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Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

現代人の断食

2005-02-11 | 数学・自然科学
昨日から40日間の断食期間が始まった。さて現代人はこの風習をどの様に捕らえているのか、昔の修道士はどの様にしていたかをこの期間中追いながら、これをフィットネスの立場から実践してみたい。勿論その背景に無批判に受け入れてきた近代人の暴飲暴食へのライフスタイルへの反省がある。そして身近に菜食主義者を多く知り、その妥当性とその普及を見る。少なくとも肉食の削減をもって、十年来の肥満と成人病への危機を医者無しで一先ず乗り越えて来た成果は実証済みである。これに気が付かなかったとすると、遅かれ早かれ慢性病で間違いなく薬漬けになっていたことであろう。

断食という限り食事を抜く事になるのだが、断食療法の効果を期待するのでなければ無理して行うつもりはない。機会があれば、気が向けば、抜いてみたい。実はこの季節、運動量にもよるが食事を必要としない気候や夜がある。不健康で食欲が減退するわけでは決してないが、新鮮な空気で胸が一杯になるのである。さて思春期の少女のような言い草は差し置いて、断食療法への医学的見解を垣間見てみる。

ディナー・キャンセリングという言葉が示すように、暴飲暴食の疲れが出ていないか?無駄なカロリーを摂取していないか?その反対に摂取の制限で、アポプトーゼとか細胞死とか云われる癌細胞に対する養分の供給を絞る事が出来る。この効果は、アンチエージング研究ではまだ解明されていないと云う。しかし、いうところのヒート・ショック分子がたんぱく質組成に関わる構造に有利に働きそれを決定する。断食でこの分子生成が促進されるという。つまり免疫、ホルモン、血液系他臓器に影響を及ぼす。この経過はハッキリしていないが事実という。

ホルモンへの影響、例えばメラトニンや成長ホルモンが、カロリー減少で増える事は明白らしい。これらが、健康や長寿を司っている。そしてこれらは時刻によって定期的に生成される。深夜になって初めて脳のヒポフィーゼでHGH(成長ホルモン)が生成される。豪勢な夕食がこれを阻害する。その他ホルモンの生成は、胃袋に負担をかけ続けることよって妨げられる事が分かっている。メラトニンこそが体温を下げ、免疫系の再生を託す重要なアンチ・エージングホルモンである。この直接の相関関係は不明であるが、体温の低下は細胞の再生をも促すという。

こうして中世の修道士でもなく、狂信的なダイエット志向でもなく、熱心な断食療法信奉者でもない現代人が、気候的にも都合が良いこの期間、食生活に配慮してみることは悪い事ではなかろう。





参照:
発育・成長・老化の中で [ 数学・自然科学 ] / 2004-12-19
<Mens sana in corpore sano> [ 数学・自然科学 ] / 2004-12-31
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生命の起源に迫る

2005-01-16 | 数学・自然科学
ダルムシュタットのESAセンターからの情報は、非常に刺激的である。土星の惑星タイタンはその重力や温度や大気から太古の地球に近いといわれる。天文学に詳しくなくとも、生物が発生する創世の時を覗けるかもしれないという期待が高まる。デジタル汎用技術のお陰で送られてきた大量のデータの精度も非常に高いようである。

ゾンデ「ホイヘンス」が写した高度8000メートルからの写真を見たり、落下中の地表の反射を伴った音響を聞くと、氷点下180度の世界にしては風も穏やかで凍った頂稜などが何処か馴染みがある。不毛の月着陸も当時の科学技術の高水準を示して我々を驚かした。その後、火星などの地球に近くて似ている惑星の写真を驚きをもって眺めてきた。もちろん地球外生命への遭遇も待ち遠しいが、その生命誕生の過程の解明は掛け替えない。記者会見でも所長から間接的にフランケンシュタイン博士の名が出たが、雷が落ちて生物が生成するような情景は我々をどんなにか興奮させる事だろう。

