独報道番組などに顔を出すハンブルクの社会研究所長を長く務める暴力研究家ベルント・グライナーのインタヴューを読む。オバマ勝利を分析している。
開票速報の地滑りがないことを確認してベットへ向った時刻も、人種問題としての扱いも私と同じなので繰り返さないが、冷戦後の軍事力を率いる統率力と、名の無い声の影響力である「良識」が中心に据わった力を取り違えていないオバマの市民ヴィジョンの強さを指摘する。
それを、公民権運動の伝統の中で捉えるとき、その「草の根運動」が新たなネットメディアと融合されて、 従 来 の 政 治 的 権 力 とされる「TV放送」を凌駕したのである。勿論、半時間に渡るTVスポットをオバマ陣営買取ったのだが、それよりも19世紀の選挙方法においてインターアクティヴな議論を促した21世紀の技術に、我々の将来の政治スタイルをみる。
ニューヨークタイムズに掲載されたトーマス・フリードマンのように、この選挙結果を南北戦争の終結と見做すかどうかとの質問には、歴史家がウンザリする比較の類であるとして、その四年に渡る戦の六十万人の犠牲の成果を過小評価するべきではないとして、やはり11月4日は公民権運動の流れの中での更なる一歩と捉える。
ドイツにおけるオバマ旋風は、ブッシュ政権で失った希望とヴィジョンの実験場であるとされる合衆国において自浄再生力が全く失われていなかったことからの安堵であるとするが、それだからと言ってオバマが政治的救世主でもないかぎりその政権が必ずしも肯定的なものとはならないとする。
その例として、アフガニスタンやパキスタンにおけるテロとの戦いが、軍事的な優位で解決される可能性が薄いことを、自著で扱う「ベトナム戦争における合衆国の非対称性」の戦線の経験として、既成の軍備やそのように教育された軍隊が役立たないことを挙げる。当然ながら、ドイツ連邦共和国にとっては、アフガニスタンへの関与は ― 人道上のそれではなくて ― テロとの戦いであると強制的に認知させる形をオバマ政権に迫られるのが必至であり、とても厳しい交渉相手となるだろうと予想する。
しかし、新政権による一国主義から多国間主義への移行は、ドイツやEUにとって再び打ち解けた関係をもたらすのは確かであり、ここ十年ほどの強く・弱い合衆国の自己認識であるとしている。更にイラクからの撤退は最低二年ほどは掛かるだろうが、現時点では賄賂金で黙っている各種族が撤退によって収まる訳はないとしている。
誰もが言うように、オバマ政権への期待が大きいだけに失望感も膨らみ易いだろうが、最初からオバマ政権の公約は直ぐには解決されないこととしているので、むしろ指し示す方向がなによりもの実効力を持っていることから、この研究家も「オバマの示した、合衆国の強さは武器の力ではなく、合衆国の理想の魅力に負うている」とすればこの研究家の見解に何一つ付け加えることはないであろう。
来週末の経済会議に関して、独緑の党と短期的投機を制御する所謂トービン税の一律導入を目指すNGO反グローバリスム組織 アタック - attac (association pour une taxation des transactions financières pour l'aide aux citoyens)が、会議に期待を表明した。そしてやはり緑の党のオバマ夫妻は、週明け冒頭小ブッシュ夫妻にホワイトハウスでの晩餐に招かれている。オバマ政権の新官房長官にラーム・エマニュエルが指名された。このシカゴ選出の下院議員は、トライアスロンの忍耐力を持っているようだ。更に、次期正副大統領は早速自らのスタッフを引き連れて、電話参加での投資家ウォーレン・バフェットを含む経済人や経済専門家などと既に会合を持ったという。
暫らくはオバマ氏からの電話を待っているが未だに何も聞かないと思う人は少なくないだろう。ドイツの地下鉄の酔っ払いにも「俺はオバマの友達だ」と叫んでいる者がいるらしい。世界でオバマの親戚と称する者も今後あとを絶たないだろう。
Barack Obama -
I'm Asking You To Believe" ""I'M ASKING YOU TO BELIEVE. Not just in my ability to bring about real change in Washington...I'm asking you to believe in yours.""
