角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

角館の色。

2012年04月30日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
このところオレンジ色のシーチングを多用していますが、やっぱり可愛い草履はすぐに売れてしまいます。オレンジも定番の仲間入りでいいでしょう。
ベースは桜満開のピンク色、まさに今の色ですね。

今日の角館も暑かったです。桜の開花は一層進み、早い枝垂れ桜は花びらが舞っている木もありました。逆にまだ五分咲きくらいの桜も多いですから、ゴールデンウィーク後半もある程度の桜が見られると思っています。
それにしても、こんなに早くピンクの角館になるとは思いもしませんでした。

人様のお店をどうこう言うのは性分じゃないのですが、おおよそ角館に似つかわしくない色をした店舗があります。その道では著名であり、確かな技術で作品を創り出す筋金入りの職人の店です。この人に比べたら角館の草履職人など、どこにでも転がっている凡人ですよ。

これまでも何人かがその建物の「色」を批評したのですが、今日は立て続けにふたりのおばさまが同じように批評されていました。うちのおひとりは、油絵の審査員も勤めるという美術家です。おばさまは直接本人に苦言を呈したと言いますから、こちらも筋金入りですね。

「古き良き時代」をイメージし、癒しを求めて角館を訪れる方々には、「角館の色」もまた大事な要素なんでしょう。日々の実演でも、草履の色は大きな話題のひとつです。カラフルな中にも角館らしい癒しの色を、みなさん求めているのがよく分かります。

夕方近く、杖をお持ちの盲目の青年が、女性の付き添いと共にお越しでした。東京からの旅だそうです。
角館草履を目に留められたのはもちろん女性ですが、むしろ積極的に試し履きをしお買い上げを決めたのは盲目の男性なんですね。しかも女性が配色を言葉で説明し、男性も『じゃあ、この紺色にしようかな』。

お買い上げ後のおしゃべりでは、満開の角館が話題になりました。きっと盲目の男性にも、角館の桜色がしっかり見えたんじゃないでしょうか。
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再会のドラマ。

2012年04月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
この桜まつりにも、「緑好きさん」がすでに何人かお越しです。緑好きさんというのは、他の色をほとんど見ないのが面白いと思っているんです。「今日の草履」も選ばれるまで、そう日数はかからないでしょう。

朝起きたときは肌寒さを感じたものの、ときの経過と共にみるみる気温が上がりました。お昼前には「暑い」と感じ、午後2時には半袖Tシャツ一枚での実演です。散策のお客様も、『暑いくらいですね』。初夏と言っていい気温と思います。

この暑さで桜の開花が一気に進んだ模様です。少し遅れていた檜木内川堤のソメイヨシノも、もう見頃に差し掛かったという情報がありました。散策のお客様も『いい具合になってきましたよ』と言ってましたから、角館の桜たちは「おおむね見頃」と言っていいでしょう。

松島からお越しのおばさまひとり旅。このゴールデンウィークで、はっきり被災地からお越しと分かるお客様は、こちらのおばさまが初めてです。昨年の夏ごろから「気分転換」を目的に、被災地からお越しの方がずいぶん増えたものでした。こんなお話をおばさまにすると、『私もそうなんです。津波で母を亡くしましたから、旅行なんてしばらくぶりですよっ』。

ご自宅周辺にあった10軒ほどの民家の中で、津波に耐えたのはおばさまの家一軒だけだそうです。手を加えればなんとか暮らせそうな状態も、『他の人たちはもう戻らないって言うから、私の家だけ直したところで…』。
かと言って移転に積極的になれないのは、お母上が暮らした家で供養したいという気持ちなんですね。分かるような気がしました。

仙台市にお住まいで、かつて石巻市民病院設立に尽力されたというお医者さんがお越しでした。やはり言葉に出てくるのは、今なお厳しい震災後の様子です。でも先生が言うのは、『そういうときだからこそ、夢を持ちたいよね』。

