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非聖戦 - 4 ( 「軍事力均衡」の外交 )

2018-11-22 19:01:14 | 徒然の記

 ジョン・クーリー氏著『非聖戦 ( UNHOLY WARS )』の、105ぺージです。

 悪文に悪戦苦闘していますが、お陰で、新しい発見をさせてもらいました。「報道の自由」を自慢する日本のマスコミが、肝心の時には、「報道しない自由」を駆使しますから、多くの事実が国民に伝わりません。

 中国は、私たちが思っている以上に、国際政治にコミットし、欧米諸国とも関係が深いのだという事実を知りました。長くなりますが、氏の著書から、抜粋してみます。( 悪文は手直し、読み易くしています。)

 「アフガン聖戦 ( ジハド) 開始後の数年間、中国は反ソ連合に加わった。この決定をしたのは、アメリカとの融和を一歩ずつ進めた当然の結果であった。」「パキスタン政府の助力で、1971 ( 昭和46 ) 年に、キッシンジャーが秘密裏に北京を訪れた時から、真剣な協議が始まった。」

 「この流れは、カーター大統領時の国務長官、ハロルド・ブラウンが、1980 ( 昭和55 ) 年に、北京を訪れた時も変わらなかった。ブラウンは、アジアの巨人を、アフガン戦争に引き込もうとしていた。」「中国には、実力とビジョンを備え、慎重に資本主義世界に向かう鄧小平がおり、華国鋒の下で副首相をつとめていた。」

 「ブラウンは、強力な行政専門家チームを同行し、鄧、華国鋒、黄華外相、情報当局者と、4日間かけて会談した。会談後の記者会見では、中国の聖戦参加に関し、一言も漏らさず一般論に終始した。」

 「帰国後に、カーター大統領に報告を済ませたのち、彼は記者団に、中国との関係は同盟そのものとは言えないが、戦略的な協議をしたことを認め、我々には共通の利害があり、共同歩調を取るつもりだと語った。」

 ベトナムで勝利した、ソ連共産党は、カンボジアとタイにおける、中国の影響力を排除する作戦にかかっていました。これが、米国との共通の利害だと、著者が説明しています。

 中国とソ連は、同じマルクス主義を標榜していても、互いに覇権を譲りません。これがキッシンジャーの言う「パワー・オブ・バランス」であり、宗教や思想を超えた、「軍事力均衡」の外交でした。

 米国は、ソ連軍の動向を観察する強力な通信傍受施設を、イラン国内に2基持っていました。ソ連のミサイル実験と、衛星の動きを傍受するものでした。 しかしイラン革命でシャーが倒されると、この施設を失ってしまいました。ブラウンはこの時、中国側が極秘計画として、新疆地区の2箇所に設置を認めるところまで、話を進めました。両国の蜜月ぶりが、次の叙述でよく分かります。

 「中国の傍受施設創設により、ワシントンと北京の双方は、ソ連と中央アジアを盗聴するユニークな機会を得ることとなった。施設では、アメリカで技術訓練を受けた中国人が勤務し、事業全体はCIAの科学・技術部門の管轄下に置かれた。」

 忘れもしません。昭和53年の10月に、鄧小平が初めて日本を公式訪問しました。日中平和友好条約の、批准交換式に出席するためでした。それに先立つ3年前、鄧小平は当時の自民党幹事長保利茂氏に、こう語っていました。

 「我々は永久に覇を唱えない。率直に言えば、われわれのような遅れた国に覇を唱える資格などあるだろうか。」

 率直で、明るく、謙虚にも見えた鄧小平を、日本中が歓迎し、沢山の経済援助を約束しました。巨大な製鉄所を建設するなど、資金と人材とが官民を挙げて中国へ投入されました。ところが鄧小平は、一方ではアメリカと、とんでもない軍事同盟を結び、着々と軍事強化を図っていたのです。

 米中の親密な関係は、天安門事件が発生するまで続きました。

 天安門事件の直後、親中派のブッシュ大統領は、対中制裁を要求する議会の圧力に悩まされていました。彼は中国に強硬姿勢を軟化させようと、極秘に、スコウクロフト大統領特使を送りました。大統領の厳しい立場を説明され、特使との会談を終えた鄧小平が、申し出を拒絶した言葉がこれでした。

