ねこ庭の独り言

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日本の危機 - 解決への助走 -6 ( 桜井氏の、金融財政日本批判 )

2019-11-15 16:00:56 | 徒然の記
 「1998 ( 平成10 ) 年11月17日、英紙フィナンシャル・タイムズ は、」「 " 日本的手法の金融社会主義 " という、記事を掲載した。」
 
 経済と金融は不得手なので、氏の意見を紹介するにとどめます。当時日銀が、民間企業の資金繰りを支援するため、融資と社債購入という新たな貸し出し決定をしました。同紙の記事は、こうしたことへの批判だと言います。氏が外資系証券会社の、チーフストラテジストの意見を紹介します。
 
 「どんなに採算の悪い赤字企業も、これで生存が可能になったということです。」「フィナンシャル・タイムズの指摘通り、事実上の経済の国営化で、」「社会主義経済と変わりません。」
 
 ここで言う民間企業というのは、銀行を指しているのだと思いますが、すでに長期信用銀行と、日本債権信用銀行が破綻し、公的資金の投入により経営改善した大手銀行が統合され、メガバンクとなっています。三井、三菱、住友など、由緒ある名前も捨て、財閥の垣根を超え、銀行は合併・統合しました。
 
 日本を襲った経済破綻は、それほどの危機でした。平成11 年までに注入された公的資金は、7兆4千6百億円で、さらに用意されたのが、25兆円の枠でした。この状況を、チーフストラテジストが次のように批評します。
 
 「当面の混乱と軋轢を避けた、安寧重視の政策に逃げこむ日本を、」「英国の一流紙は、金融社会主義と呼んだ。」「米国の格付け会社は、日本の国債を、」「トリプルAから、ワンランク格下げした。」「そして21世紀の、日本の最も恐るべきライバル、中国は、」「日本を既に恐るるに足らずという。」
 
 日本経済を思い切って改革するか、それとも軟着陸させるのかと、激論が交わされたことを覚えていますが、氏の説明が正しいのか、政府が妥当だったのか、経済・金融については、分かりません。しかしこの章で述べられている、中国への褒め言葉が、不愉快でなりません。というより私には、間違った意見と思えます。桜井氏は自分でなく、第三者の意見を紹介しています。
 
 1.   大和証券北京事務所長 徳地立人氏
 「鄧小平の下で、改革開放路線を進めてきた中国は、」「通産省を真似て、経済貿易委員会を設けるなど、」「日本の組織を取り入れました。」「しかし実際に、市場原理を働かせる段階では、」「アメリカをモデルとして、行きつつあります。」
 
 「朱鎔基首相のブレーンの一人が、私に向かって断言しました。」「市場メカニズムは、人類が200年かけて、やっと発見した、」「経済を最も合理的に発展させるための、方法だ。」「中国はこれを利用して、発展すると決めた。」「どんなことがあっても、それを放棄してはいけないと、」「力を込めて言うのです。」
 
 ここで櫻井氏は、中国は日本のように金融社会主義の国にならず、市場原理を守っていくと言う意見を引用し、あんに日本を批判しています。しかし中国はその後、共産主義的資本主義国と言う奇怪な国となり、市場原理も国際市場も無視し、世界経済を荒らす国家となります。本の出版当時は、まだそんな気配がなかったのでしょうか。
 
 2.   中国共産党 対外工作責任者
 「日本は、中国が大変革を遂げていることに、」「気づいていません。」「昔は全国で、週一回、共産党組織会議が開かれ、」「政治的、生活的自己反省が行われていました。」「今は、これらが全てなくなりました。」「共産党の組織と細胞は、今経済活動に専念しており、」「共産党の書記は、ほとんど会社の社長です。」
 