先生が、『角館に○○医院ってあるでしょ。そこの院長って私の教え子なんですよ。角館には何度も来てるんだけど、迷惑かけちゃ悪いから彼にはナイショにしてるの』。
その医院であれば西宮家から歩いて行けます。先生に道順をお教えし、『会わないほうがいいんなら、郵便受けに名刺を入れてくればいいでしょ』と言うと、先生はいそいそと出掛けました。

それから20分も経ったでしょうか、先生がニコニコ顔でお戻りです。『いや~、ちょうど外に彼が出ててね、会ってきましたよっ』。
「迷惑かけちゃいけない」と思うのは、それはそれで大人としてのエチケットと思います。でもやっぱり久しぶりに会えば嬉しいわけですから、私は余計なことをしたとは思いませんね。

今日も草履のご愛用者が、何人かお顔を見せてくださいました。私は憶えていなかったのですが、去年のゴールデンウィークに結構な時間話し込んで戻られたという、盛岡市のご夫婦がお越しです。『去年すっかり手を止めさせてしまったんで、今年は買わせてもらいますよっ』。

角館の桜を愛でながら再会を喜ぶ。それはもちろん実演席だけでなく、角館のいろんなところでドラマがあるのでしょう。
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賑わう角館です。

2012年04月28日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
オレンジ系で統一した草履は、これまであまりありませんでした。しかも洋柄ではなく和柄のオレンジも珍しいはずです。あえて日本語を使えば「橙色の草履」、ぜひとも中高年のおばさまに履いて欲しいですね。

ゴールデンウィーク初日は、初夏を想わせる陽気になりました。最高気温は23~24℃まで上がったでしょう。開花宣言の翌日にしては、ずいぶん花びらが開いたように感じます。それでもお客様は、『満開を見たかったねぇ』。もちろん気持ちはよく分かるのですが、蕾だけを見てお帰りになったたくさんの人たちを知っている分、少し複雑ですね。

そして人波も増えています。ゴールデンウィークを待ちかねてお出掛けなんでしょう。家族連れがとても多いですね。小さな子どもたちが丸太椅子に座り、真剣な表情で実演に見入っていますよ。15分以上見続けていた男の子に、『そろそろ編み方覚えた?』と訊いてみると、『う~ん、まぁ、だいたいは…』。天才かもしれません。

4月10日のブログで「母の日」について触れました。その張り紙を読んでの反応が、なかなか楽しいです。一度にご紹介しきれないほどのエピソードが生まれているのですが、関西からお越しのおばあちゃんと孫娘さんの会話。孫娘さんは20歳代前半と思います。

おばあちゃんが角館草履に関心が高く、購入したい素振りを見せたんですね。孫娘さんは母の日云々の張り紙を読んでいて、おばあちゃんに『私がプレゼントしてあげるよっ』。
その言葉を聞いたおばあちゃん、『えっ、あんたどないしたん?いや~、びっくりしたわ~』。ほんとに驚いたお顔に、思わず笑ってしまいました。おそらく孫娘さんは、いつもおばあちゃんからお小遣いをもらってばかりいたんでしょうね。

楽しいおしゃべりは一日中続いていますが、心に残る言葉だけいくつかご紹介しましょう。
先ツボが左右内側に寄せられているのを見て、『草履職人さんの優しさが見えますね』。
展示パネルに並ぶ草履をしみじみ眺め、『この配色に癒されるわぁ』。
久しぶりに訪ねて見えた角館草履の生徒さん、『実はこの連休、お梅ちゃんに入ってるの私だんシ』。

おっと、これはナイショでしたかっ。明日からも楽しい出会いが続くでしょう。
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開花宣言です!

