Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

この世に存在しない本

2007-03-14 14:28:22 | Weblog
アマゾンのマーケットプレイスでかれこれ3年近く予約しているのが "Changing Tastes" という本だ。買値をいくら上げても,売主は現れない。高名な経済学者 Paul Romer の著作であり,Cambridge University Press から発売されたのだから,少しは古本市場に出回っていてもいいはずだが・・・。それとも,そもそも発売されずに終わった,幻の書物なのだろうか。

この本の副題は How Evolution and Experience Shape Economic Behaviour ・・・何と魅力的なんだろう! アマゾンの商品説明によれば,著者は選好の個人間差異と時間的変化の両方を視野に入れている。ううう・・・読みたい。手に入らないと,ますます欲しくなって希望上限価格が際限なく上がる・・・ここで急に誰かが売りに出したら,「勝者の呪い」ってことになる?

本当の隠し場所

2007-03-13 23:57:49 | Weblog
cache を辞書で引くと「隠し場所」とある。ウェブ上では,消したつもりのページでも隠し場所に残っていたりする。ググって「ページが見つかりません」といわれても,ちょっと下のキャッシュをクリックすると,死者が蘇ることが少なくない。googlebot 君が見つけた情報を大事にしまいこんでいるのだ。

どこにどういう情報がアップされているかもわからない。たまに,検索エンジンに自分や知り合いの名前をかけると,意外なところに意外な情報が見つかることがある。ウェブ上に本当の隠し場所を作れるだろうか。

計量的だが科学でないと

2007-03-13 16:53:00 | Weblog
JIMSから会員向けに『Webマーケティングの科学』が送られてきた。はしがきには「・・・科学として接近し,インターネット・マーケテイングの諸現象に関する計量的な理論構築を試みた書は,本書が初めてといっても過言ではなかろう」と書かれている。ウェブ・マイニング系の本は科学ではないのかと突っ込みたくなるが,マイニングは「計量的」であっても「理論構築」ではない,ということなのだろう。そちらの世界の人々の感想も,ぜひ聞いてみたいところだ。

いずれにしろ,本書には JIMS の壮々たる研究者たちが一同に顔を揃えている。その意味で,日本のマーケティティング・サイエンスの現況を概観するのによい本だといえよう。まず,執筆者はみんな「若手」である。ウェブを対象にすると,世代交代してしまうということか。うーん,少しはウェブ関係の研究をしないと,置いてきぼりを食うかな(いや,もうすでに,かも)。

あと,少し驚いたのが,実務家(調査会社)による論文がいくつもあること。経歴を見ると,博士号取得者を含む大学院出身者たちばかりである。日本のマーケティング・リサーチ業界は変わりつつある。これが学会の発展につながるトレンドになるかどうか。

まだあるでしょ

2007-03-13 10:14:46 | Weblog
秋にボストンで自動車プロジェクトの報告があるらしい。ぼくが現地に行くかどうかはともかく,現在進行中のデータ解析だけでなく,準備中の質問紙調査もまとめなくてはならない。製品開発の組織論として面白い知見が得られるかどうか・・・。それ以前に,調査自体が想像以上に大変になるかもしれないという予感。

たまった在庫のうち,何よりもクリエイティブ志向の話は早くまとめて投稿したい。そうしないと,永遠にチャンスを逃すおそれがある。あと,いま共著者が頑張ってくれている店舗内人流。これもさくっと投稿しないと。他についても,急がねばならない理由はいくつもあるが・・・。

その一方で,無謀にも新たなプロジェクトを始めようとしている。たとえばロングテールを消費者サイドから探る研究,そして中国関係,他にもいくつか。今年こそ「選択と集中」なんてことにはなりそうにない。だが,入りと出のスピードを,微妙に出のほうが早い方向に持っていきたいと思う。

冬から大学院で離散的選択モデルの講義・演習を始める。非常勤である程度教えた経験があるが,本務校では専門科目として,より絞った,テクニカルな内容になるだろう。そのための準備も必要だ。選択モデルを使う研究は,なるべくそれと連動させていくのがよいだろう。

ここ数日の悩み

2007-03-12 23:57:36 | Weblog
シンガポールで6月に開かれる Marketing Science Conference に早期の申し込み。でないと発表できないからだ。だが,ホテルの予約で悩んでいる。学会のサイトで紹介されているホテルは最低でも1泊2万円近い。だったら,1万円余分に出して,かの Raflles かな,とも思う。しかし,貧乏性であるがゆえに,なかなかふんぎりがつかない。