参照:
Die Deutschen sind obamanisch, Ein Gespräch mit B.Greiner, FAZ vom 7.11.08
インディアナ・ジョーンズもオバマ支持? (虹コンのサウダージ日記)
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開票速報の地滑りがないことを確認してベットへ向った時刻も、人種問題としての扱いも私と同じなので繰り返さないが、冷戦後の軍事力を率いる統率力と、名の無い声の影響力である「良識」が中心に据わった力を取り違えていないオバマの市民ヴィジョンの強さを指摘する。
それを、公民権運動の伝統の中で捉えるとき、その「草の根運動」が新たなネットメディアと融合されて、 従 来 の 政 治 的 権 力 とされる「TV放送」を凌駕したのである。勿論、半時間に渡るTVスポットをオバマ陣営買取ったのだが、それよりも19世紀の選挙方法においてインターアクティヴな議論を促した21世紀の技術に、我々の将来の政治スタイルをみる。
ニューヨークタイムズに掲載されたトーマス・フリードマンのように、この選挙結果を南北戦争の終結と見做すかどうかとの質問には、歴史家がウンザリする比較の類であるとして、その四年に渡る戦の六十万人の犠牲の成果を過小評価するべきではないとして、やはり11月4日は公民権運動の流れの中での更なる一歩と捉える。
ドイツにおけるオバマ旋風は、ブッシュ政権で失った希望とヴィジョンの実験場であるとされる合衆国において自浄再生力が全く失われていなかったことからの安堵であるとするが、それだからと言ってオバマが政治的救世主でもないかぎりその政権が必ずしも肯定的なものとはならないとする。
その例として、アフガニスタンやパキスタンにおけるテロとの戦いが、軍事的な優位で解決される可能性が薄いことを、自著で扱う「ベトナム戦争における合衆国の非対称性」の戦線の経験として、既成の軍備やそのように教育された軍隊が役立たないことを挙げる。当然ながら、ドイツ連邦共和国にとっては、アフガニスタンへの関与は ― 人道上のそれではなくて ― テロとの戦いであると強制的に認知させる形をオバマ政権に迫られるのが必至であり、とても厳しい交渉相手となるだろうと予想する。
しかし、新政権による一国主義から多国間主義への移行は、ドイツやEUにとって再び打ち解けた関係をもたらすのは確かであり、ここ十年ほどの強く・弱い合衆国の自己認識であるとしている。更にイラクからの撤退は最低二年ほどは掛かるだろうが、現時点では賄賂金で黙っている各種族が撤退によって収まる訳はないとしている。
誰もが言うように、オバマ政権への期待が大きいだけに失望感も膨らみ易いだろうが、最初からオバマ政権の公約は直ぐには解決されないこととしているので、むしろ指し示す方向がなによりもの実効力を持っていることから、この研究家も「オバマの示した、合衆国の強さは武器の力ではなく、合衆国の理想の魅力に負うている」とすればこの研究家の見解に何一つ付け加えることはないであろう。
来週末の経済会議に関して、独緑の党と短期的投機を制御する所謂トービン税の一律導入を目指すNGO反グローバリスム組織 アタック - attac (association pour une taxation des transactions financières pour l'aide aux citoyens)が、会議に期待を表明した。そしてやはり緑の党のオバマ夫妻は、週明け冒頭小ブッシュ夫妻にホワイトハウスでの晩餐に招かれている。オバマ政権の新官房長官にラーム・エマニュエルが指名された。このシカゴ選出の下院議員は、トライアスロンの忍耐力を持っているようだ。更に、次期正副大統領は早速自らのスタッフを引き連れて、電話参加での投資家ウォーレン・バフェットを含む経済人や経済専門家などと既に会合を持ったという。
暫らくはオバマ氏からの電話を待っているが未だに何も聞かないと思う人は少なくないだろう。ドイツの地下鉄の酔っ払いにも「俺はオバマの友達だ」と叫んでいる者がいるらしい。世界でオバマの親戚と称する者も今後あとを絶たないだろう。
Barack Obama -
I'm Asking You To Believe" ""I'M ASKING YOU TO BELIEVE. Not just in my ability to bring about real change in Washington...I'm asking you to believe in yours.""
