角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

みなさま良いお年を!

2008年12月31日 | 実演日記


2008年最後を飾る「今日の草履」は、限定一品作「上級久留米絣づくし」23cm土踏まず付き〔壱万円〕
一反数万円の久留米絣をベースに、合わせも同級の久留米絣です。先月西宮家米蔵で「かすり展」が開かれました。そのときに展示された上級久留米絣にすっかり惚れ込み、一足分だけ材料を購入しました。これを今年最後の「今日の草履」にしたかったんです。いやはや緊張しましたぁ、なんといっても材料だけで数千円の草履ですからねぇ。
でも出来上がってみるとやはり素晴らしいです。やっぱり編んで良かったと思っています。

2008年も本日をもって最終となりました。いろんなことがあった一年、いろんなことがあり過ぎたせいかまた今年も一気に終わった感じです。当たり前の話ですが、人生は楽しいことばかりでありません。人生がそうであれば自ずと一年もそうなるわけで、振り返るとやっぱりそんな気がしますね。

長女と次女の高校合格は嬉しい出来事の筆頭でしょうか。でもその後は試験に追われる厳しい現実が待っていました。最近の北陸の旅は、叔母の急逝という悲しい出来事と裏腹に、北陸との新たな親戚付き合いが生まれました。「嬉しい」「悲しい」「楽しい」「辛い」、人に起こる現実はこんなことが絡み合っていることをあらためて感じますね。

一昨日のブログでお伝えした福引抽選会、この一コマにも「人間」が見え隠れします。今日までの三日間で一等五万円が三本出ました。もちろん当選者は私じゃありません。目前にいて一部始終を見ていましたが、当選した三人に共通するのは「無欲の勝利」ですね。

面白いのは福引後の言動、これには人間性がよく出ますね。残念賞は五十円の商品券なんですが、これを当てても素直に喜ぶ人がいると思えば、二等の五千円商品券を当てても『なんだぁ、五万円じゃねーのがよっ』と言う人もいます。ほんとは嬉しい照れ隠しなのかも知れませんが、なんで素直に喜びませんかね。私なら五千円を当てたらバンザイしますけどね。

いずれにしても欲の強い人には当たらない気がします。そして「幸運」は謙虚に喜びましょう。フランスの諺にこんなのがあるそうです。
『幸運には、与えられた幸運に謙虚に感謝出来ない人からは去って行くという性質がある』

2009年の初日である明日から実演がはじまります。職を失う人たちの話題が多いさなか、私の「幸運」は元旦から仕事が出来るということかも知れません。この幸運に謙虚に感謝し、2008年を見送り2009年を迎えるとしましょうか。

今年一年西宮家にて実演をご覧くださったみなさま、お買い上げご愛用のみなさま、そしてブログをお読みくださっているみなさま、誠にありがとうございました。来る2009年も宜しくお願い申し上げます。どうぞ良いお年をお迎えくださいませっ!

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2008年最後の草履職人。

2008年12月29日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
赤茶基調のドクロプリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。ベースプリントの毒々しさとは裏腹に、なんともお洒落な配色と思います。老若どちらでもいけそうな草履ですね。

とうとうやって来ました、大寒波です。つい先日までは積雪ゼロ、周囲と『これで年を越せたらイイんしなっ』なんて話していた矢先でした。
三日間ほど冷蔵庫以下を過ごし、今日になってだいぶ落ち着いています。これから数日は最高気温がプラスのようですから、これまで降った雪がさらに重くなるでしょう。

おそらく今年最後じゃないでしょうか、104人目の草履職人誕生です。30歳代と思しきご夫婦に幼稚園くらいの女の子、お父さんと女の子がまっすぐ実演席へとお越しです。女の子に実演を見せたくてかな…と思いきや、私に用事があったのはお父さんのほうでした。
『秋に男鹿和雄展ではじめて草履を見たんです。それからもう頭から離れなくて…』。

仙北郡美郷町にお住まいのこちらの男性は、草履台にイ草と布地材料、それに編み方ビデオをお買い上げです。車で30分強の距離ですから、出来るだけ見学に来てくださると嬉しいですね。104人の中でも希少な「男性職人」、是が非でも角館草履をモノにして欲しいと思っています。