 「日本が経済大国なのは、間違いありません。」「しかしその経済が最悪なのに、有効な対策を、」「いつまで経っても、打つことができません。」
 
 「中国にとって、日本の位置づけは、」「1998 ( 平成10 ) 年11月の、江沢民国家主席の、」「訪日の形に、表現されています。」「中国語では、わざわざその国にだけ出かけることを、」「専訪と呼びます。」「他の国から帰りがけに、訪問するのを、」「順訪と呼びます。」「道すがらの、軽い訪問の意味です。」「日本への訪問は、アメリカからの帰りでした。」
 
 3.   レーガン政権での商務省日本担当者 クライド・プレストウィッツ氏
 「日本経済の構造が、大変革されない限り、」「あるいは、改革についての、真剣な政治的議論が行われない限り、」「希望は持てない。」
 
 4.   ノーベル賞受賞のミルトン・フリードマン教授
 「日本の現状は、アメリカの大恐慌と同じ体験を、」「今経験していると言うことです。」「ただし我々が、三年間で体験としことを、」「日本はこれまで8年かけ、より緩慢に、」「より薄められた形で、体験していると思います。」
 
 「日銀は、与う限りの手を打って、」「通貨供給量を、5ないし8%増やすべきです。」「残されている手は、円安によって痛みを和らげつつ、」「抜本的な改革を、とにかくやると言うことです。」
 
 5.   外資系証券会社の、チーフストラテジスト
 「日本はこれまで、厳しい自己責任や効率、」「小さな政府、機会均等、結果に対する適正評価など、」「競争原理では当然とされる、鞭の政策が無さすぎた。」「中国政府の遂行している政策と、日本政府の政策を比較すると、」「どちらが社会主義かわからない。」「こんな状態から、早く抜け出すことです。」
 
 日本人だから、日本の肩を持つ意見を取り上げて欲しいと、そんなことを言う気はありません。しかしここで取り上げられた意見は、どれも一方的に日本を批判しするものです。氏は一言の反論を述べるでもなく、アメリカの学者の意見を引用し、中国を褒めています。
 
 日本を批判し攻撃しても、根底に祖国愛があれば私は感じ取り、理解もします。しかし氏の叙述から、日本への愛を感じることができませんでした。しかも氏の称賛は、間違っています。これでは、反日・左翼の学者や評論家の著作と、変わりがありません。無念の一語です。
 
 次回は、この点につき、述べていきたいと思います。
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日本の危機 - 解決への助走 -5 ( 元号を使わない櫻井氏 )

2019-11-15 07:31:50 | 徒然の記
 今回は82ページ、第7章「日本よ、米中の狭間に埋没するなかれ」です。先日ハンチントン氏の著書に関し、長いブログを書きましたが、櫻井氏がこれを取り上げていますので、紹介いたします。
 
 「少しばかり時を遡る。」「1998 ( 平成10 ) 年12月4日のことだ。」「テレビ朝日のニュースステーションが、」「ハンチントン教授を、スタジオに招いていた。」
 
 少し横道にそれますが、日本を大切にするという氏なのに、各章の書き出しが、必ず西暦です。(  )内の元号は、私が書き加えたものです。日本の文化や伝統を大切にするのなら、元号を書き、その後に西暦を()書きすると思います。
 
 年数を計算するには、西暦の方が便利ですが、日本の元号を考えない姿勢に、違和感を覚えました。新聞の年月表示がいつの間にか西暦となり、朝日など左傾の新聞は、西暦表示の後で元号を()書きし、産経新聞は、元号表示後に、西暦を( )書きしています。
 
   降る雪や 明治は
     遠くなりにけり
 
 有名な句がありますが、明治、大正、昭和、平成、令和という元号は、天皇陛下に象徴される時代の顔ともいうべき名称です。若い人たちのことは知りませんが、元号とともに、私には歴代の陛下のお姿が浮かび、時代の出来事が心に刻まれています。軍国主義と結びついた天皇制が日本を誤らせたと、東京裁判が決めつけて以来、皇室を疎んじる人間が増えました。
 