2012年04月27日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
桜プリントとは言え、比較的落ち着いたベースの色調です。エンジを組み合わせると可愛らしくなり、「今日の草履」のように紺を組み合わせるとシックに映ります。
そのどちらも角館草履には必要ですね。

お客様の中には、私に配色選びを託す方もおられます。ふたつの草履を手に持ち『どっちが私に似合うかしら?』と訊かれたとき、まず気をつけなければならないのがダラダラ悩まないこと。ふたつの特徴をご説明したら、どちらか一方をお勧めするのが私に課された使命なわけです。

中高年のおばさまほど可愛らしい草履を履いて欲しいのは本当ですが、今日のおばさまは二点とも黒基調のシックな草履でお悩みでした。私が一方をお勧めし、『若い女性ほどこういうシックな草履を選ぶんですから、お母さんはかなり気持ちが若いんですよっ』と言うと、『この歳になると、“若い”って言われるのがなにより嬉しいのよっ』。
驚くくらい喜んでくださいましたね。

さて角館の桜たちに、ようやく「開花宣言」が出された模様です。今日は肌寒い一日でしたが、昨日までの暖かさで今日も少し進んだのでしょう。明日はまた夏日に近いくらい気温が上がりそうですから、武家屋敷通りの枝垂れ桜が一足先に、月末には見頃となるでしょう。

そして檜木内川堤のソメイヨシノが、2~3日遅れて咲くと思われます。武家屋敷通りの枝垂れ桜と檜木内川堤のソメイヨシノ、このふたつが見頃となるのは5月に入ってすぐじゃないでしょうか。

『どっちの桜が綺麗?』と訊ねる人もいないと思いますが、こればかりは私もひとつに決められません。どうぞふたつの「国指定」を、思う存分ご堪能ください。
明日からいよいよゴールデンウィーク突入です。
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次は満開の角館で。

2012年04月26日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
こちらも同系で揃えた配色です。ベースにチラリと見える白い部分が、涼しさも感じさせてお洒落ですね。紫色と組み合わせて、どちらかといえば中高年のおばさまにお勧めでしょうか。
淡い紺と白の和柄はこちらです。



武家屋敷通り樺細工伝承館前の枝垂れ桜が、数輪開きました。外町では西宮家田町側向かい、市情報センターの枝垂れ桜も咲き出しています。
角館はソメイヨシノよりも枝垂れ桜のほうが、ほんのわずか早く咲きます。武家屋敷通りの枝垂れ桜が三分咲きほどになると、檜木内川堤のソメイヨシノが咲き始めとなるわけです。

今日も「桜ざんねん旅」が一日続きました。昨日のおばさまじゃないですが、中途に赤い蕾を見せられるとむしろ悔しさが増幅されますね。『もぅ、あとちょっとじゃな~い』の言葉は何人から言われたか分かりませんよ。

お客様の人数も日を追うごとに増えてきました。ご夫婦でお揃い配色をお買い上げのご主人は、『まだ咲く前だってのに、武家屋敷にはずいぶん人がいたよ。これが満開になったらスゴいんだろうね』。
実演席で日々話している「角館の桜」について、ここであらためてご説明します。

先日「桜トリビア」としてご紹介した檜木内川堤のソメイヨシノ。400本2キロメートルに渡る桜のトンネルは、「国の名勝」に指定されています。
一方、武家屋敷通りの黒塀に映える枝垂れ桜。162本が「国の天然記念物」に指定されています。

角館を知る方はご存知でしょうが、このふたつの「国指定」は徒歩1分くらいしか離れていません。
前述のようにソメイヨシノと枝垂れ桜はほんのわずかズレて咲きますから、双方が満開というのはおそらく二日間か三日間のものでしょう。これを観た人は、そりゃあ大満足するわけですね。

「国指定」の桜がふたつ、同じ日に歩いて1分で観られる。桜の名所も数ある中で、さすがに角館のようなところはなかなかないでしょう。それゆえ、人の多さも覚悟しなければいけません。桜まつり期間に角館を訪れる人の数は、おおむね人口の100倍に相当します。旧角館町1万5000人に対し、150万人ですね。

「桜ざんねん旅」のお客様とは、この話を一日に何度もしています。それほどの桜ですからリベンジを果たして欲しい気持ちと、もう一方で今だからこそ角館人とゆっくり話が出来ることを伝えたいわけですよ。するとお客様は、しっかりご理解くださいます。

