角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ほどほどが一番。

2014年10月30日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
つま先にブロンズ、ベースはクリーム基調、そして組み合わせにブルー。朝ドラマッサンから「エリーさん風」を編んでみました。まぁ言われればそうかなぁ…くらいの反応で結構です。淡い色調は汚れやすさの点を指摘される反面、案外人気が高いのも事実です。今日現在お持ち帰りできる一般サイズはこの一点のみということもあり、おそらくお選びのお客様が現れると思っています。ベースの平生地がこちらです。




岩手県からお越しのご夫婦旅。奥様が角館草履のご愛用者で、このたびはお買い換えのご来店でした。建築設計のお仕事をされているご主人の話がとても面白く、私も幾たびか大きく頷きましたね。一つにお金持ちはなんらかの大きな悩みを持っているという話。
『五千万円以上の物件を建てる人って、案外家族運に恵まれていないんですよ。小さい家に暮らしている人ほど家族は仲良しですね』。なんとなくごもっともと頷きました。

次に、現代は地方の格式高い家柄ほど、その土地で長く続かないという話。名家の子どもは学問の環境に恵まれているので、都会の有名大学を目指す。やがて卒業し都会で就職。そこで家庭を持ったらもう田舎には戻らない。すると名家と謳われた故郷の家はやがて廃れるという意味でした。確かにそう言われればそういう気もします。

ご主人とのおしゃべりで結論としたのは、どんなことでも「ほどほど」が一番でありました。
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文化とメシのたね。

2014年10月29日 | 地域の話




今日の草履は、宮崎県日向市からお越しくださったご家族のオーダー草履です。お土産分を含め5足のご注文のうち、「紺系おまかせ」がこちらになります。お洒落な紺ベースは新柄ですし、組み合わせの紺も無地ではなくさりげないプリントが施されています。気に入ってくださることを願いながら、全品揃って本日の便で出発しました。明後日の到着で~す(^^)/

秋田県内各地で展開されている国民文化祭も、もう残すところ数日限りとなりました。現在の角館は「まちなかミュージアム」と称する企画展で、街中いたるところに絵画や写真などが展示されています。中学校美術部や高校写真部、あるいはセミプロの絵画もあって、地元住民も行ける人はどんどん巡ってみるといいですね。

そして武家屋敷通り樺細工伝承館で開かれているのは「秋の伝統工芸展」。こちらは明らかにプロの技で、製作者協会所属の職人さんや問屋会所属の企業が新作を展示しています。
昨日の朝刊にこの展覧会に絡む記者コラムが掲載されていました。タイトルを「最少」とした記事の内容は、出品数の少なさと開発力の乏しさを嘆くものです。講評で審査員の代表が『言葉を失うほどショックだ』と切り出したそうですから、確かにその通りだったのでしょう。

さらに記事には主催者の話として、「現在の業界売上は35年前のピーク時と比較して三分の一。需要と後継者の不足により全国的に伝統工芸が低迷する中で、職人が自らの技術だけで生活を支えるのは厳しい。伝統技術継承という意味合いからも、若手をはじめ職人たちが製作に励むことができる環境を作るのは、業界と行政の役目だ」とありました。

業界売上のピークとされる35年前は、私が樺細工の世界に入る二年前のことです。当時の産地年商はおそらく20億円前後と思いますが、その半分を最大手一社が占めていました。その最大手はピーク時から数年で倒産します。主な要因は、多産地商品との競合で無理な価格設定に固執したためでした。
こうした過去を見ると、そもそも35年前の売上が異常だったと思っています。極論ですが、樺細工という産業は何十億円も売ってはいけないと思っているです。

職人がしっかりメシを食える産業というものは、必ずしも売上規模だけでは計れません。今こうして草履を編む日々を送りながら、作り手がしっかり生活できる環境の大切さをしみじみ感じますよ。国民文化祭では様々な作品が展示されています。その中で「メシのたね」に適うものがいくつあるでしょう。商売にすれば文化が廃れるのか、文化では所詮メシが食えないのか。伝統工芸樺細工が、角館を代表する文化であることだけは間違いありません。
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どれが商品!?

