中央大理工学部で開かれたネットワーク生態学シンポジウムを聴きに行く。「スモールワールド実験の再考」というテーマでパネルディスカッション。いうまでもなくこの実験は,約30年前にミルグラムが行なった,直接的なつながりのない人間をターゲットに,何人の知人を介すればそこに到達できるかを調べたものである。その結果から,どんな人間どうしでも6次の隔たりで結びつく,まさに It's a small world (世間は狭い)だと世に衝撃を与えた。そして最近になってワッツらがモデル化し,複雑ネットワークのブームを生んだ・・・というのは,耳タコの話かもしれない。
それがなぜ再考かというと,最近その実験や分析の仕方に批判が起きているからだ。社会学者の友知氏はそれを踏まえて,実際の社会ネットワークには階層や人種といった亀裂があり,それを無視してスモールワールドについて語ることへの疑問を呈した。一方,日本でスモールワールド実験を行なってきた三隅氏は,未知のターゲットへ情報を届けるのに,職業や学歴のような,あまりに一般的な属性に依拠することが有効だと指摘した。この対立しているようでいて,本質的につながっているようにも見える議論が,ぼくには今日のシンポジウムの白眉に思えた。
なぜかというと,社会ネットワークという限り,個人は単純に相互の隣接関係の有無を知るだけでなく,各個人を包括するマクロ的な属性ないしカテゴリへの知識を持ち,それを通して相互に認知し合っていることを示唆しているからだ。その意味で興味深かったのが,一般セッションで発表された,三井氏他の研究だ。彼らは個人間の直接的な関係と「コミュニティ」を介した関係の二重構造を持つモデルを考える。そしてそこから,現実のネットワークでしばしば観察される,次数分布が全域的にベキ分布にならず,次数のレベルにより指数分布を含む形になることが示される。どういう設定の下でどういうパタンが生まれるかが,徹底して調べられている。
パネルディスカッションで,やはり社会学者の辻氏が指摘していたのが,たまたま出会った二人の間に共通の知人がいるというスモールワールドの原問題と,知らないどうしが何人を介して結びつくかとスモールワールド実験の問題の区別である。なるほど,そうだ。そして,社会学に立場から,複雑ネットワークの単純な適用に対する違和感を何度も表明。ただ,このへんは自明ともいえることであり,むしろ問われるべきは,では社会(科)学者は何をするの,ということではないか。それについて,具体的な話が出なかったように思えるのは残念だ。
自らの授業の受講者対象に行なった,安田さんの一種のスモールワールド実験も興味深かった。週2コマ(200分)の授業に半期参加していた17人のネットワークはきわめて「疎」である。ぼくが担当する実習の参加者は,もう少しお互いのことをよく知っていて,人数も多い。そこでネットワークを調査するのは面白そうだが,マーケティング上意味のある調査ができるかどうか。
それにしても,老若男女,多くの人が集まっていた。情報系の動員力はすごい。再来週の SIG-KBS にはどれぐらい人が来るのだろうか。
それがなぜ再考かというと,最近その実験や分析の仕方に批判が起きているからだ。社会学者の友知氏はそれを踏まえて,実際の社会ネットワークには階層や人種といった亀裂があり,それを無視してスモールワールドについて語ることへの疑問を呈した。一方,日本でスモールワールド実験を行なってきた三隅氏は,未知のターゲットへ情報を届けるのに,職業や学歴のような,あまりに一般的な属性に依拠することが有効だと指摘した。この対立しているようでいて,本質的につながっているようにも見える議論が,ぼくには今日のシンポジウムの白眉に思えた。
なぜかというと,社会ネットワークという限り,個人は単純に相互の隣接関係の有無を知るだけでなく,各個人を包括するマクロ的な属性ないしカテゴリへの知識を持ち,それを通して相互に認知し合っていることを示唆しているからだ。その意味で興味深かったのが,一般セッションで発表された,三井氏他の研究だ。彼らは個人間の直接的な関係と「コミュニティ」を介した関係の二重構造を持つモデルを考える。そしてそこから,現実のネットワークでしばしば観察される,次数分布が全域的にベキ分布にならず,次数のレベルにより指数分布を含む形になることが示される。どういう設定の下でどういうパタンが生まれるかが,徹底して調べられている。
パネルディスカッションで,やはり社会学者の辻氏が指摘していたのが,たまたま出会った二人の間に共通の知人がいるというスモールワールドの原問題と,知らないどうしが何人を介して結びつくかとスモールワールド実験の問題の区別である。なるほど,そうだ。そして,社会学に立場から,複雑ネットワークの単純な適用に対する違和感を何度も表明。ただ,このへんは自明ともいえることであり,むしろ問われるべきは,では社会(科)学者は何をするの,ということではないか。それについて,具体的な話が出なかったように思えるのは残念だ。
自らの授業の受講者対象に行なった,安田さんの一種のスモールワールド実験も興味深かった。週2コマ(200分)の授業に半期参加していた17人のネットワークはきわめて「疎」である。ぼくが担当する実習の参加者は,もう少しお互いのことをよく知っていて,人数も多い。そこでネットワークを調査するのは面白そうだが,マーケティング上意味のある調査ができるかどうか。
それにしても,老若男女,多くの人が集まっていた。情報系の動員力はすごい。再来週の SIG-KBS にはどれぐらい人が来るのだろうか。