このカンファレンスと JIMS@関学には,池田君の修論に基づく Detecting Influential Consumers Using Purchase History Data で臨むつもりだ。では,7月の IMPS までそれで行くのかとなると,ちょっと躊躇する。オーディエンスの重複可能性を考慮すると,さすがにそれはと思い始めた。そうすると「ワイン」や「消費者言語」が候補にあがる。

来週の SIG-KBS で発表し,さらにテコ入れしたのち,8月に JWEINAESCS で発表予定の複雑ネットワーク上のクチコミ・シミュレーションを計量心理学の学会で発表するわけにはいかないだろう。これら以外にも,5月に商業学会で階層意識関連の報告をし,6月にDM学会でロングテールの話をする。これらはいずれも invited。ここまでくると,6月上旬のJACS@関学に出るのは(まして何か報告するのは)難しい情勢だ。

サンタフェという記号

2007-03-11 02:18:52 | Weblog
今週は刺激に富んだ週だったのか,書きたいことがいくつもある。サンタフェ研究所に関係する話題が,全く無関係なところで2回出た。一つは,日本でもいつかそうした革新的な知的フォーラムを創りたいという夢が語られた。もう一つは,サンタフェ研究所を可能にしたのは,大学・研究機関への寄付が「得になる」米国の税制だという話。

いずれの研究者にも共通するのは「(もっともっと)面白いことを一緒にやろう」と熱く語ることだ。そう呼びかけられているうちが花。というより,自分でそういう場に出かけていき,自らそう語らないと。ジャムセッションへ!

技術者の話に聞き惚れる

2007-03-11 00:21:17 | Weblog
優れた技術者は,技術の話になるととまらない。そして経営幹部までいった技術者は,現場で多くの人々を動かし,大きな組織を動かしてきた人だから,説得力のある話し方をする。巧みに比喩を使い,その技術がいかにエキサイティングかを滔々と語る。

こうした人たちが,定年後,小中学校に行って技術の面白さを語れば,理科離れなどなくなるのではないか。幻想かもしれないが,昔はそうした市井の人がいっぱいいたように思う。ワインのウンチクは語れなくても,自分の技術のミクロコスモスを語れる人。

某上場企業で役員までいった技術者の叔父を思い出した。彼は何事も噛んで含めるように理路整然と話す人だった(存命なので過去形ではない)。父はそれに比べるとしがない技術者だったが,ぼくが幼い頃,自然や地理について該博な知識を持つスターだった。父が描く設計図のような絵,謄写版の見本のような字が好きだった。

それはともかく,工学の技術者に限ることはないかもしれない。マーケティングや広告の世界にも,同じようなマイスターがいるに違いない。ことばで煙に巻くのではなく,明晰なロジックをわかりやすく伝える「技術者」。自分は前者タイプなだけに,後者には頭が上がらない。

経営学者は実業を批評してよいのか

2007-03-10 22:46:05 | Weblog
今週日曜に出たセミナーで,何人かの経営学者が,特定の大企業の名前を挙げて批判していた。何か不法なことをしたからではなく,「経営の失敗」が責められる原因だ。たとえばある老舗巨大企業は,資本に比して少ない利益しかあげていないことで非難された。十分な法人税を払えず,国家財政をより悪化させたと。株主に対する責任云々で責めても,一般の聴衆は共感しないだろうから,なかなかうまい修辞法だと思う。

会場にはその企業の関係者がいたかもしれない。どう思ったのだろうか? プロ野球選手が,評論家やマスコミにあれこれいわれ,「じゃーお前がやってみろよ」といいたくなるような気分だっただろうか。「初球から打っていかなくてどうするんだ」といわれたかと思うと「初球に安易に手を出さず,じっくり見ていくべきだ」といわれる。結果論でいうのは簡単だ。そういえば,昔ホームランのサインを出した監督がいたという。

企業経営であれプロスポーツであれ,ある高みで勝負している人々は,どんな非難であれ,受けて立たねばならない。では一方で,経営研究者は「先生のおっしゃることですから」という慇懃無礼さに甘んじていいのか。昨日森さんが,そして日曜のセミナーであるベンチャー経営者が期せず語っていたのは,ビジネスから大学への人の流れだけでなく,大学からビジネスへの人の流れが必要だということ。サバティカルでシェルに行ってシナリオプランニングを学んだ,ウォートンのショーメーカーの例もある。

