角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

期待されたら…。

2009年08月31日 | 実演日記


今日の草履は、名古屋市名東区からお越しくださったおばさまのオーダー草履です。
『汚れが見えない可愛い草履にしてっ!』がこちらになりました。ご期待に応えられたら嬉しいですね。明日の便で出発しますっ。

「今日の草履」をご注文はおばさま三人旅、とっても仲の良いのが分かるおともだち同士でしたね。
その日の晩は田沢湖高原鶴の湯温泉にお泊まりとのこと。きっと温泉もご期待を裏切らなかったと思います。

昨日ホームページからのご注文は、東京都文京区にお住まいの女性。「草履職人へのメッセージ欄」に記されていたのは、『昨秋実演を拝見し、一度履かせて頂こうと思ってました。夫婦で楽しみに待っております』。
お返しした私のメッセージは、『ほぼ一年、よくぞ角館草履を思い出してくださいましたっ(笑)。ご期待を裏切らないよう、きっちり編んでお届けしますね』。

人というのは、期待されるとそれに応えたいと思うのが自然でしょう。今日のブログでなにが言いたいのか、それは昨日投開票の衆院選です。
きっと期待に応えてくれるでしょう、政治家もみんな人なんですからねっ。

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表と裏。

2009年08月28日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紺基調の松葉プリントをベースに、合わせはエンジです。
東京の仕入部長から、今月初旬に夏の新柄が届いておりました。すでにご紹介が始まっていたのですが、「今日の草履」もそのひとつです。
この布を見た瞬間から、エンジと合わせるのを決めていました。悩む必要のない「秋田おばこ調」、平生地はこちらになります。




ここのところ毎日マスコミを賑わせているのが、「衆院選挙」と「のりピー」です。のりピーは実際私も驚きましたね、いかにもイメージとかけ離れています。「人は天使と悪魔の両面を持つ」ということは理解できます。しかしそれも、想定の範疇を超えると『げっ!?』ってなことになるんですね。

のりピーの裏表は私に直接の影響はないのですが、衆院選挙はまるで影響がありますね。マニフェストなるものをざっと目で追って見ると、なるほど耳に心地の良い言葉が羅列されています。
中で「無料化」あるいは「無償化」の文言に目をやると、ほぼ自分に無関係のものも多いです。幼児関係はすでに“卒業”してますし、高速道路もまず利用することはありません。

『オレに恩恵のない施策なんか要らない』と言ってしまえば、社会人として通用しません。しかもその恩恵というのは、巡り巡ってわが身に帰ることさえあります。とは言いながら、「受益者負担」という観点はなくして欲しくないとは思うんです。

たとえば高速道路。少なくとも車を所有できる程度の生活水準にはあるわけで、しかも長距離を出かけるとなれば、財布にもある程度の余裕があるでしょう。そうした方々に対して通行料をタダにする必要があるのか、ちょっと疑問なわけです。
日にち限定のETC1000円よりは、いつでも誰でも3000円のほうが理に叶っているんじゃないですかね。

いずれ国民の誰かが喜ぶ制度を取り入れれば、その財源根拠が付いてまわります。こちらの裏表は無関心でいられませんね。投票日は明後日、西宮家出勤前に済ませたいと思っています。

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神仏と学業。

2009年08月27日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紫基調の魚へんプリントをベースに、合わせは青紫の洋柄プリントです。
魚へんの漢字ばかりを羅列した面白いベース生地なんですが、色具合が落ち着いていて実にお洒落と思います。やはり中高年のおばさま向きでしょうか。

急きょお休みを二日増やして、明後日から実演を再開させることにしました。細かな用事がいくつも溜まっていたのと、オーダー草履の製作が主な理由です。
おかげさまで今年も在庫がほぼ尽きました。これからは日々のオーダーを編みながら、一足でも展示品を増やす努力が続きます。

