角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

空飛ぶ草履職人。

2016年04月29日 | 実演日記







今日の草履は、岩手県花巻市の女性のオーダー草履です。今日から始まった第2回「東北にがおえ桜サミットin角館」のスタッフさんのおひとりで、昨年から角館草履のご愛用者です。ご希望配色は「おまかせ」でしたから、この時季に相応しいピンク色をベースにしてみました。お引き取りは明日、草履と出会った瞬間の彼女が私も楽しみなところです。

にがおえサミット初日は風雨の寒い一日となってしまいました。桜が散ったとはいえ、角館は5月5日まで桜まつりが継続されています。もちろん各種イベントも引き続き行われていますから、今日の寒さはお客様にも関係スタッフにも少し気の毒でした。明日は気温こそまだ低めながら、雨はなさそうです。桜がない角館を訪れたお客様に少しでも楽しんでほしいの願いは、ぜひ天にも届いてほしいですね。

にがおえサミットに参加しているひとりの絵師さんに描いていただきました。「草履職人似顔絵ギャラリー」に早速展示しています。草履職人が空飛ぶゾーリに乗って、お天気の神様へ直談判といったところでしょうか。



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古風な女性。

2016年04月27日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[五阡四百円]
エンジ基調の扇子プリントに、紺の唐草を組み合わせてみました。「和」が際立つ古風な配色と思います。24cmは男女に共通したサイズのため、ピンク系の可愛い草履も編みますし、こうした古風な配色も織り交ぜます。それがこの桜まつりでは、女性がご自分用に古風な和柄をお選びになるケースが多いんですね。私としては楽しい誤算になっています。

一昨日のこと、仙台市からお越しの姑さんとお嫁さんのペアに出会いました。嫁姑だけの旅はさほど多くありませんから、間違いなく標準より仲良しなのでしょう。
そのお嫁さんが販売用に展示している草履台を見て、ご実家のお母上へ母の日プレゼントにしようかと相談でした。趣味で布草履を編むお母上を見て、体がツラそうに感じたようです。

ただその日買っていったところで、本当にお母上が使ってくれるかが心配です。そこでホームページにも掲載していますし、実物の写真を撮っていっても構わないので、ひとまずお母上へ画像を見せてから決めようとなりました。発送はお安い御用です。
そして今朝、女性から届いたメールには…

母の日のプレゼントに千葉さんが考案した草履台をプレゼントしたいと思い、
直接母に相談してみたところ「お気持ちだけで十分ですよ」と言われてしまいました。
私は『とっても素敵なプレゼントを見つけた!』と思ったのですが、母にそう言われてしまっては
贈ることができなくなってしまったので、まずはその旨をお伝えしたくメールいたしました。
HPやブログを拝見して、素晴らしいお仕事をされているな〜と感動しました。
初めて角館へ行って素敵な方に出会えたこととても嬉しいです。
これからも布草履でたくさんの人を幸せにして下さい♪応援しています(^^ゞ


私はこのメールを読んで、女性に「古風さ」を感じたんですね。このたびの場合、予約されたわけではないですから、たとえなんの連絡がなくとも失礼とまでは思えません。しかし女性は、こうして結論をメールに綴ってくれました。二十代半ばと思しき女性がこうした対応をしてくれたことを、草履職人のおっさんには嬉しくて仕方ないわけです。

今冬初めてお会いし、角館草履のご愛用者となってくださった岩手県一戸町の女性がおります。こちらの女性が先ごろ、母の日プレゼントのオーダーのためご来店でした。やはり二十代半ばと思いますが、一時間余りおしゃべりしてとても好感のもてる古風さを感じるんですね。
5月8日母の日に、お母上と共に草履のお引き取りに見える予定です。お母上はどのような女性なのか、少しばかり関心があります。
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旅人の想い。

2016年04月26日 | 実演日記





今日の草履は、東京都江東区の男性のオーダー草履です。ご希望配色は「紺」と「オレンジ」。おそらくこれまで、この組み合わせは編んだことがなかったんじゃないでしょうか。展示在庫として編む配色は、どうしても私の既成概念が働きます。オーダーとなったからこそ編んだ配色でしたが、なにほど違和感のないものに仕上がりました。本日の便で出発しました、早速履いてくださいね~(^^)/

今日現在角館の桜たちは、武家屋敷通りの枝垂れ桜で半分ほど散りました。檜木内川堤のソメイヨシノで散り始めといった感じです。一両日には本格的な桜吹雪となり、GW突入と同時に葉桜となるでしょう。少し皮肉な気もしますが、これも致し方ないと思います。
今年も大勢の人々、さまざまな旅人が角館の桜を愉しみました。それぞれに想いがあったことと思います。

桜が咲き始めた4月20日、埼玉県からお越しの母娘さんと出会いました。二十代前半と思しき娘さんが角館草履をお買い上げです。お二人と角館の桜が話題になり、お母さんがおっしゃるのは…

『去年の10月に亡くなった主人が、一度みんなで角館へ行きたいねって言ってたんです。それが脳の病気だったもんだから思ったより早く…。それで娘と話し合って、お父さんが望んでいたこの時季にしたんです。お父さんの写真を持って桜の前で記念写真撮ってきました~』

亡くなったご主人がきっと一緒に旅をしていると私も思いました。それは母娘さんの満足そうな笑顔に、哀しみの欠片も見えなかったからなんですね。
私が娘さんに、「お父さんが隣で、そんな草履買うんじゃないよって怒ってませんかね」と笑うと、お二人も大笑いしていました。

角館を旅する人々は、みな何かしらの想いを持っています。私たちがそれぞれの想いを分かるはずもありませんし、また知る必要もないでしょう。ただ、単に楽しいだけの旅人ばかりではないという事実を、頭の片隅に置いておきたいものです。
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2016年夜桜たち。

2016年04月23日 | 実演日記












桜まつり真っただ中です。楽しい出会い、懐かしい再会は後日綴るとして、ひとまず2016年の夜桜たちをご覧ください。撮影はカミさんの父親です。
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第2回東北にがおえ桜サミットin角館。

2016年04月20日 | 地域の話



もしも角館に桜のないGWがあったとしても

似顔絵のないGWはない



昨年第1回を終えたとき、角館あきんど塾メンバーと東北にがおえサミットの絵師たちは皆そう考えました。自然な成り行きとして今年第2回を開催します。桜の花は散っていても、似顔絵の主には笑顔の花が咲くでしょう。

プレイベントとして本日20日から、立町ポケパにおいて似顔絵marikoが席描きを開始しています。4月29日~5月1日が本イベント、5月2日と3日はまた立町ポケパで絵師二人が席描きを行う予定です。どうぞお愉しみください!!
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東北人の心。

2016年04月18日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[五阡二百円]
黒地に金をまぶしたような桜プリントですから、組み合わせも金色にしてみました。豪華絢爛、百花繚乱、厳かに美しい金のさくら草履です。こちらも一点限りとなりますので、オーダー対応できません。現在展示してある在庫の減り具合を見ながら、何日に展示するかは決めていません。どなたの手に渡りますか、まさに「ご縁」の世界ですね。

角館の桜たちは、今か今かと咲く日を待ち構えているように見えます。最も早い武家屋敷通り樺細工伝承館の枝垂れ桜が四分から五分咲き、ほかの枝垂れ桜で咲き初めといっていいでしょう。檜木内川堤のソメイヨシノで開花目前です。あと一日10℃台後半になれば一気に開きそうですよ。やはり次の週末、23日・24日は双方見ごろと思って良さそうです。

熊本県と大分県を中心とした大地震の報道に、日本中が胸を痛めています。一昨日の朝開店前にお訪ねのご夫婦は、昨秋もお訪ねくださった岩手県一関市のご夫婦でした。「お久しぶりです~」の笑顔のあとおっしゃるのは、「確か使っているイ草は熊本でしたよね。ご心配でしょう」。
半年前の私との会話をそこまで憶えていてくださったことに、少しばかり驚きました。

五年前の東日本大震災は今なお記憶に薄れることはありません。九州全域で旅行キャンセルが相次いでいるとのこと。無理のない話しながら、五年前の秋田県を思い出さずにはいられません。
一刻も早く揺れが収まり、少しでも早く生活が再建されることを心から願います。

少なくとも東北人で、九州人を心配していない者などいないはずです。
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縁起木の意味。

2016年04月15日 | 実演日記






今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[五阡四百円]
辛子色の井桁プリントに茶の唐草を組み合わせてみました。シブい草履と思っていますが、場合によっては「田舎くさい」の評価があるかもしれません。しかし角館にギラギラのネオンを期待する旅人は皆無でしょう。そう思えばむしろ秋田らしい、角館らしい配色といえるかもしれません。
「今日の草履」は、東京からお越しのおじさまがお持ち帰りです。

縁起木としてお馴染みの「カネの成る木」。ご家庭で育てている人も多く、実演席の目の前にあるこの木がよく話題に上ります。今日お立ち寄りのおばさまもそんなおひとりで…

『水をやっちゃダメって聞くけど、やっぱりそうですか?』

『なんでも極限の状態で育つと綺麗な花を咲かせるらしいですよ』

『はは~、人と同じですね!』


はたと気づきました。「カネの成る木」が縁起木とされるのは経済的な裕福ではなく、価値ある人間を創るという意味ではないでしょうか。とすればお客様がよく言う、『うちのカネの成る木もずいぶん大きいのに、ちっともおカネは増えないのよ』も頷けるというものです。



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熟成の楽しさ。

2016年04月14日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡六百円]
紺基調の扇子プリントに、紺の唐草を組み合わせてみました。同系色の組み合わせは角館草履によくありますが、プリントも和柄同士で相性バッチリと思います。粋でいなせな日本の草履といった感じでしょうか。老若問わずお洒落に履いていただきたいものです。

角館の桜もいよいよ開花のときを迎えました。武家屋敷通りで最も早いとされる樺細工伝承館入口の枝垂れ桜が、今日の午後数輪開きました。今日の角館は最高気温が20℃に達しましたから、桜たちも慌てて開いたのでしょう。明日はまた10℃に満たない予報のため、若干足踏みすると思います。明後日からまた春の陽気に戻り、おそらく開花宣言が17日か18日、見ごろは22日からになるでしょう。

武家屋敷通りの枝垂れ桜と檜木内川堤のソメイヨシノが足並みを揃え見ごろとなるのは、24日(日)からの週と思われます。少し心配なのが、一気に満開となることなんですね。聞いた話では、桜は徐々に開くことで「ピンク色」が醸成されていくそうです。一分、三分、五分、八分…という段階をしっかり踏むことで鮮やかな色を創るというわけです。対して三分咲きくらいから翌朝満開となれば、幾分白っぽい桜になるといいます。

「今日の草履」は仕上がって間もなく、一人旅の男性がお持ち帰りでした。なにほど実演をご覧になるでもなく、角館草履の特徴を聞くでもなく、試し履きをするでもなく「これをください」。
初めてのお客様にこうもあっさりお買い上げいただくと、「熟成」の楽しさは少ない気がしました。
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一宿一飯の恩義。

2016年04月13日 | 実演日記



西宮家米蔵の常連さんに、横手市金沢でかつて地主さんだった旧家のご夫婦がおります。街道に面していたお宅には、その昔遊山中の画家や書家、あるいは地位の高い侯爵などが宿を求めて立ち寄ったそうです。そうした人たちは宿賃を自らの「技術」で支払うんですね。画像は角館が誇る稀代の日本画家、平福穂庵の「牡丹画」。穂庵もまた複数回こちらのお宅で宿をとり、そのたびに何らかの画を残していきました。
現代ではおよそ考えられない話ながら、昔は結構どこの土地でもあったようです。落語にもそんな演目がありました。

いつかどこぞの宿へ泊ったとき、草履を編んで宿賃としてみましょうか。
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花見の伝統。

2016年04月09日 | 実演日記







今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[五阡二百円]
鮮やかなピンクの桜をベースに、こちらも美しい伝統の和柄を組み合わせてみました。「桜」と「伝統」であれば、それはまさに角館の春そのものと云えます。文句なしに美しい草履に仕上がりました。「今日の草履」は現品限りの完全一点ものとなります。オーダー対応はできませんのでご了承ください。

四月も序盤が過ぎ、いよいよ角館の桜たちも開花までカウンドダウンといった状況です。地元民が伝えるfacebookやブログにも、桜の画像がとても多くなってきました。今日現在徐々に赤みを帯び、ふくらみが成長してきているといった感じです。日本気象協会が発表する最新の予測では、「開花が18日、見ごろが24日から」となっています。地元民の肌で感じる予測もおおむねそんなところでしょう。

角館の桜まつりは、例年「4月20日~5月5日」と決まっています。これは全国の旅行会社が早々に「桜ツアー」を企画するため、開花状況を見ながら毎年決めるには遅すぎるという事情があってのことなんですね。ですから角館における桜まつりのイベントは、桜が咲いていようがいまいがこの期間に行わざるをえません。ときに大きくズレることもあり、私たちのドキドキ感はそこにあるわけです。

今年の場合、桜まつり開幕の前に咲きだす予測となりました。そこで急きょ話し合いが持たれ、花見会場の出店は16日からと決まったそうです。桜が咲きだせば、国の名勝檜木内川堤のソメイヨシノに人も集まります。そこに小腹を満たす、あるいは冷たいビールを売る店はどうしたって必要ですからね。ときに純粋な桜愛好家が出店を「邪魔」と感じる話を聞きますが、角館のお花見にお店が並ぶのは昔からの定番です。これも角館の「伝統」と思っていただけたら幸いと存じます。

私も会期中一度は、夜桜を愛でながらの熱燗を楽しみにしているひとりです。昼は観光のお客様で賑わう花見会場も、夜は地元民が伝統を味わって良いのではないでしょうか。
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