Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

twitter politics

2009-09-18 22:13:06 | Weblog
twitter には前から登録しているものの,自分ではほとんど投稿せずに,何人かの方の「つぶやき」を「フォローしている」だけである。「おすすめ」から選んだ何人かの著名人のつぶやきは,一日数十件にも及ぶこともあり,とても追いつかない。とはいうものの,iPhone にインストールした EchoFon を眺める頻度が増えているのも事実。まるで相手の了解を得てストーキングをしているような,不思議な感覚がする。

いまどこにいて,何をして,どう感じているかを逐一 twitter に書いていくことに没頭するようになると(一歩足を踏み入れると,没頭してしまいそうな気がする),ただえさえネットに気をとられがちな日常が,ますます「あちら側」に捕らわれてしまうおそれがある。それによって,どんないいことが起き得るのか,いまのところ,よくわかっていない(それをいい出すと,ブログも同じことになるが・・・)。ただ,へーと思わせられた一件もある:

ガ島通信 新聞労連の抗議声明、次官会見廃止「新たなメディア規制」こそ歴史に名を汚すことを自覚すべき

そのなかで,鳩山新首相の会見での「記者クラブ問題」(後述)に関して,ある民主党議員が twitter 上で「もう既に『公約破り』とか非難の声があるが、ちょっと気が早すぎるかも」と発言した一件が紹介されている。それが批判され,彼は数時間後に「選挙前に鳩山現総理が発言しているのですから、しっかりと実行すべきです」と発言を訂正した。別の民主党議員は,この件での自らの対応を twitter で報告している。

従来だと,政治家にはいろいろブレーンや取り巻きがいて,そのなかには新聞記者もいて,彼らが伝える「世論」が政治家にいくばくかの影響を与えてきたと思われる。それ以外にも,地元選挙区で支援者たちと話すことで,世論を感じることができる。しかし今後,そうした役割の一端を twitter などのネットメディアが担うようになるかもしれない。情報を得て何らかの返答を返すまでの圧倒的な速さ,リアルタイム性がそのメリットだ。

twitter で交流する人間関係がどういう性質のコミュニティになるのか,ぼくにはまだよくわからない。限られた人々の集まりであり,それなりのバイアスもあるだろうから,いわゆる「世論」を代表しているとはいえない。しかし,これまでの取り巻きや後援者とは異なる範囲をカバーするメリットを期待できる(それとも,実際はかなり重複している?)。そもそも一つの均質な「世論」など存在しないならば,チャネルをより多く持っているほうが強い。

リアルタイムの情報交換が価値を生むような関係ほど,twitter は有用なツールになると考えられる。急速に変化する環境ですばやく行動しなくてはならない政治家や運動家にとっては,使い方次第で強力な武器になる可能性を持つ。もっとも要職に就くと,誰と会ったとかどこにいるとか,ほとんど書けなくなるだろうけど・・・。ビジネスやマーケティングでも大きなメリットがあると見込まれ,すでに多くのセミナーが開かれている。研究や教育ではどうか・・・は後日また。
なお,鳩山首相会見の「記者クラブ問題」については以下の記事が詳しい。

山口一臣 新聞が書かない民主党の「公約破り」
上杉 隆 非記者クラブメディアを排除した鳩山首相初会見への落胆
神保哲生 記者会見クローズの主犯と鳩山さんとリバイアサンの関係

山口氏(週刊朝日編集長)は,新政権が記者会見をオープンにすると,マスコミを敵に回すことになるぞと大手メディアが脅したと伝えている。上杉氏は,それを恐れてネットジャーナリズムを敵に回すほうが,民主党にとって損失が大きいと指摘する。神保氏は直近の取材を踏まえて,単純に大手メディア(=記者クラブ)側の圧力とはいえない,もっと根深い問題について述べている。

現実にはさまざまな抵抗があるにせよ,インターネットが誘発する変化は,静かだが,かなり深いものだと感じる。