再び企業に戻る? いや,企業時代それほど実業していたわけではないから,新たなステージかも。ただ,しばらくそんな気になれないので,現場で奮闘する人々にあまり偉そうなことをいわないようにしよう(単なる日和見か)。

ブログの体験的理解

2007-03-10 14:36:33 | Weblog
goo ブログのアクセス解析で,このブログへの訪問者がどのブラウザを使っているかの統計を見ることができる。それによると,どんなときにも訪れる固定客が googlebot であることがよくわかる。読んでいるのはクローラばかりというのはちと寂しい。

どういう検索ワードで辿りついたかの統計も出る。不思議なのは,このブログに一言も書かれていないはずの,別のブログの名前を入力してここに来たケースがあることだ。この両方のブログをリンクしているページがあると,そういうことが起きるのだろうか。

ちなみに,数日前に別のブログで,少し前のエントリだけ別の場所に移したところ,アクセス数が半減した(元々微々たるものだが)。つまりそのブログには,ブックマークしたりRSSリーダを通して来たのでなく(つまり固定客でなく),検索したらたまたま引っかかったので来たケースが半分近くあったということだろう。

ブログについて技術的知識がなくても,体験的にある程度わかる部分がある。検索エンジンによって,ネット上に膨大な数の interest が流れている。あちこちに引っかかりながら,未知の目的地を模索し,あるいは寄り道が過ぎて,別の方向に向かう。ちっぽけなブログでも,そうした大きな流れとは無縁ではないということだ。

蛇足: 同じブログでも,Google と Google Blog Search によって選ばれるエントリが違う。同じ会社のサービスでも,使っている技術は違うのだろう。いまさら驚いているほうが,おかしいのかもしれないが…。

大学院は進化できるか

2007-03-09 22:53:01 | Weblog
朝からメールへの対応に追われ,気がついたら3時頃になった。一つひとつはたいしたことがなくても,積み上げると時間が経ってしまう。組織はしばしば,細かな思いやりや正義が,壮大な無駄を生む。企業にもそれはあるが,大学の比ではない。足元にそういう問題を抱えつつ,今日は分不相応にも大学(院)の将来について考える一日になった。

新たな大学院制度を考えるプロジェクトで,今日はパネルディスカッションを開いた。パネリストとして招かれたお二人は,それぞれ超有名大企業で製品開発または人事担当の役員を務め,現在は社会人向き大学院で教鞭をとる森先生と北原先生。それに下級管理職から大学に転じたぼくが僭越にも加わるという構成だ。

お二人のように企業トップの目から見た人材戦略など語れないので,新制度のターゲットになりそうな30~40代で学位を目指す社会人の立場から発言しようとした。一つには,ごく単純に,より高い学位がほしいという需要がある。これは,ゲームのルールに従ってプレイしてもらえばよいので,比較的簡単な問題である。

もう一つの需要は,学位よりはむしろ,大学だけが持つ知的リソースにアクセスできることだ。たとえば,およそ経済性とは無縁な膨大な数の蔵書を誇る図書館や,広範なオンライン・ジャーナルへアクセスできることは,大学に属さない研究者にとって垂涎の的だ。あるいは,そこに集う人々の知的コミュニティ…ただ,この点について,一つの大学が持つパワーに,あまり期待できなくなってきた。寺野先生がいう Center of Excellence から Network of Excellence へという提案は正しい。

それにしても,ゲストのお二方の話を聞き,またここ数週間いろいろなセミナーで聞いた話を思い出しながら,ビジネスのトップに上りつめた方々の情報量や発想の豊かさにいまさらながら感心する。そして,企業に在職中いかに偉い人であれ,いまやお互いに一個人として,上下関係や利害関係がない立場で話せる点こそが,大学という場が維持すべき美点ではないかと思う。

そういえば,前いた会社から大学に移った数十人が集まる会合が近々ある。今回は所要で行けそうにないが,それはそれでいいことだとは思う。ただ,かつての上下関係や役職が十分払拭されないと,意味のあるコミュニティにはならないだろう(年長者が尊敬されるのはいいが)。

過去を思い出す同窓会もいいが,どうせなら「未来からの同窓会」…将来一緒に知的生産の成果を生み出す人々と,いまその喜びを共有するような場がほしい。その目がないわけではないが,まだ何か足りないものがある(研究費だけでなく・・・)。

