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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

サムスン対アップルの時代?

2010-02-24 07:59:07 | Weblog
前回紹介した週刊ダイヤモンドの今週号。メインの「ソニー・パナソニック VS サムスン」特集も非常に面白い。薄型テレビの世界市場で首位の座にあるサムスンだが,企業総体としても,あらゆる財務指標でソニー,パナソニックを圧倒的に上回っている。サムスンは日本市場では全く成功していないので,ふつうの日本人はそのすごさに気づいていない。 サムスンの新入社員は TOEIC が900点以上ないとだめで,課長昇進には 920 点以上必要,というのも驚きだ。人事面では信賞必罰が徹底しており,50代の社員は非常に少ない。新入社員の 10% が毎年退社し,30% が3年以内に辞めるという。

サムスンはマーケティングでも,非常に積極的である。グローバル・ブランド戦略を徹底し,広告や販促物のデザインは世界的に統一されているという。全社の広告費-売上高比率は3%。総額でも日本企業をはるかに上回る(売上で上回るのだから,当然そうなる)。広告だけでなく,営業部隊のきめ細かさもすごいようだ。2000年代初頭のサムスンの海外進出は,ソニーが圧倒的に強かったタイやイタリアに絞って,資源を集中投下するかたちで行なわれたという。相手の強いところをあえて選ぶ戦略が合理的かどうかは一概にはいえないが,少なくとも壁を破ったときのインパクトは大きそうである。

同社幹部は「デザインが経営の頭脳であり,マーケティングが血液だ」という。サムスンは技術力だけでなく,デザインにおいても高いレベルにある。その企業努力が実って,北米で権威のあるデザイン賞 IDEA(Industrial Design Excellence Award)で,昨年サムスンは8部門で受賞した。これはアップルの7部門を上回る最多受賞である。ハノーバの iF デザイン賞でもサムスンが1位,アップルが2位,パナソニックは5位でソニーは7位であったという。確かに超薄型の LED テレビのデザインを見ていると,これが適切な価格で日本市場に導入されたらかなり売れるのではないかと思わせる。

向かうところ敵なしのサムスンだが,アップルに「運転資本回転日数」で大きく負けている。アップルにデザインでは追いついたとしても(そこにも異論はあるだろうが),効率的なサプライチェーンの構築という点では負けているというわけだ(逆にいえば,アップルがそういった点で強みを持つことは,ぼくにとって意外であった)。センセーショナルな言い方をすれば,これからの情報家電は,サムスンとアップルの戦いになるということか・・・。いやいや,日本の家電業界が復活するというシナリオだって,まだまだ高い蓋然性で残っているはずだ(そういえば『社長島耕作』の新刊も出たなあ・・・)。

いずれにしろ,サムスンの躍進はマーケティング研究に面白いネタを提供する。今後注目したいのは,日本再進出。グローバル市場では日本企業を応援しても,日本市場ではサムスンのリベンジに期待したい。デザイン力の高さは,日本でのステレオタイプ的なブランド力の低さをどこまでカバーできるだろうか。世界市場での成功をどこまでブランド力の向上に活用できるか。大量の広告費を投入すれば,秀逸なキャンペーンでイメージ向上に成功したソフトバンクの例に続くことができるかもしれない。もちろん,時間はかかるだろう。選好進化の研究対象として格好の事例になるはずなんだが・・・。

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