角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

財布紛失“事件”。

2016年02月28日 | 地域の話
数日前のこと、車の整備に詳しい知人男性が、陸運局へ自ら出向く「ユーザー車検」へ行きました。二点の整備不良を指摘され、秋田市内の部品店を回り何とか車検は通過したものの、ふと気づくとポケットに財布がありません。買い物の予定があったため現金は七万円超え、他に免許証、健康保険証、カード類が入っていたそうです。誰が悪いわけではない自分の過失であったにせよ、その事実を知った瞬間は「事件」ですよ。

すぐに警察へ行き紛失届を出しましたが、むしろ現金が多めに入っていたため戻ることはないだろうとあきらめたそうです。しかしその30分後、陸運局へ出入りしている業者さんか職員さんに見つけられた財布は、無事に知人の手に戻ることとなりました。運が良かったというだけでなく、日本人の高い道徳心をよくあらわした出来事と感じ入ったものです。

「財布紛失」で思い出すのは、今から三十年前のこと。二十代前半だった私は勤務する会社の仕事で東京へ出掛けました。空港跡地が会場のエラく大きな物産展です。便意をもよおした私は最も近い仮設トイレに入りました。ズボンの後ろポケットから財布を取り小さな置台へ乗せたまま、用を足したあと出てきてしまったわけです。

気づくまで一時間は経っていたでしょうか。すぐにトイレを探したのですが、当然のことながらもうそこにはありません。ひとまずイベント本部を訪ね事情を話すと、「これじゃないですか?」と見せられたのは私の財布です。届けてくださった方のお名前を訊くと、最後に「子」がついていました。どうやら私は女子用トイレに入ったようです。財布を失くしたことより、もっと「事件」になるところでした。
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名称は「はじはじ」。

2016年02月27日 | 地域の話





今日の草履は、青森県弘前市のおばさまのオーダー草履です。お好きな色が「黄色」とおっしゃるおばさまにオリジナル配色でお作りしました。
ご友人とお二人でお越しのおばさまは、何年か前に角館草履をお求めだったとのこと。お買い換えを目的にお訪ねくださったというのではなく、偶然入った西宮家がかつて草履を買ったお店だったという感じでしたね。それでも「ここに入って良かったわ~!」のお言葉が私も嬉しく思いました。明日の便で出発です、早速履いてくださいね~(^^)

ふと思いついて撮ってみました。幸運、吉兆、めでたしめでたし!!




かつて「一つ年上の女房を探すに金のワラジを履け」などという言葉がありました。一つ姉さん女房は男性にとって幸運という意味なのでしょう。年齢はさておき、昨今よく聞かれるのが「婚カツイベント」という言葉。未婚の男女に出会いの場を作るべく、あちこちで様々な事業が展開されています。
昨夜開かれた角館あきんど塾の例会でも、案件の一つがこの「婚カツイベント」でした。

昨年の六月頃から少しずつ話し合いを進めてきたのですが、いよいよ今春にも第一回を開催したいと思っています。詳細はまたあらためてお知らせするとして、テーマは「簡単明瞭」と「継続」です。準備に手間ヒマの掛かることは出来るだけしません。その代り同一会場完全貸切で、年に数回開きます。
いかにも「結婚相手を探しています」というのでは、特に女性が抵抗感を持つようです。そこでネーミングを考えていたところ、ひとりの男性会員が面白い名称を提案してくれました。

「はじめましてからはじめましょう!」略して「はじはじ」。
角館あきんど塾流の婚カツイベントは、参加者と会員が同じテーブルで晩メシを食いながら展開されます。こうしたタイプの婚カツ事業こそが「はじめまして!」かもしれません。
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かくありたい生き方。

2016年02月25日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡六百円]
ワインレッド基調の花札プリントに、紫の無地を組み合わせてみました。一般に男性用サイズの25cm以上でも、こうした紫基調をときどき編みます。これは私の好みということもあるのですが、実際に意外と早く選ばれていくんですね。男の色気とでもいいますか、ナイスミドルになかなかお洒落だと思います。さて「今日の草履」はどのような男性がお持ち帰りになりますか、その日を楽しみに待ちたいと思います。

