角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

愛犬と草履の鼻緒。

2010年03月30日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
緑基調のカラフルな花柄プリントをベースに、合わせはエンジのいらかプリントです。
カラフルでありながら、花柄の色調はいたって和風なんですね。これから別の色とも組み合わせてみますが、今日のところはエンジのいらかにしてみました。やはりカラフルでありながらも「和」が活きていると思います。平生地はこちらです。




昨日のこと、実演中のケータイに着信がありました。ちょうど見学中のお客様がいたため出られなかったのですが、着信記録をみると東京23区内からです。自宅が留守の場合私のケータイへ転送される仕組みで、おそらく草履のお客様だとは直感しました。
その後再度着信があり、今度はお客様がいなかったのですぐにお受けしました。電話の先はおばさまのお声で、『去年から草履を履いている者ですけど、修理についてお訊ねしたくて…』。

詳しく聞いてみると、おばさまが飼っている犬に草履の鼻緒をかじられたと言います。完全に切れてはいないものの、中のイ草がかなり見える状態なんですね。他は特段痛んでいないため、まだまだ履きたいというわけです。
こうしたご相談は過去に一度ありました。そのときは二年近く使用したうえに完全に切られた状態だったため、確か新しい草履をお求めだったと思います。

完全に切れているかそうでないかに関わらず、実は角館草履の鼻緒は挿げ替えが不可能なんです。「鼻緒」と言うのは指の股が当る「先ツボ」ではなく、いわゆるヒモの部分全体を指します。先ツボの交換は容易ですが、鼻緒全体は草履と一体化して編む構造のため、これだけを替えることが出来ないんですね。

お電話のおばさまにも丁寧にご説明すると、すぐにご理解くださいました。お知り合いで角館草履が欲しいとおっしゃる方がいるそうで、何人分かまとめて後日ご注文くださるとのこと。お客様の願いを叶えることができないのは恐縮ながら、鼻緒が壊れて尚履く方法がないものかお訊ねくださるほど、角館草履を気に入ってくださったのは嬉しい限りです。

ところで、犬が飼い主の履物を咬むという話はよく聞きますよね。これがわが家にはまったく当てはまりません。愛犬フクは、わが家に来ていっとき柱を咬んだりしたものですが、最近は家族が迷惑になることをまったくしませんね。逆に飼い主が帰宅しても、喜ぶ仕草がありません。未だに仰向けでは寝ませんし、まず甘える素振りがないんです。
フクは元来そういう犬でしょうから、それはそれで不満じゃないんですけどね。

愛犬を殺された仕返しに、厚生事務次官の殺害を計画した事件がありました。はじめて聞いたときは俄かに信じがたい動機でしたよ。この事件の判決が「死刑」と出ました。被告はこれを不服として、即時控訴だそうです。
被告が言っていた言葉に、こんなのがありました。「保健所により、犬や猫が生ごみのように捨てられている。人の命だけがなぜ尊いのか」。

動物愛護の観点とか、愛犬家・愛猫家の気持ちを訴えるとしたらもっともでしょう。ただ違うのは、犬をそういう状況にしたのは誰なのかという点と、殺処分する職員の人たちも涙を堪えている点でしょうね。わが家が犬を飼いたいとしたとき訪ねた県動物管理センターの職員から、わが家の家族は充分知らされて来ました。2007年4月2日のブログは、動物を飼い続けるうち忘れてはならないと思っています。

愛犬も角館草履の鼻緒も、簡単に挿げ替えは出来ません。

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