夕方テレビをつけながら草履を編んでいると、全国学力テストの結果が報じられていました。秋田県は三年連続トップ級のようで、もうこれはまぐれじゃないですね。以前にも少し触れましたが、秋田県は高校になるといきなり順位が落ちます。これは課題としながらも、ひとまず小中学生の好成績は喜ぶべきじゃないでしょうか。

これも以前のブログで触れましたが、秋田県の小中学生が好成績な要因のひとつに、祖父母との同居や規則正しい生活が挙げられています。忙しい父母にかわって、祖父母がなにかと孫の面倒をみるんでしょう。人は心が落ち着いていれば、事に集中できる証しじゃないですかね。

ひとつ思い出したことがありました。今春他界したじっちゃとばっちゃの仏事に出席するため、首都圏から里帰りした親族のひとりが、『このあいだ神棚を買い換えたら、なんでそんなものが要るのってともだちに驚かれちゃった』。
これには私も少々驚きました。もちろん驚いたのは、神棚を「不要品」と言ったそのともだちに対してです。

秋田県のような田舎では、神仏に対する考えが昔のまま継続されているところが多いと思います。親族が亡くなって四十九日の法要が営まれるまでは、基本的に「遊ぶ」とか「慶事出席」が禁止されます。実際私も近所の婚礼出席を遠慮しました。

四十九日法要をもって「忌明け」となるわけですが、その翌日あるいは近日中に「お伊勢開きの儀」を執り行ないます。家族が亡くなった家ではすぐに神棚を封鎖するのですが、これは向こう四十九日間を仏様に集中することを意味します。そして忌明けを迎えた直後、また神様に復活してもらうべくこの神事を行うわけです。

毎朝食事の前に神棚へ向かい「二礼二拍手一礼」、そして仏壇へ向かい手を合わせる。これらを幼児期から日常としている地域が、いわゆる「田舎」に多いんじゃないでしょうか。
小中学生の学業実績もまた、無関係とは思えないんですよねぇ。

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政治家の資質。

2009年08月24日 | 実演日記


今日の草履は、千葉県浦安市からお越しくださったお若い女性のオーダー草履です。
配色選びでよく話題となるのが、「おばさまこそ明るい草履」。逆にお若い女性のほうが「今日の草履」のような配色をお選びになります。私はそれでイイと思いますね。
お待たせしました、明日の便で出発ですっ。

昨日のこと、夕方近くになってひとりの若者がお越しです。試し履きをお勧めすると、『あぁ、でも僕買えませんよぉ』とためらいました。
男女問わず一定の年齢に達した方々は、購買意思とは無関係に試し履きをされます。もちろんそれでイイのですが、確かに「買えない」と自身が分かっている以上、下手に試したりするのは失礼という考え方は分からなくもありませんね。

『見ての通り押し売りするほどの在庫なんかないんだから、ここにしかない草履を旅の思い出に履いてみたらイイでしょ』と言うと、若者は安心したのか笑顔で草履に足を入れました。

『この草履を編む人ってほかにもいるんですか?』と訊かれたので、生業としているのは私ひとりということを伝えると、『うわ~、スゴいですねっ』。若者の知識欲がみるみる膨らんでいくのが分かりました。

千葉県出身で現在神奈川県に暮らす彼は、某有名大学の二年生。夏休みを利用し、「人と会う」「風景と会う」をテーマにしているかのような旅を愉しんでいました。
『(衆院選の)投票日までに戻るつもりなんですぅ』という彼、二十歳になったばかりのはずなのになかなかの心掛けと思います。

そんな彼に、『君は将来就きたい仕事ってあるの?』と訊くと、『僕、市議会議員になりたいんですっ』。なるほど、そういう目標を持っていれば、投票日に合わせて旅を閉めるのも分かりますね。
これまでの公開実演で、若者がはっきり「政治家」を目指していると言ったのは、彼がはじめてです。

贅沢はできないことで試し履きをためらう心、そういう純真さを持ったまま政治に携わってくれればイイなと思いました。実際は加齢と共にそういう心はなくなるもんですけど、「人のために尽くす」を本分とする政治家であれば、是が非でも欲しい資質のひとつでしょう。。

