非国民通信

ノーモア・コイズミ

放射「能」への恐怖を免罪符とした差別や排除を認めてはならない

2011-09-11 23:13:51 | 社会

財務相「小宮山先生はたばこ嫌いなんですよね」(読売新聞)

 小宮山厚生労働相が5日の記者会見で、たばこ税を増税し、1箱あたり700円程度とすべきだとの考えを表明したことが波紋を広げている。

 藤村官房長官は6日の記者会見で「個人的な思いを述べられたものだ」と述べ、政府方針ではないとの見解を強調。安住財務相も「ご高説は承っておく。(たばこ税の)所管は私だ。小宮山先生はたばこ嫌いなんですよね」とけん制した。

 小宮山氏は6日の記者会見で「(厚労省は)700円に上げると決める省ではない」とトーンダウンしたものの、「個人的意見というよりは厚労省を代表して申し述べた意見だ」とこだわりをにじませた。

 大麻は煙草よりも中毒性、依存性が低いとの研究結果は少なからずありますが、裏を返せば煙草の中毒性は大麻以上と言うことです。たばこ税を上げると禁煙する人が増えるから税収増にはならないなどという毎度の脅しが繰り返されるものですけれど(法人税を下げないと云々を思い出します)、結局のところ煙草を止められる人は少ないので確実な税収増が見込めたりする美味しい税でもありますね。そんなわけでか、たばこ税の増税を新厚労相が考えているようですが、色々と反発もあるわけです。とかく喫煙者に道を譲らない人を見ると、やれファシストだのナチズムだのと連呼する人もいるわけで、まぁ煙草の依存性の高さを思い知らされます。

 さて、安住財務相曰く「小宮山先生はたばこ嫌いなんですよね」とのことです。これも結構な問題発言ではないかと私には思われるのですが、いかがなものでしょう。たばこ税を引き上げようとするのは、あいつが煙草を嫌いだからだ――みたいな言い方を出来てしまう、その神経に政治家として不適格なものを感じるところです。戦前の日本に批判的な言動を取った人を「日本が嫌いな反日」みたいに呼んでいる人と同レベルにしか見えません。まぁ、煙草が絡むと人格が変わってしまう人もいるのでしょう。おぉ、怖い怖い。

 一方、かの武田邦彦が「タバコと肺がんはほぼ無関係」などと言い出したそうです。彼が言うなら、たぶん事実は逆なのであろうなと確信できてしまうところがないでもありません。ともあれ武田邦彦に言わせれば「タバコと肺がんはほぼ無関係」なのだそうです。氏の主張のどの変に誤魔化しがあるかは下記リンク先を参考に挙げておきますが、常日頃から放射線の影響を、今まで確認されたことがない空想の産物に過ぎない代物まで喧伝してきた人が、「タバコと肺がんはほぼ無関係」というのですから何とも良いお笑いです。

参考、タバコと肺がんはほぼ無関係?


「東北の野菜や牛肉、健康壊す」教授発言に一関市長抗議(朝日新聞)

 岩手県一関市の勝部修市長は6日、読売テレビ(大阪市)系列の番組で中部大の武田邦彦教授が一関市を挙げて「東北の野菜や牛肉を食べたら健康を壊す」などとした発言を取り消すよう抗議のメールを送った。さらに、「農家の感情を逆なでする非常識な発言である」とのコメントを発表した。

 武田教授は4日午後に放送された「たかじんのそこまで言って委員会」で、「東北の野菜とか牛肉を食べたら僕らはどうなるの」という子どもからの質問に対し、「もちろん健康を害する」「今生産するのが間違っている」などと発言。ほかの出演者が「発言を取り消すべきだ」と反対したが、「取り消しません」と応じた。番組は同日、秋田、宮城両県でも放送された。

 発がんリスクを基準にするなら、それこそ基準値を超えてしまったホウレンソウなり牛肉なりを、そんなに特定の食品ばかり大量に摂取したら体を悪くするだろうという分量を食べ続けたところで、煙草の足元にも及ばないわけです(もとよりEU等のそれに比べて緩いわけでもない基準値をクリアしている食品しか流通を許されていないですし)。煙草の健康への影響を無視できる人なら年間2000ミリシーベルト程度の被曝量までは許容できてもおかしくないように思われるのですが、まぁ馬鹿げた話です。ワン・ドロップ・ルール(一滴でも黒人の血が混じっていると黒人とみなされる)よろしく、放射線量が0でなければ汚物扱いと言うことでしょうか。実に馬鹿げた話ですが、こんなヨタを真に受けて福島を初めとした東北の産品が市場で敬遠の対象になったりするのですから笑い事では済まされません。武田発言のようなものこそ偏見を植え付け、嫌悪感を煽り立てるヘイトスピーチとして扱われるべきです。


