか。近年はお若い男性でも、普段着に作務衣という格好が多いですしね。
勇猛な鷹プリントはこちらになります。




梅雨の合間でしょうか、ここ数日の角館は真夏を想わせる高気温になっています。
その反面、武家屋敷通りの人影は思ったよりさらに少ない気がします。「嵐の前の静けさ」であってくれればイイのですが、天気だけこれから土砂降り続きというのは困りますけどね。

叔母の一連の仏事でブログ更新が遅くなっていました。一昨日初七日の法要を営み、少しずつですが元の生活に戻りつつあります。叔母は自身の病気がわかった後、『あんたは息子みたいなものだから、あとのことは頼むよ』という言葉を何度も言ってました。できる限りのことはしてあげたいと思っているんです。

この一年半叔母の闘病生活に立ち会って一番思うのは、「人それぞれの生き方」ですね。以前のブログでも触れましたが、叔母夫婦はとにかく「夫婦」というものに一途な生き方をしたと思うんです。生涯子宝に恵まれなかったことや、若い頃から病気がちだった叔父を想えば、自然とそういう生き方になったのは想像に難くありません。

考えてみると、誰にでも「一途」に向かえる何かがあるように思います。場合によってはこれから見つかる人もいるでしょう。まずフツーに考えて家族は大切です。連れ合いやわが子に対して、一途に思いやるのが一般的と思います。
でも世の中には、自身の家族よりも一途に向かう何かを持った人がいます。

東国原宮崎県知事、この人は完全に家族より「政治」に一途ですね。衆院選の出馬要請に対し提示した条件、並みの人間じゃないでしょ。
この条件を聞いた大物政治家のみなさんが、たいそうおかんむりのようです。そりゃあそうでしょ、何十年も国会議員を勤めた方々が、県知事三年生の下になるんですから。

まぁこの先どうなるのか、田舎で草履を編んでいる私なんぞには分かりません。それこそ草履作りに一途となって、終生この町に暮らすのが本分でしょう。
ただ想うのは、大きいことを言ってのけた東国原知事のほうに、そのまんまおかんむりを表して見せた国会議員よりは「一途」を感じましたね。

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実演再開のお知らせ。

2009年06月20日 | 家族の話
去る6月17日13時26分、一年半の闘病の末、叔母が息を引き取りました。昨日火葬並びに葬儀までが滞りなく済んでいます。
一連の仏事はしばらく続きますが、7月1日より公開実演並びに展示販売を再開することにいたしました。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

はじめて人の臨終に立会い、思うところがいくつもあります。大きな経験をさせてもらったことに、看護や仏事の疲れよりはるか大きな感謝の念がありますね。
自宅葬儀のため何度も住職の送迎をしました。その車中での住職の言葉、『叔母さんもまさが叔父さんより先に逝くとは思ってなかったべ。んだども人の人生なんてそんたもんだ、明日のことなんて誰も分がらねぇ。であれば、日々笑顔で過ごしたほうが得でねがっ』。

7月からは出来るだけ休まず実演を勤めます。元気で働くのがなによりの供養でしょう。

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県内初の感染者。

2009年06月12日 | 地域の話


今日の草履は、昨日に引き続き西東京市のおばさまからのオーダー草履、「ピンクと紺」の組み合わせです。普段の在庫作りでは、ちょっと思いつかない組み合わせかもしれません。ベースが可愛いピンクですから、合わせに紺無地ではつまらないと思いました。そこで脈絡を設ける意味もあり、どちらも「うさちゃん」プリントにしたわけです。ベースのうさちゃんもついこの間届いたばかりの新柄、平生地はこちらになります。




この春から大騒ぎになっている新型インフルエンザ。とうとうと言いますか、秋田県でも感染者が報告されました。しかも発生地はわれわれが暮らす仙北市、さらにお土産品店に勤務する40歳代の女性というのが第一報です。

修学旅行に見えた関東の女子中学生からの感染とのことで、これにはいささか驚きました。私も公開実演では修学旅行生との接点が多いですし、この業界で40歳代女性と聞けば思い当たる顔が何人もいます。
今朝の新聞で年齢が「45歳」とまで載ってましたから、これでずいぶんと該当者が減りました。結局、旧角館町でないらしいことまでは情報を得ています。

とは言いながら秋田県へ遊びに見えるお客様で、角館には立ち寄らないという方のほうが少ない現状を想えば、まだまだ安心はできませんね。市も早速広報活動に乗り出すようですから、ここは冷静な対応が肝要でしょう。