MASコンペティション

2007-03-08 09:44:22 | Weblog
昨日はMASコンペティション。石川さん,飯塚君が出場。昨年に続く入賞はならなかったが,それぞれ頑張った。卒論発表会のときに比べれば格段の進歩だ。他の発表を聞いて,2人とも上には上があることを実感したようで「教育的意味」はあったと思う。その点で「次回出場予定者」が一人しか聴講に来れなかったのは残念だ。

消費者,ファッションリーダ,ブランドの三者関係のモデルについて,同じパラメタのもとでの振る舞いに大きな差がある。初期条件のわずかな違い以上に何が寄与しているか,個々のケース(サンプルパス)を精査すべきだと寺野先生から指摘を受ける。それをした覚えがあるのだが,結局うやむやになったか,ぼくが忘れてしまったのか・・・それにしても,このばらつきに何か意味があるかもしれない,とはぼく自身も思う。あと,三者関係が潜在的に持つ面白さをもっと探らないとだめだ。

複雑ネットワーク上のクチコミ伝播モデルについては,より一般化して情報カスケード・モデルとして捉えたほうがいいという,生天目先生からの指摘。個々の消費者行動について実証研究をもっとサーベイすべきだし,必要なら自分で行なうべきなのは確かだ。世のなかで一般的であるはずのスモールワールドで情報伝播がすぐに消えるのはおかしい(山影先生),いやクチコミなんてそんなものじゃないか(田中先生)というコメントは面白かった。スケールフリーの作り方を変えると結果が変わるかも(寺野先生)ということは重要な宿題だ。要はネットワークの特性をもっと深掘りする必要がある。

コンペで入賞した発表は,いずれも人間の移動行動をよりリアルに記述しようとしており,工学的な研究として直球をど真ん中に投げ込んでいる。特に和泉さんのは,シミュレーション以前のデータ収集,解析,そしてプレゼンのすべてにおいて傑出している。社会シミュレーションが同じレベルのリアルさ,有用性,社会的意義を実現できるかどうか。「空間」とその上の「移動」というメタファーを,深く考えることなく使っているだけでは,それは実現できないだろう。それはエージェント間の関係にネットワーク構造を持ち込んでも,本質的に同じだろう。「社会」って視覚化するとどうなるの? ふと藤原和博さんの「よのなか科」のことを思い出す。

寺野さん,和泉さんと近所の居酒屋で二次会。寺野さんの哲学は,出口先生とは違った意味で「過激」である。小心なぼくにはついていけない部分はあるが,彼らが頑張っているおかげでエージェントベースの裾野が広がり,社会的認知が高まっているのだから,感謝すべきだろう。これぐらいの迫力がないと,新分野は育たない。和泉さんと会うのは久しぶりだが,またすぐに会う予定がある。今後が楽しみだ。


「今日買った本」を記録

2007-03-06 23:54:10 | Weblog
何年も我慢してきたトイレの修理。築30年なのでパイプのなかが錆で詰まっていたようだ。管理人さんが変わったおかげで(あるいは期末の予算消化のため?)迅速に処理していただいた。駐車場の契約更改書類を発見,慌てて処理する。

午後は,新入生向けイベントの準備。何から何まで前例どおりにするつもりだったが,少しは新しいことをしようかという思いが頭をよぎる。たいしたことじゃないけど…。

明日のコンペの準備が何とか終了。明日,大先生たちにボカスカやられたって平気だよ,こっちは教育の一環としてやってるんだから…などといいながら,本番では頭に血が上っているかもしれない。もちろん,研究として発展させるのに役立つコメントが得られればありがたいが…。

久々にジムに行き,帰りに書店に寄る。書評で取り上げられた本を紹介するコーナーが充実している。本屋のなかをぶらつき,面白そうな本を見つけ,いろいろ考えた挙句買う…という一連のプロセスほど楽しいものはない。「読む」が伴わなくても,効用(今風には経験価値)としては十分なのである。

そして,いつ読むともわからぬ蔵書が増えていく。読んでから感想を書くとしたら,ほとんど何も書けないだろうから,今後は「買った本」を書いていこう。

村山治『特捜検察 VS. 金融権力』朝日新聞社 …個人的に注目している論者の間で評判がいいのでつい購入。この種の問題に興味があるわけではないんだが。

瀬名英明,橋本敬,梅田聡『境界知のダイナミズム』岩波書店 …これらの著者たちはどういう関係なんだろうと思って序章を読むと,三人とも「社会的知能発生学的研究会」の仲間だという。そういう話は正直いってムチャクチャうらやましい。本を読んでいないから,その成果については何ともいえないが…。

