角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ご縁のおたより。

2014年09月29日 | 実演日記
秋晴れが今日も続く角館です。JR東日本大人の休日倶楽部乗り放題チケット期間の今、週末はもとより平日も一定の旅人が町を散策されています。駅に降りて一番の立ち寄り先が西宮家というお客様も多く、お昼に近い時間帯から間断なくおしゃべりが続いています。
朝立ち寄った際に角館草履のなんたるかを知り、駅への帰路でお買い上げやオーダーというケースがままあります。今日も横浜市の女性がご自分用とお母上様用にお買い上げでした。確かなご縁を感じてくださったのでしょう。

東京からお越しのご夫婦旅。奥様が部屋履き草履に関心がおありで、実演を興味津々眺めながら健康効果を聞いてくださいました。足に浮腫みがある外反母趾で、まず間違いなく角館草履がお役にたてるはずです。試し履きをされたときの奥様の表情と感想は、「ここで会ったが百年目」と言わんばかりのご縁を口にされていましたね。ご主人へ、『あなたがここへ入ってみようって言ってくれなかったら、この草履とは出会えなかったわ~』と奥様。私も嬉しい限りです。

9月20日のブログにご登場の兵庫県のご夫婦。今日奥様から追加のご注文メールが届いていました。メッセージ欄のおたよりには、強くご縁を感じてくださった文面が綴られています。今日のブログはこちらのメッセージをご紹介するだけで十分かもしれません。

こんにちは。先日田沢湖マラソン大会前日にお会いしました〇〇と申します。
 ご縁あって沙佳屋さんとめぐり合えたおかげで、秋田へのRUN&旅は、忘れられない豊かな旅になりました。ありがとうございました。
 さっそく毎日愛用させていただいています。足の親指と人差し指の間の刺激がなんとも心地よく、おのずと足の指でわらじをつかむとおへその下の丹田がスッと引き締まって、体が調う感じに驚くばかりです。
 年老いたおばあちゃんたちや、立ち仕事の娘や友人にもぜひ履いてほしいと思い、お気に入りの色柄を選んでもらった次第です。
 
 主人はおかげさまでなんとか完走できました。が、残念ながら5時間の制限時間には間に合いませんでした。でも、おかげでまた秋田を訪れる機会ができたと半ば喜んでいます(笑)。
 一時は会社をやめるとひどく落ち込んで、練習もほとんどできず、以前のように頑張って練習して頑張ってチャレンジして乗り越えていくということができなくなった自分にいらだったりへこんだりするばかりでした。でも、以前のようには頑張れなくても、RUN&旅でいままでとは違った楽しみを味わう事ができるようになって、そんなに頑張らなくてもいいやん!って、ハードルを下げることができるようになってきました。
 今回も、10キロすぎで脚がつり、何回も歩いたそうですが、あきらめずに最後まで完走できただけでもよかったなと思います。これも角館でよき出会いにめぐまれたことが支えになったのだと思います。
 色々お話出来てほんとうにしみじみとした温かなものに心がみたされました。ありがとうございました。
 またお会いできる日を楽しみに、私たちも自分たちの脚を大切に、わらじと共に歩いていきますね。沙佳屋さんもおからだを大切に、お元気でわらじを編んでくださいね。



朝ドラ「花子とアン」の最終週で、養女の美里が花子に謝るシーンがありました。叱責に続いて逆に「ありがとう」を言われた美里は、花子の娘で良かったこと、今の自分がとても幸せであることを表現するために、『私は他の誰にもなりたくないわっ』という台詞があるんですね。私は若い時分に「他の誰にもなりたくない」などと考えたことはなかったです。「隣の芝生」そのままに他人を羨んだことも幾度でしょう。

今こうして草履職人となり旅人と出会う日々を過ごすようになって、美里の台詞が少しは言えるようになった気がします。
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心の中の善と悪。

