だらだら日記goo編

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神秘の画家?

2005-03-11 22:50:09 | アート・文化
「一度その作品を観たものに忘れがたい印象をもたらす」「ドラマティックな再発見の物語」「ヴェールに包まれた画家自身の存在」
どれもラ・トゥールという忘れられた画家についての宣伝パンフの文字だ。
その画家の作品が東京に集結するーこれは絶対観にいかなければならない、美術好きなら誰しもそう思う。
ということで西洋美術館へ行く。八時までの夜間会館だ。
正直に申して50%しか納得できなかった。
まず展示作品の少なさだ。全部で三十四点しか出品されていない。
しかもその中には本人の作品か模写かわからんものがずいぶんある。
たったこれだけの絵で、しかも本人の作品か確認できないのに「ここにこの画家の真骨頂あり」というようなことを音声ガイドで言われてもこちらは納得できない。
はじめの十二使徒を描いたところは僕としてもとても面白かった。
聖人だからといってやけに神格化せず、ただの人間として描く姿勢に共感を覚えた。
しかし順路が進むにつれて同じような絵で単調になる。
最後の絵「金の支払い」など解説は「その荒荒しいタッチからこの画家の真作か疑問視される」となる。
しかしこの画家が静かな絵しか描かなかったらそれもまた奇怪と感じる。
おおよそ芸術家などは多面性を持つもので、この画家にしたって怒りを覚えながら筆をとったこともあるだろう。
要はこの画家についての研究はまだ端緒についたばかりなのだろう、これから画家の多面性がでてくるのだろう。
そこのところがこの展示では良くわからない。
展示作品が少ないから「マルチメディアで体験するラ・トゥールの世界」なるコーナーまである。
しかしここも物足りない。
パソコンでは例の十二使徒の作品の解説しかない。
本は日本語で手に入るものばかりで英語やフランス語の書籍がない。
中途半端なのだ、この展覧会は。
それならばこの画家が影響を受けたカラヴァッツォの作品とかも展示したらどうか。
あるいはX線フィルムを展示して、どこがどうこの画家の真作と模写の分かれ目となるか研究材料を提供してもよかった。
これで満足する人も多いかもしれないが僕は物足りない。
あと十年後この画家の展覧会がもし開かれたらどう展示が変わるか楽しみではある。
最後に動物を描くこの画家のめはまことにやさしく、とても心のやさしい人だったのだろうと感じた。