早朝夜間に自宅で草履を編むときは、耳の友がラジオです。先日の朝、徳光和夫さんがパーソナリティーを務める番組に、堺正章さんがゲストで出演していました。長いキャリアを持ちながら、今もバラエティ番組の第一線でMCを続ける堺正章さん。徳光さんの「そこまで頑張るのはどういったお考えからですか?」の問いかけに…

『ボクね、大物になりたくないんですよ。大物になっちゃうとみんな大事にはしてくれるけど、若い人たちが気軽に声を掛けてくれなくなっちゃうでしょ』

堺正章さんのこの言葉を聴いて、四年近く前のとある出来事を思い出しました。2012年6月29日、この日俳優の地井武男さんがこの世を去りました。地井さんとの直接のご縁は「ちい散歩」角館ロケの20分余りしかありませんが、実演席に掲示してあるロケ風景の写真を通して、今なおお客様との数知れないご縁に発展しています。
朝のニュースで訃報を聞いた私は、ロケ後メールでご注文をくださった女性ADさんへお悔みのメールを送りました。4、5日経って届いた彼女からの返信は…

地井さんを思い出すとき、ちい散歩の地方ロケがとにかく忘れられません。宿泊になることが多く、夕食の後まで地井さんのお話を聞けた思い出を一生忘れません。

当時女性ADさんは二十代だと思います。そんな若い女性が七十にもなる地井さんとの会話が忘れられないといいます。華やかな主役を飾ることはなかった地井武男さんは、ひとまず堺正章さんの言葉を借りれば「大物」ではなかったかもしれません。しかしその世界で働く若者たちにしっかりとその存在感を遺しました。おそらく堺正章さんもそうした生き方を理想としているのでしょう。あえて私は「大物」と言いたいですよ。

私も五十三歳を迎え、気付けば周囲に年上がずいぶん減りました。明晩は角館あきんど塾の例会がありますが、ここでもほとんどが年下です。堺正章さんや地井武男さんのようには到底なれないとしても、「かくあるべし」は肝に銘じておきたいと思っています。
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手に入れる達成感。

2016年02月22日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[五阡二百円]
同柄色違い三色で「さくら三昧」を編んでみました。一番上が定番配色⑧の「夜桜」です。一番下のエンジ基調は準定番の扱いでときどき利用しているのですが、真ん中の白基調は「汚れ」の点で敬遠していました。ところが装飾用ミニ草履に使いたいというカミさんの要望で仕入れてみると、これがなかなかいいんですね。二ヶ月後には桜満開、春爛漫の角館になっていることでしょう。

秋田市からお越しのおばさまが実演席に着くなり、『ようやく買いに来たわよ~!』。少しして思い出しました。昨年の夏か秋くらいでしたか、そのときは持ち合わせがなかったかの理由でお買い上げを断念したおばさまなんですね。あれから数か月の間、「ゼッタイ買いに行く」と心に決めて本日達成したというわけです。売り手が言うのもナンですが、「おめでとうございます!」の心境でしたね。

人には「手に入れたい何か」が一つや二つはあると思います。おカネや地位なんかは話題として楽しくありませんし、また信長や秀吉のように「天下」と云われても大きすぎます。まず日常に存在する中で「欲しいモノ」ですね。
人は歳をとると欲しいモノがなくなるといいます。代わりに多くの人々が挙げるのが「健康」なんだそうです。私も五十三歳になって、その点はごもっともと思いますよ。

今日のおばさまが執念を持ってお求めにいらした理由も、角館草履に健康効果を感じたからではないでしょうか。草履を手に入れた達成感よりも、これから感じる足の健康感のほうがより大きいことを願っています。
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アジアの中の角館。