2014年10月25日 | 実演日記




今日の草履は、茨城県那珂市からお越しくださったご夫婦のオーダー草履です。奥様はその日展示してあった配色からぴったりサイズでオーダーとなり、ご主人は「茶系おまかせ」でオーダーとなりました。「今日の草履」はご主人用です。ときおり見える金色の御殿まりプリントが、なかなかお洒落と思います。昨日の便で出発しましたから、もう届いている頃でしょう。早速履いてくださいね~(^^)/

こちらのご夫婦は二年前からのご愛用者で、このたびはお買い換えのご来店でした。元々奥様用のお買い換えだったのが、これまでの草履がまだ履けるご主人も新しい草履が欲しくなったんですね。むしろ配色選びに時間を要したのはご主人のほうでしたよ。楽しいご夫婦でありました。
茨城県から草履をお求めにオートバイでいらしてくれたご夫婦に、お約束の期限通り発送できたことでホッとしています。

北海道千歳市からお越しの女性一人旅。すーっと草履展示パネルの前に立ち止ったので、一呼吸置いてから試し履きをお勧めしました。すると『あっ、もう履いているんですぅ』。ご愛用者のお顔をすべて覚える能力があったら、どんなに役立つかと思いますよ。
震災の前年四月のお買い上げといいますから、もう四年以上になりますか。今朝編んだばかりの展示品をどうにかお持ち帰りいただくことが出来ました。

『次の目的地はどこです?』とお訊ねすると、『草履を買う目的が達成されたので、あとは帰るだけです~』と笑顔の女性。角館草履のお求めだけが旅の目的ではないと思いますが、重要な一つとしていただけたのなら本当に嬉しいことです。
これから迎える冬は秋田も北海道も厳しいことを互いに承知しています。『冬を頑張りましょうね!』の言葉で西宮家をあとにされました。

こうして日々リピーターさんのご訪問をいただく中で、お持ち帰りいただける在庫がほとんどない現状をとても心苦しく感じています。手作りの限界といえばその通りなれど、『えっ、持って帰られないんですかっ!?』のお客様の言葉に笑顔ではいられません。
母屋でお昼ごはんを済ませた大阪市の団体さんがお立ち寄りでした。草履コーナーに入って見えるなり、『あらっ、これ懐かしいな~。こおり売ってはるわ~』。




「こおり」は売っておりません。間もなくのうちに中へ草履が展示されます。
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日本人の外国人。

2014年10月24日 | 実演日記




今日の草履は、青森県黒石市からお越しくださったご夫婦のオーダー草履です。昨日まで同じ配色の24cmが一点あり、その草履をサンプルとして23cmをご注文でした。実は24cm草履を編んだとき、少し白っぽいのがどうかなと思ったものです。それが「今日の草履」のほかにも2点オーダーが続き、二日間でこの布地は完売となっています。確かにお洒落ですからね。

日々いろいろな旅人と出会う中で、角館草履云々以前に「草履を編んでいる男」に対して関心を寄せるお客様がいます。日本人のDNAに顕著な反応を見せる方とでも言いますか。大阪府高槻市から一人旅を愉しんでおられた男性は、そもそも室内草履などまったく関心も知識もなかったのが、目の前に「草履を編む男」がいることに関心をお寄せでした。健康効果をご理解いただくと、ご自分用のオーダーを賜っています。

先日のこと、スウェーデン人のお若い女性がお立ち寄りでした。服装がいかにも日本文化に精通していそうでしたから、まず間違いなく楽しいおしゃべりが期待できます。丸太椅子に着席をお勧めすると、すぐに応じてくれましたね。片言よりは上手な日本語で、『アイキドウノセンセイニアウタメ、アキタニキマシタ』。合気道を学んでいると聞いただけで日本通が分かりますよ。

やはり草履実演にも高い関心をお寄せでしたから、まずは試し履きをお勧めしました。『ハイ、アリガトウゴザイマス!』と言いながら脱ぎだした履物を見てビックリ。彼女が履いていたのはなんと「地下足袋」だったんです。草履実演生活も十一年目に入りましたが、地下足袋を履いた旅人は初めてです。しかも外国人ですからね。写真を撮らなかったのをこんなに後悔したのも珍しいですよ。

