Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

クチコミ@総選挙の予測力

2009-09-16 16:21:09 | Weblog
本日,鳩山新内閣が発足する。総選挙の結果は,各種の予測によってだいたいわかっていたとはいえ,戦後初の本格的な政権交代になった。その総選挙が終わって2週間経つ。以前このブログでも取り上げた「クチコミ@総選挙」に関して,開発にあたった東京大学工学部の末並晃氏によるコメントが DIAMOND Online に掲載されていた:

的中率は8割!選挙結果予測に挑んだ 「クチコミ総選挙」の可能性と課題

それによると,小選挙区議席の予測の的中率は 80.33%。新聞社の予測の的中率は 約 90% なのでそれより劣るが,公示日直後から予測が可能であること,またコストを考えると,かなり高いパフォーマンスといえるのではないだろうか。今後こうした手法が発展していくと,調査なしに,リアルタイムに人々の意識をモニターできるようになるかもしれない。ミームの天気図,というイメージを昔思い描いたことがあったが,まさにそれが現実になりつつある。

もちろん,現在の方法にはまだまだ問題が残っている。末並氏によると,民主党,自民党以外の候補者が当選したケースの予測精度がよくないそうだ。また,幸福実現党のように過去のデータがない政党の登場や,国旗問題のように選挙結果にあまり影響しないクチコミが盛り上がることなども,予測を難しくしたという。なお,この予測がどのような考え方に基づくのか,その一端が紹介されている。それを引用すると・・・
 予測は、インターネット上でのクチコミ数を集計し、それをもとにした予測モデルに基づいている。上述したように、得票率に影響を与える要因は「政党の強さ」と「候補者個人の知名度」の2つであると想定し、それぞれを変数として定量化するため、政党名や候補者名を含む口コミ数を利用している。

 また、投票行動の地域特性を反映するため、政党の強さが主な投票決定要因になる地域では政党の強さを重視し、有名議員の地盤がある地域など候補者個人の影響を受けやすい地域では候補者個人の知名度を重視するようにそれぞれの変数に重み付け変数を付加する。

 これには2005年に行われた総選挙の結果を用いており、政党変数と候補者個人変数が得票率にどの程度影響を与えるか分析するため、各小選挙区ごとに重回帰分析を行い、そこで得られた重み付け変数を用いることにした。
政党要因と候補者要因の重みをどう地域ごとに与えるかが予測精度を左右する,ということだろうか。また,この記事では言及されていないが,「クチコミの集計」を具体的にどう行うか,どういうクリーニングをするのか,といったことも影響するかもしれない。もっと詳しく知りたければ,このシステムを運営したホットリンクさんのセミナーに行くという手がある。開発者の1人,松尾豊さんの講演もある。だが,残念なことに,ぼくには「職場の会議」がある・・・。