参照:
Die Deutschen sind obamanisch, Ein Gespräch mit B.Greiner, FAZ vom 7.11.08
インディアナ・ジョーンズもオバマ支持? (虹コンのサウダージ日記)
自信と確信へ超克の勝利 [ 歴史・時事 ] / 2008-11-06
遵法的議会外政治行動 [ マスメディア批評 ] / 2007-05-30
活き活き、力強く、先鋭に [ 雑感 ] / 2007-06-06
石頭野郎にぶつけろ! [ 生活 ] / 2007-06-07
制限域の自由な境界線 [ 暦 ] / 2007-06-08
民主是個好東西 可平 [ マスメディア批評 ] / 2007-06-14
同志を愛せ、君と等しく [ マスメディア批評 ] / 2007-06-20
>合衆国の理想の魅力に負うている
フランスも、「過去との断絶・清新さ」のイメージを体現していると自分では考えていたらしいサルコジはもちろん、フランス社会全体がオバマ効果を前に一挙にダサい存在に堕してしまったような居心地の悪さや羨望感を感じているようです。
サルコジは大統領選のキャンペーンで「(シラク時代との)断絶」を標語にしていて、オバマ当選後にもオバマによる「断絶の勝利」を賞賛したりしてましたが、サルコジの謂う「断絶」は、「世代交代」「(シラク末期の)社会政策寄りからリベラル経済寄り改革へ」「独自外交から親米寄りへ」といった意味だから、オバマがもたらした断絶とは言うまでもなく何の関係もありませんわ。
おまけにサルコジは既にキャンペーン終わり近くから、庶民票を意識して経済政策をやや社会政策寄りに修正し、対シリア、対ロシア政策等では徐々に米に対し距離を取って、事実上仏の伝統外交に復帰しつつありますから、「断絶」も何もあったもんじゃない。
まあ最初の大風呂敷が後に引っ込んだのはミッテランも同じ、シラクに至っては「変節」こそが彼の一貫原理、ジョスパンだって相当なプラグマティストではありましたが。
サルコジのフランスはEU議長国として、グルジア紛争、金融危機で出遅れた米を出し抜いて積極行動し、国際政治の先頭に立ったかのような幻想を一瞬抱いたようでしたが、今回のオバマ効果で再び主導権を奪われることに危惧を抱いているなどとも言われてます。いずれにせよ「多国間主義」というフランスのお株はオバマに相当奪われることになるでしょうね。
確かにサルコジの提案で開催が決まった来週の金融サミットが最初の道標になるでしょうね。金融システム改革について表面的な方向提示だけで逃げようとする米に対して、EU議長の仏は具体的で強制力のある規制設置を提案すると言われ、この点に関してサミットに参加しないオバマの立場は未だ不明瞭だから。
世界全体が、突然ウルトラリベラル経済を白眼視し、規制強化派に転じたわけだから、サルコジの180度転換をからかうのもヤボとは思いますが。
「フランスのオバマは明日可能か?」という問いが、オバマ当選以来繰り返され、「ノー」としか答えられない仏社会は、自らを古臭く再生能力に欠けると感じ出したフシがあります。
アンティーユ、ニューカレドニアなど海外領を除いた仏本土選出の有色下院議員はわずか1人というのが仏の現状で、ドイツをはるかに上回るマイナリティ出身国民を擁する仏としては、この点はたいへん遅れています。
これは下院議員選挙は、小党分裂を避けるため、近年では特に極右の議席獲得を阻むため、比例代表制ではなく、多数決・小選挙区制が採用されているという選挙制度のせいもあります。小選挙区制では有色人種が候補に選ばれるのは当然難しい。
保守与党で一向にチャンスを与えられぬことに失望した有色党員が、「外国人排斥」から「同化しない外国人排斥」に秘かに立場変更した極右政党に引き抜かれるなどという皮肉な事態もあったし、社会党でも事情は変わらないですね。
指摘されるように米の場合、有権者に占めるマイナリティの割合が増えているから当然という事情はあるのでしょうが、これは仏も同じはずです。
タテマエ上「不可分の共和国」を奉じる仏では、人種別統計の実施は禁じられているから、ムスリム仏国民の数にしてもよく500万人(仏の全人口は訳6000万人)という推定数が出されますが、内務省も正確な統計は持っていないことになっています。諜報部などが数を把握してないはずはない気もしますが。
