非国民通信

ノーモア・コイズミ

恣意的なチョイス

2014-06-12 21:31:41 | 社会

 先日は、何故○○は××のせいと言われるのに、一方で△△は××とは関連づけて考えられないのか、みたいな話を書きました。例えば子宮頸がん予防ワクチンの接種者を対象にしたアンケートなら「肩こり」とかもあって良さそうなもの、実際にワクチン接種と関連するのか単なる偶然かといった関連性はさておき肩こりに悩まされたアンケート対象者ぐらいはいたはずですが、なぜか発表された集計結果に「肩こり」はカウントされていませんでした。肩付近に打ち込むワクチンなのに。

 そして「被曝」との関連性云々で、何故かピックアップされているのが「鼻血」です。繰り返しますが鼻血が出るほど被曝したら絶対に鼻血だけでは済まない、逆に鼻血だけで済んでいるのなら被曝とは別の要員と断定できるわけですけれど、「どうして鼻血なのか」という疑問は残るところではないでしょうか。頭髪が薄くなったのを被曝と関連づけて考える人がいても不思議ではないのに、どうして鼻血なのか、薄毛と原発事故との関連性だって「ないとは証明されていない」ことには違いがありませんし、それに悩まされる人だっていくらでも集められるはずです。なぜ反原発派は毛根の危機を訴えずに鼻血を選択したのか、それを考えるのは無意味ではないと思います。

 結局のところ「子供を盾にする」文化が我々の社会では強いのかな、という気がしますね。額の禿げ上がったオッサンなんて、いくら担ぎ上げたとしても世間の同情を引くことはできません。御輿にするなら、子供に限ります。だからこそ「頭髪が薄くなる」という中年以降の男性に目立って現れる症例はスルーされた、逆に鼻血という子供に起こりやすい症例がピックアップされたのかも知れません。鼻血を出す子供くらいいくらでもいますし、子供が被害を被っているというイメージを形成できれば概ね「勝ち」です。そうして「子供を守れ」と声を上げれば相手の口を塞ぐのは至って簡単なことですから。

 「鼻血はストレスによるものだともいわれていますが、鼻血というものは、ストレスでは出ない。メンタルケアの「いろは」もわかっていない。ストレスで鼻血が出たという報告は全くありません」――と、ちょっと耄碌している感じの「専門家(朝日新聞定義による)」が断言するなんてこともありました。それも酷い話だな、と思います。ストレスは万病の元、体調が悪化すれば鼻血が出ることもあるでしょうし、ストレスと高血圧との関係は広く認められているもののはず、そして血圧の上昇によって鼻腔内の血管が切れることもあり得ます、もちろん感情の昂ぶりによっても、ですね。世間には「おにぎりで食中毒なんて聞いたことがない」と宣う医師もいたものですが、ストレスで鼻血は出ないと言いきる人もまた同類なのでしょう。

 まぁ、ストレスとは万病の元であるが故に、特定の症例との関連づけが難しくなるところもあるのかも知れません。そしてストレスのように特定しがたい因子に代わって生け贄が別に選ばれる、他の何かが「○○のせいだ」と叫ばれ原因として(根拠の疑わしいまま)断定される事態は、意外に少なくないのではないでしょうか。代替医療よりはマシというだけの話で通常医療だって実に頼りないもの、身体的な不調を訴えて複数の医療機関を受診してもこれといった対処法はなく症状は悪化するばかり、そんなケースが当たり前です。ここで「それは○○のせいなのです」と力強く断言する、話術に巧みな代替医療の業者につけ込まれてしまう人がいるのもやむを得ないことなのかという気すらしてきます。

 風力発電にも健康被害を訴える人がいて、概ね同情はできますし私としても住居の近辺に巨大風車が設置されるようなことはあって欲しくないなと願うばかりなのですけれど、そこで健康被害の元として挙げられる一つとして低周波があったりするわけです。ただ低周波による健康被害の可能性は、あんまり高くないらしいですね。むしろ騒音によるストレスの方が十分に考えられる、小さかろうと風車の唸る音が四六時中鳴り止まないとあらば、それは気の休まる暇もない、ストレスが溜まってどこかが悪くなってもおかしくないと考えられそうなもの、しかし騒音によるストレスを訴えるのは、今一つ世間的な理解を得にくいのかな、とも。

 総じて騒音被害を訴えると、クレーマー扱いされがちです。騒音源に対してうるさいと声を上げれば、我慢しろ、耳栓でもしてろ、お前だってうるさいだろうがと世間から非難囂々、時には区長自ら騒音被害を訴える住民をモンスター呼ばわりするようなパターンだってあるくらいです。ストレスは万病の元であるが故に特定の症例との関連性を訴えにくい、そうなると「精神的苦痛を被った」という微妙な言い回しをせざるを得なくなることもあるでしょうか。それよりは、「低周波」という耳慣れない、なんだか恐ろしそうな用語を持ち出して健康被害を訴えた方が世間の理解を得やすいところがあるとしたら、なんだか嫌な話だなと思いますね。

 

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2 コメント

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Unknown (くり金時)
2014-06-15 08:59:53
意外に、「放射能」がらみの話で、「頭痛」や「鼻血」は、よく出てくるが、「下痢」とか、「失禁」、「足の腫れ」なんて話は、あまり聞かない。本当に放射能の被害があれば、体全体に及ぶわけだから、かなりの報告が、あってもいいのだが。(ついでに言えば、地表に近いところほど、症状が出やすいはずだが。)それはともかく、「正しい事」かどうかより、単純に「答え」さえ出ればいい、「分かれば良い」というのが、最近の風潮ですし。(おまけに、調べようともしないのも。)
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Unknown (非国民通信管理人)
2014-06-15 11:26:57
>くり金時さん

 その辺、不思議と鼻血で止まっている場合が大半なんですよね。そんな限定的な症状を主張するほど被曝との関連性は否定されそうなものですが、まぁ反原発など己の目的に添っていれば、もう自説の整合性など気にしない人が多いということなのでしょう。
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