Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

出版業界を飲み込むロングテール

2010-02-26 17:32:51 | Weblog
『創』3月号は「恒例の」広告会社特集。有名クリエイターたちのインタビューも載っている。それはそれとして,ぼくにとって面白かったのは「変革をなしえないメディアは瓦解する」という座談会だ。出席者は堀江貴文,宮台真司,元木昌彦,鈴木邦夫の各氏。「メディア」といっても,主に語られるのは,出版業界のことだ。座談会は,堀江氏の問題提起から始まる。彼は冒頭「紙の雑誌に・・・こだわっていると、もはや出版社自体、なくなってしまう」と述べる。

創 ( つくる ) 2010年 03月号 [雑誌]

創出版


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堀江氏はこの座談会の時点ではまだ有料メルマガの準備中だったが,それなりに儲かるという見通しを語っている。宮台氏が神保哲生氏と行なっている有料ビデオニュースも,採算がとれているという。月会費500円で会員数が1万人だから月500万の収入となる。これくらいの規模になれば,数人のスタッフを雇って運営していくことができる。他方,既存のメディアはより多人数のスタッフに支えられているので,この規模ではとてもやれない。そのことが桎梏となってきている。

書き手が読み手に「中抜き」で情報配信できるのは,堀江氏や宮台氏のようにすでに多くのファンを持つ著名人だけではないのかという疑問がわく。堀江氏は「ロングテールの胴体に近いところ・・・の人たちは、何百人か何千人かいると思います。だけど、他の人たちは、ロングテールのしっぽの方ですから、全然儲からないです」と指摘する。一方宮台氏は,森川嘉一郎氏を引いて「ロングテールのサミット(頂点)にあたる部分が出てくるのは,テール部分があるから」と述べる。

テールがあってこそのヘッド,という見方には共感を覚える。ぼく自身は,コンテンツ消費側でのヘッドとテールのポートフォリオについて考えてきたが,コンテンツ生産側にも同様のポートフォリオが存在するということだ。なるほど。で,伝統的な出版社がテール育成を担ってきとしたら,その崩壊後は誰がどうその役割を引き継ぐのか。あるいは,そもそもネットのほうがテールに活躍の場を与え,少数ながらもファンとのマッチングを行うので,テール育成に貢献するのか。

いろんな論点がありそうだが,いずれにしろ,大きな変化がすでに始まっている。
 

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