2016年02月20日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[五阡二百円]
赤の折り鶴をベースに、黒の舞子さんを組み合わせてみました。赤と黒のコントラストもそうですが、プリント柄が可愛いですね。お若い女性の手に渡るのか、はたまた中高年の女性に選ばれるのか。在庫作りが主な冬期間は、そんなことを頭に浮かべながら作業を進めています。桜開花までおおむね二ヶ月、もうすぐそこまで来ている気がしますね。

この時季は例年台湾からのお客様が多いです。雪が楽しくて仕方ないのでしょう、西宮家中庭で小さな雪だるまを作って遊んでいる姿が見受けられます。「非日常を愉しむ」という旅の原点を想えば、実に素直な旅人ではないでしょうか。
台湾のお客様が多いのは自然に増えているばかりでなく、やはりそこには日本側の仕掛けがあるんですね。今日の西宮家ではそんな一端を垣間見る収録がありました。







山形と仙台の大学に留学中の台湾人男女二人が、冬の東北を旅するという観光VTRの撮影です。草履実演に立ち寄った二人が、草履職人から角館草履の説明を受けるというシーンなんですね。台湾で放映されるときは字幕スーパーが表示されるのでしょうが、テレビ映りより説明の文言が気になってしまいました。
いずれにしても角館の観光PRに少しでも役立てるのなら、それこそ草履実演の原点であり、面目躍如と思っています。

これから草履を編みながら想うのは「どんな女性がお選びになるかな」だけでなく、「どこの国の女性かな」という時代に入るかもしれませんね。
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若返る草履職人。

2016年02月18日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡六百円]
紺の唐草に赤のとんぼプリントを組み合わせてみました。色調としては定番配色①に近いのですが、とんぼプリントが男性用をイメージさせます。「とんぼ」は前だけを向いて縦横無尽に飛び回ることから、日本の武将が縁起を担ぎ兜の前立てに使っていました。別名「勝ち虫」と云われるそうです。時代を超えて、とんぼには男子が似合いますね。

一昨日五十三歳を迎え、facebookの個人ページにたくさんの方々からお祝いメッセージをいただきました。その中に体を気遣ってくださるコメントが複数あって、もうそういう年齢なんだなと感じ入っています。草履職人生活も十二年目に入り、確かに体のケアは日常になりました。家族からももう少し休みを増やすよう進言されているのですが、もうしばらくは月3~4日程度のお休みで頑張っていこうと思います。

今日のお昼頃、ケータイが鳴りました。出てみると女性の声で、『今日も西宮家にいますか?実演を見せていただきたくて…』。かねてよりのご愛用者で、ご自身も角館草履に挑戦するため、草履台やらイ草材料をお求めくださっていた女性です。ようやく自由になる時間がとれたというお話を聞くと、今日が私の休みでなくて良かったと思いましたよ。

常連さんやお顔馴染みではない旅人との出会いは、まさに「一期一会」と心得ています。誕生日の日に出会った千葉県からお越しのおばさまお二方が、それぞれお好きな配色をお買い上げでした。武家屋敷通りの見どころなどおしゃべりすると、記念にと三人で写真撮影です。初角館の思い出に少しは役立ったかと思えば、その日一日西宮家にいた甲斐があったというものでしょう。

毎朝スマホに届く「致知一日一言」。誕生日に届いた言葉は奇しくも…

何事にも一期一会の気持ちを忘れないこと。

人に対してだけでなく、仕事に対しても一期一会。

そう考えると、情熱が持てます、若返ることができます。

松原泰道(南無の会会長)



これまでの年間実演日数は、おおむね320日です。一期一会を忘れず若返ることが出来れば、大きく減らすことなく務められるかもしれませんね。
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わが子からのおめでとう。

2016年02月14日 | 家族の話







今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き[五阡八百円]
濃い緑基調のふくろうプリントに、うぐいす色のいらかプリントを組み合わせてみました。「清々しい」「若々しい」に表現されるような、爽やかな草履に仕上がったと思います。縁起物のふくろうですから、この春新たに社会人となる若者や、新郎さんもしくはパパになったばかりの男性にも良さそうですね。

