Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

インフルエンサー幻想

2007-12-13 23:39:48 | Weblog
複雑ネットワークの情報伝播研究への応用についてレビュー。話題の一つが Journal of Consumer Research 最新号に掲載された Watts and Dodds の論文である。一言でいうと「インフルエンサー・マーケティング」批判。その効果が期待されたほどではないことを,シンプルなシミュレーションで示そうとする。今後,論争を起こすかもしれない。

仮に知人関係がスケールフリー・ネットワーク(SFN)だとしても,影響関係がそうなる保証はない。スモールワールド・ネットワーク(SWN)の提案者として,安易にSFNを仮定する風潮への苛立ちが透けて見える。影響力の高い人々(Influentials)をターゲットとして情報提供をする戦略は,SWNでは限られた条件のもとでしか特別な効果を持たない。

では(仮に)SFNだとどうなるか。一見,このときは有効のように見えるが「仔細に見ると」そうではない。このへんは,やや強引な面もある。彼らが使う評価指標は,マネジリアルな視点で妥当なのだろうか・・・。その点だけでいえば,先日JIMSで発表した自分の研究のほうがましなのでは・・・などと不遜にも思ってしまう。

彼らが,Influentials にばかり目を向けるべきでなく,ネットワークを全体として把握しないとダメだというのは,その通りだろう。それが,今後どのような研究戦略を導くのか・・・限られた情報のなかで,広範な消費者間ネットワークの性質をどう把握するのか・・・考えるべき課題は山積している。

夕方大学に戻り,JACSに向けた計算を始める。クラスタリングの仕方を変えたことで,少しは進歩したように思う。だが,本質的でない部分で変な結果が出たため,それへの対処でけっこう時間をとられてしまった。努力の割りには・・・と情けない気もするが,研究とはステップ関数,今後どこかでジャンプできれば,と思う。

本日届いた本

Irene C.L. Ng, The Pricing and Revenue Management of Services, Routledge