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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

マーケティングサイエンスと複雑系の邂逅

2009-06-24 11:50:39 | Weblog
久しぶりに雨らしい雨が降っている。梅雨,ということだ。

昨夜は,ミシガン大学に留学中の大西さんを JIMS 部会にお招きし,ご自身の研究とマーケティングサイエンスでの社会ネットワーク研究の動向について発表いただく。まずは米国のある SNS のデータを用いて,サイト内のグループ(コミュニティ)への加入と閲覧行動,そしてサイトの規模が正のスパイラルを描くことを示した研究。週末に JIMS でお聞きした話を1時間かけてたっぷり聞くことができた。

この研究でも扱われており,またそのあとサーベイでも強調されていたのが,行動の内生性や同時決定性をどう扱うかだ。つまり,ネットワークの形成もネットワーク上での行動も,ともに相互に影響し合って,どちらが原因で結果なのか,はっきりわからない。これを統計モデルで扱おうとすると,かなりに高度なアプローチが必要となる。マーケティングサイエンスでも,さまざまな試みがなされている。

荒っぽくいえば,複雑系的現象に統計学的にアプローチするという課題に挑戦しているわけで,非常に難しい課題だ。そこに何らか貢献することは,ぼくの能力を超えている。一方で,エージェントベース・モデルで現象を記述し,そこから導かれたマクロの振る舞いが,現実のデータとおおまかに符合すればよいという考え方もある。もっともだが,統計学的アプローチと融合できれば,なお強力になることは間違いない。

その意味で,昨夜のセミナーは,マーケティングサイエンスと複雑系研究の対話を一部実現したという意味で,意義があったと思う。この余勢をかって,11月に東京で開かれる Complex09 でマーケティング関連の特別セッションを開くという,生天目先生に依頼された企画をぜひ成功させたい。すでに3人ほど発表の申し出があるし,うまくすれば2セッションぐらい組めるかもしれない。で,そこでぼく自身は何を発表するのか?