Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

前夜祭ならではの祝祭感

2014-07-08 | 
「ラインの黄金」を調べた。リヒャルト・ヴァークナー楽劇「指輪」四部作の前夜に演奏されるプロローグである。幕間もない四つの場に分かれたコムパクトな作品である。その制作過程に関しては改めて調べることとして、今年初めて公にされた数学者アルフレート・プリングスハイムの1876年のバイロイト日記を紐解いてみる。

英国から取り寄せられたという大蛇の張りぼてを若干子供臭いと嘆きながら、大きなメロディーラインと叙唱との落差が大きすぎると批判している。これは多くの聴衆が今でもこの作品に漠然と感じている印象かもしれないが、よく調べてみるとこの作品の内容の原始的な面とざっくりとしかしコムパクトに纏めた序章のコンセプトからして致し方ないことも分るのである。

楽曲分析にまで踏み込むまでも無く、楽匠のコンセプトは良く見渡せる。主に三十を超える動機がライトモティーフとして挙がるが、その構造も序奏のそれから終曲のフィナーレへとブルックナーの交響曲に見るように原始的な趣が強い。それゆえか、プリングスハイムにおいても後半の第三場と第四場に於ける劇的な情景が批判となっているのだろう。

それでも今回気が付いたのは、折角ラインの乙女から強奪した「赤い指輪」をアルベリヒが奪い取られて呪いを吐く場面の見事さは必ずしもメロディーと叙唱の関係では無い。寧ろオテロのヤーゴのアリアなどと比べてとてもコムパクトであり、その節制はベートーヴェン譲りであろう。その点でも一貫したコンセプトであり、本編のそれとは異なり、ある意味まだ物語が発展しているわけではないから当然のドラマ運びなのである。

今回初めてバイロイトで四部作を体験するに当たって、この「ラインの黄金」を十二分に調べることは、第二夜「ジークフリート」から第三夜「神々の黄昏」こそと思っている多くの音楽愛好家にとってはとても重要なことだと強く感じた。正しく、楽匠にとっては「ゴジラ」のような作品かもしれないが、その匠さに気がつかされるのである。

今回、神々の妻フリッカに付けた音楽などがことのほか興味深く、十代の頃に同じものを聞いても全く理解できなかったものである。楽匠の円熟もあり遊びもあるようで、R・シュトラウスの家庭交響曲やそのオペラに通じるようで、ブルックナーを通してグスタフ・マーラーへなどとその広範な影響を改めて思い起こさせるのである。

ドレスデンでの制作録音を軸として、様々な録音などを並行して参考資料としているが、ベーム指揮のヴィーラント・ヴァークナー時代の伝説的実況録音が予想外に録音が悪く、それでいても流石に指揮者の厳しい音楽造りが聴ける。次は音楽愛好家にとっては同じく若干難儀な「ヴァルキューレ」へと進んでいく。



参照:
プリングスハイムバイロイト詣で 2013-02-25 | 文化一般
何事も初制覇の心意気 2014-03-03 | 生活
取扱い注意の高価なもの 2013-12-21 | 生活
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