今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
紺基調の花柄プリントをベースに、合わせはエンジのいらかプリントです。
紺とエンジとの相性はもちろんのこと、ベース生地がなんともいえない「和」を表現しています。一見絣にも見える美しい布地は、昔の富裕層が着ていたような和服を想わせますね。平生地はこちらです。
大仙市大曲からお越しのご夫婦。こちらのご夫婦は米蔵の常連さんで、私の草履コーナーにも何度かお立ち寄りいただいています。今日は奥様のお買い物のお供なんでしょう、ご主人は実演席の丸太椅子に腰を下ろし、結構な時間をおしゃべりされました。
こちらの御宅も歴史を遡れば「武士」で、その後明治・大正期に「地主」として発展したんだそうです。西宮家とちょうど同じ歴史を持っているんですね。昭和初期の長者番付では西宮家をはるかに上回っていたと言いますから、私ごときではちょっと想像すら困難です。
そんな先祖を持つご主人が言うのは、『下手に資産があったがらダメだったのよ。子孫は勉強も工夫もしねぇで暮らしたがら、すっかり食い潰してしまったぁ。もちろん俺も含めでなっ』。
もちろん謙遜もあるとは思いながら、淡々とこうしたお話をするご主人に親近感を持ちましたね。
代々続く家では、その時代々々にどのような暮らしぶりだったかを、なんらかの資料に遺しているものです。過去帳には没年月日と享年、俗名と戒名を書き記しています。どんなに名家であっても当主の早世で直系の後継が不在になったり、火災で貴重な財産を焼失したりなんていう危機があります。
かつて大地主や位の高い武士の家系でさえ、これまでの数百年を順風満帆に暮らしたはずはないわけです。
逆にかつては貧乏のどん底に暮らした家でも、ある代に賢者が生まれ大逆転といったケースもあります。大河ドラマの準主役になっている「岩崎弥太郎」も、そうしたひとりではないでしょうか。土佐藩の下士に生まれ、お世辞にも裕福でなかった弥太郎が、やがて三菱財閥の基礎を創ることになります。
ひとりの人生の中にも浮き沈みがあるように、代々の家にも同じような「波」があるんでしょう。
でも先のご主人が、いわゆる「沈み」の時代にいるとは私には思えません。家の盛衰をときに笑顔を交えながら他人の私に話すということは、案外ご自身の人生は幸せなんだと思うわけです。