試し履きで上機嫌の彼女も値段を見ると、『オ~、ワタシニハチョットタカイ…』。草履コーナーを見まわし「生徒さん作品」の土踏まずなし二千八百円を見つけ、『ワタシハコレニシマス~!』。
彼女はそれでも大満足でお帰りでしたが、願わくば私が編んだ草履を履いてほしかったと思っています。それにしても日本人のDNAに顕著な反応を見せる人は、外国人にも珍しくないのでしょう。朝ドラの「エリーさん」に出会った気分でした。
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夫婦共働き。

2014年10月23日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
黒と赤の好対照を組み合わせ、可愛らしくもお洒落な草履に仕上げてみました。お持ち帰りになったのは北秋田市からお越しのおばさま。草履の健康効果を真剣に聞いてくださり、ご一緒のおばさまも24cm草履をお買い上げです。お二方ともとてもよくお似合いと思いました。早速今晩から履いてくださると思います。平生地二種がこちらです。






角館が一年で最も賑わうのは、ご存じの通り桜まつりです。では二番目に賑わいを見せるのはいつか。お盆期間と並びちょうど今の紅葉シーズンなんですね。街の木々も色付き始めたこの一週間ほどの角館は、武家屋敷通りは言うに及ばず、西宮家も間断のないご来店で賑わっています。今日も昼食のツアーが集中する正午からの一時間半は、桜まつりを思い起こすほどの混雑となりました。

ただ時間に制約のあるツアーのお客様は、角館草履のご説明に少々時間が足りません。今日もオーダーをくださったお客様の大部分はフリーの方々です。
その点でツアーのみなさまにも人気のあるのが「ミニ草履」なんですね。三日前から完売となって私も気をもんでおりましたが、明日には少し店頭に出せるようです。

私が作る大人用土踏まず付き草履も、今日の二点で展示品はすべてなくなりました。繁忙期もあと少し、ミニ草履を作るカミさん共々フル回転で臨んでおります。カミさんの名前は「知子」、これが本当の「ともばたらき」ですかね。
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失敗したサプライズ。

2014年10月20日 | 実演日記




今日の草履は、仙台市のおばさまのオーダー草履です。茶の唐草をベースにピンクのシーチングを組み合わせたものですが、このたびご注文にならなければ思いつかなかった配色と感じました。「ご売約品」の札を提げて飾っておりましたところ、岡山県からお越しのおばさまも『あたしもこの色がいいわっ!』。
私の配色センスはまだまだ幅が狭いことを痛感した次第です。今後はもう少し「サプライズ的」な色使いに挑戦すべきでしょう。

角館草履のプレゼントに際して、この「サプライズ」がたびたびあります。先回15日の「今日の草履」も奥様への誕生日にサプライズでした。ご主人が草履をお引き取りに見えたときおっしゃるのは、『実はカミさんをちょっと怒らせてしまってて、この草履が頼みの綱なんですよぉ』。

そしていよいよ誕生日当日、やはり朝からご機嫌斜めの奥様。そこへご主人が『誕生日おめでとう。これプレゼント!』と渡した草履を見た奥様の顔は、みるみるうちに笑顔に変わったそうです。その後の家事は一転鼻歌まじりだったとか。贈り主のご主人から届いたメールを読み、私も嬉しくて仕方ありませんでしたね。サプライズが見事に成功した例でしょう。

先日のこと、西宮家母屋で食事を済ませた兵庫県のご一行様がお立ち寄りでした。一人のおじさまが、『女房がまだメシ食ってるうちに女房の草履を注文しますわ。びっくりさせてやりますよっ』。まさに「サプライズプレゼント」ですね。
奥様の靴サイズをお訊ねすると、『たしか23.5やったと思うんですけどねぇ』。中肉中背といいますから、これまでの経験則を元に23cm草履でよいと判断しました。

ご注文書を書き始め30秒も経ったでしょうか、ご一行の中にいたひとりのおばさまが、『23.5だそうですよ。あたし今訊いてきましたからっ』。
どうやらこちらのおばさまは「サプライズ」をご存じなかったようです。おそらくどんな場面でも気の利くおばさまなのでしょう。サプライズは叶わなくとも、足の癒し効果は変わらないことでご理解をいただきましょうか。
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誕生日プレゼント。

