角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

入院病棟の人気者。

2009年04月29日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
白地に黒のまだらプリントをベースに、合わせは紺です。
犬のようにも牛のようにも見える、面白い草履ですね。このまだらプリントは何色か色違いで届けられてますから、今度は「まだら三昧」で編んでみましょうか。平生地はこちらになります。




角館に晴天と春の陽気が戻りました。一昨日で雨がやんで、昨日より今日のほうが気温も高いです。明日からまたさらに気温が上がり、明後日あたりは20℃ほどの予想がされています。なんかもう一度お花見がやってくるような感じですね。
桜のほうは今日もまだ頑張ってますよ。よもやゴールデンウィークまで桜がもつとは夢にも思いませんでした。

83歳のおばあちゃんとその娘さんがお越しです。いかにもお買換えの印象でしたし、確かに一度はお逢いしているのですが、すぐには思い出せませんでした。しばしのおしゃべりのあと、ハッと思い出しました。

もう二年も前でしょうか、秋田市にお住まいのこちらのおばあちゃんが布草履を探していたんですね、その理由は病後生活。
軽い脳梗塞を患ったおばあちゃんは、担当医師に『スリッパじゃなく鼻緒の履物を履くようにするとイイよ』と教わったそうです。半身が不自由なため脱げ易いスリッパは危険との判断でした。

それから思い当たるお店を探してみると、売っているのは布だけで編んだ布草履、これが柔らかすぎてどうにも安定しなかったそうです。
そこで娘さんがネット検索して、私のホームページに巡りあったというわけでした。

『あれがら検査入院のたびに草履を持って行ったもの。したら看護婦さんがみんなして草履どご褒めるものなぁ』とおばあちゃん。角館草履が入院病棟で人気者になってくれたようです。さらにおばあちゃんは、『角館の西宮家で売ってるよって、みんなサ宣伝したがらなっ』。

病院で人気者になったことも、おばあちゃんが自慢げに宣伝してくれたことも嬉しいです。でも私が一番嬉しいのは、おばあちゃんの病後生活で草履がしっかり役に立ってくれたことですね。このたびは娘さんもご自分用をお買い上げくださいました。
今度は母娘で末永くご利用くださいねっ。

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あれも縁、これも縁。

2009年04月28日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調のカラフルとかげプリントをベースに、合わせは紫基調のまだらプリントです。
色目がとてもお洒落な草履ですね。プリント柄のとかげは私が最も苦手とする爬虫類ですが、愛嬌のあるカラフルさで許したいと思います。その平生地はこちらになります。




角館に晴天が戻りました。五日ぶりの青空は、それだけで朝から気分がイイですね。
長期にゴールデンウィークを取得された方はすでにお休みなんでしょう、今日の西宮家も朝からお客様が続きました。

埼玉県からお越しのおばさまふたり旅。何気に実演をご覧でしたが、角館草履の材料や健康効果をお話しすると、それぞれお気に入りの配色をお買い上げくださいました。
おばさまは、『話を聞いてみないと分らないものねぇ、最初はフツーの布草履と思ってたのよぉ』。
私が、『立ち止まっておしゃべりをしたのが“縁”っていうものですよっ』と言うと、『ほんとそうねっ、これが縁よねっ!』。

京都市伏見区からお越しの男性ひとり旅。ふらっと実演席に立ち止まると、樺草履を展示してあるパネルを眺めていました。どの程度の関心か分らなかった私は、『こんにちは』の挨拶だけで樺草履のご説明をひとまず待ちました。男性は彩シリーズの展示パネルに一度足を運び、ふたたび樺草履に見入ると、『このLサイズはもうないんですか?』。

実は今春も樺草履がなかなかご好評で、すでに在庫は23cmと24cmがひとつずつ残っているだけです。私もそれが気になっていて今朝樺染めの布地在庫を調べたところ、かろうじて一足分だけはありました。その材料を今日の実演で編むため持ち込んでいたんです。
めでたく当面最後の一足は、こちらの男性のご予約分と相成りました。男性にもお話したのですが、なかなかないご縁と思いますね。

