角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

縁ある配色。

2012年05月31日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
「角館=桜」という方程式は、私たち地元民の認識と無関係に成立しています。角館草履のプリント柄にも同じことが言えそうで、定番以外の限定品にも桜プリントがよく選ばれるんですね。「今日の草履」などはそうした典型例でしょう。

本日夏の新柄布地が届きました。このたび特にお願いしたひとつが、「赤・ピンク系」。これから夏に向かって涼しげな色が好まれることは重々承知なんですが、どうしても「赤系」の草履は選ばれるのが早いです。
もうひとつ決定的な理由になったのは、『今度は赤いミニ草履を作っておいて~』という常連さんの一言でした。

ご注文フォームによるネット通販では、お好みの配色に過去の「今日の草履」を指定されるお客様がいらっしゃいます。出来るだけ近づかせる努力は惜しまないとしても、100%再現させるのは限りなく不可能に近いんですね。それは定番配色以外の布地は、原則として数足分しか仕入れないからなんです。

最近、過去の「今日の草履」をご指定のオーダーが、二件続きました。うちの一件はほぼ再現できる布地が手元にありましたので、すぐにお作りし発送も済んでいます。
もう一件は2足のご注文で、どちらも布地が完売して残っていません。ただ月末に新柄が届くというのは知っていましたから、その荷物を期待して少しお待ちいただくことにしていました。

そして今日届いた荷物の中に、1足は完全再現、もう1足もほぼ同じ草履が編める布地が入っていました。このブログを書く直前にお客様へメールでお知らせしたのですが、こういうお知らせはなんとも気分のいいものですよ。

明日の実演で早速こちらのオーダー草履を編む予定です。もう十日以上もお待ちいただいている草履ですが、その配色に間違いなく「縁」がありました。あと三日間ほどで履いていただけると思います。
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面白い草履。

2012年05月30日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き〔五阡二百円〕
先日行きつけの生地屋さんで、茶の唐草を仕入れてきました。男女問わず茶色の草履は人気が高いですから、これからもときおり編みたいと思っています。
「今日の草履」も早速お選びのお客様がおりました。来月の「父の日」まで男性用をいくつ在庫にできるか、これからしっかり頑張るつもりです。

角館草履の特徴のひとつが、「先ツボの位置」です。よくあるご質問①に詳しくご紹介しているのは、この点を多くのお客様が評価してくださるからなんですね。今ではこれが、角館草履の「当たり前」のひとつにさえなっています。

今日私を訪ねてお越しは、仙北市内にお住まいのおばあちゃん。過去に一、二度お会いしているのですが、足が若干不自由でいつも杖を利用されています。それと言葉が明らかに標準語なのが、おばあちゃんを記憶していた理由でしょうか。

『私の足は小さいんだけど、子ども用はあるの?』とおばあちゃん。靴のサイズをお訊ねすると、21cmでも少し大きい場合があるとのこと。とすれば、子ども用で最大の20cmが最適です。
ただし子ども用草履の在庫品には、「土踏まず」が付いていません。その後のおしゃべりで、それがむしろ好都合となりました。

おばあちゃんは足の手術により、左右の長さに変化が生じたそうです。右足が若干短いせいで、歩行のバランスがとりにくいための杖なんですね。そのため居宅内では、右足専用の履物があるそうです。
そこでおばあちゃんのご要望というのが、『両方とも左足用に作ってもらえる?』。

土踏まずが付いていない子ども用だとすれば、先ツボの位置を付け替えるだけで右足用が左足用に変わります。足がご不自由にもかかわらずお訪ねでしたから、おばあちゃんが見ている前で付け替え、早速にお持ち帰りいただきました。

おばあちゃんは付け替えを待っている間「足半草履」を見つけ、『これは面白い形をしてるねぇ』。私がシェイプアップ用に需要があることをお伝えすると、『へぇ~、面白い人がいるんだね』。

両方を左足専用に付け替えた草履のほうが、よほど面白いと感じた草履職人でありました。
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爽やかな季節です。

2012年05月28日 | 実演日記




今日の草履は、仙北市内にお住まいの女性のオーダー草履です。定番配色⑧を逆にした足半(あしなか)タイプで、なかなか面白い配色にお気づきと思いました。
私のお休み明け、30日にお引渡しの予定です。

