角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ストレスのあと。

2014年01月31日 | 家族の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
紫のシーチングをベースにした配色です。紫色も年齢にかかわりなく好まれる女性が多いように思います。かつて私は勝手なイメージで「大人の女性」を連想していたのですが、それも草履職人となってずいぶん認識が変わりました。紫色は女性のみならず男性でも好む方が確かにおります。

朝から暴風雪となりました。降雪量は10cm程度と思いますが、とにかく風に悩まされた一日です。元来風の強い土地ではないため、私はこの強風というものにストレスを感じます。それは愛犬フクも同じで、風の強い日は部屋の片隅からピクリとも動きませんよ。
明日は風雪が落ち着いて真冬日も脱しそうです。そして明後日は最高気温9℃でまた雨降りの予報が出ていました。こんな繰り返しであと一ヶ月の真冬を過ごすことになるのでしょう。

暦は二月を迎えました。トップページの実演スケジュールカレンダーも更新しています。世の中の二月と三月は年度末行事が盛んとなるわけですが、わが家も次女と三女がそれぞれ卒業を迎えることとなりました。そんな関係でいつもの月より少しお休みが多くなります。現在のスケジュールからさらにお休みが増えることも予想されますので、ご理解を賜りたく存じます。

2月16日は私が51歳になる誕生日ですが、そんなことはなにほどでもありません。今年の2月16日がとても重要なのは、次女の看護師国家試験日だからなんですね。この三年間の苦労を、中でも看護実習では食事もろくに摂れないほどストレスに喘いだ日々を、この試験にぶつけて欲しいと願っています。

思えば娘たちの受験には、いつもハラハラしていました。冷静に考えれば親なんてなにほどのこともできないものです。だからこそ逆にストレスを覚えるのでしょう。将来のスキルアップを除けば、まずこれが最後の受験になると思います。厳しい冬のあとには必ず春が待っています。強風のストレスのあとにも、暖かい日差しが待っていることを期待しましょうか。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昭和のあきんどの訃報。

2014年01月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
こちらもシーチング(無地)をベースにした配色です。組み合わせの黒地がまたお洒落ですね。こうしたデザインの場合、履いた状態でご本人が上から見下ろすと、緒の柄物が目に入ってきます。この点を選択基準にお選びのお客様がおりましたが、一理あると思います。
もう少しこのデザインの在庫を編んでおきましょう。

東京からお越しのおばさまひとり旅。やはり大人の休日倶楽部パスをご利用で、『この切符のおかげで秋田旅行を思い立ったんですよ』。年に三度ほどあるこのフリーパス。旅人にも観光地にも、その恩恵は計り知れませんよ。
おばさまは夏場だけ布草履をご愛用とのことで、角館草履の違いを試し履きで実感されたご様子。『ひとついただいて行きますぅ~』と定番配色①をお選びくださいました。

おばさまがおっしゃるのは、『小学校からの友人で、足の具合がよくない人がいるんですよ。もう三度も手術したんだけど、あまりよくないんですよねぇ。彼女にこの草履はどうかしら…』。
ひとまずおばさまがお買い上げくださった草履を履かせてみたいといいます。気に入ってくださるようなら通販対応は容易ですからとお伝えしました。子供時代からのご友人であれば、やはりそのお体も気になるのでしょう。

昨日訃報が届きました。町に暮らす友人のお父上が急逝されたとの報せです。私と喪主は小学校時代からの同期生で、お父上のことも昔からよく知っています。大きな体調の変化を聞いていなかった分、少し驚きの報せでありました。昨夜お悔みに訪れ故人とお会いしたところ、昔人にしては大きかった体がずいぶん小さく感じられました。

角館で靴屋を営んでいる施主宅は、お父上が初代で同期生が二代目になります。私たち昭和37年会も多くは今年52歳、親の他界は致し方ないところでありましょう。激動の昭和を生き抜いた角館のあきんどが、またひとりこの世を去りました。言葉には出さなくとも、その働きぶりで学ぶところの大きかった大先輩です。享年78歳、慎んでご冥福をお祈りしたいと思います。

明日の火葬に参列する都合で、草履コーナーの開店は午前11時くらいになるかと存じます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋田県の人口減少。

2014年01月27日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
シーチング(無地)をベースに利用するのは、まずセオリーと逆になります。様々なお客様の中には柄物を好まない場合もあって、この配色も一定の需要があるんですね。なかなかお洒落だと私も思います。「今日の草履」は、千葉県からお越しのおばさまがお持ち帰りくださいました。

角館に何度かお越しの方であれば思い出していただけそうですが、町の中心部横町十字路に「角館プラザホテル」があります。宿泊された方も多いでしょうか。このホテルが昨年の暮れで閉館しました。耐震化工事に莫大な費用が要ることで、解体のうえ新築されます。同時に経営者も変わるようです。