愛知県春日井市からお越しのご夫婦旅。実演をご覧になり角館草履の健康効果をご説明すると、『お土産にこれがイイんじゃない!?』との話になりました。
私の草履は「ご自分用」が圧倒的多数で、ご自分用はお買い上げにならずお土産用とする方は比較的少数です。私もその考え方には賛成で、まず旅は自分のため、そこでするお買い物もまずは自分のためが最初と思っているからなんですね。

ただしこちらのご夫婦がお土産とするお相手は、83歳になるご両親宛てだったんです。『誕生日も近いし、母の日も近いですからねっ』とご主人。このお話には私も熱くなりました。
そのとき今日の実演で編んだばかりの、男女ペアに最も人気の高い定番②定番①がありました。ご夫婦へこちらをお勧めすると即決です。『おじいちゃんもおばあちゃんもきっと喜んでくれますよっ』と言うと、おふたりとも笑顔で頷いてくれましたね。

齢83歳の老夫婦がふたりで角館草履を履いてくださったなら、作り手としてこの上ない嬉しさですよ。今月逝去した「じっちゃ」と「ばっちゃ」をふと思い出しました。
お帰り際のご主人、『ずーっと元気で草履を編んでくださいねっ』。私はお返ししました、『元気で実演しているうちに、もう一度逢いませんか?』。

縁があれば、きっと逢えると思います。

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ときにはひとり旅。

2009年04月27日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ブルー基調のハワイアンプリントをベースに、合わせは青です。
先回に続き、こちらも爽やかな配色にしてみました。スカッと気持ちの良い、夏空のような草履ですね。
しかししかし、今日の角館は四日連続の雨になってしまいましたぁ。

とにかく寒いんですよ、最高気温は一桁ですし、雨と風が冷たいんです。弘前公園のように一向に雪でも降ってくれれば話題性もあるんですけど、ただ寒いだけじゃ愚痴で終わっちゃいますね。
ただひとつだけ嬉しいことと言えば、この寒さで桜がまだまだ頑張ってるんです。先々週末の開花を見たときには、今日まだ桜があるとは思ってもみませんでした。

桜まつりスタートから10日が経ち、今年も多くのリピーターさんがお訪ねくださっています。お買換えの方もそうでない方も、寄ってくださるだけで実演の意義を感じますね。
初めてお目にかかるお客様でも、このブログは知っている方が複数お越しです。石巻市からお越しのおばさまは、過去にブログコメントをお寄せの方でした。『バスで来たんですけど、あたしだけどうしても行きたいところがあるからって、ひとりで来ちゃったんですぅ』。
次は周囲に気兼ねのないひとり旅でお越しくださいねっ。

布草履を編んでいる方は今年も非常に多いです。昨日は埼玉県で布草履教室を主宰しているおばさまがお越しでした。私の実演を関心高くご覧になり、『やっぱり出て歩くものねぇ、いろんな発見があるものっ!』。
お連れの方はさほどの関心がなく、おばさまはその方へ気遣いながらの見学でした。次は気兼ねのないひとり旅がイイですよっ。

横浜市からおこしのご夫婦旅、奥様が実演にハマりました。おともだちが編んでいる布草履をもらったのですが、その柔らかい感触になんとなく履けないでいるんだそうです。角館草履を見て触ったおばさまは、『どうせならこういう草履を編みたいわよねっ』。

ただこちらもご主人のほうは関心がありません。後ろのベンチに腰を下ろしたご主人、片足を編み終わるまでの小一時間をただただ待ってくださいました。
お帰り際ご主人へ『退屈させましたねぇ』と言うと、『いえいえ、日ごろの埋め合わせですから…』。

