もう一度「朝銀関係信用組合」の話に戻り、櫻井氏の説明を紹介します。
・小渕政権は「金融制度の安定化」を目指し、総額60兆円の支援策を打ち出したが、今その裏で、奇妙な事実が進行中だ。
・潰れてもおかしくない北朝鮮系の、「朝銀信用組合」が形を変えて存続し、そこに「預金保険機構」から、事実上の税金が投入されようとしている。
実は平成9年の橋本内閣の時、同様なことが行われていました。
「朝銀大阪信金」が破綻した時、京都、奈良、和歌山、滋賀、兵庫の朝銀が合併し、「朝銀近畿信組」が発足しました。
同時に「朝銀大阪信金」は、すべての事業を「朝銀近畿信組」に譲渡し、この時は、「預金保険機構」から、3千百億円が支払われました。
青字部分は、19回目の過去記事の転記ですが、これを頭に入れて氏の意見を読むと、全体が理解できます。
・「朝銀大阪信金」が破綻し、3千億円のお金が動くのに、どのような正当な理由があったのか。何故破綻した「朝銀大阪」は潰されなかったのか。
・日本の金融機関の破綻では、逮捕者が出ているにもかかわらず、何故「朝銀大阪」の責任者は、何の取り調べも受けていないのか。その情報が、全くないのは何故か。
・外交的、政治的配慮というのなら、その配慮の根拠を、政府はきちんと説明すべきである。それもせず、今度は小渕内閣で、一兆円にものぼる資金投入がとり沙汰されている
・このような流れを作ったのは、誰か。取材では、政治家の関与があったと複数の人が述べた。
櫻井氏自身が取材をした、朝鮮総連の中枢に近いという人物の話です。
・現在朝鮮総連の実質的なナンバーワンは、許宗萬 ( ホ・ジョンマン ) 中央委員会副議長です。
・許氏と極めて近いのが、官房長官の野中氏です。二人の交流は、金丸氏の訪朝以来のことで、平成11年7月初めにも、自民党のもう一人の大物政治家を交え、会合をしています。今回の件では、野中さんが影響力を発揮した、というのが私の推測です。
韓国民団幹部の話も、紹介しています。
・「預金保険機構」の金で賄わせるという構図の、後押しをしたのは、野中さんだと言われています。「総連」内部で言われていることですから、信憑性は高いのではないですか。
野中氏にインタビューした時の状況を、櫻井氏が述べています。
・野中官房長官は、どのように答えるか。氏は真っ向から否定した。氏は、「朝銀大阪」の3千億円の話は、ごく最近まで知らなかったと述べた。全国の朝銀の再編問題については、つい先日、金融監督庁から聞いたとも述べた。
・何も知らない官房長官の名前が、何故、そこ此処で囁かれるのかと問うと、平成2年に金丸訪朝団に加わり、誰もが嫌がり、一番難しい核査察の問題を交渉しました。
・激しい議論になり、逆に友好関係ができた。そういうこともあって、利権がどうとか、私の名前を出す人がいるのでしょうと答えた。
・公的資金を入れるのなら、当然経営者の責任が問われ、背任行為があれば刑事責任を告発していくことは、別に「長銀」に限らずなされるべきです。
・厳正な監査も、必要です。監査結果は、きちんと公表すべきです。私は、関係機関にそう言うつもりです。
野中氏の答えに対し、氏は次のように述べ第23章を終わっています。
・官房長官としてのこの言葉を、私は心から歓迎するものだ。本来なら、やって当然のことを、これまでやってこなかった。この異常を正常に戻す約束を、野中氏はしたことになる。
・国民のお金を、正当な理由なく使わせないためにも、また心ならずも、金正日政権への肩入れをしないためにも、野中氏の言葉に希望をつなぐものである。
野中氏の責任を断定する物証がなく、関係者の談話だけですから、恐らくここまでが、ジャーナリストとしての氏の限界だったのだか思います。時の権力者である野中氏を、追求したのですから、氏の勇気に敬意を表すべきでしょうか。
しかし氏の期待は裏切られ、「朝銀」への公的資金の投入が実施されました。その怒りが、次の章につながったのでないかと推察します。最後の章になります。
「第24章 拉致問題を棚上げした「日朝国交正常化交渉」の裏切り」