『体に気をつけて頑張ってくださいねっ』。この言葉は、「桜ざんねん旅」のお客様によく言われます。私がお返しする言葉は、『次は満開の角館で会いましょう』。
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まもなく開花です。

2012年04月25日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
色の好みも十人十色の中で、「緑好きさん」はやっぱり多いです。同系色の組み合わせは色を問わず多用するのですが、特に緑は迷いなく編みますね。「今日の草履」が選ばれるのも、時間の問題だけでしょう。
イラスト系が楽しい和柄はこちらになります。



今年一番の暑さとなった、今日の角館です。20℃はゆっくり超えたでしょうか、散策のお客様も汗ばむほどの陽気に笑顔が見えました。
待ち焦がれている桜の開花は、ほんとにあとわずかです。秋田市が昨日開花宣言しましたから、例年であれば一両日中に角館も宣言されるでしょう。

北海道と千葉県にお住まいのおばさま二人旅。比較的朝の早い時間ながら、すでにテンションがいささかお高め。角館草履を見つけるやいなや、『角館でこんな草履と巡り会うなんて、これも縁よっ』。
北海道のおばさまはご自分用を、千葉県のおばさまは娘さんにもお選びでした。

おばさまたちに「まもなく開花」を伝えると、『今晩田沢湖高原に泊まって明日は岩手県の予定だったけど、田沢湖からまた角館に戻って来るわっ』。
全然咲き出す様子がなければ諦めもするでしょうが、まもなく開花の状態を見せられると多少の予定変更は有りなんですね。

東京からツアーでお越しのご夫婦。西宮家母屋でお昼の食事を済まされた後、米蔵に入って見えました。角館草履にはご主人のほうが関心高く、素材や健康効果などを熱心に聞いてくれましたね。
そしてご夫婦仲良くお気に入りの配色をお選びです。

お支払いが済んで、奥様の言葉に笑いました。『もぅ、さっきからお金ばかり使ってる。桜が咲いてたらお店の中なんか入らないのにぃ』。
確かにその通り、桜が見頃であれば散策の時間が増えますからね。でも奥様の笑顔を見ていると、買い物もまんざらじゃなさそうでしたよ。

そして奥様が小声で私に言うのは、『今日は桜がまだ早いのを知っていたから、5月7日にまた別のツアーで来ることにしたのっ。角館の桜をゼッタイ見たいと思ってね』。
十日余りでリベンジを果たすご夫婦。なんとしてでも5月7日まで桜が残ることを祈らずにはいられませんね。
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おまじないの真相。

2012年04月24日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
ブルー系で統一された草履は、とても爽やかな印象があります。女性にちょっと大き目の24cmですから、お洒落な男性がご自分用にお選びになるかもしれませんね。
金で縁取られた美しい和柄は、こちらになります。



部屋履き草履を指して、『うちは狭いから履いて歩くところがないよ』とおっしゃる方がいます。謙遜の場合もあるでしょうし、ほんとにアパート暮らしの場合もあるでしょうね。そんなとき私が言うのは、『炊事をする人が履けばいいですよ。台所に立つ時間だけでも、ずいぶん足が楽になると思いますよ』。

大仙市大曲にお住まいの、おばあちゃんと男の子がお越しでした。おばあちゃんは、かつての「ワラ草履」を思い出させる草履実演に興味津々です。草履が足や体に与える好影響をご説明し、『現代では毎日履ける室内が一番理屈に適ってますよ』と話しました。

するとおばあちゃん、『うちは古い造りだがら、履く場所がねぇものなぁ』。そこで私がいつものように「台所」の話を持ち出すと、おばあちゃんは少し照れくさそうに、『うちの台所、今でも土間だもの』。

詳しく聞いてみると、代々受け継がれた古いお屋敷に今も暮らすおばあちゃん。廊下の部分はいくらかあっても、部屋という部屋はすべて畳敷き。さらに台所はサンダル等を利用する土間なんですね。確かにかつての日本家屋はそんな造りでしたよ。