さて、角館町商店会年末恒例の福引抽選会がはじまりました。抽選所となっているのは西宮家米蔵イベントホール、そう、私の目の前で景気の良い鐘の音が鳴り響いています。
一等賞金は現金五万円、五日間の抽選期間で五本が用意されているそうです。今月に入ってメガネなどの買い物をしましたから、私の手元には8回分の抽選券があります。

一等一本をモノにするべく、今日も抽選の様子を睨みながらの実演となりそうです。

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押し詰まりました。

2008年12月24日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の流紋プリントをベースに、合わせはエンジです。なんとも鮮やかな配色なんですが、こうした草履をお好みになる方というのは案外中高年に多いです。平生地はこちらになります。



「今日の草履」は秋田市からお越しの、五十代前半と思しき女性がお持ち帰りくださいました。配色選びに迷ってらしたので、私のほうからお勧めしたんです。『今出来たばかりの草履なんですけど、迷ったときは明るい色がイイですよっ』と言うと、『あらっ、派手ねぇ』とおっしゃりながらもお顔は笑顔なんですね。
赤やピンクはエネルギーの象徴ですから、足元から元気を吸収するなんていうのはむしろ冬にイイんじゃないですかね。

さて2008年もいよいよ押し詰まって来ました。今日を除けば残り一週間ですかっ。
西宮家常連さんたちも今年最後のご来店なんでしょう、『良いお年をっ』とか『来年もよろしくねっ』なんていう言葉が交わされ始めています。年末特有の挨拶ですね。

天候なんですが、寒い日はもちろんあるとしても一般に高温です。雪も舞う程度で積雪はゼロ、新聞ではスキー場の雪不足を嘆く記事が出始めました。私たちのようにフツーに里で暮らす人間にとって、雪が少ないのは大助かりです。しかしそれも人や立場によって異なりますから、声高にこれを喜ぶとヒンシュクを買う場合がありそうです。

明日とあさっての二日間お休みを頂戴しました。明日はわが家恒例の「餅つき」、あさってはそれらの発送作業と年末の用足しに歩きます。気忙しいと言えばその通りですが、こうした雰囲気も年末特有と言えますね。商売はもちろんプライベートも、やっぱり忙しいくらいでちょうどイイのかも知れません。

赤やピンクを身にまとい、一年最後の一週間を元気に締めくくりましょー!

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昭和の象徴。

2008年12月23日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調の桜花プリントをベースに、合わせは淡いピンクです。角館草履の代名詞的配色は「紺にエンジ」と自負していますが、こうした「桜」を含む配色も代表的と言ってイイでしょう。日本の花と言えばどうしたって桜、角館草履は紛れもなく日本の草履です。平生地はこちらになります。



かねてからこのブログでもお伝えしているように、角館を訪れる多くの方々は「古き良き日本」を求めてお出でです。その古き良き時代というのは一体どの年代を指すのか、それはそれぞれに異なるでしょうし、「正解」を求める必要もないと思います。
あえて私の考える古き良き時代というのは、純真無垢に過ごした少年時代じゃないかとも思うわけです。

ずーっと前から考えていてなかなか実行できずにいたのですが、昨日「メガネ」を替えました。人様の前で草履を編む人間が最も相応しいメガネ、私はそれを「黒縁のまんまるメガネ」と密かにイメージしていたんです。実際そのメガネをかけてみて、「まんまる」が「まんまと」ハマった気がしています。
これが私の考える古き良き時代、少年期を過ごした「昭和の象徴」なんですね。

娘たちには大ウケでした。いつも突然ナニかをしでかすオヤジ、今回もそんな感じに受け入れたようです。三女は大笑いでしばし眺めると、『その顔で街サ出るんだが?』。私は平然と、『あったりまえだべっ、おめぇの授業参観もこれで行ぐがらなっ』と言うと、『頼むぅ、それだけはやめでけれぇ』。

長女と次女にはあだ名を付けられました。それは「ぼんた」、東京ぼんたの「ぼんた」なんですね。高1の娘がリアルタイムの東京ぼんたを知るはずがないのですが、なぜかその名前を知っていたんです。私の新しい「顔」を見てその名前が出てきたということは、まんまと私の思惑が当たった証拠ですね。娘たちは「昭和」という時代を私のメガネに見たんでしょう。