1月17日のブログで父親の育児について触れました。その際話題とした男性国会議員は、どうやら取り上げる価値のない馬鹿野郎だったようです。彼の過ちについては触れませんが、どうしても気の毒なのは奥さんと生まれた赤ちゃんでしょう。子どもが大きくなってこの一件を知るときを思えば、他人事とはいえ心が痛みますよ。

私事ながら、明後日五十三歳の誕生日を迎えます。娘たちの勤務シフトの都合で、先ごろ家族が前倒しのパーティーを開いてくれました。ここ二年は次女の引っ越しなどのため私も仙台に滞在しており、私の誕生日を家族全員角館で過ごすのは三年ぶりです。
未だ教育ローン返済中の身なれど、まずは三人を無事育て上げたと思っています。長女の手作りケーキをはじめ、みんなの感謝の意がパーティーにも表れていました。オヤジは感無量であります。








先の国会議員も父親の立場は一生変わるものではありません。やがてわが子に誕生日を祝ってもらうには、まず心を入れ替えることでしょうね。
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人生の軌道修正。

2016年02月13日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ21cm土踏まず付き[四阡八百円]
こげ茶基調の花柄プリントに、オレンジを組み合わせました。ベース色にシブさがありながら、カラフルな花柄プリントが地味さを感じさせません。明るいオレンジを組み合わせたことで、むしろ可愛いらしさが強調されたと思います。
実はこちらの草履、22cmで編むつもりでした。それが編み進む途中予定より小さくなっていることに気づき、21cmに変更したものです。在庫品だからOKの「軌道修正」でした。

今日知人男性二人が、一人の若者を連れてきました。大阪出身の24歳というその若者は、かつて自転車で旅をしている途中角館に滞在し、伝統工芸「樺細工」を知ったそうです。その後地元へ戻ってからも樺細工が頭から離れず、家族にも相談のうえ一念発起したのが樺細工職人への道といいます。
私が角館草履を発表するに至る経緯も布草履を見たのが最初ですから、そうしたことが人生に起こることはなにほど不思議とは思えません。まして角館に暮らしたいという若者が目の前にいることは、地元民として嬉しくないはずがありません。

ただ気掛かりなのは、産地の情報など一切持たずこのまま角館に暮らしたいとするビジョンの甘さです。いきなり体一つで「樺細工職人になるにはどうしたらいいですか?」と訊かれても、受け入れる側はそう簡単ではないでしょう。昔のように住み込みで技術を学ぶなどという「丁稚奉公」は、さすがの田舎でも時代錯誤です。

まず一日か二日滞在したうえでもう一度よく考え、軌道修正も選択肢に含めるのが良いと感じた次第です。
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二十年ぶりの紙風船。

2016年02月12日 | 地域の話
冬場でも角館から車で一時間足らずのところに、「仙北市上檜木内」という集落があります。普段は山間の小さな集落なのですが、毎年2月10日だけは人でごった返すんですね。それは小正月行事の一つ「紙風船上げ」。巨大な紙風船にガスバーナーで熱風を送り込み、キンキンに冷えた冬の夜空に放します。いくつもの紙風船が真っ暗な空へと吸い込まれる様子は、「幻想的」という言葉が最もしっくりくるでしょう。二十年ぶりに観てきました。















江戸時代の科学者平賀源内が、阿仁鉱山視察の途中同地区に伝えたと云われます。その後地域の先人たちが「五穀豊穣」「家内安全」を願い、また冬の娯楽として現在まで続けられてきました。上檜木内地区は小さな集落が点在していて、その集落毎に紙風船を上げます。仮設のテントやビニールハウスでは温かい食べものを提供していて、それも集落単位でした。強い団結力が傍目にもよく分かりましたね。

その翌日、つまり昨日のこと、千葉県からお越しのおばさま四人グループがお立ち寄りでした。うちのおひとりが、『一年ぶりね~。あれからずーっと履いてるわよ~!』。昨年に引き続き二年連続の紙風船見物だそうです。言われてみて一年前の記憶が蘇りました。おばさまはこのブログもお読みくださっているとのことで、『ブログ面白いわよ。本になるんじゃないの!?』。さすがにそういう予定はございません。