ホテルと一体化した建物に、スーパーマーケットや100円ショップ等のテナントが入居していました。そのすべても間もなく閉店されます。その核テナントであったスーパーは、この解体の一件とは別にかねてから退去の噂があったんですね。町中心部からの人口減少が、スーパーマーケットという業種を維持していくのに難しくなったのでしょう。

昨年のデスティニーキャンペーンで多くのお客様が訪れた、秋田市にある新県立美術館。その地区一帯は「なかいちエリア」と呼ばれる、秋田市のど真ん中です。ここに入居していたスーパーマーケットが、今年度限りで撤退すると報道されました。オープンからたった一年半、いささか驚きましたね。やはり売上の低迷がその理由のようです。

食料品や日用品の需要は、まるで人口に比例します。都市の空洞化がもたらす現象なのでしょうが、まず基本的に人間が少ないんですよ。現在の秋田県人口は104万人台まで減りました。その三分の一が秋田市民ですから、ほかの市町村は推して知るべしでしょう。
この104万人という数字、仙台市の人口と同じなんですね。東北最大の都市とはいえ、秋田県がまるごと呑まれてしまいました。

しかも仙台市はこの先急激な人口減少はないでしょう。秋田県は30年後に70万人台まで減る予測がされています。人の幸福度に人口は関係ないと思いながら、人が少なければ活力もないのも事実。未来の秋田県はどうなっているんでしょうか。凡人は嘆くのが精いっぱいであります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お土産とみやげ話。

2014年01月26日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
紫系で統一した配色は、落ち着いたお洒落さが感じられますね。紫色を好まれる女性は年齢問わず多いですから、落ち着いた色ではあっても案外お若い女性がお選びくださる気もします。楽しみに待つことにしましょう。

金・土と三月並みの高気温に恵まれ、屋根に乗っていた雪はだいぶ痩せた印象があります。今日の日曜はまた寒さが戻り、夕方からは風雪が強まってきました。これで冬が終わったとは思っていないにしても、ヘンに春を感じてしまった分だけちょっと恨めしい天気です。さて残り一ヶ月の真冬、どのくらい積もるのでしょう。

雪に馴染みの薄い土地で暮らす旅人が、今日も大人の休日倶楽部に乗って遊びに来てくださいました。千葉県からお越しのご夫婦旅は、やはり雪をひとつの楽しみにいらしたご様子です。
角館草履に高い関心をお寄せくださったのはご主人。『買ってやるからお前も選べよ』と、ご夫婦揃ってお気に入りの配色をお選びくださいました。
そんなご主人が草履と共に飾ってある「ちい散歩」のロケ写真を見つけると、『へぇ~、地井さんがここにも来たんだぁ~。とっても人柄がいいんですよ~』。



ご夫婦が暮らす千葉県匝瑳市は、地井武男さんのふるさとなんですね。しかもご主人は地井さんと同じ学校の後輩で、幾度となく会っているといいます。ふるさとの祭りが大好きだった地井さんは、毎年欠かすことなく神輿を担いでいたそうです。一周忌に合わせて発刊されたメモリアルフォトブックにも、祭りに参加する地井さんの写真が大きく掲載されていましたね。

お帰り際にご主人が、『いや~、いい土産ができましたよ!』。それは草履のお買いものだけではなく、遠い北東北の地で地井武男さんの思い出話ができたことじゃないかと思っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誤算あれこれ。

2014年01月24日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
青系でまとめた一品は、ベースの白抜きプリントが「卯」です。私の干支でもあるうさぎプリントは、どうしても在庫に置きたい布地の一つなんですね。これから組み合わせの色を変えて、何種類か編んでみる予定です。

JR東日本大人の休日倶楽部も四日目を迎え、はっきりとその恩恵が分かるようになってきました。今日はお昼前くらいから中高年のご夫婦旅を中心に、間断なくお客様がお入りです。少し久しぶりに西宮家で昼食を摂るツアーもあって、なかなか賑わいのある一日となりました。おかげさまで角館草履に関心をお寄せくださるお客様も多く、桜まつりに準ずるお買い上げをいただいています。冬場は「売る」より「作る」に重点を置いていますから、これはちょっと「嬉しい誤算」といえるかもしれません。

「嬉しい」の次は「悲しい誤算」をお伝えしなければいけません。本日行われた春のセンバツ甲子園選考会。21世紀枠で有力と云われていた角館高校が落選してしまいました。前評判が高かっただけに、この結果にはいささかショックを受けています。娘三人が通った高校とはいえ、私なんぞは母校でありません。それでもこれだけ悔しいのですから、関係者の落胆はちょっと推し量れませんよ。