考えてみれば秋田県の初感染が当地だとして、なんの違和感もありませんね。関西や関東での感染者数を見ていて、秋田県は無関係なんてこと自体がありえませんよ。公開実演中のブログにご登場いただく半数以上は、他県からお越しのお客様なんですから。

知人の女性が最近、でん部に痒みを訴えて病院を訪ねました。医師の所見は「水虫」、感染ルートは温泉ということが判りました。早い治療でなんなく治したそうですが、「感染源」というのは日常に転がっているものなんですね。

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あぁ、矛盾。

2009年06月11日 | 製作日記


今日の草履は、東京都西東京市にお住まいのおばさまからの、FAXによるオーダー草履です。『一年中履き続けています。履き心地がとても良いです』のコメントは、どなたからでも何度でも聞きたいご感想ですね。
配色のご希望に「紫っぽい色」と「ピンクと紺」という、2足のご用命でした。「今日の草履」はそのひとつ、「紫系おまかせ」です。気に入っていただければ嬉しいですね。平生地はこちらになります。



明日の「今日の草履」では、ふたつめの「ピンクと紺」をご紹介しましょ。新しい生地が入荷したばかりですから、今ならいろんな配色が編めそうです。

公開実演をお休みしている今、ネットにしても電話にしてもFAXにしても、通信販売をご利用のお客様にご不便はないと思います。むしろこういうときは新たに編むにしてもお届けが早いです。
それがどうしてもご不便となるのが、比較的近場の「見て買いたい」とおっしゃるお客様なんですね。

先日お電話でお問い合わせいただいたのは、『草履が欲しいんですけど、西宮家に行けばイイんですよね?』。現在展示販売は休止していることをご説明し、お急ぎであればお送りする旨お伝えしました。お客様は来月再開したらお出でくださるとのこと、ありがたいやら申し訳ないやら電話を終えました。

一昨日のこと、西宮家米蔵スタッフさんからケータイへ電話です。『草履のお買換えにお客様がお越しなんですけど、今どこにいます?』。これまでも実演休止中にこのようなことが何度もありましたから、米蔵にお客様が見えたときの「マニュアル」らしきものが、自然と出来上がっているんですね。

そのときは自宅で在庫作りをしていましたので、ご希望サイズをうかがい数点の草履を米蔵までお持ちしました。お客様は逆に恐縮されて、ご夫婦それぞれがお買換えくださいました。
お待ちいただいた申し訳なさから、『いつでも発送しますから、ご連絡くださいね』とついつい言ってしまいました。

いつもは口癖のように『また遊びに来たら寄ってくださいね~』と言っている草履職人、お休み中は発送をお勧めするとはいかにも「矛盾」じゃあないですかっ。

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田舎暮らし。

2009年06月09日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
緑基調の家紋プリントをベースに、合わせは緑の唐草です。
東京の仕入部長からまた新たな生地をお届けいただきました。「今日の草履」は最新生地第一弾になります。平生地はこちらです。




配色をお選びになる際、とにかく緑に固執される方のお話をこれまで何度か書きました。今年これまでのネット通販でも、定番配色④が目立って多いんです。もしかすると都会に暮らす方々にとって、「緑」というのは安らぎにも似た印象があるんでしょうか。

しばらくぶりのブログ更新となってしまいました。先回のブログでも少し触れた通り、今のわが家は少し違ったタイムスケジュールで暮らしています。入院中の叔母に午前6時から午後9時まで付き添っているのですが、三人体制のうち私が午前6時~8時、そして午後6時~9時を受け持っています。

毎日5時間ほどを病室で過ごす中、叔母が眠っている時間はなにもすることがありません。まさか病室で草履を編むわけにもいかず、ふと思いついたのが「本」でした。ジャンルを問わず手当たり次第みたいなものですが、主にカミさんが購入します。その多くはカミさん自身が読みたいのは当然なんですが、併せて私に「読ませたい本」が含まれます。

そんな中のひとつに、テレビ番組DASH村で農業指導をしている、三瓶明雄さんの本がありました。三瓶さんが発行しているのではなく、三瓶さんの田舎暮らしや農業に寄せる想いを著者がインタビューする形で綴られています。
その中に面白いアンケート調査結果がありました。