明日と明後日は角館の小正月行事「火振りかまくら」です。横手市の「かまくら」や湯沢市の「犬っこまつり」も開幕間近で、秋田県の冬行事が出揃いました。
雪と寒さに明るいイメージは少ないですが、そんな土地で脈々と伝えられてきた行事ばかりです。過疎化、少子高齢化が避けられない現実だからこそ、未来へ伝える工夫が重要と思います。それこそ「本」にして遺すべきじゃないですかね。
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見ている子どもたち。

2016年02月07日 | 地域の話







今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[五阡四百円]
ピンクの「御殿まり」に、赤の「折り鶴」を組み合わせてみました。可愛らしさで高得点をいただけると確信しますが、双方のプリント柄が日本の美しい文化と感じています。かつて日本の女の子が遊んだ「毬」と「千代紙」、優しさと美しさを兼ね備えた「優美」とは、こうしたものを云うのではないでしょうか。後世に伝えたい伝統文化と思います。

秋田市から二ヶ月に一度くらい遊びに見える、四歳の女の子がいます。おじいちゃんとおばあちゃんが西宮家レストランの常連さんで、一緒についてくるのが女の子というわけです。始めの頃は恥ずかしがっていたのに、何度も顔を合わせるようになるとレストランからひとり出てくるようになりました。おじいちゃんたちも私のところにいる分は安心と思っているようで、最近はご自身の食事が終わらないと様子さえ見に来ません(笑)

いずこも同じで、四歳くらいの女の子はよく喋ります。こちらも面白いので付き合っていると、パパとママの話題は言うに及ばず、『おばあちゃんはね、いっつもケーキばっかり食べてるんだよぉ』。直後に見えたおばあちゃんのお顔を直視できませんでした。
子どもというのは家族をよく見ています。小学生にもなれば子どもの目線ながら、「世間」さえよく見ていますよ。中学生、高校生なら推して知るべしですね。

私が十八歳のときに他界した親父は、無類の酒好きでした。夕暮れになると親父の友人が訪ねてきて、おふくろの帰宅を待たず酒飲みが始まります。陽気に飲んでいるうちはいいのですが、次第に酔いが回ると歩くのもおぼつかなくなり、ある友人はトイレへ立った際風呂へ落ちました。子供心に「ああはなるまい」と思ったものです。一種の反面教師ですね。

このブログでも何度か触れた昨年のお祭り事故。私の同期生がヤマとヤマに挟まれ命を落としました。事故防止とこれからのお祭りの在り方を協議する組織が立ち上げられ、先ごろお祭り実行委員会に対し答申書が送られています。その経緯の中で、角館町にある小学校、中学校、高校の児童生徒へアンケートが回され、結果が新聞やネットで公開されました。

複数の子どもたちが挙げたのは、大人の「酒」についてです。「泥酔状態でヤマについている人がいる」「お祭りとはいえ朝から酒を飲む必要があるのか」。かつて私が子ども時代に感じた疑問と同じですよ。
私も大人になって酒を嗜むようになり、泥酔、酩酊の状態を何度か経験しました。娘たちの前でそうなったことがあるか記憶は定かでありませんが、もしその姿を見ていたら「ああはなるまい」と思ったでしょうね。

角館のお祭りの在り方について、事故以前からさまざまな指摘があったことは過去のブログで触れています。取り返しのつかない大きな代償ではありましたが、これでお祭りが良い方向へ進むんじゃないでしょうか。酒のだらしなさは昔のほうがヒドかったと私は思っています。とはいえ今も子どもの目に余る状態であるなら、この指摘は真摯に受け止めるべきでしょう。

また一方、子どもたちは大人たちを冷静に見ることで、「反面教師」とするのが大事とも感じています。もうすぐこの伝統文化を継承していく担い手が、自分たちに回ってくることだけは間違いありません。
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