2014年09月27日 | 実演日記
朝ドラ「花子とアン」が終わりました。9月10日だけ見逃してしまいましたが、よく見続けたと思っています。とても面白かったですね。
このドラマを書いた女性脚本家は、かつて占い師をしていたんだそうですよ。ときどき政治家が訪ねることもあって、彼女の前では実に真摯で正直だったらしいです。すると人間には表裏があることを痛切に感じると言っていました。その後脚本家に転身するわけですが、彼女の描く登場人物には「善」と「悪」が必ず共存しているんだそうです。占い師時代に得た「人間像」なのでしょう。

確かに「花子とアン」でも、心にある善と悪をほぼすべての登場人物が持っています。悪の部分が描写されないのは、花子と幼なじみの「朝市」くらいじゃないでしょうか。この朝市だけが史実にない架空の人物です。脚本家が朝市に悪を感じさせないのは、実際には存在しなかった人物だからじゃないですかね。

日々旅人と出会っていると、思わぬ「カミングアウト」に接することがあります。旅の恥はかき捨てを地で行くような旅人がときにいるんですね。草履を編んでいるおっさん(相手によってはあんちゃんの場合もあるでしょう)に、日常の世界ではとても話せないことを喋って気分転換するのかもしれません。そこにはまさに人の善と悪が入り混じっています。

ずいぶん前の話ですが、六十代のおばさまがお立ち寄りでした。ご自宅で留守番をされているご主人へのお土産が話題になると、『あの人にお金を使う気はないわよ』と吐き捨てるおばさま。その後の話は修羅場に近いものでした。
ご主人は勤務先の定年を迎えたその日、奥様へ離婚を申し入れたそうです。理由は飲食店で働いている女性と暮らしたいから。その理由に呆れたおばさまは、不動産の名義を自分に変えることと、預貯金と退職金の中から五百万円だけご主人へ渡し、残りをすべて自分が貰うことで承諾したといいます。

それから半年が経って、ご主人がひょっこり戻ってきました。案の定女性に捨てられ、そのときの所持金はほぼゼロに近かったそうです。それでも奥様はご主人を家に入れました。そうなることは最初から分かっていたと言ってましたね。それ以来、奥様はご主人に気兼ねすることなくどこでも旅行して歩くんだそうです。確かにご主人はそれに文句を言える立場じゃないですから。

今日、中年の男性四人がお越しでした。うちのお一人が奥様へのお土産に草履をお買い上げです。別の男性が小さな声で、『俺にはお土産買って帰る奥さんがいないからなぁ』と呟いています。そちらへ目をやるとさらに小さな声で、『最近別れちゃったんだよねぇ』。
事情は私に分かりませんが、復縁しても幸せと限らないのは前例の通りであります。

角館草履の実演席もまた、様々なドラマがあるわけです。いつか脚本を書いてみましょうか。
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様々な老後。

2014年09月26日 | 実演日記
わが家の三女は介護施設に勤務しています。高卒18歳での就業はなかなか過酷を想像してしまうのですが、ここまでのところ親の心配をヨソに上手く慣れてきました。認知症のある入居者が複数といいますから、就業から三ヶ月で始まった夜勤には特に心配しましたね。
この間の敬老の日には、職員みんなで花笠音頭を披露したといいます。ゲストに大曲農業高校太田分校の飾山囃子クラブが招かれ、賑やかなお囃子と手踊りで盛り上げてくれたそうです。

介護施設で老後を送るのがごく自然な選択肢になりました。ときおりマスコミで不適切な施設運営が報道されますが、秋田県ではほぼ聞くことがありません。三女の仕事内容を聞いても、ご家族はまず安心していいんじゃないでしょうか。敬老の日もご家族が多数招かれ、一緒に楽しまれた様子を話してくれました。

今日お電話をくださったのは、埼玉県所沢市のおばさまです。九月の始めに角館を旅行され、その際にご夫婦で草履をオーダーされたお客様でした。
『おかげさまで重宝してますぅ。これを実家の母と姉にも履かせてあげたいので、送ってくださいますか?』。
送り先がご実家へ直送とのことでしたから、住所の間違い防止にFAXをお願いしました。帰宅すると確かに一通が届いています。そこには…