こちらの女性は遠く県外から当地へ嫁がれた方で、西宮家へお立ち寄りのときはご実家のお母さんたちとご一緒でした。お母さんの『記念にみんなで履こうかっ』の一言で、三人がそれぞれに足半タイプをオーダーです。
「記念」という言葉には、出会いの縁が小さくないことを感じさせますね。

少しの間ブログ更新が滞っておりました。この時期多い総会やら会議のために、夕方以降不規則な日々が続いています。それもこれも角館に暮らしていることで生まれる「会」ですから、ひとつの縁と思い勤めなくてはいけませんね。

角館を散策される人影は、まずこの時季にして例年通りという印象です。週末こそ「東北六魂祭」の慌しさが感じられたものの、緑が美しく映える今は、じっくりゆっくりの散策にぴったりでしょう。

宮城県大崎市からお越しの母娘さんペア。『健康と聞くと目がないのよぉ』とおっしゃるお母さんは、角館草履にとても感心してくださいました。二十歳代半ばと思しき娘さんも気に入ってくださり、おふたりお好きな配色をお選びのうえ、留守番のお父さんにはオーダーです。

静かな角館で眩しいほどの緑を堪能したおふたりは、『桜の人ごみよりずっと良かったですよっ』。桜のシーズンであれば、これほどゆっくりお話が出来ないことを伝えると、『とっても良い出会いに恵まれましたぁ』と爽やかに微笑む娘さん。

さきほどお電話でのご注文は、静岡県のおばさま。お好きな配色をお訊ねすると、『そうねぇ、爽やかな色でお願いしますぅ』。
週間予報を見ると、これからしばらく20℃台前半で推移するようです。暑くもない寒くもない、まさに爽やかな季節。角館の散策が最も気持ちいい時季を迎えています。
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オヤジギャグ。

2012年05月23日 | 実演日記




今日の草履は、秋田市からお越しくださったおばさまのオーダー草履です。
三日ほど前のこと、22cm草履が完売していましたので、早速に編んだのが「今日の草履」と同じ配色の22cmでした。おばさまはその草履を見て、『23cmでひとつ作ってくれる?』。
明日の便で出発します。すぐに履いてくださいね~。

ゴールデンウィークからしばらく経つと、学年単位の小学生や中学生が角館をよく散策しています。「学習旅行」という呼び名も聞きましたが、修学旅行を少し小さくした学習機会のようです。印象では、岩手県・宮城県・北海道が多いような気がしますね。

札幌市からお越しの中学二年生。グループ単位で散策しているのですが、たまたま二つか三つのグループが草履コーナーに集結しました。少し離れると、草履職人がどこにいるのか分かりませんよ。
特に女の子たちが草履を眺め、『可愛い~!』を連発しています。

そこへ通りかかったおじさまグループ。女の子たちの後ろから草履を眺め、『君たちさ、こういう草履を履いて花婿さんを探すといいんだよっ』。
いってみれば、これも「オヤジギャグ」のひとつでしょうか。女の子たちの苦笑いを見て、私もちょっとイタイと感じましたよ。

高校二年生のわが家の三女。小学校時代からの同期生たちは、私も知る顔が多いです。ときに町で出会ったときは、その子たちのほうから声を掛けてくれたりもしますね。そのときのおしゃべりを、学校で三女に教えるのでしょう。帰宅してからよく言われるのが、『とーさん、余計なことは言わないでいいんだからね』。

私なりに「オヤジギャグ」には注意しているんですがね。
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角館の取材テレビ。

2012年05月22日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
一目でお洒落さが分かる「今日の草履」を、草履コーナーの端に裸のまま置いています。私から少し離れているのがポイントで、興味だけで触ってみたいお客様にも気兼ねなくどうぞということですね。

角館の取材テレビが続いています。昨晩のNHK「鶴瓶の家族に乾杯」は、収録の時点で三女から聞いていました。鶴瓶さんと女優の野際陽子さんが訪れた弓道部には、三女の同級生が在籍しています。鶴瓶さんたちが帰ると、その話題はケータイメールを通じてすぐに学校中へと広まったようです。そりゃそうですよね。

今朝は日テレの「ZIP!」、ZIPPEIスマイルキャラバンは角館の樺細工伝承館を訪れ、旅をするダイスケくんが樺細工を体験していました。彼はほんとに器用ですね。
おそらく今日の角館は、この二つの話題で盛り上がったことでしょう。

埼玉県と茨城県からお越しのおばさま三人旅。草履コーナーと私を見つけるなりひとりのおばさまが、『あれっ、ここテレビで見たことがある!』。
もうずいぶん前になりますが、「ちい散歩」のことなんですね。おそらくそうした番組で紹介された安心感があるのでしょう、おばさまたちはすぐにお買い上げを決められました。

今年の桜まつりでも同じようなことがあり、そのときのおばさまに教えられたのは、『地井さんの降板が決まって、今度から加山雄三さんに変わるのよ』。地井さんが体調を崩した話は聞いていたのですが、どうやら全快には至ってないんですね。

これまでいくつかのテレビ、新聞、雑誌等に取り上げていただいた角館草履ですが、その反響は「ちい散歩」が断トツでした。地井さんの気兼ねないお人柄が思い出され、またのご活躍を祈らずにはいられません。
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自分よりまず子ども。

2012年05月20日 | 実演日記




今日の草履は、新潟県長岡市にお住まいの男性からの、ご注文フォームによるオーダー草履です。過去に複数回発送している常連さんで、このたびは7足のご注文を頂戴しました。今日の草履はその中のひとつ、「紺系でピンクとの組み合わせ」がこちらになります。
気に入ってくださることを願いつつ、本日の便で出発しました。

7足の中に28cm草履がひとつ含まれているのですが、「今日の草履」とお若いご夫婦なんですね。28cm草履も組み合わせにピンクをご要望で、とても明るく楽しいご夫婦がイメージされます。
「草履職人へのメッセージ欄」には、もうすぐ赤ちゃんのご誕生が書かれてありました。子を持つ親なら誰でも分かる、幸せをかみしめる日々ですね。

角館あきんど塾の仲間が、さながら“出産ラッシュ”です。男性会員ふたりがそれぞれ「親」になったと思ったら、今度は女性会員からご懐妊の一報がありました。
少子化という社会問題の観点からも喜ばしい話ですが、私はそれよりも知人が人の親になることを素直に喜びたいですよ。

昨日四国からのご夫婦旅と出会いました。角館草履の健康効果をご理解くださると、真っ先に娘さんへ履かせたいという話になったんです。立ち仕事で日常に足の疲労感を訴えていること、足に浮腫みがあること、そして首こりがあること。すべてが娘さんに当てはまるようです。

奥様はご自分用もお買い上げくださいましたが、娘さん用に選ばれた草履が先回の「今日の草履」でした。作っておいて良かったです。
こちらのご夫婦ばかりでなく、娘さんや息子さんに履かせてあげたいという親心とは、実演席で日常に出会いますよ。なくしてはいけないし、なくなりもしない人の感情じゃないでしょうか。

はじめて人の親になる若者は、自分が親として充分なのかいつも不安なものです。でもスタートは、子どもが「可愛い」と思えたら100点じゃないですかね。あとは日々子どもと一緒に親も成長すればいいでしょ。やがて「自分よりまず子ども」を考えている親になりますよ。
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四日ぶりの再開です。

2012年05月18日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
冬場の在庫に紺系や緑系が多かったのか、大型連休が終わって赤系の草履がほとんど残っていません。そこで急きょ仕入れたのが「夜桜」の色違い、赤バージョンです。エンジのいらかプリントを組み合わせて、角館らしい「和」の配色が出来上がりました。

四日ぶりに草履コーナー&公開実演が再開しました。天気はあいにくですね。暗く沈んだ空からは、ときおり冷たい雨が落ちてきます。散策のお客様も、この寒さには閉口のご様子。
それでも中には、『雨の武家屋敷も綺麗でしたよ』とおっしゃるおばさまがいました。その感性には学ぶところがありますね。

三日間のお休みを経て、また少し散策の人影が少なくなったような気がします。例年大型連休が終わって少し経つと、ひとつの谷間があります。昨年は震災の影響でこの谷間がとても“巨大”だったわけですが、今年はまずいつもの谷間じゃないですかね。
それでも縁を感じる出会いは、確かにあるものですよ。

東京からお越しのおばさま四人旅。朝の比較的早い時間でしたが、西宮家を目指してホテルからタクシーでお越しとのこと。草履実演をとても関心高く見ながら、配色の妙にも感心してくださいました。

おばさまたちに、昨日であればこの出会いはなかったことをお話しすると、とても驚いたご様子。と言うのもおばさまたちは昨夕一度、西宮家界隈を散策されたそうです。そのときは時間が遅くなったのとその日の疲れのため、誰からともなく『明日にしよう』とホテルへお戻りだったんですね。

そして今朝角館草履と出会い、それぞれにご自分用や娘さん用、お孫さん用とお買い上げくださいました。うちのおひとりは、娘さんが嫁いでいる姑さんの分までお買い上げです。

今月はこのあと盛岡市を会場に、「東北六魂祭」が開催されます。盛岡市から角館まではおおむね一時間、少しはお客様が増えるかもしれません。
あとは7月下旬からの夏の行楽が幕開けするまで、まず静か目に推移するでしょう。そんな時季だからこそ、縁ある出会いを楽しみたいと思います。
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武家草鞋。

2012年05月14日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
茶色基調を少し久しぶりに編みました。エンジのいらかプリントと組み合わせたことで、シブさにお洒落が加わった気がします。
『23cmなら買って行ったのにぃ』と二人のおばさまに言われました。25cmがひとつもなかったことで編んだ草履は、虎の子の一足ですね。

4月30日のブログで盲目の青年をご紹介しました。実はそのときのおしゃべりで、青年からとある小説を紹介されていたんです。青年は朗読でその小説を聞いたと言ってましたが、正確に言えば「紹介」というより、そのとき青年が心に浮かんだものを言葉にしただけというような気もします。

事実青年はその小説の著者を思い出せませんでしたし、あらすじについてもなにほどの説明はありませんでした。ただ武家屋敷で有名な角館という地で、日々草履を編んでいる男に対して、その小説がふと浮かんだのでしょう。

早速地元の書店へ注文し、先日私の手元へ届きました。そして昨晩この小説を読んでみると、盲目の青年との出会い同様、これも出会うべくして出会ったと思わせる本でした。山本周五郎著、タイトルは「武家草鞋(ぶけわらじ)」。

主人公の宗方伝三郎は出羽の国新庄藩藩士。200石の書院番を勤める家の跡取りですから、まずそれなりの侍といえるでしょう。彼の生まれ持っての真面目さは、尊敬されるどころか周囲から疎まれる始末。けれども清廉潔白をなによりの信条として育った彼は、イイ加減なことなど死んでもできない性分でした。

あるとき新庄藩に家督問題が起こります。男子がみな早世し、跡目相続に二人の候補が挙がりました。現在の藩主が推す人物を皆は「可」としますが、宗方をはじめ数名が後々禍根を残すことを理由に異を唱えるんですね。そして反対したことの責任をとって、自ら藩を退くことになります。

宗方は江戸に出ました。侍でなくてもいいから、実直に過ごせる住処を捜し求めます。しかしときは元禄、大衆文化花盛りの江戸は、お金に遊びに人々が血まなこになっていました。彼がそんな世相に順応できないのは当然。世の中に失望した彼は、死に場所を求めて彷徨うことになります。

お金も使い果たし、歩く力もなくなったとき、彼を助けたのはとある老人でした。孫娘とふたり慎ましく暮らす老人宅で、宗方はしばし休息をとります。
やがて知ったのはふたりの素性。実は孫娘ではなく、孤児だった女の子を老人が引き取って育てていたんですね。幸せとは言えない女の子が懸命に生きる姿を見て、宗方もまた生きる道を選びます。

生きるためには仕事が必要です。宗方が選んだのは「ワラジ職人」。新庄時代、武家が履くワラジはその家人が作っていました。長い旅でも合戦でもすぐに壊れないよう、その丈夫さは定評があったんですね。
そのワラジは近くの問屋に卸し、旅籠に置かれました。次第にその丈夫さが噂となり、「宗方作」として注文が舞い込むようになるんですね。

しかしまたしても、宗方には許されぬ事態が起こりました。問屋の手代が彼に言うのは、『あなたのワラジは丈夫すぎて数が売れない。それでは商いにならないから、少し手を抜いて早く壊れるようにしてくれないか』。
これで宗方のワラジ職人生活が終わります。

また死に場所を探してさすらいの旅に出ようとする矢先、老人宅に宗方を訪ねる人物が現れます。自分がここに住んでいることを知っている人間など、そう多くありません。見当もつかず玄関に進むと、ひとりの武士が立っています。それは新庄藩の同僚でした。

彼が言うのは、『殿様から帰参のお許しが出ている。ほかの皆はすでに帰参、残るはお前だけだ。さぁ、早く新庄へ帰ろう』。彼はこのことを宗方に告げるため旅をしていたわけです。
しかし宗方にどうしても分からないのは、なぜその同僚が自分の在り処を探し当てたかです。

彼の答えは、『お主、ワラジを作ったであろう。袋井と申す宿でワラジを買った。履き心地にどこか覚えがあるのでよく見ると、故郷の新庄でわれわれが作る武家草鞋だ。そこで宿へ戻り問屋を尋ね、この家を教えられたのだ』。

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履いただけで製作者が分かる草履。見ただけで、触っただけで角館が浮かぶ草履。何年かかろうとも、目指すはこれだと思います。
私にこの小説を教えてくれた盲目の青年は、今ごろどんな気持ちで角館草履を履いてくれているんでしょうね。

折りしも昨晩、一通のメールが届けられました。5月7日のブログでご紹介した、北海道の青年からです。母の日にご両親宛に贈った草履、無事に届きおふたりとも大喜びの様子が綴られていました。
そして最後を締めくくる言葉は、『これからもお体に気をつけ,お客様の心に届くような素晴らしい草履を作っていってください。北海道の地よりお祈りしております』。

三日間のお休みが開けたら、また修行が始まります。
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明後日から三日間お休みします。

2012年05月13日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡八百円〕
金プリントを使用した「ゴージャス草履」のご紹介は、ほぼこれにて終了です。桜まつり向けにずいぶん編んだ気がするのですが、もうほとんど残っていません。次の新柄入荷の際も、金プリントは是非とも欲しいところですね。

お笑いの世界で、「スギちゃん」なるおよそ若手とは言えない芸人さんが、近頃よくテレビに出ています。芸風は斬新と思えませんが、ネタは案外面白いですよ。
いろんな世界でときにこうした「遅咲き」が現れるのですが、ちょっと嬉しい現象ですね。

私も40歳を過ぎて草履職人となり、天職に巡り会えた満足感を日々感じています。ときどきそうした空気を読み取るお客様と出会うことがあり、よく言われる言葉が『いい仕事に就きましたね』。私にとっては、最高の褒め言葉でしょう。

楽しくやりがいのある仕事というのは間違いないのですが、やはりときに休みを入れないと疲労感は否めません。明日は午後3時頃で草履コーナーを閉めて、15日~17日まで三日間をお休みとさせていただきます。

今のうちから少し休みを入れることで、じーさんになっても草履実演を続けたいものです。80歳になって人前で草履を編んでいたら、それはもう『ワイルドだぜぇ~』。
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草履探しの旅。

2012年05月11日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
大型連休が明けて数日間は、ちょっと暑いくらいの好天に恵まれていました。そういう気候になると、「今日の草履」のような青やブルー基調が選ばれ出します。日常に四季を感じて暮らす、日本人らしい選択と思いますね。

そして昨日と今日は、早春を想わせる寒さです。朝晩は暖房なしでいられませんよ。
二週間前には初夏の暑さで桜が咲かせられ、連休後半は連日の雨と寒さ。そして連休が終わると気持ちの良い晴天が続き、また今度は早春の寒さです。散策の人影は落ち着いてきましたが、天候はまったく落ち着きを知りません。

私の草履実演を見つけると、「ここで会ったが百年目」じゃないですが、異常な興奮で見入るお客様がときに現れます。今日秋田市からお越しのおばさま8人グループも、まさにそんな感じでした。時間にして30分強、実演席は蜂の巣をつついたような騒ぎです。

みなさん布草履作りをいくらか経験したために、出掛ける先で布草履を見つけると「あーでもない、こーでもない」を繰り広げていたご様子。そんな中で角館草履を見つけたわけですから、今日の興奮は想像に難くありません。うちの三人がお好きな配色をお選びくださいました。

実はもっとスゴいお客様が昨日お見えだったんです。埼玉県と神奈川県からお越しのおばさま二人旅。昔からの仲良しであるお二人は、いろんなところへ旅をするんだそうです。そして旅先で探すものが「布草履」、とにかく大好きと言っていました。
そんなお二人が角館草履と出会ったのですから、丸太椅子で過ごした時間はおおむね一時間に達しましたか。

お二人が角館草履の値段を見て、最近とある温泉地で出会った布草履の話を教えてくれました。その土地で「布草履の先生」と云われる女性の作品で、温泉ホテルの一角に展示されているそうです。その値段は一万円、共に展示されているお弟子さんの作品が7千円と言ってました。

世の中には素材も価格もいろんな草履があるのでしょう。やがて私が旅をするときは、計らずとも「草履探しの旅」になるんでしょうね。
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