角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

プロのリスペクト。

2014年11月30日 | 地域の話
朝ドラ「マッサン」の視聴率が、開始当初と比較し若干下降線を描いているそうです。この理由を分析するに、働こうとしないマッサンに世間が嫌気を差したのでは…ととあるネットニュースにありました。日本初の本格ウイスキー造りに執念を燃やす若者が主人公なのに、なんだかんだと理由をつけてその道が進展しないのを嫌ったという見方です。確かにここ一、二週間はほとんどストーリーが進んでいませんでしたからね。

これにある放送業界関係者が独自の推論を展開していました。ニッカウヰスキーの創業者は、まさに「職人魂」を持った御仁だったそうです。それなのにマッサンはウイスキー造りの場が得られないと、いきなり小説家になるだのパン職人になるだの言い出しました。本当に職人魂を持った人が、小説家やパン職人ならなれるかもしれないと考えること自体がおかしいというわけです。

実家の日本酒造りに対しても、その伝統技術に「リスペクト」がないとも書いていました。ものづくりに携わる人は異業種の作り手に対して、普通は尊敬の念を抱きます。少なくとも「それくらい俺だってできるさ」のような考えは持たないものです。その業界関係者の解説は、日本人が描いている「職人像」とマッサンが離れすぎているのが視聴率下降の要因ではないかということでした。

もちろんドラマも映画も舞台も脚本家には意図があるはずです。ストーリーの進展を遅らせたのは、視聴者をやきもきさせることに狙いがあったのかもしれません。子どもみたいな言動は、精神的にも本当の職人へと育っていくマッサンを際立たせる狙いがあるのかもしれません。いずれにしても今後の視聴率は改善されていくと私は思っています。

ものづくりをしている人が、異業種の職人に対して尊敬の念を抱く、あるいはシンパシーを感じるというのは本当ですね。そこに至る研究や稽古、日常の鍛錬を自身の過去と照らし合わせることが出来るからだと思います。ときに私の草履実演を観て、「やってみたい」というお客様がいます。関心を持ってくださるのですから素直に嬉しいですよ。けれどももしすぐに履ける草履が出来上がると思い込んでいたら、それはこれまでにものづくりの経験がない人でしょうね。

今しがた落語を聴いて戻りました。まさに「喋りのプロ」、感服して帰ったところです。あの芸を観て万に一つ「私にも出来るかも…」と思った人がいたなら、まず明日西宮家に来てほしいものです。私でさえ太刀打ちできないことをご説明して差し上げましょう。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬場の修行。

2014年11月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
朝ドラマッサンシリーズから「泉ピン子さん風草履」を編んでみました。中高年の女性ほど華やかな草履を履いてほしいのは本心です。でもすべての皆さんがそれを良しとはしません。ちょっとシブ目のこちらも、きっとお選びくださるおばさまが現れると思いますが、そのとき「泉ピン子さん風」を伝えてよいものかが思案です。

と思っていた矢先、由利本荘市から五人のおばさまが元気に入って見えました。うちのお二人が履き心地を気に入ってくださり、少しだけ出来上がっていた在庫の中から「今日の草履」もお選びです。お歳の頃はやはりピン子さんくらいでしょうか。朝ドラファンの年齢層でもあることから、「あたしはあんなにイジワルじゃないわよぉ」と思われてもナンですから話しませんでした。

さて先週に引き続いて恐縮ですが、明日一日お休みをいただきます。過日不幸のあった知人宅への弔問と、冬場の在庫作りに使用する材料の仕入れをしてきます。それともう一つ、実演席でとても重要な勉強をして来ようかと思っています。それは「語り」なんですね。



草履技術もさらなる修行が必要ですが、こちらも伸びしろはまだまだあると思っています。お客様の少なくなる冬場は、「草履」も「語り」もむしろ修行にうってつけの季節であります。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

草履職人と男の子。

2014年11月28日 | 実演日記




今日の草履は、東京都品川区の女性のオーダー草履です。母上様のお誕生日プレゼントとのことで、ご希望配色は「ピンク系で!」。メールには母上様のお歳も書かれてありましたが、ピンクの草履は私も大賛成です。三本の帯が真っ赤なイチゴにも見え、美味しそうな草履に仕上がりましたね。今朝の便で出発しました、到着は12月1日と思いま~す(^^)/