おばあちゃんが言う『履く場所がねぇものなぁ』は、謙遜でもなんでもない率直な話だったんです。でもそんな造りの家がとても懐かしく、そして暖かく想像しました。
おもわず『いや~、そういう家っていいんシなっ』と言うと、『あらら~、いつでも遊びに来てください~』と笑うおばあちゃん。

そしてひらめいたのは、2008年8月20日のブログでご紹介している「おまじない」。
トイレに草履を飾る(置いておく)というのは、かつて農村地帯の家屋で当たり前だった、トイレが母屋と離れていたことの名残りじゃないですかね。厠(かわや)へ行くためには必ずワラ草履を履いた生活が、きっとおまじないとして現代に語り継がれているんでしょう。
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角館と癒し。

2012年04月23日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
黒ベースの草履をときに編むのですが、まず男性用を意識して大きなサイズにします。でもたとえば「夜桜」などは黒が基調ですし、元来女性に黒はとてもお洒落でしょう。「今日の草履」をどんな女性がお選びになるか、とても楽しみにしています。
黒基調の龍プリントがこちらです。



少し久しぶりの雨になった、今日の角館です。それでも気温は昨日より高く、ほとんど寒さは感じません。桜の生長を促しそうな温かい雨は、軒下に残っていた雪を消してくれました。街の外観も春本番と言えるでしょう。

冬を仙台市で過ごすため、暫時角館をあとにした南相馬市のKさんご夫妻が、昨秋以来の元気なお顔を見せてくれました。昨日のブログで原発事故を書いたばかりでしたから、その奇遇にちょっと驚きです。

奥様が小さな声で私に言うのは、『お父さんったら、角館に来るのがよっぽど嬉しいんだか、今朝から上機嫌なのっ』。
南相馬市小高区の現状を私に話して聞かせるときこそ真剣な表情ですが、角館の話になるととたんに笑顔に変わります。ご主人自ら言うように、角館にはほんとに「癒し」を感じているのでしょう。

今日も「桜ざんねん旅」をひとつだけご紹介します。和服をお召しのおばさまお二人がお越しでした。せっかくの足袋ですから試し履きをお勧めすると、『あっ、なるほどっ』。その感触をすぐにご理解くださいました。
おひとりはご自分用を、もうおひとりは娘さんとお孫さんの分もお買い上げです。

角館を和服姿で散策される方は、そう珍しくありません。一般に秋田市や盛岡市といった比較的お近くの方が多いですから、おばさまにもそんなつもりでお住まいを訊きました。すると、『桜を見たくて知床から来たのよぉ』。
北海道の東端、世界遺産の「知床」ですよ。

初角館とおっしゃるおばさまたちに印象をうかがうと、『知床みたいなところは自然とか景色はいいけど、受け継がれる生活や文化ってないでしょ。角館にはそういうものを感じるわね。それに落ち着いた街並みって癒されるわよ』。

さすがは和服姿で初角館を愉しもうというお二人。ただ遊びに来たというのじゃなく、肌とか感覚で角館を吸収している感じさえしましたね。
『いつか必ず桜のリベンジを果たしてくださいねっ』と言うと、『ほんとね、また来ますよっ』。

桜はなくともこの角館で何かを得る。その何かの一番に挙がるものは、「癒し」じゃないかと思いますね。
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あれから一年と40日。

2012年04月22日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
中高年のおばさまには、赤やピンクに抵抗感を持たれる方がいます。かと言って地味な配色では楽しくないという場合、「今日の草履」のような配色が好まれるんですね。色の好みも十人十色、そんなやりとりが日々の実演席で繰り広げられています。

2012年の桜まつり、最初の週末を過ごしました。今日は風が肌寒い一日でしたが、昨日までの好天はまさに散策日和、桜はなくともお客様の笑顔がよく分かります。そしてずいぶん人数が増えてきました。昼食の団体予約は毎日ですし、県外からのマイカー組もはっきり増えています。