ご夫婦旅も友人との旅も、もちろん愉しいものです。でも目的が明確にあるときは、ときにひとり旅がイイかも知れませんね。

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出費に報いる草履。

2009年04月24日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
黄色基調のハワイアンプリントをベースに、合わせはオレンジです。
いかにも真夏を感じさせる配色ですね。蒸し暑さではない気持ちの良い暑さでしょうか。
今日の角館は昨日ほどではないにしても、まだ少しストーブが恋しくなる気温でした。そして困ったのは明日からの連休、人出のピークが予想されるのに、雨&低温の予想です。

草履職人がまたひとり追加です。旧西木村にお住まいのおばあちゃん、去年偶然に実演と出逢い、一時間余りも見学して行った方でした。私は忘れていたのですが、そのときイ草材料だけお買い上げだったとのこと。自宅へ戻ってイジってみたところ、『やっぱり台がねぇば出来るもんでねっけでぇ』と気づいた様子です。
これからはときどき見学に来てくださいねっ。107人目の草履職人誕生です。

いまさらなんですが、さすがは角館の桜まつりです。『もう三年連続で来てるのよ~』『去年はじめて来たんだけど、やっぱり今年も来ちゃったっ』といった方がずいぶんお越しです。
毎年角館の桜見物に見えて、そのついでに角館草履をお買換えという方がたいへん多くなりました。これはほんとに嬉しいことです。

埼玉県からお越しのおばさま四人旅、うちのおひとりが以前娘さんとお買い上げくださり、今年は都合で来られない娘さんのリクエストでお立ち寄りです。おばさまご自身用と娘さん用、それぞれお買い上げくださいました。

四人の中のおひとりがその様子を見ていて、『そんなにイイの?』。お買換えのおばさまが履き心地など“先輩”としてご説明です。すると、『じゃああたしも買おうかなっ、ウチはなんでも旦那と一緒なのよぉ』。聞いてみるとひとつの草履をご夫婦で履こうということらしいです。私が、『無理に言うんじゃないですけど、甲の高さが違う人と鼻緒の履物は兼用しないほうがイイですよっ』と言うと、『あらっ、じゃあふたつ買ったら8000円!?』。

さすがに8000円は少々予定外だったのでしょう。それでもお気に入りをふたつ見つけてお買い上げくださいました。お帰りの言葉がおかしかったです、『これで一ヶ月は買い物ナシねっ』。
予定外の出費をさせてしまったのは申し訳ないと思いながら、おばさまの笑顔は忘れませんよ~。

旅行にはどうしてもお金がかかります。それでもときに気分転換が必要と思えば、出来るだけ出費を抑える行動を考えるのは自然なことですよね。そんな中でおもいがけない草履の出費、これにお応え出来る作品を編むのが私の使命だと思うんです。

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草履職人ふたり追加です。

2009年04月23日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
黒基調の金粉和柄プリントをベースに、合わせはエンジです。
角館草履では定番的配色のこちら、それでも今年は「金」が混じって新鮮ですね。
『今年のラッキーカラーに金があるんですよ~』は、この桜まつりでもずいぶんのお客様にお教えしてます。するとやっぱり金をお選びになるんですね、そうなんです、人は「ラッキー」と「金」が好きなんですよ。

今日の角館はとにかく寒かったです。最高気温はおそらく一桁でしょう。散策のお客様も『寒いわねぇ』の連発で、ストーブをつけた米蔵の中はいつもより滞在時間が長いように感じました。そのおかげもあるのでしょうか、実演ベンチは朝から空くことがありません。ようやく昼メシにありつけたのは午後3時に近かったです。
そんな状況も桜まつりならでは、昼メシなんてなんの問題にも値しません、私の気分は上々ですよ。

しばらく遠ざかっていましたが、草履台のお買い上げが今日お二方いらっしゃいました。まずおひとり目が家族旅行を愉しまれているおばさま、ちょうどお昼どきで北蔵レストランの席待ちをしてお出ででした。
実演をしばらく眺めていると、レストランスタッフからお席のご案内がありました。おばさまは、『食事してからまた来ますねっ』。