最後に彼が「旅ノート」を私に手渡し、『一言ことばを書いていただけませんか?』。しばし考えた末に草履職人が記した言葉は、“必要とされる場所で生きる その場所はきっとある”。

必ずしも政治でなくとも、彼の将来には“生かされる場所”がきっと待っているでしょう。

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最大の共通点。

2009年08月22日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
青基調の洋柄プリントをベースに、合わせは赤に黒のストライプです。
パッと明るい男性用は、比較的少ない配色のように思います。シック基調が多い男性用にあって、ときにこうした草履も楽しいですね。

今夜はマニアが待ちに待った、大曲の花火です。朝から花火目的のお客様が続々…と思いきや、案外それほどでもなかったですねぇ。寄り道をせず真っ直ぐ花火へと向かったのか、はたまたここにも不況の影か。数日後に発表される人出実績に興味がそそられます。

そんな中、千葉県にお住まいの常連さんがお越しくださいました。もう三年も前になりますか、桜まつりではじめてお逢いしました。このブログをお読みの男性で、その後三度ほど訪ねてくれています。
『花火ははじめてなんですよぉ』と男性。どうぞ感動の一夜をお過ごしくださいねっ。

午後の早い時間にお越しは、お父さんにお母さん、そして二十歳前後と思しき女性三人の五人旅です。しばし草履のご説明のあと、他にもお客様がいらしたせいか閉店時刻をお訊ねのうえ一旦戻られました。
夕方四時を少し過ぎた頃再度お越しになり、それから一時間以上のおしゃべりとなります。

茨城県古河市にお住まいのご家族は、お母さんのご実家が秋田県羽後町なんだそうです。羽後町で有名なのは西馬音内盆踊り、私も一度は観てみたいと思っています。
二十歳前後の三人の女性を、『みなさん姉妹なんですか?』とお訊ねすると、『はいっ』。「三人娘」と聞いただけで、草履職人はもう他人とは思えません。

しかもご家族五人がすべて草履を気に入ってくださいました。物静かなお父さんだけが自ら『欲しい』とは言いませんでしたが、お母さんに勧められるように手に取ったのが「今日の草履」でした。

三人の娘さんへ『学生さん? もう働いてるのかな?』とお訊ねすると、ひとりの娘さんが苦笑いしながら、『いやぁ、なんか中途半端な状態でぇ…』。
わが家の長女と次女も、イマイチ進路の確定を見ていません。こんな共通点も、なんか心を許すもんですねぇ。

お母さんへ、『また来年も来るんでしょ?』とお訊ねすると、『実家へ来るには来るんですけど、ここ(角館)まで足を延ばすかは…』と言ったところでひとりの娘さんが、『また来ようよっ』。
私はきっとまた来年お逢いするような気がします。

記念すべき1000回目のブログは、“通過点”らしく再会を予感させる話題でありました。

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通過点。

2009年08月21日 | 実演日記


今日の草履は、栃木県宇都宮市からお越しくださったお父さんのオーダー草履です。お父さんにお母さん、そして小学生の女の子と男の子の四人旅。お父さん以外は展示品からお選びでしたが、お父さんだけ配色にこだわりオーダーとなりました。
一足遅れたお父さんの草履、本日の便で出発しました。もう少しでお仲間入りですねっ。

角館には当地だけを目指してお越しになる方もあれば、いろんなところを巡る旅の「通過点」としてお立ち寄りになる方もあります。むしろ後者のほうが多数でしょうね。
「今日の草履」のご家族もまたそんな旅で、温泉巡りがむしろメインでした。

昨日あたりから急に増えだしたのが、明日開催される大曲全国花火競技会へお越しの方々なんですね。メインは大曲の花火、その周辺に位置する角館はひとつの通過点というわけです。