『先日お送りいただきました商品、履き心地満点です。96歳の母と、母の世話をしてくれている77歳の姉に感謝のプレゼントです。よろしくお願いします』

こちらのお母上のように、ご自宅で娘さんに介護を受けてらっしゃる方も当然いるわけです。施設介護と在宅介護のどちらが良いという話ではありませんが、お世話になっている感謝だけは忘れてならないでしょうね。三女もやがて、ご家族から感謝される職員へと成長してくれるのを願ってやみません。
そして私はその感謝の心を託された草履を、しっかりと編み上げてお届けしたいと思います。
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愛犬を連れた霊媒師。

2014年09月24日 | 実演日記
昼夜の時間がほぼ同じとされる秋分の日が過ぎ、心なしか暗くなるのが早くなった気がします。午後5時の帰宅時に車を出そうとすると、スモールランプを点けていいくらいの暗さになっていました。朝の気温もまた少し下がっています。地元民の会話も、『さんびぐなったなぁ』。皆来たるべき冬将軍に想いが向かっているのでしょう。北日本に暮らすわれわれにとって、秋の夜長は厳しい冬への序章であります。

茨城県からお越しのご夫婦旅。可愛らしいポメラニアンを三匹連れてお越しでした。手は掛かるものの、ペットホテルに預けると一泊八千円もするんだそうですね。それよりは旅先で「ペット同伴可」のホテルを見つける方が割安といいます。なにより旅の最中も傍にいるとご夫婦が安心なんでしょう。三匹のワンちゃん自身が「旅」をしているという感覚はないと思いますけど。

こちらの奥様はとても霊感が強いといいます。昨日は青森県を回ったご夫婦、『青森県っていうところは霊がいっぱいいるんですよぉ』と奥様。これまで特にそんな話を聞いたことはないので、『青森県のどこですか?』と訊いてみました。すると、『恐山と八甲田山と…』。つまりそういう場所へわざわざ行ったということですね。

霊感の強い人には確かに霊が寄りつくと云われます。そんなとき、『私にはどうしてあげることも出来ないから、他の人に頼んで』と言葉を掛ければ自然に離れると云います。それが八甲田山で出会った女性の霊は車まで張り付いたそうですよ。奥様がご主人へ『しつこかったわよね~』と同意を求めるとご主人は、『いや、僕には見えないから…』。ご主人は平和で良かったと思います。
奥様へ『西宮家では感じますか?』と訊くと、『いえ、ここではありませんね』。霊感のない私でも少しホッとしました。

間もなく十月を迎えると、涼しさから寒さに変わってきます。背筋が寒くなる話は、もう少し夏のうちに聞きたかったですね。
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土地もご夫婦仲も様々。

2014年09月21日 | 実演日記
今日も秋晴れが続いた角館です。日中は上着を脱ぐくらいの気温まで上がり、とにかく綺麗な晴天ですからお客様の笑顔も多いです。そして今日は田沢湖マラソン、ランナーさんたちはどんなに気持ちの良い走りができたでしょう。今夜田沢湖温泉に宿泊する参加者ご家族で、明日角館を散策予定の方もおられると思います。走りの「感想」と結果の「完走」を聞けるんじゃないですかね。

今日はリピーターさんのお訪ねが二組ありました。神奈川県からお越しの女性二人旅は、去年から角館草履のご愛用者です。うちのお一人がそろそろ買い換えたいとのこと。24cm草履を2足お求めでしたが、あいにくお好みの配色が在庫にありません。そこで旅の最終日の明後日までお作りすることにしました。旅の初日にオーダーし、最終日に持ち帰る。なんか「ドライブスルー」みたいですね。

大仙市大曲のおばさまは、『宮崎に住んでる友人に送ってあげようと思って…』。詳しくお聞きすると、宮崎県のご夫婦が二年前に当地を旅した際にお買い上げくださったそうです。そのときもご一緒だった大曲のおばさまが最近宮崎を訪れ、だいぶ履き込んだ草履を見たんですね。宮崎に招待してくれたお礼なのでしょうか、ご夫婦分2足をお持ち帰りでした。
それにしても宮崎県、景色も食べ物も申し分なかったそうですよ。一度訪ねてみたい土地ですね。