中部大・武田教授発言 一関市にメール殺到 岩手(産経新聞)

 読売テレビ(大阪市)が4日放送した「たかじんのそこまで言って委員会」で、中部大の武田邦彦教授が東北地方の野菜や牛肉を「健康を害するから捨ててもらいたい」と発言し、勝部修・一関市長が抗議のメールを送った問題で、一関市には7日朝からメールが殺到、大半は市長の対応を疑問視する声だった。勝部市長は産経新聞の取材に応じ、「私の真意が伝わっていない。放置できない問題」との認識を示した。武田教授から返信はなく、7日、再度メールを送ったことを明らかにした。

(中略)

 7日は午後5時までに254件のメール、6件の電話が寄せられた。大半が「市長名の抗議は行き過ぎではないか」「抗議先が間違っている。国や東京電力に抗議すべきだ」と市長の行動を疑問視する意見だったという。

 一関市は「武田教授の発言は全体としては国の責任で除染すべきという内容であり、理解できる部分もある。しかし『畑に青酸カリがまかれたようなもの』という発言は論外で、市民感情を考慮してほしかった」として、市長の対応に誤りはなかったという認識だ。

 そもそも畑に散布される農薬とか、直接口にしたら即死しそうなものも結構あるわけで、『畑に青酸カリがまかれたようなもの』という言い方は二重に頭が悪いですね。せめて「畑にデスがまかれたようなもの」とか「畑にデジタルメガフレアがまかれたようなもの」くらいにしておいてほしいものです。それはさておくにしても、当然ながら上述の武田発言が抗議の対象になったと思いきや、あろう事か抗議した側の一関市に対して「疑問視する」意見が殺到したことが伝えられています。ヘイトスピーチに抗議した方が袋だたきに遭うようでは、世も末です。「抗議先が間違っている。国や東京電力に抗議すべきだ」なんて言い出す輩も出たそうですが、こういう風に「悪いのはあいつなのだから」と国や東京電力へと責任転嫁することで差別を生み出そうとする言動を実質的に容認してしまうようでは……


福島支援ショップ、開店中止 福岡、反対の声受け(朝日新聞)

 東京電力福島第一原発事故で苦しむ福島の農家支援のため、福岡市内で17日に開店予定だった産地直送品の販売店「ふくしま応援ショップ」が、施設側の要請で出店を取りやめた。「福島からのトラックは放射能をばらまく」などと書かれたメールや出店に反対する電話が相次いだためという。運営側は8日、福岡市役所で記者会見し、「これが風評被害というものか」と悔しさを語った。

 店を運営する市民グループ「ふくしまショッププロジェクト」によると、メールは出店を予定していた農産物直売所「九州のムラ市場」が入る商業施設「マリノアシティ福岡」(福岡市西区)と、プロジェクトに参加している食品宅配組織「九州産直クラブ」に届いた。「九州に福島の物を持ち込むな」「地域の汚染が広がる」などの内容で、出店発表後に計15通が届いたという。7日にムラ市場から「今回は出店を見送って欲しい」と連絡があり、出店を取りやめたという。

 ムラ市場の担当者は「独立店舗ならまだしも、他店舗もあるので変なことになると困ると判断した。ショップ側とは話し合って出店を取りやめた。出店契約は成立していない」としている。一方、プロジェクトは会見で契約書を示し、「契約はしていた」と話した。

 プロジェクト責任者の吉田登志夫さんは「商品は震災前の収穫物で作った梅干しやラーメンなどの加工品。それでもさらに放射線量を測って販売する計画だった」と話した。

 そして極めつけがこれです。武田邦彦(だけではありませんが)のような輩をのさばらせ、放射「能」に関する諸々の偏見が広まることを防げなかった結果として、このような謂われなき排除が随所で繰り返されているわけです。「福島からのトラックは放射能をばらまく」なんて荒唐無稽にも程がありますが、福島のものはあらゆるものが汚染されていて、かつ伝染するかのごとく語り伝えてきた輩もいて、それを真に受けてきた人もいるということなのでしょう。今となっては、このような排除や差別を生み出したのは原発なのかすら疑わしく思えてきます。実害などあり得ないはずなのに、それでも排除の対象とされてしまうのは放射線ではなく偏見の影響が強いからこそです。放射性物質を放出してしまった施設に全く責任がないとはいいませんが、誤った知見を広めて回った人々の罪こそ、もっと強く問われてしかるべきではないでしょうか。放射「能」への恐怖を免罪符として差別や排除の論理を実践している人々を社会が是認するようなことがあってはならないはずです。

 

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