Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

サービス科学フォーラム

2007-03-23 11:05:48 | Weblog
昨日は朝から学内でサービス科学フォーラム。計8つの研究報告+ルディ和子さんによる特別講演。自分の発表を含め,マーケティングや組織論の実証分析は,なじみのある領域なので特に驚きはなかったが,管理会計,数理計画,通信工学の話は,予想に反して非常に面白かった。そして,ばらばらに行なわれたはずの発表が,いくつかの地下水脈でつながっていることに気づいた。

たとえば,サービスの原価企画では,コンセプト構築から実際の事業展開までの各段階で,売上やコストをより詳細に詰めていくが,そうした不確実性下での段階的な問題解決と,数理計画でいうシナリオベースのロバスト計画はつながるかもしれない。あるいは,特別講演で聞いた,顧客離脱の「重要な瞬間」を選別して,そこに資源を優先配分する,という話もそうだ。

位置情報検索システムを用いたサービスの実用化に関する報告もそう。ビジネス化という点で経営科学とつながり,社会への適合という点で社会科学とつながる。だが,最終的な価値は顧客の心理,特に感情の問題から来る。最後の特別講演で,ルディさんは脳科学への該博な知識と,一方で学術的というより実務的な各種調査の結果に基づきながら,サービスの最終局面における人間的要素の重要性を指摘した。その一方で,そこから利益を生み出すマネジメントのあり方に言及。いちいち納得できる話ばかりであった。

それにしても,こういう eye-opening な話は,あんまり学会では聞けない。いくつかの学会で,基調講演に実務家や非アカデミックの有識者を呼んだりするのは,研究者どうしでちっせーコミュニティを作るのを防ごう,という狙いだろう。ま,その場合でも,自分の研究とは別の一般教養として話を聞いている限り,「期待された」成果は生まれないだろう。