昨日のこと、埼玉県川口市からご夫婦旅がお立ち寄りでした。試し履きに使っている定番配色①定番配色②でオーダーとなり、このペア草履がご夫婦では人気ナンバーワンとお教えした途端に奥様が、『あのぅ、あたしの分だけ色を替えてくださる?』。
これまでそう多くないケースでしょうか。

今日お立ち寄りのご夫婦は、札幌市にお住まいがあるもののご主人は単身で仙台暮らしだそうです。奥様がしばらく前に左足を手術され、今なお血流不足でむくみが出るとのこと。ご自身が角館草履を履きたいのはやまやまなれど、単身のご主人の身を案じて『あなた買ってみたら?』。その言葉を聞いたご主人が、『二人分買おうよっ』。
そしてお選びの配色がやはり唐草のペア草履でした。こちらのご夫婦であればきっと大丈夫と思い、同じように人気ナンバーワンであることをお伝えしました。するとご主人が、『へぇ~、そうなの。これ以上夫婦仲が良くなったらどうしよっ!?』。ご夫婦共々大爆笑でありました。

角館を訪れる旅人から聞かれるのは、土地の名前もご夫婦仲も実に様々であります。
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マラソンランナーと角館草履。

2014年09月20日 | 実演日記




今日の草履は、大仙市大曲にお住いのおばさまのオーダー草履です。こちらの草履はいつものオーダーとは若干異なり、お客様提供の布地を使用しています。浴衣生地の反物があるものの浴衣を作ったところで着る家族はいない、であれば草履に生まれ変わらせようというお考えでの持ち込みでした。
編みあがってみると「ハロウィン」みたいで面白いですね。お渡しするときのおばさまの表情が楽しみです。

兵庫県からお越しのご夫婦旅。草履実演を関心高くご覧くださり、ご夫婦それぞれに未だ少ない在庫からお気に入りをお選びでした。
こちらのご主人は明日開催の田沢湖マラソンに参加されるとのこと。草履のご説明はほぼ奥様がお相手だったのですが、マラソンの話題になった途端ご主人が饒舌になりました。『東日本では秋田県と山形県だけまだ未参加だったんですよ。あと九州を少し残しているだけで、もうすぐ全都道府県制覇ですわ!』。
走るのが大好きなんですね。

ご主人と共にいつもマラソン会場へ出掛けるという奥様は、『その土地の人たちと知り合うって、とても楽しいじゃないですか。毎日同じことばかりしてると滅入ることもありますけど、知らない土地へ行って勇気をもらうこともあるんですよね。今回はこんな草履とも巡り合えたし!』。
私が公開実演にこだわるのはまさにそこが理由です。ご夫婦も私の草履実演をそうした観点からとても評価してくださいました。

角館草履の常連さんの中には、旅行へ持ち歩いている方が複数おります。ご夫婦にもそれをお教えすると、『そうかっ、マラソンにいつも持って歩けばいいんだっ!』とご主人。奥様もすかさず賛同してくれましたね。
42.195㌔を走りぬくフルマラソン。足への負担は私などでは計り知れません。走り終えたあと、土地の温泉に入っての角館草履が足の癒しに役立ってくれることを願うばかりです。

お帰り際にご主人が、『定年したら桜を観に来ますよっ』。お歳をうかがうとあと五年だそうです。五年後の再会を確かにお約束しました。
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統合と独立。

2014年09月19日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
少しうるさいくらいのプリント柄ですが、優しくて温かみを感じる配色ではありますね。ときに口やかましく感じても、やっぱりその優しさにほっこりする瞬間がある。世の中に多い母親の感じでしょうか。タイトルは「フツーのお母ちゃん」がよいと思います。
今日も少し展示品が増えました。『ま~、綺麗な草履ですねっ』の言葉を聞くと、フツーの草履コーナーに戻った気がします。