お約束通り食事後まっすぐ訪ねて見え、またしばらく実演を眺めながら草履のご説明をしていました。まもなくご家族も食事を終え合流です。するとおばさま、『じゃあ、草履台とイ草くださいなっ』。私はそこまで真剣とは思わず話してましたから、おばさまの決断に少々驚いたものです。

とっさに、『また見に来られます?』とお訊ねすると、『ちょっと無理ですねぇ、四国から遊びに来たんですよっ』。
あらら、四国ではちょくちょく来られませんねぇ。同時にお買い上げの「編み方ビデオ」で、どうぞ頑張ってくださいねっ。2009年初にして、通算105人目の草履職人誕生です。

おふたり目は埼玉県川越市からお越しのご夫婦旅。奥様が布だけで編む布草履をはじめられたところで、ご主人が角館草履を触りながら『母ちゃんの草履とはずいぶん違うなぁ…』。私が『材料から違うんですから、比べたら奥さんに悪いですよぉ』と言うと、奥様も苦笑いです。

ご主人は旅の記念に欲しいとおっしゃり、まずご自分用をお選びになりました。奥様へも執拗に勧めるのですが、奥様が気になって仕方のないモノが「草履台」だったんですね。
ご主人も、『そんなに欲しいなら買っていけばイイよっ』。めでたく106人目の草履職人と相成りました。関東地区ならまたいつか来られるでしょう、ぜひお待ちしていますよっ。

桜の見頃を迎えて、日に日にお客様の数が増えています。一日のおしゃべりがあまりに多いと、内容を思い出すのに一苦労ですね。今日はひとまずおふたりの草履職人だけご紹介し、おいおいいろんな出逢いを綴っていこうと思います。

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「限定」の角館。

2009年04月21日 | 実演日記


今日の草履は、「盛岡のゆっこ」さんからのオーダー草履です。「桜プリント」がなにより優先で、お気に入りの「黄色」は必ず、そしてもう一色「オレンジ」も大好きのご希望がこちらになりました。約束通り明日の便で出発ですよ~!

天気予報通り朝から雨の一日になりました。桜は満開の一歩手前という段階ですから、この雨ですぐに散ることはないと思います。でもやっぱり散策に雨は不向きですね、お客様の口から『寒いわねぇ』の言葉がずいぶん聞かれました。

実演席の展示パネルには、満タン状態であれば40足程度の草履が並びます。その中に定番配色は一割程度で、あとの九割はほぼ一点もので占められます。
昨日のブログでご紹介した「壱万円草履」のお客様も、おそらく限定一品作に多少なりとも影響されたでしょう。「今日の草履」の盛岡のゆっこさんも、オリジナル一点ものを歓迎してくださいました。

今日お買い上げくださったお客様でも、複数の方が「限定配色」を知ることでお選びになっています。やはり人というのは、どこでも買えるあるいは大勢の人が持っているモノよりは、そういう希少性に魅力を感じるのでしょう。
昨日遅い昼食を車内で摂っていると、ラジオ番組の街角インタビューでこんなことを言ってました。『ユニクロはよく買い物をしますよ。でも上着にはあんまり使いたくないかな…』。

この「限定」という言葉を角館に当てはめたとき、たとえば今日の雨の中で桜を眺めたのも、「2009年4月21日限定」の風景なんですよね。そう考えれば、天気がどうとか開花状況がどうとか言うのは、旅の想い出にたいした重きはないようにも感じます。

閉店間際にお越しのおばさま三人旅。今晩角館に宿泊し、明日の夕方まで角館をじっくり散策するんだそうです。『明日の夕方まで作ってくださる?』とオーダーされた草履は定番配色①でした。三人が同じ配色でご注文され、まして定番①は最もオーダーの多い配色です。
でも、前日オーダーした草履を角館を満喫した後に持ち帰られる「限定」は、きっと大きな想い出になると思うんですね。

そしておばさまお三人は、「2009年4月22日限定」の角館を充分に愉しまれることでしょう。

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嬉しい出逢いが続いてますっ!