誕生日を迎えられる母上様は秋田市にご実家があり、今年の四月娘さんもご一緒にお里帰りでした。その際初めて角館草履と出会い、母上様はご自分用の草履をお買い上げだったといいます。それが秋田市のお宅へ戻り角館のお土産を開く中で、母上様の母上様、つまりご注文主のお祖母ちゃんが草履を見つけると、『おや~、これいいごどっ!』とすっかり気に入ってくださったご様子。その場の空気は完全にお祖母ちゃんへのお土産と化したんですね。

様子が綴られたメールを読んで、母上様には申し訳ないのですが思わず笑ってしまいましたよ。東京へ戻られてからもしばらくその話題が続いたせいで、娘さんはいつか母上様に角館草履を履かせてあげたいと思っていたんだそうです。そして迎える十二月の誕生日、おそらく母上様にはサプライズなんだと思います。手渡す場面に私がいられないのが残念であります。

今日秋田市から一組の母子がお訪ねでした。子どもは小学一年の男の子、お母さんは過去に一度お会いしています。6月20日のブログにご紹介の「一杯の味噌汁プロジェクト」を主宰する女性、五ヶ月ぶりの再会でした。初対面の後はfacebookで具体的な活動を知り、その信条と信念にはいつも感心しているところです。
『この子が手づくりに一番興味があるので、今日は学校を休ませて連れてきたんですぅ』と女性。瞬間責任の重さを感じる草履職人でありました。

しかしお母さんの思惑は見事に当たりましたね。男の子は三度実演席を訪れ、手づくりの面白さを漠然とでも理解してくれたようです。角館草履の芯であるイ草の縄をプレゼントすると、動物を模した形に作り上げていくんですよ。子どもの想像力をまたあらためて見せつけられました。
三度目はお母さんがレストランでコーヒーを飲んでいるうちに、ひとり抜け出してやって来ました。お母さんは味噌汁作りのプロフェッショナルですから、『〇〇クンもやっぱり味噌汁好き?』と訊くと、悪戯っぽく笑いながら軽く首を傾げました。これはお母さんに内緒です。

ご自分用と母上様用の草履をオーダーされたお母さんが男の子に言うのは、『自分で仕事をしてお金を稼げるようになったら、そのときの自分の好きな色で創ってもらうといいよ』。男の子はしきりと値段を気にしていました。
子どもに学校を休ませることを奨励はできないものの、角館の一日が学校の一日に勝らずとも劣らなければそれで良かったと思っています。あと十数年先、男の子が自分用の草履をオーダーに訪れるとき、もしかしたらお母さんの誕生日プレゼントもオーダーされるかもしれませんね。
コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

田舎の人口流出と流入。

2014年11月27日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
茶の唐草をベースに、散りばめられた金がお洒落な茶色を組み合わせています。先ごろお亡くなりになった「高倉健さん風」を表現したつもりなのですが、いかがでしょうか。健さんのお人柄は寡黙で実直と云われますが、実は人様への心配りが素晴らしいのだそうです。「寡黙」は私に見習えないとしても、理想の男性像ではあると思います。

一昨日の新聞に秋田県人口の速報値が載っていました。103万人台まで減っています。過去のブログにも書きましたが、およそ二十年前は120万人がこの秋田で暮らしていました。毎年ほぼ1万人ずつ減って、100万人を割るまであと三年かからないかもしれません。十年後、二十年後は推して知るべしでしょう。
冬が来てまた春が来れば、夢と希望を胸に若者たちが都会へと巣立って行きます。いつか戻ってほしいと願うのは、家族も県民も同じと思います。

22日の角館あきんど塾忘年会で、女性お二人との出会いがありました。お一人はかねてからの知人がお連れになった方で、兵庫県に生まれ育った39歳。最近秋田県の地方都市に住まいを設け、培った技術を元に教室を開く準備の最中でした。
こちらの女性がなぜ故郷を飛び出し秋田県で暮らすことになったのか。最大の理由は「チャレンジ」といいます。そのまま故郷で生涯暮らすのもひとつなれど、それでは経験できずに終わる多くがあるのではないか。女性はそう考えたのだそうです。

兵庫県時代から秋田出身の知人がいて、一度訪れた秋田県がどうしても頭から離れなかったといいます。それでチャレンジする土地が秋田県に決まったというのですから、不思議なご縁と言うしかありませんよ。今後の人生スケジュールはまったく白紙といいます。秋田で良縁に恵まれれば終の棲家にもなるであろうし、場合によっては故郷へ戻ることになるかもしれない。言ってみれば「川の流れに身を任せ」ですね。

