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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

伸び縮みも確りした素材

2014-07-18 | 雑感
旅行にノートブックを持ち運ぶためにカヴァーを購入した。どのようなものがあるのか知らなかったのだが、ネットで調べると鞄型の物とカヴァーの二種類があることが分った。鞄は書類鞄があるので必要ない、だからカヴァーを探すと、これも入れ出しするものと、開く方の物があることが分った。ホテルなどで開くときは明らかに後者の方が便利なのは分かっているので、後者を探した。

色々と購入者の批判などもある中で、サムソナイトの製品が良さそうだと思った。態々こうした小物を出しているのも興味深く、それなりの違いがあるものだと想像した。価格も送料込みで10ユーロで入手可能なので、大きさだけは気になったが躊躇なく発注した。

英国のケムブリッジシャーの業者から一週間も掛かって届いた包みは予想よりも遥かに確りとした包みと重さがあった。多くの批評はこうした類似製品はあまりにも薄っぺらいと読んでいたので意外だったのだ。なるほど開けてみると、思いがけず確りした素材で、伸び縮みもあるので全く問題なく富士通のそれもロジテックの受信装置もろとも収まった。

中には立派な三年間保証書も入っていて、まるで旅行鞄か何かと同じような扱いである。サムソナイト製品はその知名度に劣らず価格もそれなりにすることを思い出したが、この商品に関してはとても割安感がある。今時10ユーロで購入できる三年間保証製品などはそれほどおくなっているからだ。

こうした商品がネットで安く買えるのはある意味当然で、この程度の売り上げで都市の真ん中にあるようなお店で、売り子が説明してというようなことではこの価格では販売できないのは確かである。実際この商品も場合によっては40ユーロ近くでネットでも販売しているのだ。

スター指揮者ロリン・マゼールの死が伝えられた。ラディオなどでは、その視覚的な暗譜の能力やカラヤンの後任になれなかったことの後遺症が語られていたが、新聞でもそれに加えて、ヴィーンでの短期の監督辞任についても触れられている。

面白いのは、オーラを持った大指揮者として、フルトヴェングラー、クレムペラー、ヴァルター、ベームまたカラヤンも挙げられるとき、独墺ではしばしばその評価に疑問符が付くというのだ。バーンスタインの死後にヴィーナフィルハーモニカーが柱を失ったと嘆いたが、これはあまりにも大袈裟すぎるだろうとして、指揮者としての完璧さはその絶対音感と正確な記憶の殆ど微に入り細に入った指揮振りで、そのようなオーラといえるものでありえるか?と問いかける。その結論は、マゼールの演奏を経験した者に委ねる。

そのように問われれば、なるほどその鋭敏で正確な指揮振りや圧倒的な管弦楽の音響に一種のエクスタシーのようなものが存在しただろうが、同じような例えばショルティーなどと比較するとあのシカゴでの強烈さにまでは至ったことはなかったであろう。「バラの騎士」でのザルツブルク音楽祭の初日を思い出すが、なるほどその演奏は座付き管弦楽団としてはとても高品質なものであったことは間違いないのだが、それ以上に肌感覚としてなにかを残すようなことはなく、寧ろ演出の鏡の方が印象に残っているのも事実である ― そして「エレクトラ」も「ドンカルロ」も聞いていたことを思い出した。

セーヌ川の辺でで音楽家の子供として天才音楽家の一生を送った指揮者らしく、業界の中のそのままの感覚で生きた人にありがちな、一昔前の芸術観を身に纏った感じがあって、そのレパートリーや活動自体が表向きのスポーティーでモダーンな感覚とは違って可也時代遅れの感じがあった。それゆえか、ゲネプロでのマーラーの復活交響曲しかコンサートは覚えていない。そのセンチメンタルが落ちてしまっているマーラー演奏というのも事実だろう。

また新聞にもあるように、ガーシュインの「ポギーとペス」の録音が、血沸き肉踊りの感じで、代表的な録音であったかもしれない。恐らくこの指揮者が芸術家として時代を見る目が欠けていたのは、ポストカラヤン時代にも同じような市場が成り立つと思っていたことで、やはり芸心ある音楽家はそれに感づいていたからこそ続カラヤンのような指揮者を選ばなかったわけで、そのレパートリーの陳腐さからしても現在のような状況は変わらなかったに違いない。そうした皮膚感覚の鈍さのようなものが、この指揮者の音楽で、そこに物足りなさを多くの人は感じていたのかもしれない。 



参照:
ノートブックの浹雑音 2012-12-21 | テクニック
交響する満載の知的芸術性 2013-04-03 | 音
復古調の嘆き節の野暮ったさ 2010-03-30 | 文化一般
目の鱗を落とす下手褒め 2008-10-07 | マスメディア批評
公共放送の義務と主張 2005-12-24 | マスメディア批評
マゼールも・・・ (TAROS CAFE)
コメント (2)
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