2014年10月15日 | 実演日記




今日の草履は、仙北市内の男性のオーダー草履です。間もなく迎える奥様の誕生日プレゼントなんですね。夏からこのプレゼントを計画していた男性に、十月には新柄が届く旨お伝えしていました。届いた中から何点かをチョイスし男性にお見せすると、『うちの奥さんはこの色がいいですねっ!』と平生地状態でお選びがこちらの草履となったわけです。その平生地がこちらです。



二日間お休みしてしまいましたので、男性へのお引き渡しが明日になります。実物をご覧になったときの男性のお顔と、さらに奥様へ手渡したときのお二人のお顔がとても楽しみですね。叶うものならその場に立ち会いたいくらいですよ。

先日仙台市の女性からご注文メールが届けられました。草履職人へのメッセージ欄には、『先月角館に観光に伺った時に、実演を拝見しました。試着した彼氏がとても気に入っていたので、今回誕生日プレゼントに渡そうと思ってます』。
大好きな人への贈りものに、角館草履を選んでくださいました。これがとても嬉しいんですね。プレゼントの中を開け角館草履が出てきたときの彼氏の反応は、想像しただけで楽しくなりますよ。

十月七日以降にいただいたご注文の発送が、予定より若干遅れています。明日からまたしばらく休まず、十一月には少しでも草履が並んだ展示パネルをご覧いただきたいと思っています。大好きな人の誕生日がこれからの冬にやってくる方には、色とりどりの展示品からお選びくださいませ。
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14日・15日お休みです。

2014年10月13日 | 実演日記
少し急ですが、明日と明後日(14日・15日)をお休みさせていただくことにしました。一ヶ月連続で草履を編み続け、若干手に疲労感があります。そろそろお休みを入れたいと思っていたところ、台風が明朝当地に最接近とのこと。お客様のお訪ねはほぼないと思いますし、暫時仙台の次女の元を訪れていたカミさんと三女が明日帰宅します。高速バスの運行も台風次第で微妙ですが、遅れて着いたにしても着地の大曲バスターミナルまで迎えに出ることにしました。

そしてまた訃報です。幼なじみで同期生のお父上が他界されました。先月のお祭りでその同期生と会った際、今夏急な発症で手術を受けた話は聞いていました。それでも病状が安定し市内の介護施設に入所していたのが、昨日発熱から急変とのこと。高齢とはいっても七十八歳ですから、同期生も予期していなかったようです。

平成八年、十五年間勤務した会社を辞め独立した私を、特にギフト業の面で友人の親御さんたちが支援してくれました。先のお父上も贈答品が必要になると、いつも私に電話をくれる方でした。草履職人となってからはお会いする機会もなくなり、ご恩返しが出来ないままこの日を迎えてしまいました。せめて葬儀参列だけは果たしたく、15日もお休みとした次第です。

五十を過ぎて振り返れば、特に三十三歳で独立したあとの十年は、友人の親御さんたちにずいぶん助けられたと実感しています。当時の年齢は皆五十代から六十代でした。あれから二十年近くが経ちこの年代になると、訃報も致し方ないとは思います。
そんな親御さんたちお一人お一人に恩返しをしたいと思ったところで、現実にはなかなか叶うものではありません。受けたご恩を本人には返せなくとも、何らかの形で世の中に返したいと強く思うこの頃であります。
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独り国文祭。

2014年10月11日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
紺の濃淡を組み合わせてみました。紺色は性別も年齢も問わず人気の色調です。23cmですから基本的に女性向けとなりますが、やはり年齢は無関係にお好みの方がいらっしゃるでしょう。
入荷した新柄を少しずつでも在庫にしたいところですが、知ってか知らずか目新しいと早く選ばれていきます。昨日の「相武紗季さん風」も、男鹿市からお越しのおばさまがお持ち帰りになりました。
「今日の草履」の平生地はこちらになります。