ここ数日マスコミを賑わしていたのが、スコットランドの独立問題です。日本では自治体にしろ学校にしろ合併統合ばかりが話題ですから、ちょっと新鮮にこの話を聞いていました。途上国が力をつけて独立というのではなく、成熟した先進国というのも関心を寄せるところです。
今ほどのネットニュースを読むと、住民投票の結果「否決」されたそうですね。ひとまず独立断念となりました。

角館で「分離独立」といえば、お祭りのヤマを思い浮かべます。私が生まれる遠く以前、お祭りのヤマはむしろ「合併統合」の歴史でした。岩瀬町というヤマと下新町というヤマが合併して今の「本町通り」、中町というヤマと下中町というヤマが合併して「中央通り」といった具合です。
それが私が生まれた後のこの半世紀は、転じて「分離独立」の時代に入ります。

横町から分離して「桜美町」、菅沢から分離して「東部」、岩瀬から分離して「大塚」、北部から分離して「川原町」が生まれています。町が郊外型に変わり人口が外へ増え出すと、自然にそうした空気が生まれるのでしょうか。いずれにしても「暖簾分け」のような円満独立は極めて異例ですね。夫婦であれ友人であれ、人の関係が割れるときは多少なりとも不穏な空気になります。この中で良好な関係を維持しているのは横町と桜美町だけでしょう。

角館のお祭りは「みんな仲良く」といった一般社会とは異なります。そうした関係性もこのお祭りを面白くする要素といって過言ではないでしょう。ちなみにお祭り中日八日の夕方から各所で観られる「観光用激突」は、仲の悪いヤマ同士で組み合わせることはありません。お祭りにまだ不慣れな方には、重要な参考になると思います。

さてスコットランドの独立否決は、今後どんな展開を見せるのでしょうか。独立を果たしていればイギリス本国との確執は決定的だったでしょうが、否決されたところでフツーのイギリスにも戻らないでしょう。お祭りのヤマであればこそこれも余興ですが、国の話となれば楽しんでばかりはいられませんね。
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母と娘の泣き笑い。

2014年09月18日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
赤のベースに黄色がよく映えます。メリハリの効いたお洒落な草履に仕上がりましたね。
しばらく続いたオーダー草履も一段落し、これからは即売できる展示品に少しずつ回せると思います。今月25日から大人の休日倶楽部乗り放題チケット期間に入りますから、今よりはお客様が増えるでしょう。少しでも展示品を多くしてお待ちしたいと思っています。

静岡県からお越しの母娘二人旅。二十代後半と思しき娘さんがご自分用を、お母さんは自分をさておき息子さんの草履をオーダーくださいました。息子さんは外反母趾で偏平足なんだそうです。気にしていたお母さんが即決でオーダーを決められました。実演席で日常に見られる「母の愛」ですよ。
お二人とのおしゃべりテーマは、娘さんの職業である「ナース」でありました。

かねてからお伝えの通り、わが家の次女は仙台市で新米ナースとして働いています。その激務は次女の様子を見るだけでおおよそ分かりますよ。先日のお祭りで二日間だけ里帰りしたのですが、また少し痩せていました。中日八日の夕方仙台へ戻った次女は、カミさんとの駅までの徒歩に泣いていたそうです。その時間ヤマの上では姉妹二人が踊っていました。これから面白くなるお祭りを尻目にするのと、また過酷な仕事現場へ戻るツラさが涙になったのでしょう。

先の娘さんは小児専門病院の看護師さんなんだそうです。『子ども相手とはいえタイヘンでしょ?』と訊ねると、『そうですねぇ、どうしてもツラくて泣いて母に電話したのが一度ありましたね』。すかさずお母さんが、『看護師になりたいって聞いたとき、やるなら覚悟を決めないとダメだよって言ったんですよ。それでそういう電話がかけづらかったんじゃないかなぁ…』。
母と娘、互いを思い遣る気持ちがイタいほど伝わりました。