2009年04月20日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
ブルー基調の花柄プリントをベースに、合わせはエンジです。
角館草履ではオーソドックスな配色でしょうか。こうした配色は特に年代を選びませんね。

さて、いよいよ角館の桜が見頃に近づいています。街中のいたるところに満開があり、武家屋敷通り枝垂桜も咲きそろってきました。檜木内川堤のソメイヨシノは今日の夕方で5分咲きに近いと思います。思ったよりは少し遅れている感じですが、むしろこれがイイ按配じゃないですかね。

桜まつりスタートから三日が経過し、連日嬉しい出逢いが続いています。
埼玉県岩槻市からお越しのご夫婦旅、「初角館」のご夫婦は朝から非常に高いテンションでお越しでした。ご主人が限定一品作の「高級久留米絣草履-壱万円-」を見つけると、『やっぱり高いモノはどっか違うもんだねぇ』。これを聞いた奥様が、『あらっ、あなたにしては珍しいわねぇ、そんなふうに作品を見るなんて…』。

その後米蔵を中心に散策すること一時間余り、また実演席に戻られたご夫婦は、おふたり相談のうえ「壱万円草履」をお買い上げくださいました。ご購入を決められたのはやはりご主人、『初めての角館でこの草履を見つけたのもなにかの縁だよ、これは履かないで飾っておこう!』。

いつもであれば、『古今東西草履は履くモノ、飾るなんてダメですからねっ』というのが私の決まり文句なんですが、このときばかりはご主人の心が嬉しくて黙りました。また来年お越しくださるとのこと、今度は“履く草履”をお買い上げくださいねっ。

男鹿市から自転車でお越しの青年、草履の説明を詳しく聞く前に品定めに入りました。まずは試し履きをお勧めし健康効果を話そうとすると、『あっ、だいたいはブログで知ってますからぁ』。このブログのご愛読者でありましたかっ、たいへん失礼をいたしました。また遊びに来てくださいねっ。

東京からお越しのおばさまふたり旅、揃ってお気に入りの配色をお選びです。角館草履は湯上りに定評がありますから、『今晩は温泉にお泊りですか?』という言葉をよく使います。こちらのおばさまにもお訊ねすると、『夏瀬温泉の都わすれなのっ』。

「都わすれ」というお宿は実に評判がイイですね。こう言うと語弊があるかも知れませんが、宿泊料金は当地の温泉でかなり高いほうだと思います。でもこちらに宿泊の翌日私の実演席でのおしゃべりには、『とっても良かったわぁ、(料金の)価値は充分よっ!』という言葉をよく聞きます。

実は購読を始めた「月刊知致」四月号に、都わすれの女将さんが登場しているんです。これはまったくの偶然でちょっと驚いたものです。
これもなにかの縁なのか、その日三組の都わすれご宿泊のお客様から草履のお買い上げがありました。そのうちのおひとりはご自宅へお戻りになってから、追加のご注文もいただいています。私もいつか泊まりたいものです、「夏瀬温泉都わすれ」

このブログコメントでお馴染みの「盛岡の湯っこ」さんが、元気にプチひとり旅でお越しです。桜も見頃に近づき、美味しいうどんも食べて角館を満喫したようですね。草履のほうはオリジナル一点ものでオーダーくださいました。明日の「今日の草履」をぜひお楽しみにっ!