 「中華人民共和国の歴史は、中国共産党が人民を指導し22年間、抗米援朝を加えれば25年間戦争をし、二千万人以上の犠牲者を出してやっと勝ち取ったものだ。」

 「中国の内政には、いかなる外国人の干渉も許さない。中国では、いかなる勢力も、中国共産党の指導にとって代わることはできない。」

 こうして両国の関係が途絶えることとなり、傍受設備も閉鎖されました。天安門事件時の、鄧小平の言葉は、別の書物からの引用ですが、私たちはここでも、二つの重要な事実を学ばなければなりません。

 一つは世界の国々が、「軍事バランスの外交」の中で、敵対したり、協力しあったりしている事実です。このパワーゲームが、国際関係と言う名の現実です。軍隊もなく、情報機関もない日本は、現憲法を固持する限り、国際社会では、孤立したまま、都合よく利用されるだけで終わると、理解しなければなりません。

 多くの国は、敵対すると見せながら、秘密裏に協力したり、邪魔な他国を倒したりています。

 邪魔な強国が崩壊すると、今度は協力していた国が、敵対する相手に変わる。呉越同舟という言葉の通り、世界はいつもこんな動きを繰り返しています。私たちが、反日マスコミに惑わされている間に、もしかすると、日本包囲網が出来ているのかもしれません。

 米中戦争と騒がれている陰で、案外彼らの共通の敵は、日本である可能性があります。壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返しますが、「憲法改正反対」と「女系天皇賛成」を叫ぶ勢力は、日本崩壊を狙っている外国の協力者です。

  今一つは、ブッシュ大統領を拒絶した、鄧小平の言葉です。ここには日本訪問時の、好々爺の鄧小平はなく、軍事大国となった中国の政治家としての、冷徹さがあります。

 中曽根、小泉総理以来、現在の安倍総理に至るまで、米国大統領との個人的な信頼関係が、日本の国際的地位を確固としているかのように語られますが、それが幻想に過ぎないということを、鄧小平が教えています。

 国を背負った政治家は、国益のためなら、個人的な友情など目もくれないのです。中曽根氏や小泉氏は、この個人的友情という甘い言葉のため、日本の国益を米国に吸い取られたことを、今の私たちは知っています。安倍総理が、ここに来てトランプ大統領と、プーチン大統領との、個人的信頼関係を語り、マスコミもそれを持ち上げていますが、国民は冷静な目で眺める必要があります。

 まして、「移民政策」まで実施されるとなりますと、これはもう、見過ごせない「日本崩壊」への道です。まだ半分も読んでいない、ジョン・クーリー氏の著書ですが、読むほどに、安倍政権の危うさを感じます。同時に、保守自民党の危うさであり、日本の危うさです。

 「天皇退位」についても、「女系天皇」の問題についても、「何ごとも、陛下の御心のままです。」と、ひたすら仰ぎ立てるN代議士のように、保守を自認する自民党議員の中には、愚かとしか言えない人物がいます。陛下のお言葉と聞けば、無条件に恐懼するのでは、国の守りに役立ちません。

  かって読んだ吉田松陰の言葉を、思い出してみましょう。

 「事成れば、上は皇朝の御ため、事敗れば私ども、首刎ねられるとも苦しからず。覚悟の上なり。」

 松陰の言葉ですが、とても真似のできない覚悟です。さらに、次のように説明されていました。

 「一般に忠誠心は、体制秩序への同調を意味しており、体制への無批判、服従、事なかれ主義となりやすい。」

 「松陰は青年期から、それを批判の対象としてきた。場合によっては、大不忠とみなされる行動に踏み切る事こそ、真の忠誠であるという逆説を、松陰ほど真剣に体験し、思索した武士は稀であったかもしれない。」

  松陰の行動は、しばしば藩の規制を乗り越えましたが、むしろこのような行動こそが、藩に対する真の忠誠であり忠諫だ、という意識に貫かれていました。N代議士のような保守は、体制同調の事なかれ主義であるに過ぎません。本物の保守は、やはり吉田松陰の中にあります。
 