ご紹介が遅れていましたが、8月1日から9月24日まで、「男鹿和雄~秋田、遊びの風景展~」が開催されています。



第一会場が新潮社記念文学館、第二会場が西宮家前蔵、道路一本隔ててお向かい同士ですから分かりやすいでしょう。
県内在住者が主ですが、男鹿和雄さんの画をメインに角館草履は「通過点」という方が多いです。でも案外その通過点も面白かったりするんですよねぇ。

この企画に合わせ、角館あきんど塾の仲間である似顔絵師のmarikoさんが、私の実演コーナーの真ん前で似顔絵描きをしています。



彼女が本格的に似顔絵路上ライブをはじめたのは、昨年の春でした。あれから一年と数ヶ月が経過し、備品や装飾も見違えるように揃ってきましたね。
それでもまだまだ「通過点」、やがて誰もが知る角館の名物似顔絵師になるでしょう。
marikoさんの似顔絵コーナー開設は、9月24日までの土・日・祝のみです。

さて、草履職人のブログですが、本日の投稿をもって通算999回となりました。次回はいよいよ記念の1000回となるわけです。
とは言いながら、これも単なる通過点に過ぎません。1000回記念なんて特別なことを考えず、いつも通りのブログを書こうと思っています。

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それぞれの里帰り。

2009年08月19日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
黒基調の桜&鹿プリントをベースに、合わせは白基調の洋柄プリントです。
黒と白の組み合わせは、クールさを感じさせながらお洒落ですね。桜と鹿がどういう繋がりなのか分かりませんが、お洒落なベース生地はこちらになります。




角館を故郷とし、日常の暮らしは遠く県外という人が実に多いです。それは夢を持って上京した人もあれば、田舎に雇用の場が少ないため半ば仕方なくという人もいるでしょう。あるいは子ども時代、親の仕事の都合で引越しを重ねる場合もあります。
人生いろいろ、引越しの理由もいろいろなんですね。

大阪からお越しのご夫婦。ご主人の故郷が角館で、過ごしたのは小学校の低学年までだったそうです。お父上の仕事の都合で一旦東京へ出て、その後いくつかの土地を転々としながら、現在の大阪が終の棲家のようでした。

『ときどきはお里帰りをするんですか?』とお訊ねすると、『いやいや、故郷を訪ねるのは45年ぶりですよっ』と苦笑いのご主人。家も親類縁者も守るべき墓所もないとなれば、確かに里帰りの機会はないのかも知れません。

お好みの配色をそれぞれお選びくださったご夫婦は、笑顔で西宮家をあとにしました。私が言った『足元に角館を感じてくださいねっ』の言葉は、お愛想ではない本心からのものです。

東京からお越しのご家族。うちの最も年長と思しき女性が、私にいきなり一通の戸籍謄本を見せました。その中の一行を指差し、『この住所ってこの近くでイイですか?』。それは確かに西宮家の近くでした。
ほっと笑顔に戻ったおばさまが言うのは、『父がこの土地に生まれてて、私も元気なうちにルーツを見ておきたくてっ』。

私はおばさまの言葉に少々感動しました。50歳代後半と思しきおばさまのお父上は、おそらくご他界されているのでしょう。ご自身が元気で訪ねられるうちに、お父上の故郷と生家を目に焼き付けておきたいということなんですね。
世代を超えて故郷を想う心、これもお盆ならではという気がします。

少年期からよく知る顔が、ずいぶんしばらくぶりに訪ねて来ました。彼は高校を卒業後に上京し、ひとつの会社に勤務し続けている男性です。もう30年に近い勤続年数でしょう。その彼が、『話し、聞いでけるがぁ?』と少々頼りなさげに言いました。
『オヤジがよぉ、東京の会社を辞めて帰って来いって言うものなぁ。オレもどうしようもなくて、会社辞めだものぉ』。

今は都内で資格取得に向けた勉強をしている最中で、来年には引き揚げて角館へ戻るとのこと。彼の話を聞いていると、少なくとも希望に満ちた未来へ向かう姿とはかけ離れていました。

