「2羽の鳩が麻生首相を襲っている」という鳩山兄の見立てが正しいのかどうかわからないが,上杉隆氏の新著は,麻生首相と鳩山兄弟の子ども時代のエピソードから始まる。そこで描かれる超セレブな世界は,確かに「庶民」とはかけ離れたものだが,そこはこの本の「つかみ」であっても,重要な部分ではない。
この本の目玉は,親の代で得られた政治資金が,そのまま子どもに移転されていることを指摘したところにある。政治団体間で献金という形でお金を動かしても課税の対象にならないので,手続き上は適法である。何だか奇妙な気もするが,「政治資金」は特別であることが,法的にも認められているということだ。
しかし,それが政治家への献金に基づくものならともかく,元々は税金である政党助成金が含まれている場合,その資金を親子代々継承していくことは問題ないのだろうか。実際,上杉氏は,総理大臣も務めた大物政治家が支部長を勤める某政党の支部で,その息子である地方議員だけに資金が流れている事例を指摘している。
本書で引用される東京財団の調査では,世襲議員が目立って多いのは,日本とイタリアだけだという。欧米では一般に,政党組織が主体となって候補者を選び出す仕組みが確立している。他方,日本では(公明党と共産党を除き?)後援会が政治活動の中核を担い,組織の生き残りのため,議員に世襲を求めるという構造がある。
これは群淘汰とどこか関係しそうな話だ・・・
とはいえ,選挙制度は政党を中心とする方向に改革され,そこに税金が投入されている。いまは過渡期特有のミスマッチが起きているのかもしれない。だとすれば今後時間をかけて欧米型の政党主体の選挙へと移行していくのか,やはり政党と後援会の二重構造が続くのか,それとも政党が衰微するのか,先行き不明である。
それはともかく,先日,鳩山兄が東工大の助手をしていた時代に教えを受けたという方の話を聞いた。鳩山氏は東大の計数工学科を出たあと,スタンフォード大学の大学院に留学したオペレーションズリサーチの研究者であった。非常にシャイで,数学能力に長けた人だったという。このエピソードは,上杉氏の本には出てこない。
この本の目玉は,親の代で得られた政治資金が,そのまま子どもに移転されていることを指摘したところにある。政治団体間で献金という形でお金を動かしても課税の対象にならないので,手続き上は適法である。何だか奇妙な気もするが,「政治資金」は特別であることが,法的にも認められているということだ。
しかし,それが政治家への献金に基づくものならともかく,元々は税金である政党助成金が含まれている場合,その資金を親子代々継承していくことは問題ないのだろうか。実際,上杉氏は,総理大臣も務めた大物政治家が支部長を勤める某政党の支部で,その息子である地方議員だけに資金が流れている事例を指摘している。
本書で引用される東京財団の調査では,世襲議員が目立って多いのは,日本とイタリアだけだという。欧米では一般に,政党組織が主体となって候補者を選び出す仕組みが確立している。他方,日本では(公明党と共産党を除き?)後援会が政治活動の中核を担い,組織の生き残りのため,議員に世襲を求めるという構造がある。
これは群淘汰とどこか関係しそうな話だ・・・
とはいえ,選挙制度は政党を中心とする方向に改革され,そこに税金が投入されている。いまは過渡期特有のミスマッチが起きているのかもしれない。だとすれば今後時間をかけて欧米型の政党主体の選挙へと移行していくのか,やはり政党と後援会の二重構造が続くのか,それとも政党が衰微するのか,先行き不明である。
世襲議員のからくり (文春新書)上杉 隆文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
それはともかく,先日,鳩山兄が東工大の助手をしていた時代に教えを受けたという方の話を聞いた。鳩山氏は東大の計数工学科を出たあと,スタンフォード大学の大学院に留学したオペレーションズリサーチの研究者であった。非常にシャイで,数学能力に長けた人だったという。このエピソードは,上杉氏の本には出てこない。