冷静に考えて、下馬評というものをあまり過信しないほうがいいですね。上手くいけば選んでもらえるかもしれないという、他力本願もやっぱりいけないのでしょう。この選考にもれたところで、もう明日がないなんてことはありません。夏の大会で県予選を優勝で飾れば、だれもアテにすることなく堂々と甲子園に行けるわけです。神がもうひとつ試練を与えたと思って、今夏さらに強くなった角館高校野球部を見せてほしいものです。

明日からの週末、角館はまた少しお客様の数が増えると思います。今日のお買い上げを「誤算」とせず、しっかりお客様にご満足いただきたいと思っています。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土地に暮らす幸福度。

2014年01月23日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
艶やかな黒基調の和柄をベースに、黄色を三本配してみました。黒と黄色の相性の良さに加え、ベースの和柄が高貴にさえ映ります。落ち着いた可愛らしさがありますから、女性であれば年齢問わずお勧めできますね。

米蔵入口からお若い女性が二人入って見え、女性スタッフに一言二言声を掛けているのが分かりました。すぐに私の実演席へと案内された二人は、『ノースアジア大の学生ですが、アンケートにご協力いただけませんでしょうか?』。
こうしたことが過去にもあって、そういう対応は全部私のところへ来るんですよ。

どのような趣旨なのか訊いてみると、「地域福祉」といいます。瞬時に分かる単語ではなかったので詳しく聞くと、その土地に暮らして感じる「幸福度」のようなものらしいです。幸福度と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「ブータン国」でしょうか。最近県南の小学校がブータン国王へお米を贈り、丁重なお礼の手紙が届いたニュースがありました。

話を戻すと、具体的な質問は「角館に暮らしてその幸福度は100点満点中何点ですか?」というものです。あまり悩まず「92点」と答えました。点数の根拠を問われたので、土地の気風や伝統文化、景観や街並み、暮らす人々も自分に合っていると答えました。これって生まれた土地が肌に合うということですから、いたって単純な話なんですね。

逆に二人の女性に訊ねました。『あなたたちは生まれた土地が嫌い?』。二人とも答えは瞬時、『好きですぅ』。
世の中のすべての人間が故郷を好きかといえば、決してそうではないことも知っています。でもそれが幸か不幸かと問われたら、誤解を恐れず「不幸」と答えるでしょうね。生まれた土地に暮らしていて幸福度の点数を10点や20点と答える人がいたら、むしろその理由に興味がありますよ。

最後の質問は予想通り、『マイナスの8点はなぜですか?』。一冬の積雪がせいぜい50cmくらいなら、迷わず100点をつけたいところです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今冬の降雪量。

2014年01月22日 | 地域の話





今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
花火プリントと組み合わせては「満天の星空」、一色で編めば「降りしきる雪」を表現していた布地でしたが、いよいよこれで最後となりました。紺のシーチングをベースにほんの少しの雪を表し、タイトルは「曇り時々雪」でいかがでしょう。なかなかお洒落ですよね。

今日の角館もまさにそんなお天気です。朝から晩まで降りしきる雪はひとまず小休止、寒さこそ厳しいながらときおり陽も差す穏やかな一日でした。明日も今日と同じような予報ですが、金曜日から週末にかけてちょっと様子が変わりそうです。最高気温が5~7℃、晴れのあと雨の予報が出ています。屋根や樹木に乗った雪に注意が必要ですね。

秋田県内各地の積雪量というのは、内陸部の縦の線が最も多いです。その線に沿って角館より大曲、大曲より横手、横手より湯沢と増えていくんですね。中で今冬は、とにかく横手市の積雪量が半端じゃないんですよ。全国ニュースでも何度か取り上げられたようですが、1月半ばで160cmというのはいささか異常と思います。古い家屋が倒壊するのも不思議じゃないですよ。

角館は昨日と今日で少し融けましたから、おそらく100cmを下回るんじゃないでしょうか。知人で角館から横手へ除雪応援に行っている人の話を聞いても、『角館とは比べられねんシ』と言っていました。実際わが家の隣に除雪ブルドーザが積み上げた雪の高さを見ても、ここ何年かでは最も低いと思います。

1月も残すところ十日となり、真冬はあと一ヶ月くらいのものです。三ヶ月経てば桜の便りも聞かれるでしょう。これ以上雪害事故が起こらないよう祈りながら、春を待ちたいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オリンピック草履。

2014年01月21日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
布地の量が少なくなって一足分に満たなくなると、ベースではなく組み合わせに利用します。今日の草履もちょうどそんな使い方なのですが、同じ柄の色違いにしてみました。黒と赤のパランスもお洒落でいいと思います。

