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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

わくわくさせる広告業界

2009-06-08 23:40:00 | Weblog
東洋経済6/13号は広告市場を特集している。題して「大激震!広告サバイバル 電通 vs. リクルート vs. ヤフー」・・・ 個別の記事のタイトルを見ると,

「電通の苦闘 増す不振でプライド捨て、小口営業で地べたをはう」
「リクルートの七変化 変わり続ける強者を覆うネット時代の内憂外患」
「無傷のヤフー 気づけば、広告の“覇者”、秘訣は既存媒体との共存」

ということらしい。電通とリクルートは,ずいぶん前にもよく比較されたものだが,いまやそこにヤフーが加わる。というか,「無傷」で「覇者」だというのだから,一人勝ちということだろうか。なお,グーグルは最近,広告業界にとって脅威となるような事業から撤退しているので,もはや「敵」ではない,とこの記事は書く。この認識が正しいのかどうか,ぼくにはよくわからない。それはともかく,周辺のコラムもなかなか面白い。

週刊 東洋経済 2009年 6/13号 [雑誌]

東洋経済新報社

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たとえば,リクルートの創業者,江副浩正氏によれば,日本の企業はグローバルな「地産地消」の流れにあり,広告会社は彼らとともに,海外へ進出していくしかないという。しかも,メディアの代理業としてではなく,クリエイティブを中心として。日本の広告会社の将来を考えるうえで,クリエイティブの国際競争力を問うことはユニークで,考えさせられる。メディアの変容は確かに重要だが,別の重要なことがあると示唆している。

楓セビル氏の,米国で広告の報酬制度が見直されているというレポートも興味深い。それは,フィーからバリューベース(ペイ・フォー・パフォーマンス),つまり成果報酬への流れである。日本ではまだ,コミッションからフィーへの移行すら十分進んでいない。楓氏はそこで「いっそのこと、フィー制度を飛び越して、最も先端的なバリューベースの報酬法を採用してみてはどうか」と提案する。つまり,先回りしたらどうかということだ。

東洋経済の記事から離れるが,6/5付の BPnet に載った以下の記事も気になった:

Digg,ユーザー投票で表示頻度と料金が決まる広告プラットフォーム

これは,ユーザの閲覧履歴や個人情報に基づいて広告を選択的に露出するとか,広告料金をネット上の取引市場で決定するとかではなく,すべてユーザの投票で決めようという話だ。あらゆるウェブサイトについてユーザに投票させる Digg ならではの仕組みといえるかもしれない。ユーザが選ぶ広告などというものが本来の意味での広告なのか,という疑問もあるが,そういう定義など,効果さえあればどうでもいいかもしれない。

コントロールが容易でない広告メディアが登場し,国際的視野でのブランディングとクリエイティブワークが求められ,収入が成果報酬になる,とすれば広告業界は大変だ,という印象が先に立つ。しかし,経済学的には,リスクが大きいほど,成功した場合に得られる利益が大きいはずだ(でないと,誰もリスクをとらないだろう)。ということは,冒険心に富んだビジネスパーソンにとって,広告市場はこれからもっと魅力的になる。