昨晩は今年最後の忘年会でした。同期生で作る昭和37年会の酒飲みは、薬にもならない代わりに毒もありません。表も裏もなく利害関係もない、ただただバカを言って飲み合える仲間たち、ここにも確かに「昭和」がありました。

「黒縁まんまるメガネの職人さん」、2009年の草履職人は見た目もちょっとだけこだわります。

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商いの基本。

2008年12月19日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
黒基調の花柄プリントをベースに、合わせは茶色基調の花柄プリントです。
プリント柄は賑やかですが、色調のせいか落ち着いて見えますね。お洒落な配色と思います。

私の草履をご覧の多くは、その配色と共に「土踏まず」に着目してくださいます。試し履きをお勧めする際も、『土踏まずの盛り上がりに集中してみてくださいね』と言うと、『ははぁ、なるほどっ』という反応が多いです。
続けてのご質問で多いのが、『これはあなたのアイデアですか?』なんですね。『はいっ、そうですっ』と言いたいところですが、やはり嘘はいけませんから正直にお答えします。『これは愛好者の声からなんですよっ』。

イ草に布を巻きながら草履を編んでいくという角館草履の基本、これは確かに私の考案です。でもそれだけでは今日の角館草履はありませんでした。「1センチ刻みにサイズを作る」「土踏まずを盛り上げる」「携行用に専用袋を作る」、これらはすべてお客様の声から生まれたものなんです。

10月中旬、そろそろ寒くなって来たので冬用作務衣の購入を考えていました。昨年まで着ていた作務衣はホームセンターで見つけたもので、これがいつも買えるという保障がありません。訪ねてみると、やはり今年の入荷は分らないとの事でした。となると、次の頼りはネットです。早速探してみて一軒のお店を見つけました。

最近作務衣が結構流行りなんですが、多くは「くつろぎ系」のため上着の袖やズボンの裾がオープンになっています。私の場合は文字通り作業用ですから、特に上着の袖はゴムで絞ってなくては邪魔になるんですね。ネットで見つけたお店もやはりそれらがオープンでした。

とは言いながら買わないわけにはいきませんから、まず試しに二着注文しました。その注文メールに、『草履を編むのに邪魔なので、上着の袖がゴム式の作務衣はありませんでしょうか?』とコメントしてみました。翌日すぐに返信があって、『婦人用にはあるのですが、紳士用にはございません』という内容。またまたそのメールに返信したのは、『いつかは欲しいものですね』だったんです。
届いた作務衣にはカミさんにゴムを通してもらい、日々愛用しています。

あれから二ヶ月が過ぎ、再注文しようと今朝そのお店のホームページを開いてみました。そしたらなんと、『上着袖・ズボン裾共にゴム式』としっかりコメントされた新商品が載っているではありませんかっ。
早速注文した「ゴム式作務衣」は、近日わが家へ届きます。

「土踏まず付き草履」も「ゴム式作務衣」も、少なくともひとりはちゃんと理由があって『欲しい』と言ったものです。それらがもし特段の課題なく形に出来るとしたら、やはりそれはするべきなんでしょうね。
「人様が欲しいモノを創る」、商売の基本、ものづくりの基本はここにあると思うわけです。

「ゴム式作務衣」を発売してくださったお店は、こちらです。

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松下幸之助遺訓。

2008年12月16日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
桜うさぎピンクをベースに合わせはは黄色、真ん中にオレンジを配してみました。これからしばらくは寒い日が続きますから、逆にこうした華やかな配色が恋しくなります。もっともこれからは春に向けた在庫作りが主ですから、いろんな配色を心掛けなければいけませんね。

大仙市からお越しのおばさま、草履を見つけるなり立ち止まり、『これはなんだ!?』といった具合にしばし見つめてお出ででした。やがて実演に目が移ると、『はぁ~、ほかで見る草履と違うんですねっ!?』。詳しいご説明のあと、ご自分用をお買い上げくださいました。

