大学調査、採用広報活動開始時期の後ろ倒しはマイナスの影響と回答(マイナビニュース)
マイナビはこのほど、大学・短期大学の就職支援に携わる学校職員を対象とした「2013年度キャリア・就職支援への取り組み調査」の結果を発表した。
(中略)
学内の企業説明会は私立を中心に「増やした」が16.8%と高い割合に。開催開始時期は「12月」が47.8%と、約半数の大学が年内から実施。参加を望む企業の増加により、参加企業数も「増えた」が36.2%となっている
(中略)
保護者向けガイダンスを実施している大学は47.7%と、約半数の大学が実施。ガイダンスの開始時期は6月がもっとも多い21.4%となり、次いで9月が14.1%と、夏季休暇を挟んだ前後に実施する割合が高い。
(中略)
2016年卒に広報開始時期が後ろ倒しになった場合の影響予測は、学生の就職活動にマイナスの影響をおよぼすと考える大学担当者が多い様子がうかがえる(自己分析「不十分になる」30.8%、業界・職種・企業研究「不十分になる」45.0%)。
また、就職せずに卒業する学生が「増える」とする回答が46.1%、就職留年が「増える」が31.4%となった。在籍中に就職せずに就職を先送りする学生は、1~2割増加すると予測している
この手の調査は多々あるわけですが、せっかく予算を組んで調査したにも関わらず、単に回答を集めただけで意味のある調査になっていないのではないかと、そう疑問に思うことも少なくありません。まぁ、某リサーチ会社の求人に応募したら5分で面接を打ち切られた(それは会社が求めていることではありませんね、みたいに言われたものです)私の考えることなどは、この種の調査に予算を付ける人からすれば「余計なこと」なのかも知れません。
企業説明会の実施時期は12月が多く、保護者向けガイダンスは6月と9月が多いそうです。私には不親切な報道に思われるのですが、果たして何年生を念頭に置いての「12月」及び「6月」と「9月」なのでしょうか。おそらくは3年次の12月に企業向け説明会が多く、4年次の学生の保護者向けのガイダンスは6月と9月が多いものと推測されますけれど、その辺は読者に説明しておく必要がありそうな気がします。もしかしたら、もっと早いのかも知れませんし、もっと遅いと考えている読者もいるでしょう。あるいは「飛び級」もしくは「周回遅れ」で説明会やガイダンスに参加する人もいるのか等々。
見出しにも掲げられているように「採用広報活動の後ろ倒しにはマイナスの影響が」との回答が多数を占めたようです。実際、どうなんでしょうね。一時期は学校給食費の滞納が騒がれていまして、まぁ申し込みの合意なく強制的に支払いを求められるものとしては健康保険や年金の類の他にもNHK受信料とか色々ある中で、不思議と際だって納付率の高い給食費が、あたかも滞納が深刻であるかのように取り沙汰されていたわけです。そこで学校教員に「(理由を)どう思うか」みたいな調査が行われたものですが、関係者が「どう思っているか」と本当の理由が一致しているのか大いに疑わしくも感じました。今回の調査でもどうでしょう、就職支援に当たっている学校職員の感覚を、皆様はどこまで信頼していますか?
調査を意味のあるものにするためには、比較対象の一つも欲しいところです。「広報開始時期が後ろ倒しになった場合の影響予測」だけではなく、反対に「広報開始時期が 前 倒 し になった場合の影響予測」及び、「広報開始時期が 現 状 の ま ま 続いた場合の影響予測」を問うべきものと考えます。「広報開始時期が後ろ倒しになった場合」に「マイナスの影響」が予測されると言うからには、逆に前倒しする、もっと就職活動の開始時期を早めればプラスの影響が出る――そう考えられるということでしょうか。流石に、そう回答する学校職員は多くないはずです。
実際のところ就職/採用活動があまりにも早すぎるという懸念が一定の社会的合意を得るまでに高まったからこそ、もう少し後ろ倒しにしようという気運も生まれてきたわけです。行政主導の決定にとりあえず異議を唱えてみたい感じの人もいるものと推測されますけれど、じゃぁ逆の決定だったら賛成するのかと、そう説いたくもなります。昨今のデフレ是正、円高是正に関してもあれこれとネガティヴなことを語る論者や政党/政治家がいるわけですが、ならば民主党時代のデフレ放置、超円高放置に賛成なのかと呆れること然りです。それと同じものを「後ろ倒しにはマイナスの影響」云々との今回調査結果に感じないでもありません。
後ろ倒しでマイナスの影響というなら、前倒しでプラスになると言うのか、もし前倒しでもダメ、現状放置でもダメというなら、ではどの時点に「区切り」を設けるのが最良と考えているのか、その辺まで踏み込めれば単純なアンケートでも意味があるものになると言えます。そもそも今回調査では学内の企業説明会開催時期を「早めた」と回答した学校も多い、では「早めた」結果として「マイナスの影響」もしくは「プラスの影響」があったのかも追ってみれば、より実証的な調査にもできたことでしょう。しかし、単にアンケートを集めるだけで終わっている、これが学生のレポートで私が教授だったら「不可」を付けちゃいますね。
なお「(後ろ倒しによる)マイナスの影響」として「自己分析」だの「企業研究」だのが列記されています。これ、意味があるのでしょうか。近隣の業界で働きながら同業他社の企業研究をするならいざ知らず、学生の企業研究なんてたかが知れているように思うところ、自己分析に至っては言わずもがなです。むしろ自己分析だの企業研究だのと煽り立てて学生を食い物にする就職業界、コンサルタントの類の縄張りが荒らされることへの危機意識でもあるのではと邪推してしまいます。後ろ倒しで「他人を就職させる仕事」の需要が減ることへの反発も今回調査結果には密かに載っているのではないかと……
在学中に「自己分析」だのをする余裕がある人は研究と並行してやっておいて、卒業・修了と同時にエントリーを始める。さっさと内定もらえたら、後は遊ぶなり自己啓発なりして残り期間を過ごす。大学に顔を出して、自分の研究テーマの続きをやっても良いかも知れません。
在学中は研究に専念した人でも、さすがに卒業後1年あればその辺の準備はできるでしょう。在学中ずっと遊んでた人は…、研究アピールで、明らかに差がつくでしょうね。
就活生(特に理系)は、在学中のいわゆる「コミュ力」アピール(それはそれで要ると思います)に加えて、地に足の着いた「研究経験」アピールができる、と思うのですが。
その間、卒業生はニート状態になるかも知れませんが、どうせその後、企業はほぼ休みなく働かせる心づもりなのだし。1年くらい空白でも良いじゃんか、と思ってしまいます。企業側が採用計画を立てづらいとか?いう理由で論外なんですかね。
むしろ新卒一括採用のように「年に1回、決まった時期にしか社員を補充できない」仕組みの方が難しいはずなんですよね。だから離職率の高いブラック企業の方が通年採用、中途採用に積極的だったりするわけで、企業側の採用事情からすれば「卒業後」に就職活動期間が設けられた方が楽な方にも思えるのですけれど、それを嫌がる独自の「こだわり」があるのかも知れません。労働力が有り余っている現状、学生(若者)に就職を急がせるよりも、もっと有意義に時間を使われることを考えるべきと思うのですが……