 戦後の私たちが戻るとすれば、過去のどこまで遡れば良いのかと、そんな問いがあります。ある人は、明治維新の時まで戻るべきと言い、人物で言えば、福沢諭吉までだと主張します。しかし私は、吉田松陰まで戻るべきでないかと、考えています。
 
 氏は不遇のうちに、若くして亡くなりましたが、過激な思想家ではありませんでした。極論で若者を扇動するのでなく、現実を踏まえた条理を説きました。
 
 この国難の時、もう一度、吉田松陰を見つめ直そうと思います。この人物の歩いた道と、思想を辿れば、答えが見つかる気がします。しかし今の目標は、先ずこの書 『非聖戦』を、読み終えることです。
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吉田松陰との向き合い (HAKASE(jnkt32))
2018-11-23 00:59:33
今晩は。鳩山由紀夫元総理らは、吉田松陰をテロリスト
呼ばわりしている様ですが、今の我国の現実面を考えての
言動なのかと首を傾げたくなりますね。やはりこの輩は
頭がおかしいのではと心得ます。

ここまでの貴記事をざっと一読して感じますのは、米中
の様な大国は 二面性があり、同盟国といえど 全て気を許してはならず、自らの祖国は自らで守る 最低限の姿勢
を要し、周辺国を巻き込んだ対日包囲網の可能性も視野に入れる必要があると心得るものです。

吉田松陰の理解は、拙者もまだ途上ですので これから
も理解を深める様努めるべきと心得るものですが、それに
しても鳩山由元総理の理解把握の粗雑さは、こうした歴史の分野にも及び、我国の対半島戦争責任は無限とか、明らかに戦後の出来事たる南北分断さえ我国のせいにする
始末。

こんな輩は、戦前にこんな発言をすれば 間違いなく暗殺リストに載っていたでしょう。
現在でも終身国外追放に処されるべきレベルだし、放置
すれば、更なる災厄を招く事でしょう。

この様な不見識が罷り通るのも、日教組教育や左派メディアによる
不良情宣が横行した結果が大きいと強く思う所です。
貴連載は これからも拝読して参らないと、という所。
又近く、勉強に伺います。遅くに失礼しました。
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朝のひとときに (あやか)
2018-11-23 07:28:36
もう、今は国難のときと言わざるを得ません。、、、と、いうよりも【内憂外患】の時でしょう。
今こそ、【吉田松陰先生】の教えに耳を傾ける時でしょう。
いろいろ、論じたいのですが、今は、それだけしか言えません。(あまりにも、複雑な思いと憂いが頭の中をめぐっていますので、、、、)

  ◎國憂う 秋の朝(あした)の ひとときに
                 いにしえの世の 義士をば思ふ      彩夏
返信する
ルーピー鳩山氏 (onecat01)
2018-11-23 07:41:02
HAKASEさん。

 お早うございます。冷え込んでいますが、お日様が明るい、気持ちの良い朝です。

 私もまだ、吉田松陰については、理解は途上です。しかし鳩山氏の見解につきましては、重きを置いていません。この人が、「辺野古の基地は最低でも、国外だ。」と言い、進んでいた基地移転の話を反故にし、現在の騒動の種を蒔きました。

 沖縄の基地には反対だと、人道的、平和主義の言動を吐き、反日・左翼を元気づけました。

 「勉強すればするほど、沖縄にある基地は、重要だとわかった。」

 最後には、このようなつまらないことを言い、総理を辞任しました。日本に関する氏の理解は、この程度のものです。要するに、何も勉強していないのだと思います。

 こんな人物が、自分の金で造った旧民主党ですから、金に群がって集まっただけの議員たちは、今では離合集散し、政治のレベルを貶めています。

 「最低でも、国外追放」と、鳩山氏の処遇はこんなところでしょう。
  コメントを、ありがとうございます。
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返歌 (onecat01)
2018-11-23 13:36:17
あやかさん。

 私も今は、言葉が、まとまりません。せめて下手な句を、お送りし、返事とさせてください。

 先人の 静けき覚悟 凛として

     心にしみる秋の朝かな
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