佐藤秀峰『新ブラックジャックによろしく1』小学館 …コミックなんで,最も読む確率が高い。

NAVI 4月号』 …少しは「勉強」しなきゃいということで。そういえば,小学校の高学年の頃,カーグラを読んでいたこともあった(級友の影響だったと思う)。

週刊文春 BUSINESS』 …付録のレストラン特集の冊子に惹かれて購入。

何でそうなるんだろう

2007-03-05 23:14:57 | Weblog
午前中,大学のサーバがメンテで停止していた。ウェブにアクセスできず,メールも読めない数時間。いくつか書類を作る。事務から,科研費の支出が5千円ほど超過しているという連絡。ちゃんと積算してきたつもりなのに,何でそうなるんだろう…。

3月にはネットワークやエージェントベース関連のイベントがいくつもある。どれもこれも興味深い発表ばかりだが,すべてに出かけるのは難しいかもしれない。スケジュール管理はつねに破綻する。何度反省してもそうなるのは,何でだろう…。

いろいろな研究課題はあるものの,まずは3月末が期限の仕事を完遂すること。5~6月のいくつかの学会に向けた準備。例年よりは課題を減らしており,何とかなるはずだが…。一貫性に欠けるが,どれも本当に自分が興味を持つテーマではある。

イノ研シンポ@一橋講堂

2007-03-04 22:09:04 | Weblog
マイケル・クスマノ教授の「サービス・イノベーション」に関する講演を聞きにいく。ソフトウェア産業,あるいはIT産業では,少数のプラットフォーム・リーダーを除き,サービスがビジネスモデルの重要な要素になる。「製品のサービス化」「サービスの製品化」という視点は興味深い。

サービスとは何か・・・自明のようでいて,考えるとよくわからなくなる。クルマを買って乗ればモノの消費だが,リースやレンタルを利用していればサービスの消費だ。いずれも,クルマというモノから,移動のサービスを受けていると考えれば実質的に同じ。ビジネスモデルのパーツの組み合わせ方が,ちょっと違うだけなのか。

サービスはヒトが行なうことだとしたら,どんな企業だってサービスはしている。ただし,それに対する対価を直接,顧客に請求している点の違いということか。無形性とか生産と消費の同時性とか消滅性とか,サービス財の特徴をいわれるものが本質的かどうかも,よくわからない。

モノを廉価に売って,サービスとメンテで儲けていくというビジネスモデルは,会員制サービスと似ている。だからCRMが重要になる(最近,遠ざかっているなあ・・・)。消費者は最初に,長期的なコストとベネフィットを考えて意思決定する。将来効用の予測と時間選好,その限定合理性といったテーマが思い浮かぶ・・・。だが,実際のところ,何を研究すれば面白いだろうか。

午後は,一橋大学の「スター」経営学者たちの話を拝聴。昨日の東大でのカンファレンスで感じたように,何かのオタクでないと経営学者としては成功しないと思う。対象はコンテンツでもクルマでも半導体でも何でもよい。好きなことを研究対象にすればいい,簡単な話だというものの,自分にはオタクになれるほどの領域はない。あえていうと,モノやカネより,ヒトの側に興味があるのかな・・・。

コンテンツ消費論へ!!!

2007-03-03 23:34:21 | Weblog
コンテンツ産業研究会カンファレンス。丸一日,ゲーム,アニメ,音楽,放送に関する経営学的・経済学的研究の報告を聞く。討論者として参加したが何も貢献できず,一方的に勉強させていただいた。コンテンツといっても,いろいろであることはよくわかった。クリエイティビティが重要であることは明確だが,それが何であるかの定義は不明確だ。

最後になって,「問題」の背後には広告業界があるという話になった。中途半端に知識があるがゆえに,簡単に発言することが憚れる。だが正確にいえば,客観的な見方ができない,てことかもしれない。などといいつつ,懇親会ではつい口が緩んでしまう。ふと,昨年の「主-代理店」調査が放置されていることを思い出す。

それはともかく,コンテンツ産業の今後を考える上で,需要側の要因はきわめて重要だと思う。マーケティング研究者がそこに貢献すべきだが,どうも集計レベルの普及モデルに研究が集中している印象がある。インターネット流通の将来を考えるなら,ロングテール論を消費者側から裏打ちすることは非常に重要だと思うのだが,その重要性を納得してもらうのが難しい。