膨大なデータは、数年掛けて解析されていくらしいが、多くの科学的成果と人類に画期的な新視点を与える発見を期待したい。生命誕生への科学的解析は、人類最大の問いである事に違いない。今回も電子望遠鏡の観測や基礎技術等で世界的な協力体制が強調されている。「人的共同作業こそが全てを可能にした。」という所長の挨拶は的を得ている。



参照:序 トロージャンの不思議 [ 数学・自然科学 ] / 2005-03-17
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Mens sana in corpore sano

2004-12-31 | 数学・自然科学
アンチエージングの書「デア・メガマン」は、前回の内分泌系に続いて、今回は昨今の脳神経学の研究成果から。ローマ人の詩「健全なる精神は健全なる身体に宿る。」を導く。先ずこの真意が十分に理解されていないとして、インプット・プロセス・アウトプットと分けて自然科学者らしい説明を試みる。肉体における入力から出力への過程で、必要な栄養素が困窮すると疾病となる。同様に精神における否定的な要素は、肯定的な要素が動機付けなどで肉体を強化するのとは反対に負の作用をする。

ここで無意識下の活動が省みられる。我々は目覚まし時計が鳴る直前に眼を覚ますことがある。無意識下の強い活動としてこれを身をもって知る。しかしそれは往々にして負の力を放つ。ノースカロライナのデューク大学の脳神経の権威者カッツ氏は、著書「キープ・ユア・ブレイン・アライヴ」で無意識のコントロールを説く。具体的には心理学の領域となるが基本は少しずつの無意識の意識化と抑圧の解放に他ならない。

むしろ重要な主題は、思春期・成長期の空間や言語能力に対応する脳の発達と、それには及ばないながらも成人の脳も新しく再生しているという最も新しい研究成果である。この脳神経学上の成果を基に、成人の語学の学習が新たに研究されているという。十年前には「10代ならば殆んど完璧、20代ならば何とか、30代ならばある程度、40代では諦めろ」と専門家に云われた新しい外国語の学習も、現在は経年上の困難は「歳をとって、母国語の自己流の慣用化が進んで、正しい言語表現から遠ざかっている。」と説明されるようだ。つまり正しい文法や構文から歳を経るにしたがって大きく逸脱していく事が、老化といわれる独善の境地を示しているというのである。

これは、言語を離れて一般的な仕事のルーティンという経験による作業の効率化にも言及される。我々は、毎日平和に今日も昨日と同じように、明日も今日と同じように暮らそうとする傾向がある。其の前提が崩れる事で、不安で眠れなくなるかもしれない。そうなるとストレスでアドレナミン分泌の悪循環に至る。反対に不安の無いこのルーティンこそが脳のために害悪であると云う。子供がガラガラをしゃぶる様にそのものに関心を持ち、全てを既知のカテゴリーに入れるのではなく、そのもの自体を理解しようと努めなければならない。ゲッティンゲンの霊長類学のフックス氏は、「ルーティンは、認知力を高い水準に保つことに寄与しない。」と断言する。

脳神経学の成果が示すように脳自体も決まった部位が決まった働きをするわけでなく、柔軟な機能を持っている。カッツ氏は続ける、「春の花束を只愛でるのでは無しに、匂いを嗅いだり、葉に触れたり、目を閉じて香りやざわめきに心を集中させる」事で、脳細胞間のネッツは密になり脳の拡大値BDNFが大きくなるという。

そして体の健康が脳の健康に繋がることが、サンディゴの分子生物学者フレッド・ゲージ氏の「共に増える養分とノイロトロフィーネンがノイロンの生成に大きく寄与している事の確認」で証明された。「脳が我々の行動に影響するよりも、我々の行動が脳に影響することは思いのほか大きい。」と彼は語る。



参照:
発育・成長・老化の中で [ 数学・自然科学 ] / 2004-12-19
現代人の断食 [ 数学・自然科学 ] / 2005-02-11
対老化筋力トレーニング [ アウトドーア・環境 ] / 2006-04-11
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発育・成長・老化の中で