おばさまのご子息が最近結婚され、お嫁さんは角館の女性なんだそうです。『角館に身内が出来たと思うと、なんか遊びに来る回数も増えてねぇ。今日もお歳暮のご挨拶に来たところなのっ』。
車で30分程度の距離と言っても、そこに縁があるとないとでは「心の距離」が違うものです。これは先般の富山の旅でもしっかり分りました。
おばさまとのおしゃべりはお買い上げのあとも続きます。最後に言ってくださった言葉が印象的でした、『イイ仕事に就きましたねっ』。

富山で私に用意してくださった宿は、日本海に面した歴史ある旅館でした。女将さんに案内された部屋に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、松下幸之助の遺訓だったんです。

自分には
自分に与えられた道がある
広い時もある
せまい時もある
のぼりもあれば くだりもある
思案にあまる時もあろう
しかし 心を定め
希望を持って歩むならば
必ず道はひらけてくる
深い喜びも
そこから生まれてくる

こちらの旅館の廊下には、名だたる政治家や著名人の色紙が飾られてありました。そんな人たちも読んだであろう「遺訓」、肩書きも背負った重さも違えど、草履職人もまたしかと心に刻みました。

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観光地の商売。

2008年12月15日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の流紋プリントをベースに、合わせは紅白のボールプリントです。私の草履にしては珍しい、鮮やかなピンク色ですね。合わせにボールの縫い目が見えますが、別に傷だらけの草履じゃありません。

昨日は季節を勘違いしてしまうほど晴天に恵まれた角館でした。『雪が見たかったんですけどねぇ』とおっしゃる観光客の方々には、ちょっと残念な一日でしょうか。
今日は一転冬空の一日です。雪が舞う最高気温が2~3℃となると、北国に暮らす私たちでも寒さを感じないわけにはいきません。もっとも、これがフツーの12月なんですけどね。本格的な冬の到来と共に、散策のお客様も激減しています。

人物は後述しますが、私を富山に招いてくださったご夫婦のお誘いで白川郷へ連れて行っていただきました。私も一度は見てみたい場所だったんです。
合掌造り集落で有名な白川郷は世界遺産にも登録されていますから、まず名前くらいは多くの日本人が知っていると思います。富山市からは高速道路でわけもなく行っちゃうんですね。

白川郷は写真等で知っていましたが、いざ目の当たりにすると『さすがっ』という気がしました。これだけの集落を維持保存するとなると、そのエネルギーは相当のものでしょう。
世界遺産と角館を比較するのも申し訳ないのですが、よく似ているのは「昔」がそのまま観光資源という点ですね。皮肉ったモノの言い方をすれば、「近代化が遅れた」ことで現在があるわけです。白川郷も「陸の孤島」と言われただけあって、それは奥深い山間地ですよ。

このブログでも触れたことがありますが、近年角館を「武家屋敷商店街」と揶揄する声があります。確かに少し増やし過ぎましたね、「江戸時代の面影を今に遺す…」という触書が台無しという批判は、甘んじて受け入れる必要を感じています。

今回白川郷を見て、多少の身びいきを勘案したとしても、こちらも多過ぎますね。観光地として整備された地帯はまるで「商店街」、角館の武家屋敷通り以上です。
それとお土産店に並んだ商品を見渡すと、輸入品の多さに閉口してしまいました。よそ様のお店をどうこうじゃありませんが、日本にある世界遺産を旅して中国製が欲しいでしょうか。

私が白川郷を訪れて一番羨ましかったのは、冬の集客です。紅葉が終わり今が一番ヒマな時期で、これから降雪と共にまた人で溢れるんだそうです。合掌造りの屋根に積もった雪に窓から漏れる明かり、これがなんとも言えない風情なんですね。
角館の場合、紅葉が終わればあとは来春まで静かなもんです。いっとき小正月行事がありますが、人で溢れるほどの集客力はありません。
なんだかんだ言っても、やはり角館よりは数段上の白川郷でありました。

さて、私を富山へ招いてくださったご夫妻というのは、奥様が亡き叔母と姉妹のように育った方です。実際は従兄弟に当たるのですが、子ども時代からの暮らしようは家族以外のなにものでもなかったようです。
四日間の滞在中こちらのご夫婦、いやご子息も含めたご家族には、終生忘れえぬ歓待を受けました。亡き叔母は子どもを亡くしてから一人暮らしで、もう叔母の遺族との親戚付き合いは現実として出来ません。
でもこの旅を作ってくださったご家族とは、これから永いお付き合いが出来ると確信しています。そう、これまで疎遠だった富山の親戚としてですね。

