Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

eクチコミで選挙を予測

2009-08-19 18:01:27 | Weblog
ネットのクチコミ情報から,総選挙(小選挙区のみ)の議席数を予測するという試みを,ホットリンクが公開している:

クチコミ@総選挙

毎日予測が更新されており,現時点の数字は,民主党255議席,自民党40議席となっている。ここには比例区の数字が入っていないので,それを含めると,民主党は300議席を軽く超える議席数になる。小選挙区制のもとでは,得票数が僅差でも議席数が大差になる可能性がある,とはいっても,驚きの予測結果だ。

ネット上の「世論」では自民党支持の傾向が強いといわれてきた(たとえばニコニコ動画の調査)。ということは,民主党関連のクチコミが量的に多いとしても,その大半がネガティブな内容であったとしても不思議ではない。内容のポジ/ネガを考慮しても,民主党支持を示唆するクチコミが多いことから,こうした予測が出てきたのだろうか?

あるいは,内容のポジ/ネガは関係なく,クチコミの量自体が支持率と相関しているのだろうか?(過去にそういう研究を読んだことがある) この予測は,東京大学の松尾豊,末並晃両氏の研究に基づいており,すでにいくつかの地方選挙に適用された経験があるとのことである。ぼくが考えつくようなことは,ほぼすべて手が打たれているに違いない。

現時点の予測値が,今後どう推移していくかも興味深い。投票日に向けて,ネット上のクチコミの量が増加するだろうし,世論の中身も変化するだろう。それにつれ,予測値は実現値に収束していくだろうか。それとも,何らかのバイアスを残すのだろうか。どういう選挙区において特に予測がうまくいくか。公表予定とされるレポートが楽しみである。

総選挙後,このシステムが高い予測精度を挙げたことがわかったら,相当な費用をかけて世論調査や出口調査を実施している(はずの)メディア各社には衝撃かもしれない。もちろん,世論調査には長い歴史があり,その方法論は深く考えられており,そう簡単に新しい方法に取って代わられることはないだろう。そもそも目的が少し違うともいえる。

同じ日,たまたま本屋で以下の雑誌を見かけた。「世論調査を調査する」という特集で,鈴木督久さん他,この分野の専門家たちの座談会や論考が載っている。非常にタイムリーな企画だ。新聞社と世論調査,これからどうなっていくのか,第三者ながら(だから?)興味津々だ。さらにいえば,調査の方法論を超えた大きな枠組みの変化についても。

Journalism 8号

朝日新聞出版

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