2004-12-19 | 数学・自然科学


医学的な考察をと言いたいが残念ながらその生物・医学の素地が無いのでカモミールティーを飲みながら適当にお茶を濁してみる。「男性医」の概念と免疫反応への考察、引いてはその自然治癒力の発想が面白くてアンチ・エージング書を借りてきて時々読んでいる。決してハウツー本ではないので其れほど多くの新情報は含めれていない。それだけに現在の臨床内科の視点が垣間見えて面白い。勿論免疫学や内分泌学の最新の視点が網の目のように織り込まれる。例えば普通は疾病ではない「肌乾燥・皺」、「腰痛・骨粗鬆症」、「老眼」、「脱毛」や「物忘れ」など典型的な老化現象を内科的に検討する。性ホルモンの作用を発育・成長・老化の中で捉える。栄養素としての食物も其の摂取の有効性を挙げるのではなくて、必要な栄養素として挙げる。また一般に行われているホルモン治療や投薬等の対症的な方法もその有効性と留意点を纏める。ストレスの影響と抵抗性も免疫学の見地として扱われる。専門内科医としての立場を逸脱しないのが良い。外科が臨床の花形である事に異論は無いが、内科的な思考態度は、最も医学らしい体系の中での観察と推論の自然科学者としての立場を良く示している。

其れに比べ病理学や薬学の方は遥かに遺伝子工学的な発想が席巻しているのかもしれない。残念ながらそこでは「木を見て森を見ず」の議論が横行していて、さらに倫理という大きな壁が立ちはだかり抽象的な議論を難しくしているようだ。それゆえに天下の宝刀である遺伝子による議論になると、逆に先入観念をもって結論が出される例が多いようである。合衆国の多くでは、人種別の新薬のスクリーニング試験が実施され新薬の認可基準にもなっている。社会・経済的な背景を鑑みた処置ではなくて、遺伝子上の人種別の差異が根拠となっているようである。しかしこの根拠は、遺伝子学の見地から個人差に比べ人種差を云う意味が無いとして否定されている。これなどは、非科学的な研究者という子供に遺伝子工学という武器を持たせて遊ばせているようで大変危険な状況を示している。脳神経学などの一流研究者にも似たような傾向が見られ、其の積み重ねられた研究成果に関わらず十分に客観視出来るだけの位置に到達していない。臨床内科のような研究の体系化へは、その技術的進展だけでなくある程度の時間と歴史と選ばれた才能が必要なようである。



参照:
<Mens sana in corpore sano> [ 数学・自然科学 ] / 2004-12-31
現代人の断食 [ 数学・自然科学 ] / 2005-02-11
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ゴットフリード・W・ライプニッツ

2004-11-18 | 数学・自然科学


1646年にライプチッヒの法学教授の下に生まれて、両親を早く亡くしながらも、自宅図書室で多くを学んだと云う。8歳にして絵付きの図書でラテン語を独学し、数年後にはギリシャ語もマスターしたといわれる。当然の事ながら15歳で地元の大学に学び、18歳で哲学のマスターを習得するという環境にも恵まれた早熟の大学者である。哲学、数学さらに法学においてその後に与えた影響は大きい。特に、数学の微分の方程式は、未だ大変多くの人が直接間接にお世話になり、数学の試験の重要な問題を提供して受験生の頭を悩ませる。

1996年に生誕350年を機に新資料の整理と再評価が行われたが、彼の多彩な経歴と膨大な資料から簡単にその人間像を掴みきることは難しそうである。中世風の博学者とは時代も違いどの研究部門も質が違い、学窓に留まらず精力的に多方面で最新の成果を吸収していくので、現代の専門の分化した研究者達を悩ますのかもしれない。外交官としてもルイ太陽王の下に駐在して、王のドイツへの覇権意欲をエジプトへ向けさせる任務を負った。そこで当時の錚々たる物理、天文、数学者と知り合い科学アカデミー会員となり、続いて滞在したロンドンでも王室アカデミーのニュートンなどの躊躇を受けながらもメンバーとなっている。そこでのボイルやホックとも知り合いさらにパリへ戻りファン・ヒューゲンスの勧めでカヴァリエ、デスカル、パスカルの業績に触れ、本格的に演繹法を習得する。さらにオランダでスピノザ等を訪ねて、当時の重要な学者思想家達とその後も書籍を取り交わすことになる。1676年には仕えていたマインツの伯爵の死で、パリ大学の教授ポストもとれずにハノーバーの宮廷に仕えることになる。そこでヴェルフ家の歴史などの調査の任務を受けて南国に調査旅行、ヴァチカン図書館で彼が非カトリックのため就職却下されるなどありながら、既に1675年に出来ていた微分の研究を自らの出版する雑誌に投稿するまで暫く待たなければならない。

微分の合成の法則等を三角法のタンジェントへと戻ってシコシコと計算するライブニッツの下書きや計算式も多数残されておりその一部は新たに資料に加えられて、以前はネットでも公開されていたように記憶している。それでもその法則の一般化や上の経歴から察せられるように、彼はドイツでは大変に異色な学者という印象は拭えない。その一般化された公式をもって自己満足をしている見解や新旧教の仲裁に入る宗教観などをみると、ヘレニズム的な幼少時からの文化体験とあくまでも抽象的な論理の取得がなされている。彼の無限大(小)の概念と虚数への関心と展開がよく取り上げられるが、タンジェントを用いての定理付けとその後の一般化の展開の段階で、既にその後を導くだけに十分な思考の飛躍が認められるのではないだろうか。その後の生前に出版された三冊の哲学書等は、むしろ肩の力を抜いて執筆したのではないか。1716年の埋葬には内輪のものしか集まらなかった様に、生前には学者としての業績は少なくある種のアマチュアリズムを尽いたお陰で、ニュートンなどの職業物理学者には出来なかった数学者らしい業績が見つかる。彼の近代性を指摘出来るかどうかは分からない。しかし抽象概念も悉く言語化するドイツ語文化圏からの輩出としては後年の一部物理学者などを含めて、極めて珍しい抽象家だと思う。
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ヨハネス・ケプラーのワイン樽

2004-11-17 | 数学・自然科学
2004 02/19 編集

天文三つの法則で、ガリレオの地動説を理論的に援護し、ニュートンの万有引力を準備した天文学者兼数学者(1571-1630)。観測結果の精度が出ない間、光学系の研究も進める。視力に関しての論文は、最初期のものという。シュトッツガルト近郊のヴァイル・デア・シュタットの兵卒と旅館賄いの長男。幼くして、数学の才能を示し、当時の高名な天文学者のいるシュヴァーベンのテュービンゲン大学に学ぶ。ギリシャ語からヘブライ語の文献へと学識を広げる。新教的信仰の中にコペルニクス的宇宙観をもち、ピタゴラスやユークリッド数学を用いその構築を厳密数学的に追求していく。蜂の巣からの多面体の解析も業績。火星の観測から楕円軌道を推測するが、第三法則の出版まで10年近くの歳月を要する。その間、思想の革新性からグラーツへの移転を余儀なくされる。観測精度不十分のため高名な天体観測者チコ・ブラーエを訪ねプラハへ転居。二度目の妻を娶り、挙式を挙げることになった。彼は、晩餐のために樽でワインを大量に注文する。その際、形状の違う樽に関わらず穴から棒を突っ込み量を測る方法を見て疑問に思う。三日三晩の試行錯誤の末、厳密な計測の計算式を編み出す。微細な曲線部分は、微分の概念で計算していく。これら計算式や素材などは現在でも観覧できる。

彼の更なる研究は、こうして完成されていった。ガリレオの地動説に即、賛辞を送った彼は、ガリレオの父であるヴィンツェンツォの音楽論文を彼の著「宇宙の調和」で扱う。その音楽論文は、ヘレニスム的思考に立ち、中世教会調を元にした多声からの脱皮と12音や5度8度4度などの音響的調和を解析する。デカルトに尋ねるまでもなラモー以降の和声理論に直接の影響を与えた。この「宇宙の調和」を基に20世紀の作曲家ヒンデミットがオペラ(管弦楽)を作曲している。

ワインの内容量に疑問を差し挟む事になった、シュヴァーベン地方の合理性と倹約と実験精神は、現在も同地方のメルセデス社他の機械産業や教育・研究施設に脈々と流れるのを容易に見出すことができる。
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