昨年震災の後、西宮家に草履コーナーが復活したのは4月22日でした。ちょうど一年前の今日なんですね。震災から40日が経ち、桜まつり初日がその日だったわけです。
けれども、2011年4月22日のブログに綴っているのは、桜まつりとは思えない人の少なさでした。そのツラさは今も鮮明に憶えています。

原発事故に伴い立ち入りが制限されている福島県富岡町。角館と共に桜サミットに参加している町です。桜の名所「夜ノ森公園」の映像が先日流れていて、美しい満開の様子でした。でもその桜を愛でる人は誰もいません。避難先で富岡町民が、『早く帰りたいです』と訴えていました。桜たちもまた、町民が帰る日を待っているのでしょう。

先日の地元紙に掲載された記事は、角館の桜を剪定した枝が、郡山市に避難している富岡町民へ届けられたというものでした。避難先でこもりがちになるご年配者を対象に、「桜染め」を指導するというものです。本当であれば地元富岡町の桜を使いたいところなれど、放射性物質が心配とありました。

「桜染め」は私もかつて体験し、「さくら草履」として販売したこともあります。淡いピンク色に染まる桜染めは、純朴な東北によく似合うと感じていました。角館の桜を素材に、福島県富岡町の人々が創る桜染め製品。いつか角館で販売されるかもしれませんね。

今日も「桜ざんねん旅」を訴えるお客様が多数です。札幌市からお越しの女性二人旅は、『角館の桜が見たくて、会社を休んで来たのにぃ』と悔しさを滲ませていました。
こうして日々お客様の「残念」を聞くのは、確かにツラいものがあります。でも一年前は、そんな会話すらわずかの機会しか与えられませんでした。

「桜ざんねん旅」は、この先一週間ほど続くと思われます。お客様には申し訳ないと思いながら、そんなおしゃべりができること自体、平和な証しとも思うわけです。
あれから一年と40日、角館には人が戻りました。被災地にも早く人が戻られるよう、あらためて祈りたいと思います。
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田舎の特権。

2012年04月21日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ21cm土踏まず付き〔四阡二百円〕
ピンクとオレンジは、女の子にとても人気の高い色と聞きます。おっと、「女の子」と言ってしまえば年齢が制約されますから、「女性」と言わなければいけませんね。21cmのサイズも配色も可愛い草履は、ぜひ中高年のおばさまにお勧めしたいです。
縁起物の「おかめひょっとこ」プリント、ピンク基調はこちらになります。



東京からお越しの女性ひとり旅。草履実演を見つけるや、すぐに関心の高いのが分かりました。こうしたいきなり「ハマる」タイプは、性別や年齢を問わず案外多いです。片足が編みあがるまでご覧でしたから、ほぼ一時間を丸太椅子で過ごされました。

お気に入りの配色をお選びの女性ですが、当初心配したのがアパート階下に音が響かないかです。これまでも何人かが同じ心配をされたのですが、常連さんの住所を見てみるとアパートやマンションが多数です。おそらく音に関しては、さほど問題はないんじゃないでしょうか。

女性にもその話を伝えると、『でもうちのアパートは、とっても古いですよ。隣りの部屋のカーテンを閉める音が、はっきり分かるんですから。新しく入って来た若い人たちは、みんなその音で引っ越しちゃうんですよ』と笑う女性。

『そんな住みづらいアパートなら、引っ越したらいいでしょ?』と言うと、『池袋駅から徒歩15分で、あんなに安いアパートなんかないですよぉ』。
結局世の中すべてが一長一短。すべてに好都合なんかないですよね。

私はこれまでの人生で、「集合住宅」に暮らした経験がほとんどありません。18歳で上京した際、三ヶ月間社員寮で暮らしたことと、あとは出張のビジネスホテルくらいですか。ですから階下や隣室に他人が住んでいる環境は、正直楽しくは感じません。

田舎に暮らす特権のひとつは、頑張れば一軒家に住めることですかね。
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