もうお一人は劇団わらび座の常連さんで、滋賀県にお住いのおばさまです。ちょうどその晩は食事席がすべて埋まっていて、おばさまはたった一人なのに食事ができないでおりました。あきんど塾メンバーであるわらび座の舞台俳優がおばさまに気づき、私たちのテーブルへ招いたことが出会いとなります。
閉会までご一緒でしたから、おおむね二時間ほどをわれわれと共に過ごしました。かなり愉しんでくれたご様子です。

私が西宮家で草履を編んでいることをお話しすると、翌々日わざわざ訪ねてくれました。そこでおばさまの当地に対する思い入れを聞くことになります。
六年前にとある公演でわらび座を知り、すっかりファンになったおばさまは幾度となく当地を訪れていました。いや、「幾度となく」などという言葉では済まされません。近年は月に二度のペースで滋賀県からお越しだそうです。

わらび座から車で10分とかからない角館ですから、おばさまの知人はこの町にも複数おりました。お祭り見物に張番の中まで案内した男性もいれば、たった二度の面識で自宅に泊めてくれた女性もいたといいます。今夏角館高校の甲子園では、角館人にまじり応援席にいたそうです。それらは即ちおばさまのお人柄と、当地を愛する心が伝わるからなのでしょう。
あきんど塾メンバーの中には、千葉県から単身移り住み角館で喫茶店を営む女性もいます。理由や経緯は様々でも、秋田県に深くご縁をお持ちの人は大勢いるんじゃないでしょうか。

夢と希望を胸に都会へ巣立つ若者たちの一方で、秋田へ「夢」「癒し」「愉しさ」を求めて訪れる人々がいます。人口減少、人口流出を止めるのは容易い話ではありません。けれども流入する方々を受け入れ共に愉しむことは、なにほど難しいとは思えません。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時代に生かされる。

2014年11月24日 | 地域の話




今日の草履は、横浜市戸塚区の女性のオーダー草履です。ご希望配色は「紺系おまかせ」。濃淡を活かし、可愛らしくもさっぱりした草履を編んでみました。経験則から申し上げて、お若い女性ほどこうした配色をお好みになります。気に入ってくださることを願いながら、昨日の便で出発しました。明日には届くと思いますよ~(^^)/

20日から三日間のお休みで、冬を迎える準備が済みました。最終日の22日は角館あきんど塾の忘年会があって、午後から劇団わらび座のミュージカル「げんない ~直武を育てた男~」を観劇し、夕方からわらび座内の食事処「ばっきゃ」で宴会というスケジュールです。「げんない」は今年四月の初演日に観劇していますが、22日がちょうど180回目の公演と聞きました。この間いくつもの手直しが図られたと見えて、明らかに違う部分が数か所ありましたね。日々進化を遂げている証しでしょう。

「時代にそぐわない」という言葉を見聞きします。その多くは時代遅れを意味し、日々進化を遂げる中で無用とされるモノたちです。場合によっては「人の考え」もそうした中に含まれるでしょうか。ときにこれが逆の意に使われることがあります。生まれてくるのが早すぎた人、それが主人公「平賀源内」です。劇中に出てくる文言が、「生まれてくるのが100年早すぎた…」。彼の発想は鎖国の江戸時代に受け入れ難かったわけです。

けれども自由奔放に夢を追う生き様、あるいは優れた人材やモノを見抜く才覚は、ときの人々をどれほど勇気づけ、また愉しませたことか。角館の絵師小田野直武もその一人でしょう。源内も直武も100年後に生まれていたなら、さらなる偉業を成し遂げたかもしれません。獄中で無念の最期を遂げることもなかったかもしれません。そんな「…たら」「…れば」を言うよりは、やはりあの時代だからこそ彼らを必要としていたと思うほうが愉しい気はしますね。

しばらく前の酒席で私が商いの先輩へ、『もう少し前から角館草履を始めればよかった』という話をしたことがあります。するとその先輩は、『いや、もっと早くに始めていれば、ここまで認められねがったかも知れね』と言いました。確かに角館草履を発表した当時、世の中は布草履ブームの真っただ中にありました。イ草を芯にする角館草履との比較対象が、道の駅等あちこちにあったのは幸いしたかもしれません。

その時代々々に生かされたということは、やっぱり必要とされたからだと思いたいものです。
コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