それぞれの里帰り、その「心」もまたそれぞれなんですね。

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夢とお金。

2009年08月17日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
紺基調のふくろうプリントをベースに、合わせはエンジです。
角館草履の典型的な配色ですね、秋田おばこ調が逆に新鮮でもあります。フクロウで縁起も担いで欲しい平生地は、こちらになります。




お盆14日からの角館は、遅れた夏を想わせる高気温となっています。連日30℃超えの日中はさすがにキツいのですが、朝晩の気温と吹く風には明らかな秋を感じますね。
昨日の日曜日から、お祭りの曳山を組み立て飾り付ける「やまこしゃ」をはじめた丁内があります。時節は秋のお祭りに向かっているのが、周囲の光景からも見て取れるようになりました。

湯沢市からお越しのおばさま、西宮家へは用事があってお越しだったのですが、実演を眺めているうちにだんだん興味がわいてきたご様子です。やがてお好みの配色をお選びくださいました。
その後の話題は角館草履の「収益性」へと移ります。

『こういうお仕事は儲けってどうなんです?』と訊かれたので、『確かに手作り品というのは人件費を除くコストが低いですから、利益率は高いでしょうね。でも結局は作られる分だけがお金に変われるわけで、重要なのは生産量でしょ』とお答えしました。

一日の労働時間や年間の労働日数をお話しすると、「金を稼ぐ」目的とは若干異なることがお分かりいただけたようです。
『でも観てると楽しそうねっ』とおっしゃるので、そこは強く肯定しました。草履作りに「夢」を語るのは少々大げさですが、少なくとも楽しくなければ継続は困難でしょう。

横浜市からお越しの女性ふたり旅、それぞれにお気に入りをお選びくださり、さらにお土産として男性用をお買い上げくださいました。
ひとりの女性が『作ってるとこ写真に撮ってもイイですか?』とおっしゃるので、もちろん快諾をしました。公開実演では日常にあることです。

私の手元にカメラを向けると、もう片方の手になにやら人形らしきものをお持ちです。よく見ると人形の手足に細い棒が付いた「操り人形」、その人形と私の手元を同時に捉え、人形が私の仕事を紹介しているかのシーンを想像させます。

『もしかするとそういう(人形関係の)お仕事をされているんですか?』とお訊ねすると、『そうなんです、ひょっこりひょうたん島ってご存知です?あの人形劇団で働いてるんですっ』。

そういうお仕事を聞いて最初にイメージするのは、どうしても「夢」なんですね。『楽しい仕事なんでしょ?』とお訊ねすると、『そりゃあもう、お金の心配さえなければ桃源郷ですよっ』。

夢に生きるかお金に生きるか、これもまた人生いろいろと思うわけです。

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健康的な徴兵制度。

2009年08月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
黄色基調の金魚プリントをベースに、合わせは青の洋柄プリントです。
ハッキリとした明るい配色は、待ちかねた夏を想わせるようです。ときおり見える金魚プリントは、可愛い夏の定番ですね。平生地はこちらになります。




降りも降ったり昨日の大雨。お盆13日のお墓参りに大雨というのは、私の記憶でも何年かに一度ありますね。今年のお盆は見事それに当たりました。
明けて本日14日、午前9時頃にはすっかり晴れ上がったものの、吹く風ははっきりと秋を感じます。

巨体に汗しながら実演席前に立った青年、『少し見ててイイですか?』。少し考えながら喋る日本語に、アジア系外国人というのが分かりました。丸太椅子に招きしばし実演を眺めたあと、ミニ草履をひとつ手に取りました。そのまままたしばらく実演を眺めると、そのミニ草履を元に戻し、今度は私の後ろに展示してあるMAX30cm草履を手に取りました。

『日本の記念にちいさい草履を買おうと思ったんですけど、作っているのを見ていたら、これはやっぱり自分が履くモノを買ったほうがイイと思って…』。
言葉を選びながらしっかりその意思を伝える青年に、私は彼の純朴さを見ました。

