Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

クチコミ入りシングルソースの味

2007-03-21 09:23:40 | Weblog
ブログあるいはCGMに関する研究は猛スピードで進んでいる。ぼく自身は「イプシロン」ブロガーとして,2つのブログをしょぼしょぼ書いているだけだ。ブログを書くことでしか経験できないこともある。このささやかなブログでも,アクセス数に変動があり,大げさにいえばウェブのダイナミクスを体感できる。もう一つの全くいい加減にしか書いていないブログでは,どうすればアクセスをゼロに近づけることができるかを実験している(…ある程度本当)。

一昨日聴いたeクチコミの研究報告では,様々なサーベイデータ,売上/POSデータ,広告データに加え,ブログでおける特定ブランドへの言及が「手作りで」データ化されていた。こうしたデータを共有した上で,各研究者が,クチコミ受発信のミクロ行動やクチコミ-マス広告-売上のマクロ的な関係などを多角的分析している。データ作成での協働(収斂)→分析の分業(拡散)→統合的解釈(収斂)というサイクルが実現されれば素晴らしい。

最近のクチコミ研究は,マス広告を含む他の情報源とのミックスが注目されている。マーケターの関心からして,当然の流れだろう。そこで,従来マス広告への接触と購買を同一世帯/個人から測定するシングルソースデータに,クチコミを入れたいという発想が当然出てくる。実際,大手広告会社ではクチコミの日記調査を実施しており,すでにその雛形はあるといってよい。

日記調査は回答者負担が大きく,記憶に頼る分正確性に問題があるが,他に変わる方法はいまのところ存在しない。eクチコミが全クチコミの大部分を占めているのならともかく,実際はまだまだ少数だというのが濱岡さんたちの調査結果である。集計レベルで測られたeクチコミがリアルのそれの代理変数になることがあるかもしれないが,個々人のレベルでそうはならないだろう。日記調査で得た限られた知見をいかに個人レベルの情報として拡大適用するか,その方法論が重要だ。