言い間違いも旅の想い出。

2014年11月19日 | 実演日記




今日の草履は、静岡県焼津市の女性のオーダー草履です。ご希望配色は「お任せ」でしたので、可愛らしくもちょっと落ち着きのある色調にしてみました。かねてからご愛用者だったこちらの女性は二年前のクリスマス、当時お付き合いしていた男性に角館草履をプレゼントされました。その後お二人はめでたくご結婚され、今回はご自分用のお買い換えです。「ちょっと落ち着きのある」としたのは、ミセスを表現したわけですね。気に入ってくださることを願って、本日の便で出発しましたよ~(^^)/

昨日のこと、草履実演をご覧だった女性に「さんびぐねんシか?」と言おうとした瞬間、女性が秋田人ではないことが頭をよぎりました。とっさに標準語に直したところ、『寒くないですか?』が『寂しくないですか?』に変わってしまいました。ひとり旅の女性に対してですから、明らかに失礼なおっさんですよ。しかも直したとはいえ『さんびしくないですか?』ですから、訛りのヒドい田舎の軟派おじさんですね。

三女が中学生だった頃、所属していた卓球部親の会の会合に出席したときです。会長が冒頭あいさつで『今日はお忙しいところを…』と言おうとして出た言葉が、『今日は美味しいところを…』。ほんとにおいしいところを持っていかれました。
もうひとつさらに昔、三女が保育園児だった頃です。父母の会事務局長として私がいろいろな文書を作っていました。新年度の顔合わせ会でときの会長が読む挨拶文を代筆したときです。過去に例がない多くの出席返信があったので、「かつて保育園行事でこれほどの…」という一文を入れました。会長が実際に読み上げた言葉は、『勝手な保育園…』。爆笑でしたね。

草履を編むのが私の主たる仕事ですが、お客様とのおしゃべりもまた重要な任務と思っています。こうして言い間違えから生まれる爆笑や失笑も、旅の想い出と思っていただけましたら幸いです。
明日から三日間の休養をいただき、手と共に口も休ませるつもりであります。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マッサンと鴨居の大将。

2014年11月17日 | 地域の話
ずいぶん寒くなりました。三日前に初雪を記録し、角館で10cmほど積もりました。その後は今日も一日雨のおかげで、ほぼ融けてなくなっています。散策のお客様から『いつもこのくらいの時期に降るんですか?』と訊かれますが、少し早いながらまずこんなもんでしょう。あと一ヶ月のうちには根雪となり、辺り一面白の世界ですよ。もう晩秋とは言えませんね、明らかに初冬を迎えています。

またまた朝ドラの話題で恐縮です。数日前のインターネットに、「サントリーが小学館に対して広告出稿の停止を検討」といった記事を見つけました。どんな理由かといえば、小学館が発行する雑誌に載せたサントリーの広告欄の真下に、朝ドラ「マッサン」を高評価する記事があったそうです。これにサントリーがかみついたんですね。マッサンはニッカウヰスキーの創始者がモデルですから、ライバル社としては気に入らなかったのでしょう。

でもこのドラマ人気のおかげで、ニッカはもとよりサントリーも売上が好調と何かに書かれていました。ウイスキー業界全体が恩恵にあずかっているとすれば、なにもそこまで目くじらを立てずとも…と思ったものです。
それからまもなくの夜晩酌をしていたとき、ふと思い出してマッサンの史実を調べてみました。そこでサントリーの立腹が少し解けることになります。

鴨居の大将がウイスキー造りの技術者を招へいしたいと、本場スコットランドへ打診するところまでは放送されました。スコットランドからの返事は、「わざわざわが国から人間を出さずとも、日本に素晴らしい技術者がいる」という内容だったようです。それがマッサンなんですね。鴨居の大将はその返事に従い、マッサンをウイスキー製造技術者として雇い入れることにしました。

マッサンの念願だったウイスキー造りはこうして始まり、やがて発売までこぎつけるのですが、鴨居の大将がそこまでに投資した金額は並大抵ではなかったようです。しかもマッサンはそこで造ったウイスキーを「本物」とはせず、とうとう鴨居の大将から離れ北海道でウイスキー造りを始めるんですね。度重なる苦労の末にニッカウヰスキーが生まれるのですが、そもそも鴨居の大将がマッサンを雇わなければどうなっていたでしょう。