千葉県市原市からお越しのおじさま一人旅。『は~、草履…ですか!?』とおっしゃりながら実演席の丸太椅子に腰を下ろされました。角館草履の素性を一通りご説明すると、『着物の機会が多いので、こうした履物は興味があるんですよ』とおじさま。男性用サイズは未だ在庫がゼロですから、26cmでオーダーを賜りました。

着物の機会が多いとうかがったので『そういうお仕事ですか?』とお訊ねすると、『いや、そういうわけではないんですけど、謡曲をやっていましてね。明日秋田市で集いがあるんですよ』。なるほど、現在秋田県内各所で開かれている「国民文化祭」の出場者だったんですね。
今月四日からスタートした国民文化祭(国文祭)は、来月三日までに110の事業が展開される計画です。わが仙北市でも明日の12日、田沢湖市民体育館を会場に「田沢湖・角館短歌大会」という催しがあり、ここのテント村に角館あきんど塾も出店することになっています。

なにしろ広い秋田県のあちこちでイベントが続きますから、角館へどのくらいのお客様がお越しになるのか見当がつかずにおります。先のおじさまは毎年の国文祭に参加されており、少なくとも一日は観光してお帰りとのこと。そしてほとんどの県外出演者がそんな行動計画でいるのだそうです。開催期間中は多少なりともそんなお客様がお越しになるでしょうから、私も出会いを楽しみに草履を編みたいと思っています。

そういえば今日、『いつもここで草履を編んでらっしゃるんですか?』と訊かれました。おそらく国文祭イベントの一つと思われたのでしょう。確かにかつてのワラ草履は日本を代表する文化と云えます。一年中人様の前で草履を編んでいる私は、さしずめ「独り国文祭」ですかね。
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明日の命。

2014年10月10日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22m土踏まず付き[四阡四百円]
届いたばかりの新柄の中に、紫基調の桜プリントが入っていました。まずは同系色の紫無地を組み合わせています。facebookでは朝ドラに因んで「相武紗季さん風」とご紹介したところでしたが、案外そう見えるから不思議なものです。いずれにしても可愛らしい草履に仕上がりました。
平生地はこちらです。




五十代と思しき男性が真っ直ぐ実演席を訪れ、『24cmで女性用はありますか?』。最近お会いしているような気がしながら、ちょうど編んだばかりの定番配色③の「赤の唐草にエンジ」をご紹介すると、『あっ、じゃあそれをお願いします。昨日試してみたら良かったので、家内に買ってあげようと思いまして…』。
最近お会いしたのは昨日のことでした。確かにお一人で見えて試し履きをされましたね。『お住いはどちらですか?』とお訊ねしたところで、思わぬ角館滞在の経緯を聞かされることになります。

『横浜なんですが、家内も一緒に玉川温泉に来ていたんです。そしたら家内が急に腹痛を訴えて救急車で運ばれて、胃潰瘍から出血で大騒ぎになっちゃって…。まだ角館病院に入院しているんですよ』。
当地を旅している最中に急病や不慮の事故に見舞われ、角館病院へ入院したという人を過去に複数知っています。なにも旅の途中に…と思いながら、人生は何が起こって不思議ではありません。

一昨日のこと、思いも寄らない訃報に接しました。私より一つ年下の男性が、脳幹出血で急逝の報せです。日ごろに酒を酌み交わす関係ではなかったものの、仕事の付き合いがありました。なにしろ小さな町の一つ違いですから、顔も人柄もよく知っています。三週間ほど前に同期の無尽で飲んだという友人の話では、確かに若干の不調は訴えていたものの、まさかこのようになるとは思ってもいなかったそうです。

「人の明日は分からない」とは、まずみんなが感じていることだと思います。だからこそその日その日を出来る限りムダにしないようにと、一定の年齢に達すれば考えるのでしょう。元気で暮らしている今、ときに旅へ出たり美味しい食事を愉しんだりは普通に考えることです。横浜市のご夫婦も、そんな想いがあって当地の温泉を訪ねたんじゃないでしょうか。救いなのは、あと数日で退院できるということですね。

それにしても五十歳の急逝は聞くほうも辛いです。ご遺族もよく存じ上げている方々ですから、慎んでご冥福をお祈りしたいと存じます。
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