『お国はどちら?』と訊ねると、『韓国です』。さらに『学生さん?』と訊ねると、『はい、徴兵に二年行ってて、まだ二年生なんです。一緒に入学した女の子はもう卒業なんですよねぇ』。
「徴兵制度」、テレビや新聞でときに見聞きしますが、目前にその徴兵を終えたばかりの青年がいると思うと、私の興味はそこに絞られました。

『徴兵生活って、かなりキツいの?』と訊くと、『はい、そりゃあもう。はじめの二週間で体重が20キロ減ったんですからぁ』。
彼の巨体を推し測るに、おそらく100キロはあるでしょう。二週間で20%落ちるというのは、かなり過酷な生活を想像しました。

すると彼は、『起きる時間も寝る時間も決まってて、食事の時間も量も毎日同じ、だんだん朝目覚めるのが気持ち良くなっていくんですよっ』。
私が、『それって体にイイんじゃないの?』と訊くと、『そうですよっ、体にはとってもイイんですっ』。

外国人とのおしゃべりで、こんなに笑ったことはなかったと思います。彼は30cm草履を抱きしめ、『韓国に帰ったら大事に履きますっ』。
私も彼に負けない笑顔で見送りました。

いつだったか誰だったか憶えてませんが、『徴兵制度は日本にだってあってイイ』の趣旨を発言した政治家がおりました。「愛国精神」を言いたかったのかも憶えてないんですが、生活をより正しくする効果はあるのかも知れませんね。

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まず一歩。

2009年08月11日 | 実演日記


今日の草履は、富山県魚津市からお越しくださった男子大学生さんのオーダー草履です。『紺系と赤系でお願いしますっ』がこちらになります。
『来年は就活が待ってますから、旅行なんてこれが最後ですよっ』と笑う男性、ひとり旅を気ままに愉しんでました。角館には「若き旅人」も似合うんですね。

お好みの色調はそのまま取り入れ、さらにプリント柄を「フクロウ」で統一してみました。フクロウは縁起物とされていますから、来年の就活に少しでも縁が生まれたら嬉しいですね。

さてブログ更新が遅れ気味の中、新たに三人の草履職人が誕生しています。おひとり目は石川県小松市にお住まいの女性。ご注文の草履が届くと、『娘が履く草履を私が編んでみたいっ』と思ったそうです。草履台にイ草材料、編み方ビデオを早速発送させていただきました。通算108人目の草履職人です。

おふたり目は大仙市大曲で草履作りに励んでいる女性が、『編みたいともだちがいるものぉ』と言ってお越しでした。草履台にイ草材料をお買い上げです。その三日後、またまた同じ女性が『もうひとり増えちゃった』。
それぞれ109人目と110人目の草履職人誕生と相成りました。

昨日のこと、お顔に憶えのあるおばあちゃんが、孫娘さんと思しき女性とお越しです。丸太椅子にお座りになると、『もう三年にもなるけど、手をつけてないのよねぇ』。
詳しく聞いてみると、かつて草履台やらイ草材料をお買い上げのおばあちゃんでした。三年ほど前と言えば、こうしたグッズ販売をはじめて間もない頃です。

そろそろ手をつけてみようかなと思っても、「難しそう」が先に立ってなかなか踏み出せないとのこと。80歳を過ぎたというご高齢も影響しているのでしょう。
かねてから、こちらのおばあちゃんのような方がいるんじゃないかなとは思っていました。実演を観て、『面白そう』や『私にも出来そう』と草履台などをご購入しても、その後ほとんど進展のない「草履職人」ですね。

人生の大先輩であるおばあちゃんに私ごときが助言じゃないですけど、『まず一歩踏み出してみません?』と言ってみました。おばあちゃんは苦笑いしながら、『そうよねっ』。

来年から就活がはじまる先の男性のように、これから世間へと巣立つ若者たちには、『まず一歩』に怯えないで欲しいものです。

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