 しかし歴史を知る者なら、皇室や陛下が、そう言う存在でなかったと、分かっています。むしろ、陛下が、国民の敬愛の中心であり、日本の独特の文化を形成した大本であると思い、元号をおろそかにいたしません。著書の中で西暦表示しかしない氏を、「小さなことでないか」と弁護しません。聡明な氏の著書を、残念な気持ちで読み進んだと言うのが、正直な意見です。
 
 さて、本題のハンチントン氏に、戻ります。
「同書の概要は、冷戦終結後の世界を俯瞰する論として、」「国際社会で、大きな反響を呼んできた。」「21世紀の世界を考える時、欠かすことのできない文明史観を述べている同書を、」「番組の中で、著者にどう語らせるのか、」「私は興味を抱いた。」
 
 ハンチントン氏の書評を、綴った後ですから、私も、氏がどのような読後感を持ったのか、興味を抱きました。
 
 「教授が、日本文明圏は、他の国々には広がりがなく、」「日本一国に限られると述べた時、」「キャスターの久米氏がもらした感想は、」「寂しい国ですね、というものだった。」
 
 ここで氏は、日本文明について、久米氏のように寂しいと捉えるのか、京大教授の中西輝政氏のように、世界の大文明の一つと評価するかで、自問自答します。
 
 「自国のアイデンティティーを認識できず、自信が持てなければ、」「一国一文明は、なるほど、」「寂しいものとなるであろう。」「前向きに捉えることができれば、誇りと自信につながっていくであろう。」「どちらの側に立つかによって、日本人の心、」「国家の根幹が、大きく変わってくる。」「日本の社会を直撃している、様々な問題の解決にも、」「大きな影響を及ぼす。」
 
 ここでも氏と私の意見は、異なっていました。「文明の衝突」は、日本以外の他国に関する説明には、教えられるところが大でしたが、日本については、ハンチントン氏の認識の粗雑さを知り、怒りを覚えました。
 
 この叙述を見た時、櫻井氏は本当に「文明の衝突」を読んだのだろうかと、疑問を抱きました。これも私の偏見と言われればそれまでですが、ハンチントン氏の日本理解のお粗末さは、日本人なら受け入れられないと思っています。櫻井氏は一言くらい、異論を唱えてしかるべきでしょうに。
 
 文明の衝突の引用はここまでで、あとはタイトル通り、「日本よ、米中の狭間に埋没するなかれ」、となります。氏が述べようとしているのは、バブル崩壊後の日本を、どのように再生するかと言うことです。ハンチントン氏が来日した、平成10 年12月といえば、橋本内閣後の、小渕内閣のときです。当時の概況だけでも掴みたいと、情報を探しました。
 
 「小渕総理は、内閣官房長官に自派の野中広務を据えて、体制を固めた。」「経済の再生を最優先課題に掲げ、首相経験者である宮沢喜一を蔵相、」「評論家の堺屋太一を、経済企画庁長官に起用、」「また若手の野田聖子を郵政相、元東京大学総長の有馬朗人を、文相に抜擢した。」
 
 「大蔵省出身の宮下創平と、柳沢伯夫を、厚相と国土庁長官に配した。」「自由民主党幹事長には、早稲田大学雄弁会OBの仲間でもある、」「森喜朗を起用した。」「臨時国会の最終日の10月16日に、」「防衛庁調達実施本部背任事件があり、」「参院本会議に、防衛庁長官の額賀福志郎の問責決議案が提出され、可決された。」「参院で不信任された閣僚が、」「参院で、答弁に立つことは認められないという理由で、」「額賀は小渕首相に辞表を提出した。」
 
 懐かしい名前、馴染み深い政治家が、並んでいます。現在に続く、経済の低迷時代ですが、どのような意見を氏が示してくれるのか、興味があります。
 
 続きは、スペースの都合で、次回となります。
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