Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

大学のブロック化

2007-12-29 13:21:30 | Weblog
「東大と京大、早大、慶応大の4大学は25日、各大学院の学生がほかの3大学院でも研究でき、単位や学位の取得も可能になる「学生交流協定」を締結した」というニュース。背景には,教育再生会議が同一大学での大学院進学を制限する提案をしたことにあるという。こうした流れを先取りするというか,回避するというか,「気心の知れた」いくつかの大学でブロックを作り,その間で学生を流動化させようということだろうか・・・。

仕掛け人は東大だという。東大に声をかけられた大学は,ほぼ同格とみなしてもらったわけだから断わる理由はない。にしても,東大何するものぞという思いがあり,地域的にも離れた京大まで喜んで参加したのだろうか。院生が東京と京都を行ったり来たりできるとは思えない。地域的にはむしろ阪大と組んだほうがいいはずだが,そちらはむしろ眼前の敵なので,手を組まないってことか・・・だから,東工大がこのグループに入っていないのか・・・などと邪推してしまう。

東工大といえば,一橋,東外大,医科歯科大などと,相互交流協定を結んでいたはず。これら4校は,いくら都内とはいえあまりに距離が離れているから,学生はそう簡単に互いに移動できない。そんなこともあって,実質的な成果は上がっていないと聞いたことがある。学長レベルで決めた交流協定は,むしろ対外的なPRの意味が強いのだろう。いずれにしても今後,名声や地域など,様々な軸に基づき大学のブロック化が進んでいくに違いない・・・それが本来目指していた機能を果たすかどうかは別にして。

大学院生,特に博士課程にともなれば,他大学の教員の指導を受けることは,いままでだって可能であった(単位はつかないが)。ただし,双方の教員の間に一定の信頼関係があることが前提で,それは多くの場合,出身研究室が同じだとか,教員どうしが共同研究しているとか,ややクローズドな人間関係に基づいていた(大学院進学の価値とは,こうした人間関係を獲得することにある,といえなくもない)。そうした排他的なネットワークを脱して,もっと開放的でフェアなネットワークを築くことができるかどうか・・・その難しさは,正式の大学間協定がある場合でも,同じであるように思う。