マイナリティ出身国民の急増に比して、有色議員が増えないのは、選挙制度に加え、黒人流入の歴史が古い米に比べて仏の移民流入が急増するのは1960年代以降であること、80年代保守内閣下で導入された仏生まれ外国人の国籍取得条件の厳格化、有権者登録などの手続き情報が移民出身層には伝わりにくいなどの理由が考えられるかも知れません。
いずれにせよ、ダサかったブッシュのアメリカに替わり、フランスを一挙にダサくしてしまったオバマの登場は鮮やかでした。
仏社会党は今、次期大統領候補になる可能性の高い第一書記選出へ向け、党内駆け引きの真っ最中ですが、初回党員投票では予想に反し、本命と見られたドラノエ現パリ市長を破って、ロワイヤル前大統領候補がトップに出て驚かれました。
私はロワイヤルの論理的討論能力は(多くの仏人の意見に反して)高く評価してますが、2年前は「ブレア礼賛」今回は「社民主義モデルはもう古い」と、何の節操・一貫性もなく「型破り発言」(仏社会党にとっては)を続けて場当たり的「ビックリ新鮮効果」で集票を狙う彼女のスタイルが、今回は一部党員に対し一時的成功を収めたとしても、長期的に彼女のクレディビリティ強化に役立つとはまったく思えません。
12年の次期大統領選でサルコジVSロワイヤルだったらロワイヤルに勝ち目はないように思います。
独社民党同様、極左の追い上げを受け、指導力のあるリーダーもいない今の仏社会党に必要なのは、正に「1年前は無名だった」「フランスのオバマ」であるように思えるのです。
上の記事から省略した部分に、文化歴史的な帰結としてのドイツでのオバマ現象が質問されているのですが、パリの場合とは異なりブッシュ政権の否定とアメリカ主義批判とを混同するのは愚であると答えてます。ブッシュ政権の非を逆手に取ったパリと止む負えずの決断をしたベルリンとの差異がありますね。
その分、今回のオバマ効果を有効に使いたいのはSPDですが、必ずしも保守政党にも悪くは無い訳です。寧ろこうした大きな流れに保守政党が乗っかれば、SPDは左右から挟まれて身動き出来なくなる訳です。ヘッセン州の場合は改めて紹介しますが、大変具合悪いです。
さて少数派の議会での発言力をベルリン連邦政府でみますと、トルコ系の参加は限られていますが文化に比べると人種の問題は皆無とも言えます。反対にサルコジ大統領のような背景を持っていては象徴的な大統領も、またその選挙基盤から首相も殆どありえないのではないかと思います。その背景の差異を云々する最新現行移民法の改正が先決となります。
来週末の会議へオバマ政権はどのような信号を送るのでしょうか?注目されますね。
サルコジの新鮮さはモデルとの結婚も含めて、一時アメリカのメディアでも騒がれてましたが、オバマの大革命によって、世界中がアメリカに傾いたという感じでしょうか?アメリカのニュースを見る限りでは、アメリカ人旅行者がフランスやドイツなどのヨーロッパで、見知らぬ人に抱きつかれてキスされたと言ってました。理由は「フランス人はアメリカを心から愛しているんだよ」だそうです。私がドイツに行ったときは、ちょうどイラク戦争が開始された年だったので、ドイツ人女性はだれも抱きついてきませんでした。とても冷めていたと思います。今だからこそ、ヨーロッパに行きたいですね。たぶんオバマのTシャツを着て行ったら、それこそパリジェンヌたちもキスの連発でしょう。そして運が良ければ・・・。
ご指摘の通り、オバマのスゴいところはネットによる革命活動ですね。ネットによってイベントを設定し、私も革命活動をオルガナイズしましたし。こうして見ると、ネットによって、フランス革命のときの市民レベルでの議論の場であるサロンが復活したようです。
ドイツでの米国人への接し方が特に悪かったとは思いませんが、ブッシュ政権時代の一国覇権主義の合衆国は、その半分が支持した選挙結果と共に大変印象が悪かったです。私は未だにブッシュ支持の実際が信じられません。カリスマ性があるとかなんとかCNNで叫んでいたあの支持者達は今回もマケインに投票したのでしょう。日本人の有権者も馬鹿が多いですが、フランスのそれも良く分かりません。やはり住んでいるからか、ドイツのそれは良く分かるのですが。
フランスでは、オバマ効果で一晩ぐらい話題にこと欠かないですね。是非オバマシャツにオバマコンドームを携行ください。うけますよ。
このところアメリカはオバマ氏の当選で若い情熱でみなぎっています。