その鴨居の大将がサントリーの創始者です。ここからはまったくの私見と憶測なんですが、この史実を知るサントリーの社員は朝ドラをどんな気分で観ているんでしょうね。マッサンが鴨居の大将を上手く利用した…とまでは言わないにしても、ニッカ創業の陰にあるサントリーの功績は大いに感じているんじゃないですかね。「広告出稿の停止を検討」、分からなくもないですか。

初雪が融けてひとまず安心しました。謎が解けて先が面白くなりました。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生の勝ち組。

2014年11月15日 | 実演日記




今日の草履は、静岡市清水区からお越しくださったご夫婦のオーダー草履で、ご主人用です。お好きな色をお訊ねすると、『金色なんかはないの?』。それがあるからご縁とは面白いものです。『金のゴージャスな草履を作りますけど、飾るのは三日間だけですからね』と言って大笑いしました。さて気に入っていただけましたか、すでに到着している頃と思います。

日々様々な旅人と出会う中で私とは世界の異なる、セレブでゴージャスなお客様がいらっしゃるものです。たとえばバッグなどのブランド品は私自身が分かりませんから、それだけの判断じゃないですね。一言でいえば「オーラ」とでもいいますか。
東京からお越しのおばさまお二人も、まさにそんな方々でした。服装は比較的シブ目のカラーでも、高級感だけは私にも分かりましたね。

角館草履というより草履職人に関心がおありのようで、いろいろと訊かれました。試し履きのうえ履き心地を気に入ってくださると、『このあいだ主人が100万もする靴をオーダーしてきたのよぉ。あたしに草履を2足作ってくださる?』。
ご主人に対する腹いせが若干感じられたものの、私の草履では2足でも一万円しません。そのうえご主人の分もちゃんとオーダーされましたから、結局仲の良いご夫婦なんですね。

今は引退されたものの、かつてはそれなりの企業経営者ご夫妻だったそうです。湯河原に別荘をお持ちで、ご主人の趣味が腕時計と靴のコレクションと聞けば、なるほどセレブと思いました。
ご一緒のおばさまの分もご注文となり、合わせて4足をお支払です。お釣りの100円をお受け取りにならず、その後レストランに入られると私宛にコーヒーの差し入れが届けられました。恐縮の至りであります。

世の中に「勝ち組」「負け組」という振り分けは相応しくありませんが、企業人時代のご苦労が引退後こうして報われているとしたら、ご自身の人生の中で「勝ち組」と呼べるような気はしましたね。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

麦の唄。

2014年11月14日 | 実演日記




今日の草履は、11月4日のブログにご登場の石垣島へお届けする3足のうちの一つです。娘さんにお義母さんが普段好んでいる色をお訊ねすると、「赤」というお返事でした。そこで優しい朱色に赤の童プリントを組み合わせたのがこちらです。気に入ってくださることを願って、昨日の便で出発しました。

角館にも遠く県外からお嫁さんに来ている女性はたくさんいます。もっとも逆に角館から嫁いで出た女性のほうが多いでしょうね。ときに故郷を想いながら、みなさんそれぞれの土地で幸せをつかんでいるのでしょう。
たびたび朝ドラの話題で恐縮ですが、中島みゆきさんが唄う主題歌「麦の唄」がなかなかいいです。


なつかしい人々  なつかしい風景

その総てと離れても あなたと歩きたい

嵐吹く大地も 嵐吹く時代も

陽射しを見上げるように あなたを見つめたい

麦に翼はなくても  歌に翼があるのなら

伝えておくれ故郷へ ここで生きてゆくと

麦は泣き 麦は咲き 明日へ育ってゆく



共感する人は世界中に多いんじゃないでしょうか。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

20日から三日間お休みです。

2014年11月12日 | 実演日記
日々オーダー草履を発送していますと、「草履到着」を知らせる電話、葉書、FAX、メールがたびたびお客様から届けられます。それ自体一般の物販業にはなかなか起こりえない現象ですから、作り手としてはとても嬉しいものです。中でお電話とお葉書は比較的ご高齢の方に多いでしょうか。自分に置き換えたとき、葉書はちょっと重い腰を上げる作業に感じます。ですからいただいたときになおさら嬉しく思うのかもしれません。



この時節になりますと、文末は「向寒の折、くれぐれもお身体ご自愛ください」が多いです。私なんぞよりずっと年上のお客様から、「ねぎらい」と「いたわり」の言葉をいただきました。ほんとにありがたいことです。
というわけで、今月は20日から22日までの三日間をお休みさせていただきます。手と口の休養はもとより、わが家も冬を迎える支度を済ませることにしましょう。


コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする