非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本=安い国

2017-07-10 00:06:37 | 雇用・経済

華為が日本に通信機器大型工場 中国勢で初、技術吸収(日本経済新聞)

 通信機器大手の中国・華為技術(ファーウェイ)が初の日本生産に乗り出す。年内にも大型工場を新設し、通信設備や関連機器を量産。日本の技術と人材を取り込み、日本や他の先進国で受注を増やす。事業買収や研究開発拠点の設置が中心だった海外企業による対日投資が生産まで広がる。中国企業が日本に本格的な工場を新設するのは初めて。

(中略)

 すでに研究拠点を持つ華為はさらに生産まで乗り出す。日本は人件費の高さが課題だったが、中国の人件費が上昇して差が縮小。日本の割高感が薄まり、華為は新工場で生産管理の人材を多く採用する予定。中国流の低コスト大量生産と組み合わせ、品質と価格競争力を両立させる。

 

 さて内部留保を増大させるしか能がない日本企業を尻目に、中国企業は進歩を続けているわけです。ラオックスなりシャープなり、駄目になった日本企業が中国企業に買われて再建を果たすなど20世紀には考えられなかったことですが、今や日本は経済力において大きく立ち後れた国家となりつつあります。人件費が高騰する中国に比べて一向に人件費が上がらない日本ですから、むしろ「コスト削減のために」日本へ中国企業が進出してくるのは、今後も増えていくのではないでしょうかね。

 

ファーウェイの初任給月40万円が話題 「普通に就職したい」「優秀な人は流れていっちゃう」(キャリコネニュース)

中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の日本での初任給が40万円以上だと話題になっている。

リクナビ2018に掲載されたファーウェイ・ジャパンの求人広告によると、募集職種は「通信ネットワークエンジニア」「端末テストエンジニア」「端末アフターサービスエンジニア」「研究職・アルゴリズムエンジニア」の4つ。月給は学士卒で40万1000円、修士卒で43万円に設定されている。年に1回以上は賞与があるというから、賞与が月給2か月分だとすると年収は初年度から560万円以上になる。

「有給消化50%以上」「完全土日祝休み」ともあり、きちんと休むこともできるようだ。もちろん各種社会保険も完備されており、退職金制度も整っている。

 

 ……そしてファーウェイの新卒向け求人の条件がこちら。日本では大手企業でも最初は20万前後からというカルテルでも結ばれているかのような水準が長年に渡って続いているのですが、真のグローバル企業にとって日本の慣習などは関係ないようです。郷に入りてはなんとやらで外資系企業も日本人向けには日本水準に賃金を落としてくるところも多いですけれど、ファーウェイは良い意味で日本の流儀を無視してきたと言えます。

 プロスポーツの世界では、(短いスパンでは番狂わせもあるとは言え)選手の総年俸とクラブの成績は比例します。良い選手には相応の高年俸が支払われるもの、秀でた選手の集まるチームなら年俸が高いのは当たり前、しかるべく評価額を提示できなければ優れた選手は集まらないものです。もちろん弱いチームに選手獲得の優先権を与えようとする護送船団リーグもありますけれど、選手の価値に見合った報酬を支払えないチームは容赦なく降格させられるリーグもあるわけです。

 そこで日本のビジネス界は、どうでしょうか。一見すると国内競争を煽り立ててきたようでいて、その実は限定された分野での競争に止まっている、不毛な消耗戦のごとき競争は続けるけれど、発展のための有益な競争は行っていないのが実態ではないでしょうか。つまり、人件費を削ってサービス提供価格も引き下げるデフレへの競争には熱心な一方で、優秀な人材確保のために報酬を引き上げるような競争は行ってこなかった、と。

 とかく排外主義者に限らずハト派の政党でさえも外国の企業を鬼畜米英のごとくに語ることが目立つわけですが、むしろ日本には再度占領されることが必要な気すらしてきます。今の日本では「正社員であるだけでありがたく思え」みたいなレベルで通っていますけれど、そんなものは中国企業にでも駆逐されてしまうべきでしょう。GHQでも鴻海でもファーウェイでもどれでも良いですが、日本は改めて世界からビジネスを教えてもらわないと駄目なように思います。

 まぁ、とにかく人件費の安い国になりたい、内部留保の積み上げこそが豊かさなのだと、そう考えているのなら日本式の経済理論で続けていけば良いのかも知れません。たしかに、それが理想であるならば日本の改革は成功したと言えそうです。しかし、「人件費の安さを当て込んで他国が工場を建設する国」になろうとするのは未来志向なんでしょうか? 国内で働く人の給与水準もGDPも全く伸びないのに内部留保だけが増大を続ける社会ってのは持続可能なのでしょうか? 日本の政治家、経済系のメディアと言論人、そして企業経営者は、いい加減に自分たちの追い求めてきたものが完全な誤りであったことを自覚すべきです。

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