Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「闇金」から人間を洞察する

2010-02-14 09:54:15 | Weblog
このシリーズ,早く終わらないかと思う。なぜそう思うのかというと,そこに描かれている現在日本の「底辺」があまりに凄惨で読むのが辛いからだ。といいつつ,ぼくはそれを17巻まで読み続けてきた。底辺といっても,かつてのような絶対的貧困があるわけではない。収入では賄えない,わずかに過剰な消費を求めたために借金を重ね,「闇金」の顧客になっていく。客観的には愚かな行為に見えるが,現代の消費社会にはその誘惑が確実に存在している。

闇金ウシジマくん 17 (ビッグコミックス),
真鍋 昌平,
小学館,


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今回の話では,ファッション雑誌の読者モデルでトップ(オサレ皇帝)になることを目指す若者が,可処分所得を上回る金額のファッションを買うために,麻薬の売人になっていく。そこにはあまりに大きな飛躍があるように聞こえるが,そこをつなぐのが,ささやかな競争心,虚栄心が引き起こす不幸の連鎖なのである。他人を「搾取」することで成り立つ生態系があって,わずかな偶然を必然に変えてしまう。本書が「現代のプロレタリア文学」と呼ばれる所以である。

このマンガの取材協力者である窪田順生氏によれば,闇金を規制する法律の施行後「ソフト闇金」が増えているという。それは「金利は年40~50%ほど。大声を出さず、暴力も振るわない」というもの。闇ビジネスの生態系は,単純な規制でどうこうなるものではないようだ。いうまでもなく,その根底には楽して楽しみたいという人間の欲望があり,恐怖の役割を知り尽くした人々がいる。その人間洞察は,下手な行動経済学者を上回るというと,いいすぎだろうか。

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