今日からJR東日本の大人の休日倶楽部が始まりました。真冬の上に初日ですから、さほど多くのお立ち寄りはありませんでしたね。
そんな中で埼玉県からお越しのご夫婦旅。『今までそういう切符があるって知らなかったんですよ~。使ってみるとこれはお得ですよね!』と奥様。近年この切符で日帰り旅行を愉しむおばさまが多いことをお教えすると、「なっとく~」とばかりに頷いていました。

角館草履にも関心を寄せてくださり、最後の1足となった「雪草履」をお選びです。ご主人も『気に入った色と巡り合えて良かったね!』と喜んでくださいました。
角館訪問は二度目ながらこれだけ散策するのは初めてとおっしゃるご夫婦に、少しばかり角館のご紹介をいたしました。ひとつに角館誕生400年を、東京オリンピック開催と同じ2020年に迎えるという話題です。すると奥様が、『じゃあそのときはオリンピック柄の草履が出来てるんじゃない!?』。

振り返ってみますと、2007年11月5日の「今日の草履」ではスペイン国旗、2006年12月1日の「今日の草履」ではドイツ国旗、2006年5月4日の「今日の草履」ではアメリカ国旗なんていうのも編みましたね。
さて「オリンピック草履」、この先六年をかけて考えましょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なるか センバツ出場。

2014年01月20日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
赤系でまとめた明るく楽しい配色と思います。男性にもいい色ですから24cmにしてみました。
着々と在庫が増えてきて、これから先どんなお客様がどんな色をお選びになるのか、考えただけで楽しくなりますよ。そういえば、降りしきる雪を表現した12月24日の「今日の草履」は、昨日新潟県からお越しのおばさまがお持ち帰りです。よくお似合いになりそうなエレガントなおばさまでありました。

今日の角館は大寒によく似合う寒さです。積雪量もまた少し増えて、おおむね1メートルに達しています。ただこれから数日は寒さが緩み、次の週末には雨の予報も出ていました。これだけ積もった雪で寒さが緩み、さらに雨となればこれもまた厄介ですよ。屋根の雪下ろしが今やピークのごとく見受けられます。

お客様の人影は相変わらず少なく静かですが、実は角館が熱く燃えている話題がひとつあります。それは春の選抜高校野球大会21世紀枠、角館高校の出場なんですね。今日現在まだ決まってはいません。これの決定日が四日後の24日、午後3時の発表を受けて花火が打ち上げられるそうです。多くの地元民が出場を確実視していて、もう決定の報告を待つばかりといった感じです。

母校ではない私でさえ、そりゃあ決まれば嬉しいですよ。めでたく決定のあかつきには、お立ち寄りくださる県外のお客様すべてにお知らせしようと思っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

引退を決意するとき。

2014年01月18日 | 製作日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
シーチング(無地)を三ヶ所に配するデザインは、主に在庫作りの冬場に編みます。在庫がなくなる初夏から晩秋にかけては、どうしても定番配色を優先するからなんですね。そうした意味でこのデザインは、冬から春までの期間限定のようなものです。様々な配色から選びたいお客様には、桜が咲きだす前をお勧めいたします。

草履実演をご覧のお客様から、いろんな質問をお受けします。中でも多いのが『一足編むのに何時間かかるんですか?』。
サイズによって若干異なりますが、おおむね二時間で一足編み上げます。もっとも二時間というのは編む正味時間で、イ草の下準備や布地の裁断、草履の骨となる縄綯い(なわない)を含めるとそれ以上ですね。

またパッチワークや編み物を趣味とするおばさまたちに言われるのは、『それだけ手を使ってよく平気なもんだな!?』。
何十年とパッチワークに親しんだおばあさんの中には、腱鞘炎で製作を断念した人さえいます。手作りの手工芸品は手に大きな負担となることを百も承知の人たちだからこそ、この言葉が出るのでしょう。

昨年のこと、スタジオジブリの宮崎駿監督が引退表明しました。引退を決意したひとつの理由が、手の疲労だったそうです。一年に描く枚数は膨大でしょう、ペンを握る手の負担はとても大きかったと思いますね。鎮痛薬なのか、利き手の指に絆創膏を巻いて描いている姿がテレビで放送されていました。

ブログでもときどき触れているように、草履を編む作業も手にそれなりの負担があります。毎晩カミさんから手のマッサージを受けるのも、ときに手の休養日として営業を休むのも、こうした負担に対するケアの一環です。どんな仕事でも職業病的なものはありますから、おそらく誰しも何らかのケアはしているでしょう。

「自営業に定年はない」とはよく聞く言葉です。まったくその通り、サラリーマンであればあと十年足らずで定年でも、私はさらに十年は続けたいと思っています。やがて引退を決意するときは、やはり草履が編めなくなったときでしょう。絆創膏だらけの手は、お客様に見せたくありませんからね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする