角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

そんなこんなで祭り近し。

2008年08月30日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
緑基調の小花プリントをベースに、合わせは緑のプリントです。同系色合わせは無難な配色なんですが、緑の場合は特に同系が多いように思います。やはり実演席でときに聞かれる言葉、『とにかく緑が好きなのよぉ』が頭にあるんでしょうね。
平生地はこちらになります。



いよいよ角館のお祭りまで一週間ほどとなりました。大置山の骨組みがはじまり、18丁内の曳山も明日の日曜あたりで大方完成するでしょう。町中に電線のように提げられる祭り提灯も、早いところは今日から作業がはじまると言ってました。

明日実演をお休みするのは、丁内会の祭り灯籠を張替えするためなんです。わが家のある勝楽南丁内会はおよそ40世帯あり、その家々の門前に灯籠を飾ります。参加できる人で全世帯分を作るのですが、これがお祭り直前の日曜日というわけです。
今年は曜日の関係で最も早い張替え日となりました。これが終わるといよいよお祭りモードですね。

実演席には地元の人も多く通り過ぎます。テレビでお祭りビデオを流しているせいか、やはり話題はお祭りになるわけです。最も多いのが天気、『晴れでくれればイイんしなっ』。ほんとにそう思いますね。
でも曳山に参加している若衆は、天気のことはあまり気にしません。雨が降ろうが風が吹こうが、曳山の目的を達成するため粛々と前進するのみなんですね。
天気を気にするのは見物のみなさんやお店を開く人たち、それと娘が踊り子で乗るわが家みたいな人たちですかね。

祭りを迎える人々の「気持ち」もさまざまなようです。ある人は今年祖母を亡くし、曳山参加が出来ません。その人が言うのは、『あぁ、なんかお祭りが近いっていう気がしねぇなぁ』。
またある人は仕事の都合でお祭り帰省を断念していたところ、急きょ帰ってこられることになりました。その人からのメールは、『すっかりお祭りモードですっ!』。
角館のお祭りをこよなく愛している分だけ、それぞれの環境でこうも気持ちが違ってくるんでしょうね。

そういえば私が20歳代前半、曳山に夢中だった時代です。サラリーマンだった当時、毎年九月に開かれていた東京の展示会日程を見て愕然としたことがありました。その会期は9月7日・8日・9日、まさにお祭りドンピシャだったんです。その年は先の祖母を亡くした人と同じ心境でしたねぇ。

草履職人となって、三回目のお祭りを迎えます。半纏を着て曳山に参加することはありませんし、設営に汗し売上を気にする露店もありません。踊り子として夜明けまで拘束される娘たちの体調を想いつつ、せいぜい祭りを楽しみたいと思います。

そうそう、9月10日~12日まで三連休しますが、これは秋の行楽に向けて在庫を作るためです。決してお祭りの遊び疲れを予想してのお休みじゃありませんから…f^_^;

トップページに今年のお祭りの「観光用曳山激突一覧」をアップしています。町外からお越しの方はご参考にしてください。
場所等お分かりにならないときは、まっすぐ西宮家米蔵へ。草履職人の実演席は、「お祭りバージョン」で玄関へ移動しています。

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憧れの国ニッポン!

2008年08月29日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色基調の桜プリントをベースに、合わせは朱色のプリントです。女性の和服を想わせる配色、文句なしに綺麗と思います。
平生地はこちらです。



昨日といい今日といい、なんでしょこの蒸し暑さは。最高気温の30℃はまだ耐えられるとして、湿度90%超えではキツいですねぇ。
先日香港にお住まいの女性とおしゃべりしたとき、香港は毎日こんな状態と言ってました。慣れれば慣れるのかも知れませんが、遊びに行く気にはちょっとなれませんかねぇ。

つい先日、台湾からお越しのお若い女性としばらくおしゃべりしました。女性は台湾の大学で四年間日本語を専攻し、在学中ホームステイのチャンスに恵まれなかったことから、卒業後お金を貯めて自費で日本を歩いているんですね。国内かなりの都市を巡ったのがお話で分りました。

とにかく日本語がとても上手で、私とのおしゃべりにもまず不安はありません。それもそのはず、女性は大学卒業後、その学校で講師として働いているんです。日本語講師には日本人もいて、その学校の中ではかなり人気の高い科目なんだそうです。
『言葉ばかり教えてると、学生たちは少し飽きるんですよ。そんなとき日本の文化を写真で見せると、とっても喜ぶんですっ』。
「学ぶ」から「教える」へ、でもそれはやはり「学ぶ」なんですよね。

しばらくおしゃべりした後、『あのぅ、ところで写真撮ってもイイですか?』と言うので、もちろんOKしました。それからしばらくは、「仕事」のように撮りまくっていましたね。おそらく帰国してからの授業に使うんでしょう。
『日本は好きですか?』とお訊ねすると、『はいっ、大好きですっ!』。

この間家族でテレビを観ていて、外国への関心について話題になりました。私はどうしたわけか外国に関心が薄くて、たとえば旅行するとしても日本国内以外は思い浮かびません。カミさんも同じことを言ってましたから、ふたりともおそらく前世も日本人だったんでしょう。

そりゃそうですね、前世がヨーロッパ人で草履を編んでるわけがありませんかっ。

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草履の「大人買い」。

2008年08月28日 | 実演日記


今日の草履は、三重県四日市市にお住まいのおばさまからの、お電話によるオーダー草履です。『紺の唐草でイイんだけどねぇ、鼻緒はエンジよりもう少し落ち着いた色がイイなぁ』とのことでしたので、茶色の漢文プリントにしてみました。

こちらのおばさまは8月1日のブログでご紹介した方なんですが、そのときご注文の草履が届いてすぐ、また新たに追加のお電話をいただきました。このあとさらにもう一足欲しいとのお話もあり、こうして気に入っていただけるのはなんとも嬉しいことですね。

八月ももうすぐ終わりに近づいてますが、今月はおひとりで数足、あるいはご家族全員の分というような「まとめ買い」が多かったです。近隣にお住まいの方よりは、ちょくちょくは来られない県外の方に多いですね。

この「まとめ買い」を、別の言葉で「大人買い」とも呼びます。たとえば一個十円のお菓子、子どもはこれを一個や二個という数で買い求めます。それを一箱まるまる買い求めるのを「大人買い」と云うわけですが、お土産用のひとつ五百円程度のお菓子にもときどきあるんですね。そういう日はお店のスタッフも笑顔が増えるわけです。

私が小学校一年くらいのある日、風邪で熱が高く寝込んでいました。するとオヤジが駄菓子屋から、当時子どもに人気だった「甘納豆のクジ」を大人買いして来たんです。もちろん一等の景品もぶら下がったままでした。
布団の中でひとつずつクジを引くのですが、ふと気が付きました。全部自分のモノの嬉しさの反面、クジのスリルってなんにもないんですね。それでも子ども心にちょっとした感動がありましたよ。

角館草履を「大人買い」されたお客様、到着までもう少しお待ちくださいませ。届いたら全部お客様のものですよ~。

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新たな祭り名物。

2008年08月27日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
青基調の小花プリントをベースに、合わせは同系の青です。可愛らしさに青特有の涼しさが出たと思います。平生地はこちらです。



今日の角館は真夏に逆戻りしたかのような暑さ、お盆過ぎに一度ストーブがあってもイイなぁと思える寒さを体験した角館人には、なかなか堪える気温でした。

「角館人」と言えば、いよいよお祭りに向けた準備が急ピッチです。18台の曳山も飾り付けに熱が入ってきましたし、学校では「参加願い」の届出用紙が配布されています。
実演席横のテレビでは、お盆明けからお祭りビデオを流しています。立ち止まるお客様の多くは、『あらっ、角館にこんなお祭りがあるのっ』。毎年聞かされるこの言葉、角館のお祭り知名度はまだまだですなぁ。

あきんど塾の仲間で“盟友”でもあるさんさん企画サン。今年のお祭りでは一風変ったゲストが店頭を飾ります。それは「似顔絵描き」なんですね。“画伯”はこちらもあきんど塾の仲間であるMARIKOさん、お父上が経営するデザイン事務所で働く二十代の女性です。

広告等のデザインではすでに実績を持つ彼女が、今夢中になって練習しているのが「似顔絵」なんです。しばらく前に半分冗談で、『お祭りで似顔絵描けばイイねがっ』と言っていたのが、この十日くらいでトントンと話が決まりました。
似顔絵コーナーには、作品の展示が必要です。すでに何人かの展示用は出来上がっているようですが、その仲間のひとりに草履職人を入れてもらいました。それがこちらです。



トップページにある「分身たち」とはまた違うタッチの草履職人、お祭り期間はさんさんサン店頭に置かれ、その後私の実演席に帰ってくることになります。角館草履の実演席がまたひとつ賑やかになりますね。

お祭りでの似顔絵描きが人気になれば、やがて「お祭り名物」になるかもしれませんよ。関心のある方は、早いとこ今年のお祭りで描いてもらったらいかがでしょ。

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足元を見る!?

2008年08月25日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
和柄の縦縞プリントをベースに、合わせは紺です。先日は合わせをエンジにしましたが、紺もなかなかお洒落ですね。

8月20日のブログでご紹介した、「草履をトイレに飾ると下のお世話にならない」とするおまじない。ここ数日ミニ草履をご覧のお客様に話すと、『ええっ、そうなのっ、あたしももうすぐそういう歳だからねぇ…』と言うお客様や、『おばあちゃんのために飾ろっ』なんていうお客様もいらっしゃいました。いずれにしてもミニ草履の売上増加につながっています。

あるお客様は、『そのことを紙に書いて貼ったらイイんじゃない!?』。しばし考えて、それは止めにしときます。高齢者介護がこれほど多くの課題となっている昨今、やはりそれは“足元を見る”ような商いに近いと思うんです。
これからも言葉でのご紹介はあるにしても、大々的にそれを謳うのはなんか草履職人らしくないと思いました。

埼玉県ふじみ野市からお越しのご夫婦。試し履きをお勧めするときに必ず添える言葉は、『土踏まずの盛り上がりに神経を集中して履いてみてくださいねっ』。こちらのご主人にもそう話すと、『オレは昔から土踏まずがないんだよなぁ』。
いわゆる偏平足と云われる方々は、土踏まずの付いた履物を利用すると改善に向かうという専門家の話がありました。そのことをご主人にお教えすると、足の裏を私に見せてくれたんです。

『小さい頃に喘息がヒドくて、体育の授業は見学ばっかりだったんだよ。ずっと運動に縁遠かったから、足もこんなになっちゃったんじゃないかなぁ』。
偏平足になる理由はさまざまでしょうが、こちらのご主人のように子どもの頃の環境も理由のひとつにあるんでしょう。

試し履きをして気に入ってくださったご夫婦は、それぞれにお好きな配色でオーダーくださいました。
こうした場合も“足元を見る”と言うんでしょうかねぇ。

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手間が「心」。

2008年08月24日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
鮮やかなひまわりプリントをベースに、合わせは紫のプリントです。真夏の象徴ひまわりの時期とは少しズレましたが、明るくお洒落な草履と思います。
「今日の草履」はゆっくりおしゃべりもしないまま、おばさまがお買い上げくださいました。
平生地はこちらになります。



やはり今日のお客様は花火帰りが多かったです。花火の美しさと共に口にされるのは、『いやぁ、寒いのなんの…』。花火終了まで降ったり止んだりが続いた昨晩、『みんな寒いだろうなぁ』と思いながら晩酌をしておりました。

そんな中でちょっと嬉しい出来事です。昨日午後の早い時間、ちょっとの休憩に外へ出ると、レストランでお食事を終えたおばさまグループが歓談しておりました。まず間違いなく花火見物ですから、ちょっとお声を掛けさせていただきました。それはみなさんの服装がいかにも「夏」だったからなんです。

『夜の河川敷は風が冷たいし、今晩はきっと雨が落ちますから雨合羽だけは必ず買ったほうがイイですよ。大曲に近づけば近づくほど売れ切れてますから、角館で用意しちゃったほうが無難ですねぇ』。
おばさまたちはやはり「寒さ対策」を考えてなかったようで、『そうですかっ、分りましたぁ』。

そのおばさまグループのおひとりが、今朝私のところへお顔を見せてくださいました。『雨合羽のことを教えてもらって、ほんとに命拾いしたようなもんですぅ。あんなに寒いとは思ってなくて、ほんとにありがとうございましたっ』。
お礼を言うためわざわざ立ち寄ってくれたんですね。少しの手間とお節介が、どうやら心に届いたようです。

かつて旧中仙町のドンパン祭りに出店していた当時、いろいろお世話になっていた男性がお客様を連れてお越しです。東京からお見えのお客様に、私の草履をご紹介くださったんですね。ご夫婦それぞれお気に入りをオーダーくださいました。
こちらの男性に言われたのは草履を編み上げるまでの手間ひま、『途中まで誰がに編んでもらうっていうワケにも行がねべしなぁ…』。

ずいぶん前に、角館で商いをされている大先輩にも同じようなことを言われたんですが、仮に誰かが途中まで編んでくれて、仕上げだけを私が編んで「はいっ、完成」というのは、どうしたって出来る相談じゃないですね。実演をご覧のみなさまは当然私が最初から最後までひとりで編み上げると思ってますし、もちろんそうでなければいけないでしょう。
「手間」はそのまま「心」に伝わると信じてますからね。

昨日一通のお手紙を頂戴しました。差出人は埼玉県さいたま市の女性で、二年ほど前に私の草履をお買い上げくださり、そろそろ買い換えたいとのこと。それでホームページを観たら、自分で作れるキットを見つけ、ぜひ挑戦したいといった文面でした。
在庫がありますから明日にでも発送するつもりですが、ホームページを観ることの出来る方が手書きのお手紙でご注文をくださる、こうした手間ひまが実は心に届くもんです。

ずいぶんしばらくぶりの草履職人102人目は、手間ひまを惜しまない「職人気質」の女性と感じ入りました。


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花火見物の「王道」。

2008年08月23日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黒基調の絣風プリントをベースに、合わせはエンジです。角館草履の「王道」とも言うべき、秋田おばこ調の典型例ですね。貫禄さえ感じます。
平生地はこちらになります。



「今日の草履」は東京から花火見物にお越しくださった、お若い女性二人連れのおひとりがお買い上げくださいました。共に夏服でお出でしたから『寒くないですか?』とお訊ねすると、『寒いですぅ』。
そうなんです、昨日と今日の角館は最高気温が22~23℃しかありません。ちょっと前とで10℃も差があるんですから、私たちですら寒さを感じています。それが首都圏からお越しではなおさら寒さが身にしみるでしょう。

『これから花火なんでしょ?』とお訊ねすると、『はい~!』。上着もなにもないと言うので、せめて雨合羽の購入だけは必ずとお伝えしました。雨にももちろん有効ですし、ビニールは体温の放出を防いでくれます。これは角館のお祭りで若い頃から学ぶ知恵なんですね。

二十歳くらいの若い女性5~6人ほどが、艶やかな浴衣姿でお越しでした。お盆以前であれば特に珍しい姿でもありませんが、さすがに今日の気温ではいささか寒かろうと思います。おひとりに『寒くないの?』とお訊ねすると、やはり『寒いですぅ』。見るからにそう思えましたよ。

そのときはそれだけの会話で終わったのですが、あとから米蔵スタッフに聞いたところでは、今晩の大曲の花火にお越しとのこと。もしあのままの浴衣姿で行ったとしたら、ちょっと考えただけでも怖い寒さですよ。

首都圏以南からお越しの方は、八月の今から「寒さ対策」なんて思いも寄らないかも知れません。でも大曲の花火を侮るとたいへんな目に遭うんです。日が沈んだ後の河川敷というのは、とても冷たい風が流れます。最高気温が30℃超えであっても、花火会場の河川敷では「涼しい」を超えてしまうんです。まして今日の最高気温を想えば「寒い」のが当たり前でしょう。

心配していた天気は、夕方から雨が落ち始めました。本降りというほど激しい雨ではありませんが、一層の寒さと思います。
関西からお越しのおばさまグループに、『雨が降ったら中止になるん?』と訊かれました。降雨中止はありえないことをお伝えすると、『ほな良かったわぁ』。

本当の心配は「中止」ではなく「寒さ対策」。大曲の花火見物の「王道」は、寒さに負けない服装なんですね。
明日の実演で繰り広げられるおしゃべりは、果たして花火の「美しさ」か「寒さ」か。花火の打ちあがる音が、角館のわが家まで聞こえています。

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社会通念との誤差。

2008年08月22日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
エンジ基調の花柄プリントをベースに、合わせは赤茶の漢文プリントです。赤系の統一感がお洒落ですね、無難にまとまった感じです。
「今日の草履」は、名古屋市からお越しのおばさまがお買い上げくださいました。

いよいよ明日は大曲の花火、今日から花火見物のお客様が見え始めています。新潟県からお越しのご家族も、明日の花火見物でした。中学生ほどの女の子とおしゃべりしたんですが、『長岡の花火もスゴいんですけど、大曲の花火もスゴいって聞いてますぅ』。
そうなんですね、全国に名だたる花火大会がいくつかありますが、大曲の花火もその筆頭グループに挙がるのは間違いないでしょう。

「今日の草履」をお買い上げのおばさまは、四人旅の途中でした。ほかのお客様と同じように『明日は大曲の花火ですか?』とお訊ねすると、『それが違うのよぉ、今夜は角館に泊まって明日帰るの。ほんとは大曲に泊まる計画だったんだけど、十日くらい前にホテルに電話したら全部ダメだったの。“一年前から予約が入ってますよっ”って言われちゃったわよぉ』。

大曲にもたくさんホテルがありますから、まずフツーの時期であれば簡単に予約が取れそうなもんです。それが今日と明日はとてもフツーの日じゃないんですね。人口四万人余りの旧大曲市に、一晩だけで70万人からの人が詰め掛けます。昨年は過去最高の76万人ですから、ざっと人口の20倍ですね。
角館の桜まつりは人口の100倍が押し寄せますが、それは会期二週間ほどの合計数です。一晩で20倍となれば、ホテル予約も「社会通念」とかなりの誤差がありますね。

角館のお祭りで曳山の上に乗る踊り子たち、わが家の三人娘もそのスケジュールが決まりました。三日間のあいだに曳山を納めるまで乗る日が、双子が二日、三女が一日です。
この「曳山を納めるまで」という時刻を、社会通念ではどの程度とお考えでしょう。角館のお祭りは「未明」、日付が変って夜明けまでがその時刻なんです。曳山の状況によっては、明らかに朝を迎える場合さえあります。

先日双子が高校から持たされてきた一枚の紙、それには「お祭り参加に関する保護者説明会」の日程が書かれてありました。もちろん学校へ届出をするのは当たり前と思うんですが、まさか親が学校に呼ばれて注意を受けるとまでは意外でしたねぇ。

でもまぁ、それも致し方ないとも言えます。高校一年の女の子が、明け方まで曳山の上にいるんですからね。「社会通念」との誤差は、もしかしたら角館のお祭りのほうが大きいかも知れません。

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嬉しい「ミイラ」。

2008年08月21日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
青基調の「いろは」プリントをベースに、合わせは藍色基調の縞プリントです。同系色の落ち着いた色合いが素敵と思います。好まれるとしたら「おばあさん」と呼ばれる年代かなぁと思ってましたが、やはり70歳代と思しきおばさまがお選びくださいました。

巻かれてしまうと「いろは」が分らなくなりますが、平生地はこんな感じです。



角館を終の棲家に移住された方を複数知っていますが、ちょうど一年前のブログにひとりの男性をご紹介しました。
昨年の晩秋くらいに町でお買い物をされている姿を見かけていたんですが、冬場は私も西宮家にいないせいか、ずーっとお逢いすることなく過ぎていました。それでも「終の棲家」をテーマにブログを綴るときは、どうしてもこのときの男性を思い出していたんです。

8月16日のブログでご紹介した「今日の草履」、こちらをオーダーされた女性はお母さんと思しき女性とお越しでした。そのお母さんは前日もお越しになっていて、どうしたわけか私の草履をお勧めくださるんです。話し言葉は明らかに標準語なんですが、旅の途中とはいささか雰囲気が違うんですね。まぁ、当地にはいろんな方が出入りしますから、特段気に留めることもなく過ぎていました。

今日の夕方、ずいぶんお久しぶりに先の男性がお越しです。『いやぁ、久しぶりでしたねぇ』と言葉を交わすのと同時に、とある女性を紹介されました。その女性は確かに最近お逢いしています。一呼吸置いてどなかはすぐに分かりました。私の草履をお勧めくださったお母さんなんです。その瞬間男性の口から出た言葉は、『私の家内なんですよっ』。

いやはやなんと、奥様も角館を気に入ってくださり、この春から一軒家に住まいを移され共にお暮らしなんだそうです。それで私の草履をお勧めくださった意味が分りました、なにしろご自身もお履きになってるんですからねぇ。
そしてお母さんがお勧めになっていた方々は、ご自身のお子さんたちなんですね。ご両親の新たなお住まいを見るため、お盆休みを利用してお越しになっていたようです。

奥様は、『高齢者向けのボランティアをしたいと思ったんだけど、まだ言葉が分らなくて無理だと思ったの。それで言葉が関係ない歴史案内人の勉強をはじめてるのっ』。
東京から終の棲家に角館をお選びの女性が、県外から角館にやって来る方々を案内するボランティア活動に参加するなんていうのは、なんともイイ話じゃないですかっ。

一年前ご主人が心配していた奥様の説得、今ではむしろ奥様のほうが角館人に近くなっているようです。「ミイラ取りがミイラ…」という例え話がありますが、こんな「ミイラ」なら私は大歓迎したいですね。

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トイレの神様 足の神様。

2008年08月20日 | 実演日記
2008年8月20日のことでした。どちらからお越しか聞きそびれてしまったのですが、東北地方でないことは間違いありません。
お昼の食事を終えたツアーのお客様が入って見える中で、おばさまお二人が実演席に足を止められました。ひとりのおばさまが「ミニ草履」を見つけ、『あっ、これはトイレに飾ろっ』とおっしゃったんですね。

玄関や車の中に飾る話はよく聞いていたのですが、あえて「トイレ」に限定されたお客様はこのときが初めてです。私はすぐに関心がわき、『どうしてトイレなんですか?』と訊いてみました。すると…
『トイレに草履を飾ると、一生自分の足でトイレに通えるんだって』。

つまり「寝たきりにならない」おまじないというわけです。面白いことを言うものだと感心しながらも、それってとても大事なことだとも思ったわけです。その日の晩からわが家のトイレにも、可愛いミニ草履が提げられることになりました。

その後しばらく経って、お客様との何気ないおしゃべりに昔の家屋が話題になりました。そのときふと思いついたのが、このときの「おまじない」です。
昔の日本家屋、特に農村地帯の家屋は、母屋と若干離れて厠(かわや)がありました。つまりトイレで用を足すには一旦履物を履くわけです。昔は当然「ワラ草履」だったでしょう。

「トイレに草履を飾る」の由来は、おそらくその時代のワラ草履じゃないですかね。足が丈夫じゃなければワラ草履は履けない、ワラ草履が履けなければトイレに行けない。
トイレとワラ草履の密接な関係が、この「おまじない」に繋がったと推測しています。









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