首都圏で暮らす方々へ『あなたは田舎暮らしに興味がありますか?』の問いに、52%の人が『あります』と答えています。さらにその方々へ『田舎暮らしをする自信はありますか?』の問いに、71%が『ありません』と答えていました。私が驚いたのは71%以外のほう、『自信があります』と思っている人が29%もいた点なんですね。

『やれるもんならやってみればイイねがっ』なんてことを私は言いません。むしろ積極的に試して欲しいと思いますね。三瓶さんの本に書かれてある通り、その土地が「好き」なら必ず暮らせると思いますよ。

叔母と共に角館へ越してきた叔父も、『角館で良かったよ』と言ってくれます。東京荒川で生まれ、田舎暮らしなどまったく経験のなかった叔父。まして叔母が先に逝けば、その後は基本的にひとり暮らしとなります。
叔父のこの言葉は、今の私にとって大きな救いです。

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最期の晩餐。

2009年06月01日 | 家族の話


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調のハワイアンプリントをベースに、合わせは黄色です。
カッと照らす夏を想わせる配色、お若い女性にお似合いかもしれませんね。ときに角館草履を眺めながら、『ビーチで履いたら素敵じゃない!?』とおっしゃるお客様がいらっしゃいますが、まさにそんな配色じゃないですかね。
でも残念、角館草履を砂浜で履いたら、編み目に砂がはさまってタイヘンですよ。

トップページの冒頭コメントにも書いている通り、今の時季は暑さと寒さが交互にやって来る感じです。暑いとなれば28℃にもなり、寒いとなれば10℃台の日があります。今日の角館は寒い日、最高気温が15℃でした。インスタントでもなんでもラーメンが好きな私の昼食も、「熱い」と「冷たい」が交互です。

曜日も時間も分りませんが、「人生最期の日に食べたい料理」というコーナーをテレビでやってました。芸能人の方々が行きつけの絶品メニューを紹介するわけですが、なるほどどれも美味しそうな料理でしたね。
『最期の食事ってナニが食いてぇべなぁ…』ってなことをカミさんとも話したのですが、実際なかなか出てきませんね。もしかしたらチャルメラだの目玉焼きだのが私に合っている気もします。

不治の病と闘っている私の叔母は、進んで料理こそ作りませんでしたが、旨いものを食べるのは大好きでした。しかもわが家の家族と食べることを、とても嬉しく思っていました。子宝に恵まれず生涯を夫とふたりで過ごしたことで、大勢の食事に想いがあるのでしょう。

その叔母は、もう一週間以上も食事を摂っていません。食べる気力はあるのですが、体が食べ物を受け付けずすぐに吐いてしまいます。転移したガンはすでに体中ですから、そんな影響なんでしょう。
食べることが大好きな叔母は、食べ物の幻覚がとても多くなっています。うわごとのように『お腹がすいたよぉ…』を繰り返す叔母、戦中戦後の日本じゃあるまいに、食べ物でよければ24時間買えますよ。

主治医に相談すると、『出来る限り制約は取り除いてあげたい』とのことでした。吐き気が出れば食欲が落ちるから、少し食べさせるのは構わないとの判断です。あとは私たちが量と食べる速さを調整し、吐き気が出たときに苦しむ叔母を見ていられるかなんですね。

食事をストップしていた一昨日、枕元にいる私に叔母が言うのは、『いつになったら死ねるんだい?』。これまで夢うつつの世界でいろんなことを問いかけられましたが、この言葉ははじめてでした。
『なんぼ死にたいって思ったって、お迎えが来ねぇば死ねねべぇ』と答えると、『どうしてお迎えが来ないんだよぉ…』。

この言葉を聞いてから、私の考えは明らかに変わりました。『食べたい…』と言ったら食べさせることにしたんです。命のろうそくが残り僅かになったここにきて、吐き気がいったいなにほどのものでしょうか。叔母にとっては一食一食が「最期の晩餐」になるんですね。

昨晩また食べ物の幻覚を喋りだしたところで、『わがった、今旨いものを作ってやるがらなっ』と言いました。あいにくカミさんは所用で不在、自宅へ戻り台所を見回した私は、お茶漬けを茶碗に三分の一ほど作りました。すぐさま病院へ戻り食べさせると、目をつぶったままゆっくりゆっくり食べきりましたよ。

この先まだ何度かは食べられるでしょうが、本当の「最期の晩餐」のメニューはどんなものになるんでしょうね。有名店の絶品メニューでないことだけは明らかです。

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