非国民通信

ノーモア・コイズミ

低い生産性こそ日本のアイデンティティなのかも知れませんね

2017-07-02 22:53:14 | 雇用・経済

「仕事終われば帰る」過去最高48% 新入社員意識調査(朝日新聞)

 まわりが残業していても、自分の仕事が終われば帰ろう――。そう考える新入社員が約半数にのぼることが、日本生産性本部が26日発表した新入社員の意識調査でわかった。長時間労働の是正など「働き方改革」への関心が高まるなか、自分の時間を大事にしたいという意識が高まっているようだ。

 仕事についての考えを問う質問で「職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る」という項目に「そう思う」「ややそう思う」と答えた人の割合は計48・7%。前年度より9・9ポイント高く、同じ質問を設けた2001年度以降で最高だった。「職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない」という項目では「そう思う」「ややそう思う」が計30・8%。前年度より10・1ポイント高く、こちらも過去最高だった。

 

 「仕事終われば帰る」と回答したのが48%と言うことですので、裏を返せば50%以上の人は「仕事が終わっても帰らない」ことがわかります。まぁ、これもまた日本の生産性の低さを象徴する一幕でしょうかね。ただ問われているのは「意識」のようですので、実践できているかどうかは不明です。こういう片手落ちの調査に予算を費やしているあたりからも日本の生産性の低さはうかがわれるのかも知れません。

 とりあえず「考え」を問われる限りでは、半数未満の人が「仕事が終わったら帰る」と回答しています。これが実際に帰れているのかどうか、継続できているのかどうか、そこもまた問われるべきではないでしょうか。帰ろうとしても同僚や先輩社員から暗に引き留められて帰れなかったり、この調査が行われたであろう4月頃には帰れていたものが、入社して時期が経つに伴って帰れなくなっていたり、そういうこともあるはずです。

 そして入社したばかりの頃に「仕事が終わったら帰る」と回答していた人の5年後ぐらいはどうでしょう。入社当時はマトモな考え方が出来ていたとしても、会社勤めで次第に頭が悪くなることもあるわけです。その辺の追跡が出来れば、単なるアンケートで終わらない有意義な調査にもなり得ます。まぁ、「とりあえずアンケートを集めてみた」みたいなのでも我が国では通用してしまうもので、この辺は報道する側にも問題意識を持って欲しいところです。

 そもそも前提にある「職場の上司、同僚が残業していても~」からして、その内容が問われます。なぜ「上司、同僚」は残業しているのでしょうか。本当に仕事が終わらないから残業しているのか、それとも仕事が終わっても「周りが残業しているから」、自分も帰社せず仕事をしているフリをしているだけなのか、この辺こそ生産性向上のためには厳しく追及される必要がありそうです。

 結局のところ「仕事が忙しいから」ではなく「相互監視が厳しいから」残業しているだけの組織も日本には多いような気がします。職場の皆が「周りが残業しているから」自らも残業する、それもまた我が国の長時間労働の一因です。そして「残業することが決まっている」以上は、時間内に仕事を終わらせようとする努力こそ無意味になる、残業を前提にダラダラと仕事を引き延ばす方が日常になってしまっているのではないか、と。

 ちなみに自分の勤務先を考えると、残業がラマダンの断食のような意味合いになっていると感じることが多いです。別に、そんなことをやってもやらなくても何かが変わるわけではない、ただ「皆が」同じ荷を負うことで共同体としての一体感を高めようとしているのかな、ぐらいに感じています。仕事を終わらせて一人だけ定時に帰ると、まさに異教徒になった気分が味わえますよ!

 「仕事終われば帰る」と回答した人が新入社員だけでも過去最多というのは好ましい傾向ですが、それでも半数未満です。そして実践できているかは分からない、数年後も正気を保てているかどうかは分からないわけです。周りが残業しているから仕事が終わっても帰らない、そんな上司や同僚の姿を見て、自分も帰らない、それを見た別の社員も帰らない……この負のサイクルを日本人は自らの手で破壊できるでしょうか?

コメント
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