桜まつりはこれからが本番、おそらく人出のピークは今週末でしょう。明日からの天気がいささか心配ですが、嬉しい出逢いはまだまだ続く予感です。

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一年越しの笑顔。

2009年04月17日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ブルー基調のハワイアンプリントをベースに、合わせは紫基調の桜プリントです。
これまでも何度か書いたと思いますが、私はこの「紫」という色がなんとなく好きです。「今日の草履」もそうした想いがあるせいか、実にお洒落に見えるんですね。

実は先日の祖父母の葬儀ではじめて知ったのですが、生前ばっちゃは紫を好んだとのこと。これまであらためて聞くことはなかったと思います。これを知人である葬儀社のスタッフさんに伝えたところ、棺の色や骨壷のケースに紫を揃えてくれました。こんなところにも人の心は見えるものです。

これから真夏まで着用する作務衣に、紫色を加えました。今日が袖通し、初着用です。新しい作務衣というだけでも気持ちがスッキリしますし、ばっちゃが好きだった色と知ったことで、なんとなくそんな供養も感じます。一日終わっての売上が今年一番だったことも、ばっちゃのご加護かなぁなんて考えたりしますね。

仙台市からお越しのお若いご夫婦、おふたりニコニコ顔で近づいて来ました。『去年こちらへ寄って草履を見たんです。それで、ゼッタイ来年は買おうと…』。
昨年の4月末に桜見物にお越しが、異常な早咲きでまったくありませんでした。残念と思いながら町を散策し、私の実演と出逢ったそうです。そのときに、来年はゼッタイ桜を観ることと草履を買うことを決意したんですね。

桜のほうはまだ見頃とは言えませんが、それでも街中ではチラホラ観られるところがあります。草履のほうは「一点もの」にお気に入りを見つけてくださり、まずはどちらも念願が叶ったと言えるでしょうか。嬉しいですね、私よりもお若い方にそうして草履を見ていただけることが。

もうひとつ嬉しさを感じたのは、草履をお買い上げはご主人だけなのに、奥様のほうがとってもイイ笑顔をされたことです。ご主人の念願が叶ったことを、ご自分のことのように喜んでくれたんですね。奥様のお顔は、まさに「一年越しの笑顔」なんでしょう。

大きなお世話と思いながら、こちらのご夫婦にも仲良くふたりで天寿をまっとうして欲しいものです。

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伝統工芸士Mさん。

2009年04月16日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
緑基調の桜プリントをベースに、合わせはブルー基調の金粉和調プリントです。
賑やかなプリント同士の組み合わせ、明るくてイイですね。ベースの色調が落ち着いてますから、ご年配の女性にもお似合いと思います。

今日の角館は寒い一日となりました。幸い雨は朝方でやんでくれたのですが、その後も気温は一向に上がりません。散策のお客様も『おぅ~、寒い~』と言いながら、実演席前のストーブで一時停止です。
予想を超える桜の早咲きに青ざめた昨年でしたが、今年はさらに二日ほど早いと思います。今日の寒さはそういう意味でちょっと助かりました。

武家屋敷通りの枝垂桜は、早い木で咲き始めています。樺細工伝承館前の木がそれで、武家屋敷の桜では毎年一番早いようです。
この樺細工伝承館では桜まつりに合わせ、「春の樺細工展」が毎年開催されます。樺細工職人の自信作が並ぶこの展示会、樺細工のような伝統工芸品に関心のある方は必見ですね。

この展示会で幾多の賞を勝ち取っている伝統工芸士のMさんが、今日私の実演席を訪ねて見えました。私の知人がMさんへ仕事を依頼していて、その件の伝言のついでに久しぶりに顔を見たくなったと言います。春の樺細工展に出品する作品も出来上がり、気持ちのうえでも一服といったところなんでしょう。

Mさんは私より20も年上なんですが、私の親父が現役職人だった頃からのお付き合いで、はじめてお会いしたとき私は中学生でした。現代の名工に師事したMさんの作品は、当時から業界内で定位置を持つほどだったと記憶しています。