「旅は人との出逢い」、草履職人は自らの旅で心を新たにした次第です。

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三代目の履物職人。

2008年12月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
藍色基調の和柄プリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。どちらも「和」が活きた粋な配色と思います。紺の麻の葉、どうやらまたハマりそうですねぇ。

一週間ぶりに実演再開です。一定期間お休みして再開したときに、『あぁ~、居場所だよなぁ』といつも思います。西宮家スタッフのみなさんからも、『帰ってきたねぇ』と声を掛けられました。イベントホールの草履コーナーは、すでに「自然」となっているのかも知れません。

千葉県からお越しのご夫婦、興味津々実演をご覧になり、私の説明にも真剣に耳を傾けてくださいました。『娘が冷え性なんで、ひとついただいて行きますぅ』とお母さん。ご自身よりまず子ども、いつの時代も変わらない、いや変わってはならないひとつと思います。
お帰り際のお母さんの一言が嬉しかったです、『イイお話をありがとうございましたっ!』。これは鼻緒の履物が持つ健康効果、もちろん心身共の話題に対してでした。

私が18歳のときに亡くなった実父は、私がまだ小さかったころ皮靴を作る職人でした。樺細工職人の道を志したのは私が保育園のころ、オヤジの年齢は40歳くらいでしょうか。私が角館草履の第一号作品を完成させたのも40歳、こういうことにもなんらかの縁を感じますね。

オヤジの母親つまり私の祖母は、祖父と離婚後富山へ渡りました。なぜ富山だったのか…、それは今も分りません。祖母はオヤジが他界する僅か前に亡くなっていて、私は終生顔を合わせる機会に恵まれませんでした。

実はこのたび北陸を訪ねたのは、祖母が富山で一緒に暮らしていた娘、つまり私の叔母がこの夏急逝し、角館に暮らすもうひとりの叔母は闘病生活の身のため、私が代表で墓参するのが目的のひとつでした。
命日は8月6日、角館の叔母は入院中でしたし、私は実演に多忙の毎日で葬儀への参列が叶わなかったわけです。

富山へ渡った祖母は新たな家庭を築きます。そこが「下駄屋さん」だったことは聞いていましたが、その商いの創業者が祖母であったことを、今回の旅ではじめて知りました。私はてっきり履物屋さんに嫁ぎ新たな生活をはじめたとばかり思っていましたから、この事実はちょっと驚きだったんです。

そして旅から戻り角館の叔母にこの話をすると、叔母は思い出すように昔の両親の姿を語ってくれました。
『じいさんが何年か下駄を作っていたんだよ。ばあさんは鼻緒を立てたりするのを手伝わされていたから、その仕事が自分に合ってると思ったんだよなぁ、きっと…』。

富山へ渡った祖母が角館時代、夫婦で下駄を作る仕事をしていたのをはじめて知りました。なんで今まで聞いたことがなかったのか不思議なんですが、私の祖父はとにかく飽き性で、同じ仕事を何年も続けたことがなかったようです。おそらく離婚原因もそんなところにあったのでしょうが、いずれ祖母は富山で「下駄屋さん」をはじめたんですね。そして技術を教えた夫、つまり私の祖父よりもずっと長くその仕事を続けました。

祖母が亡くなりその店を継いだのが、今夏急逝した叔母です。しかし時代と共に下駄の必要性が失われ、やがて店をたたんだのが12年前と知りました。私が勤務先を辞め独立したのも12年前、どうやら私が履物の道へ進むのは決まっていたみたいです。

祖父母、父、そして私までの三代が、それぞれの人生のどこかで「履物」を生業としています。私が当面の目標とするのは、40年間に渡り下駄屋を営んだ富山の祖母の記録を抜くことでしょうかね。あらら、達成したときの私の年齢は80歳ですかっ。

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指導の収穫。

2008年12月13日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
今年最後の日暮里仕入れ第一弾は、朱色基調の和柄プリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。前回のエンジ麻の葉プリントをたいへん気に入った話をしましたところ、東京の仕入れ部長が紺の麻の葉を見つけてくださいました。早速の第一作がこちらになります。