どんな仕事でも最初はタイヘンです。この私でさえ、十九で独り営業に出されたときは胃が痛みましたからね。三人の娘たちに対して、もう何かを手助けするようなことは日常にありません。やがて願うのは、カミさんと娘が笑って旅に出掛けられるその日でしょうか。
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めでたい秋。

2014年09月16日 | 実演日記
夜半からの雨も今朝九時前には上がりました。その後は秋晴れの角館です。かなり涼しくなったのは昨日今日の話ではありませんが、今朝はまた一段と寒さが増しました。冗談ではなくストーブに火を入れたお宅があったんじゃないでしょうか。夏が過ぎたとはいえまだ九月の半ば、冬の話はしたくないですねぇ。今年は国民文化祭が秋田県を会場に繰り広げられます。この秋はイベント目白押しですから、冬の話はまずこの秋を愉しんでからにしましょう。

昨日のこと、私が草履職人となる以前に仕事でお付き合いをしていたご夫婦がお訪ねでした。目的はこの秋挙式するご親類の新郎新婦へ、角館草履を贈りたいというご相談です。一般的なご夫婦宛ての贈り物は日常にありますが、新郎新婦宛てはこれまで数度しかありません。去年でしたかご主人が奥様へ角館草履をプレゼントされ、日々ご愛用されていることでこの度の贈り物を思いつかれたとのことでした。

十月始めに秋の新柄布地が届く予定です。その中から新郎新婦に向けた布地をチョイスすることになりました。配色は「完全お任せ」であります。ほかにも十月が奥様の誕生日という男性からもプレゼント用をご用命いただいています。
寂しい冬の前に、まずは楽しくめでたい秋を堪能したいですね。
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角館ファンの若者。

2014年09月15日 | 実演日記
土曜日に僅かの雨があったものの、とても気持ちの良い天候の三連休が終わりました。それにしてもすっかり秋ですね。角館はお祭りが終わるとはっきり季節が進むのですが、今年もそれが顕著に感じられます。すでに晩夏も過ぎましたね。お祭りに曳き回された18台のヤマは、昨日の日曜日に各ヤマ小屋に格納されたようです。これも夏が去った角館の光景でしょうか。

秋の好天に誘われたかのように、町を散策する人影も多かったです。秋田市や盛岡市といった比較的近くのお客様はもとより、仙台市など東北各県からお越しの方々と親しくおしゃべりしました。仙台市のリピーターさんご夫婦は草履のお買い換えにお訪ねでしたが、あいにくお持ち帰りできる在庫がまだありません。一週間ほどでお送りできる旨お伝えすると、『来月栗を買いに来るから、そのとき寄りますよっ』とオーダーのみでお帰りでした。たびたび当地をお訪ねなんですね。

お若いカップルが実演席の前ではっきりと立ち止ったので、丸太椅子への着席をお勧めしました。すぐにお座りになった青年と少し話をして思い出したのは、これが初めてのお訪ねではなかったことです。今年2月20日4月27日のブログに登場の千葉県の青年でありました。今回は彼女もお連れで、草履職人のおっさんはこうした再会が大好きなんですよ。

この旅は計画というほどの計画ではなく、急に思い立って彼女に話したんだそうです。そのとき青年が彼女に言ったのは、『角館ってすごい面白いところじゃないよ。俺は行くけどどうする?』。青年が彼女に伝えたかった意味は、私もよく分かります。都会に暮らす大学生の女性がワクワクするような旅先ではないかもしれません。それでも青年は彼女を誘いました。そして彼女も二つ返事で同行を決めました。私はそれが嬉しいわけです。

今回は二月のときよりも長い二時間近くを丸太椅子で過ごしたお二人。彼女も角館と角館草履の実演席を愉しんでくれた様子です。次回は桜の季節を熱望していたお二人には、本当に来て欲しいと願っています。感性が近いお二人は、おっさんの勘でおそらく将来結婚するでしょう。角館とも末永いお付き合いになることを祈りたいと思います。
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