私が樺細工問屋で働くようになって、Mさんとの付き合いは日常になりました。とにかく偏屈を絵に描いたような人で、納入先の私たちに対して「媚びる」なんてことは欠片もなかったですね。『この仕事、○○日まで頼むんシ~』と言っても、決して『わかった』とは言わない人でした。でもその期日に行って見ると、しっかり作品はあがっている。無口ではないけれど好んで仕事の話はしない、やはり偏屈なんですね。

Mさんは私の実演を眺めながら、『なんただぁ?職人なんて儲からねぇべっ』。職人仕事が金儲けで出来ないことなど、親父をみて先刻承知です。私はわざと言いました、『んだなぁ、樺細工よりはマシだべっ』。ふたり大笑いです。
Mさんは角館の観光客数が、これから尻すぼみになることを懸念していました。それは私も同感です。私はMさんに言いました。『角館に来る人をお客さんにするのではなく、自分のお客さんが角館に来るようでねぇばダメだ』。これは私のゆるぎない目標です。

Mさんの樺細工技術と比べれば、私の草履技術など赤子同然。Mさんは月に2日~4日間伝承館で実演をしていますが、工房を設立して日常に実演すれば、『Mさんに会いたい』というお客様がゼッタイ増えるはずです。それほど見事な作品を生み出す人なんですね。

これをMさんに話すと、『う~ん、人に会いたいと言われでも、オレが人と会いでぐねぇがらなぁ』。
67歳の偏屈ぶりは、尚も健在というところですかね。

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竹馬の友。

2009年04月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の桜花プリントをベースに、朱色の小花プリントを合わせた配色Ⅱパターンです。
十日ぶりの「今日の草履」は、数日後にも花開く桜にしました。5日未明を最後に今日までの九日間、雨が降らない上に連日高温が続いています。仙台あたりはすでに満開が過ぎたそうで、着々と北東北へ開花の便りが進んできました。

当地角館でも若くて日当たりが良い場所の桜は、すでに開花が始まっています。観光メインの武家屋敷通り枝垂桜や檜木内川堤のソメイヨシノも、蕾が膨らんでいるのが分るくらいになりました。
明日は一日雨のようですが、このあとの晴天を待って一気に開花するでしょう。桜まつりスタートの18日には桜が観られ、その後の天候と気温によって来週がピークと思います。人出のピークは25日~29日くらいでしょうか。

奈良県は吉野からお越しのおばさまふたり旅、言わずと知れた「桜の町」ですね。『吉野桜は今年も綺麗だったでしょ?』とお訊ねすると、『はははっ、今年は観てないんですよぉ』。いつでも観られるのが逆に災いするんでしょうかね。
『こっちはもう少しで咲くんですけどね』と言うと、『まぁ桜はなかったけど、イイ町ですねぇ。草履も綺麗やしぃ』。おふたりともお気に入りの配色をお選びくださいました。

『吉野からふたり旅ですかっ?』とお訊ねすると、『そう、こーんなちっこいからのおともだちで、75歳になっても仲良しなんですよっ』。
イイですね、「竹馬の友」というのは。子どもの頃はあまりそういう意識はないのですが、年齢を重ねるに連れて友の大切さを感じるように思います。これも人生経験と深く通ずるものがあるんでしょう。

祖父母の葬儀があった翌々日、新たな訃報が届きました。ちょうど一年前、長女と同じクラスで中学を卒業した男子生徒です。合格した高校の入学式を目前に、頭部へ腫瘍が見つかった彼は、一年の闘病生活を経て亡くなりました。享年16歳。

学校から戻った夕方長女へ伝えると、瞬間黙ったまま目頭を押さえました。曽祖父母の訃報から五日後、未だ高校二年になったばかりの娘には、かなりツラい現実だったと思います。彼の葬儀はわが家の初七日が済んだ後でしたから、娘の意向も聞いて葬儀へ出席させました。

「ともだち」というものは、年齢を重ねるにつれ大切さが分るものです。一番ツラかったのは男子生徒本人、そしてご両親をはじめとするご遺族でしょう。
心よりご冥福をお祈りいたします。

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