さて、もう八日ぶりになりますかっ、本日からブログ再開です。5日のブログに書きました通り、7日(日)東京の仕入れ部長が私の隣に座って“編み方授業”を受けました。私としてもこうした機会はほとんどなく来ましたし、授業を受ける側も他のお客様が見ている場所ですから、最初はどうも落ち着きがなかったような気がします。それでもこれまでたくさんの草履を編んだ実績をお持ちですから、次第に調子を上げて来ましたね。

取り組んだのは「土踏まず付き」、その日が初挑戦でした。土踏まずが付いた草履の編み方ポイントで重要なのは、盛り上がりに邪魔されずいかに側を揃えて行くかです。これを編む前にしっかり伝えていたせいか、結果として初めてとは思えない綺麗な形に仕上がりましたね。

あとは時間でしょう。おおむね三時間を費やして出来上がったのは片足のみ、それほど土踏まずが付いた草履というのは神経を使います。あとの片足分材料をお持ちになりましたから、やがて一足の草履が誕生するでしょうね。急ぐ必要はなにもありませんから、一段一段確実に編み進めるのがイイと思います。

今回のようにほかの人が草履を編むのを傍で私が見るのも、これまでほとんど経験がありません。そういう意味では私も新鮮でしたし、「教える技術」というものを学んだ気がします。
特に固く詰めて行く作業は、たとえば電話や言葉だけではほとんど伝わっていないことを知りました。ときに席を代わり私が詰めて見せるだけでも、生徒さんには大きな収穫になるんですね。東京の仕入れ部長が思わず発した言葉、『うわっ、目からウロコだぁ…』。

教える側と教えられる側、どちらにも収穫があり、そして「目からウロコ」のひとときでした。これからの冬場にどれだけの体験希望者がお出でになるか分かりませんが、出来る限りの応援をしたいと思っています。

さて、これも5日のブログで少し触れたのですが、昨晩北陸から戻りました。これまでほとんど顔を合わせることのなかった叔母が急逝し、その墓参が目的のひとつです。しかし滞在した四日間は単なる墓参にとどまらず、私の「自分史」に残る意味の大きな旅となりました。

明日からまた実演再開です。北陸を訪ねた四日間が、またひとつこれからの「角館の草履職人」を作っていく気がしてなりません。

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師走です。

2008年12月05日 | 実演日記


今日の草履は、樺草履26cm土踏まず付き〔六阡五百円〕
チタン媒染をベースに、合わせは銅媒染です。桜染め・樺染めの中でも比較的明るく仕上がる媒染をふたつ組み合わせてみました。高級感がありながら、お若い男性にもお似合いと思います。

師走に入り、角館を訪れるお客様も少なくなりました。私の草履もこのところ順調に展示品が増え、『あららぁ、種類増えだどごでねぇがっ』という地元のお母さんの声も聞かれます。実際は種類が増えたというより、草履そのものが増えたんですけどね。
今日東京の仕入れ部長から、また新たな布地が到着しています。この冬も出来る限り休むことなく編み続ける覚悟です。

その東京の仕入れ部長が、明日の晩角館入りします。あさっての日曜日に私の隣に座って草履を編むことになっているのですが、すでに200~300足ほど編んでいる方なので「初心者」とは言えませんね。これまでほとんどどなたにも実技指導する機会はありませんでしたから、私としてもとても楽しみなんです。

トップページの実演スケジュールを更新しました。ちょっと急なんですが、8日(月)から13日(土)までお休みをいただくことになりました。草履とまったく無関係のプライベートな用事で、数日間北陸の街を訪ねます。用事が早く済めばその分実演再開日も早めますが、なにしろ「クリスマス草履」を編んでいる時季ですからそれがちょっと残念ですね。

東京の仕入れ部長に“師匠”と呼んでいただく草履職人、やはり“師”が“走る”12月はなんだか気ぜわしいです。
そんな気持ちを少し和やかにしてくれる、米蔵玄関のクリスマスイルミネーション。街中に彩られはじめたイルミネーションの中で、私はかなり高得点をあげたい出来映えですね。画像は掲示板へ

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